心細こころぼそ)” の例文
「はやく、おうちへはいらないと、らぬひとにつれられていってしまうがな。」と、ほしひかりをながめて心細こころぼそおもったことがありました。
古いはさみ (新字新仮名) / 小川未明(著)
けばくほど山がふかくなって、もうどこをどうあるいているのか、まるでらない山の中のみちを、心細こころぼそくたどって行くばかりでした。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そうっておじいさんは一こう取済とりすましたものでしたが、わたくしとしては、それではなにやらすこ心細こころぼそいようにかんじられてならないのでした。
「だが、バクスター君だけは、幼年組の保護ほごのために残ってくれたまえ、でないと幼年組が心細こころぼそがるだろうから」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
かれには悲愴ひそうかんほかに、まだ一しゅ心細こころぼそかんじが、こと日暮ひぐれよりかけて、しんみりとみておぼえた。これは麦酒ビールと、たばことが、しいのであったとかれつい心着こころづく。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
「ああ、」とおんなふか嘆息ためいきいて、まえながめているうちに、きゅう心細こころぼそくなって、こうった。「のようにあかく、ゆきのようにしろ小児こどもが、ひとりあったらねい!」
ことに天気が不良の場合に、轎夫きょうふが絶対に働かないで、途中にかごを置き去りすることがある。これは独り台湾においてのみならず、朝鮮にもあると聞くが、その不快と心細こころぼそさといったらない。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
林太郎はきゅうに心細こころぼそくなりました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
妻君「お登和さんの口振くちぶりでは兄や親の都合次第でどうなるか分らんとお言いでしたから先ず中川さんに話して中川さんが御承知なさればいてイヤともおっしゃいますまい」大原「強いてイヤとも言うまいなんぞははなは心細こころぼそい。それでは ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
心細こころぼそさうにきいたのだ
『春と修羅』 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
なにしろ西にしひがしからない原中はらなかの一軒家けんや一人ひとりぼっちとりのこされたのですから、心細こころぼそさも心細こころぼそいし、だんだん心配しんぱいになってきました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
人形にんぎょうは、このうちみせききにならべられてからは、あの野原のはらのくぼてられたような心細こころぼそさはかんじなかったけれど、いつまでも
風の寒い世の中へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうわれたときに、わたくしなにやらすこ心細こころぼそかんじましたが、それでもすぐになおしてたび仕度じたくととのえました。わたくしのそのときたび姿すがたでございますか……。
院長いんちょうはそのそばこしけて、かしられて、じっとして心細こころぼそいような、かなしいような様子ようすかおあかくしている。ハバトフはかたちぢめて冷笑れいしょうし、ニキタと見合みあう。ニキタもおなじくかたちぢめる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そして、あねは、どこへいったろう。もうこれぎりかえってこなかったらどうしようと心細こころぼそくなって、なみだながれてまらなかったのであります。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれどあいにくなことには、ほうがだんだん心細こころぼそくなって、ありったけのまきはとうにやしつくしてしまいました。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そうかとおもえば、ぎの瞬間しゅんかんには、わたくしはこれからきの未知みち世界せかい心細こころぼそさにふるおののいているのでした。
自分じぶんうちはなれて、他人たにんなか病気びょうきにかかっては、どんなに心細こころぼそいことだろう、そうおもって、できるだけしんせつにしてやったのであります。
なつかしまれた人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
若者わかものはだんだん心細こころぼそくなったものですから、これは観音かんのんさまにおねがいをするほかはないとおもって、長谷寺はせでらという大きなおてらのおどうにおこもりをしました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あるのこと、きゅう気分きぶんわるいといって、親方おやかた宿やどかえるととこにつきました。きんさんは、どんなに心細こころぼそかんじたでしょう。
春風の吹く町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
保名やすなはいつのにかきつね行方ゆくえ見失みうしなってしまって、心細こころぼそおもいながら、もりの中のみちをとぼとぼとあるいて行きました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ひとりり、ふたりり、しのびやかに、ひとたちがつづきました。清吉せいきちも、こうしているのが心細こころぼそくなって、母親ははおやのたもとにつかまり
戦争はぼくをおとなにした (新字新仮名) / 小川未明(著)
いっそ野宿のじゅくときめようか、それにしてもこうおなかがすいてはやりきれない、せめてみずでもましてくれるうちはないかしらと、心細こころぼそおもいつづけながら、とぼとぼあるいて行きますと
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
きたくにのすずめは、たびへきて、心細こころぼそかんじていたさいに、こうしんせつにいわれると、ほんとうにうれしかったのでした。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
女の子は一人ひとりぼっちとりのこされて、さびしくって心細こころぼそくってしかたがありませんから、ちいさくなっていろりにあたっていました。するとおひるごろになって、そとをとんとん、たたくおとがしました。
山姥の話 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「さあ、どうなることだろう。」と、三びきのありは、心細こころぼそくなって思案しあんをしました。てしなく、かわみずは、かがやいて野原のはらなかながれていました。
三匹のあり (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、さも心細こころぼそそうにいいました。
大江山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
よるになったらどうなるであろう。ひめはとてもいのちたすからないとおもって、心細こころぼそさにふるえていましたとき、灰色はいいろうみうえに一そうのあかふねえました。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おとこは、はやまちいて、はいってあたたまろうなどと空想くうそうをしていたのでありますが、いまは、それどころでなく、まったく心細こころぼそくなってしまいました。
宝石商 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひめは、だんだん心細こころぼそくなりました。いまはとうりてかえることもできないほどに、風雨ふううがつのったのでありました。
黒い塔 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もはや、一にちましに、あつくなる時節じせつであって、まちうえそらは、銀色ぎんいろにうるんでいました。そして、たび心細こころぼそさをまさしめる、つばめがいていました。
ガラス窓の河骨 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いしは、ものをいいませんが、どんなに心細こころぼそかったかしれません。ゆうちゃんが、この大事だいじいしを、ともだちにせると
青い石とメダル (新字新仮名) / 小川未明(著)
おんなは、そうかとおもいました。きゅうに、心細こころぼそいようなかんじがして、ついに、およめにゆくになってしまいました。
ちょうと三つの石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おとうさん、おとうさん。」と、小太郎こたろうは、きゅう心細こころぼそくなってごえして、ちちびました。けれど、なんの返答へんとうもありません。そのうち番頭ばんとうかおして
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれどにわとりこわがってどこへもりることができませんでした。晩方ばんがたになると、にわとりは、心細こころぼそがりました。
汽車の中のくまと鶏 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そしてらぬところへいって、とおくみんなからわかれて、一人ひとり生活せいかつするということは、どんなにか、心細こころぼそいことであろうとおもわれると、いもうとがかわいそうになりました。
赤いえり巻き (新字新仮名) / 小川未明(著)
はじめて、うみうえわたには、なんとなく心細こころぼそおもわれたからです。そして、つばめたちが、いいというは、自分じぶんたちにも、いいにちがいないとかんがえたからでした。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、とうとう、とおいそのまちく。ちいさいけれどきれいなまちだ。おんなは、きたくにで、心細こころぼそたびをしているときにけたごおんかえすために、いろいろていねいにしてくれる。
幸福の鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はじめて、遠方えんぽうへゆく、汽車きしゃったので心細こころぼそかったのです。まどぎわにちいさくなって、自分じぶんむらほうていると、たけちゃんや、てっちゃんが往来おうらいあそんでいる姿すがたえます。
真吉とお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、三郎さぶろうはかつて、こんなところへきたことがありませんでした。そして、二人ふたりともだちがあちらへげてしまって、自分じぶんひとりでありましたから心細こころぼそくなってきました。
空色の着物をきた子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、すえのことなどをかんがえると、希望きぼうもひらめきましたが、また心細こころぼそくもありました。
風の寒い世の中へ (新字新仮名) / 小川未明(著)
平常へいじょう、むだづかいをせずにためていたかねがあるので、これから、宿屋やどやまろうと、すでにかおなじみの口入くちいへいこうと、その心配しんぱいはないけれど、さすがに心細こころぼそおもいました。
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「お一人ひとりでいらしって、お心細こころぼそいことはありませんか。」と、少年しょうねんは、いったのでした。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二つの人形にんぎょうは、心細こころぼそそうにいいました。しかし、こうなることはわかっていたのです。
三つのお人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのはなしは、よく小太郎こたろうにはわからなかったけれど、らぬおとこおんなに、小太郎こたろうをくれてやるというようなはなしらしかったのです。小太郎こたろうは、なんとなく心細こころぼそくなってきたくなりました。
けしの圃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おおかみたちは、道案内者みちあんないしゃうしなったあとの不安ふあん心細こころぼそさからこえをあげてきました。
道の上で見た話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしたちは、どこへやられるのかわかりません。故郷こきょうてから、ながあいだ汽車きしゃせられました。そして、いまこの広々ひろびろとしたうみうえをあてもなくただよっているのをみると心細こころぼそくなるのであります。
負傷した線路と月 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おじいさんは、このころから、なにかあたらしい問題もんだいが、こると、しきりに心細こころぼそさをかんじました。それは、としのせいかもしれません。そして、とおくはなれている一人ひとり息子むすこのことをおもうのでした。
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「だって、叔父おじさんがお留守るすなので、叔母おばさんが心細こころぼそいだろう。」
火事 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ねこは、心細こころぼそくなって、かなしいこえをあげてきながらあるきました。
小ねこはなにを知ったか (新字新仮名) / 小川未明(著)