ぶた)” の例文
「満州なんかだめだよ、酒は高粱きびの酒で、うものは、ぶたか犬かしかないと云うじゃねえか、だめだよ、魚軒さしみなだ生一本きいっぽんでなくちゃ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
渋谷の方へ電話でそのむねを知らせてやったが、渋谷では子供たちが家を散々住み荒らして、ぶた小屋のようにむさくろしくしているので
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
それでもぶたのようにふとった妙子はほんとうに彼女と愛し合ったものは達雄だけだったと思っているのですね。恋愛は実際至上なりですね。
或恋愛小説 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
今度こんどこそはなんつても、寸分すんぶんぶた相違さうゐありませんでしたから、あいちやんもれをれてくのはまつた莫迦氣ばかげたことだとおもひました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
頸筋くびすぢぶたこゑまでがそれらしい老人らうじん辨當べんたうをむしやつき、すこ上方辯かみがたべんぜた五十幾歳位いくさいぐらゐ老婦人らうふじんはすしを頬張ほゝばりはじめた。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
「まあ御互にぶたでなくつて仕合せだ。さう欲しいものゝ方へ無暗に鼻が延びて行つたら、今頃は汽車にも乗れない位長くなつて困るにちがひない」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
野猪ゐのしゝかたちぶた全身ぜんしん黒褐色こつかつしよくのあらいでおほはれてをり、くびみじかいのでけだすときゆうには方向ほうこうへられない動物どうぶつです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
かたりと荷車にぐるまがとまりました。ぶたは、はつとわれ にかへつてみあげました。そこには縣立けんりつ畜獸ちくじう屠殺所とさつじよといふおほきな看板かんばんかゝかつてゐました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
たまたまいえうしなったいぬがそのへんをうろついている姿すがたますばかりで、ぶたも、にわとりも、うまも、うしなかったのであります。
酒倉 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのうちに、私は不思議なものを発見した。それは一匹のぶたほどもある怪物が、私の方をじっと見て、いまにも飛びかかりそうににらんでいるのだ。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
ぶため」と吐きつけるようにいうと、そのままドアを力まかせに開いて、外へ出た。ダシコフは彼の後姿を見ながら
勲章を貰う話 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
道路から浜におちたときの怪我けがだとわかったし、キッチンの家ではぶたが三匹もとんコレラで死んでしまい、お母さんが寝こんだ、などと話はつきなかった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
家々の土台石をぶたを泳がせ刈りとったばかりの一万にあまる稲坊主を浮かせてだぶりだぶりと浪打った。
ロマネスク (新字新仮名) / 太宰治(著)
夜店の二銭のドテ焼(ぶたの皮身を味噌みそつめたもの)が好きで、ドテ焼さんと渾名あだながついていたくらいだ。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
おつぎはそばでかさ/\となにかがうごくのをくとともに、ゐい/\とぶたらしい鳴聲なきごゑのするのをいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「止してくれ、俺はそのぶたのやうなめすと祝言せずに濟んだだけでも澤山だ、——何でえ、岡つ引のくせに。何も彼も見拔いたつもりでも、人の心の見透みとほしはつくまい」
子どもたちはやくわりをきめて、一人ひとりの男の子に、おまえは牛やぶたをつぶす人だよと言い、もう一人の男の子には、おまえはお料理番だよと言い、またもう一人の男の子には
「ずいぶん、つまらないおはなしだなあ。君はぶたのあぶらみとか、あぶらろうそくというようなものはなんにもしらないのかね。たべものやのはなしは、しらないのかね。」
ぶたきたない所が好きなのではなく、清潔な所をわきに作っておくとその方へ行くそうである。
実験室の記憶 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
間拔まぬけのたかい大人おとなのやうなつらをして團子屋だんごや頓馬とんまが、かしらもあるものか尻尾しつぽ尻尾しつぽだ、ぶた尻尾しつぽだなんて惡口あくこうつたとさ、らあ其時そのとき束樣ぞくさまへねりんでたもんだから
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
銅色あかがねいろのすすけた顔に、ぶたのような無愛想な小さいをしておまけに額からこめかみへかけてたたまれているしわの深いことといったら、わたしが生れてこのかた見たこともないほどだった。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
ぶたのソボロめし 秋付録 米料理百種「日本料理の部」の「第三十八 豚のそぼろ飯」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
何かみじめな生活のあかといったものをしみ込ませたようなくすんだ、しなびた、生気のない顔ばかりで、まるでヘットそのものを食うみたいな、ぶたの油でギロギロのお好み焼を食っていながら
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
銀価ぎんか下落げらく心配しんぱいする苦労性くらうしやう月給げつきふ減額げんがく神経しんけい先生せんせいもしくは身躰からだにもてあますしよくもたれのぶた無暗むやみくびりたがる張子はりことらきたつて此説法せつぱう聴聞ちやうもんし而してのち文学者ぶんがくしやとなれ。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
仲々あのパンフレットにあるぶたのように愉快ゆかいには行かないのであります。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ぶたにくこまかくたゝいて、擂鉢すりばちであたつて、しやくしでしやくつて、てのひらへのせて、だんごにまるめて、うどんをなすつてそれからねて……あゝ、つてください、もし/\……そのあらつてありますか
湯どうふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ぶたおかのごとく、雞は城楼じょうろうと見える。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
五百のぶたの群のに。
ふとつちよのぶた
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
ぶた
貧しき信徒 (新字新仮名) / 八木重吉(著)
蜥蜴とかげ鉛筆えんぴつきしらすおと壓潰おしつぶされて窒息ちつそくしたぶた不幸ふかう海龜うみがめえざる歔欷すゝりなきとがゴタ/\に其處そこいらの空中くうちゆううかんでえました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
最勝寺さいしょうじの塔も忘れるであろう。ぶたのように子供をみつづけ——わたしは机の抽斗ひきだしの奥へばたりとこの文放古ふみほごほうりこんだ。
文放古 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あるむら一人ひとりのおじいさんがありました。したちいさな黒子ほくろがあって、まるまるとよくふとっていました。あるくときは、ちょうどぶたあるくようによちよちとあるきました。
犬と人と花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
どうもすきなものには自然と手がるものでね。仕方がない。ぶた抔は手がない代りにはなる。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「好い室だ、こんな好い室があるのに、あんなぶた小屋のような処で寝られるものじゃない」
警察署長 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
いつも物置ものおきうしろの、きたな小舎こやなかにばかりゐたぶたが、荷車くるまにのせられました。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
かれ内職ないしよくつたぶた近頃ちかごろんだので他人たにんねらひはせぬかと懸念けねんしつゝあつたのである。おつぎは何處どこでもかまはぬと土手どてしのけてひとつ/\に蜀黍もろこしちからかぎみづとうじた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ぶたのように跳ねあがり、通りすがりのトラックへとびこんで逃げてしまいやがった。
鞄らしくない鞄 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この通りはからっ風が強いのか、ぼろ隠しのような布の下には重石おもしがつけてある。石は囚人を縛るような麻縄あさなわでからげてある。ぶた腹綿はらわたを焼いている煙が、もくもくと布の間から立ちのぼっている。
いやな感じ (新字新仮名) / 高見順(著)
全体ぶたなどが死というような高等な観念を持っているものではない。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ぶたのロース 秋 第二百四十一 冷肉れいにく料理
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ぶたの背中にからすが乗って」
男女同権 (新字新仮名) / 太宰治(著)
ぶたいぬめも
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
ぶたッてつたのよ』とあいちやんはこたへて、わたしはおまへ何時いつまでもうしてないで、きふくなつてれゝばいとおもつてるのよ、眞個ほんとう眩暈めまひがするわ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
ぶたをね、しばつてうごけない様にして置いて、其はなさきへ、御馳走をならべて置くと、うごけないものだから、はなさきが段〻延びてるさうだ。御馳走に届く迄は延びるさうです。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
多欲喪身たよくそうしん」という言葉はそれらの人々に与えられるであろう。孔雀くじゃくの羽根の扇や人乳を飲んだぶたの料理さえそれらの人びとにはそれだけでは決して満足を与えないのである。
十本の針 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
点々として黒い物のあるのは急ごしらえのぶた小屋のような小家であった。
海嘯のあと (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
われらこの美しき世界の中にパンをみ羊毛とあさと木綿とを着、セルリイと蕪菁ターニップとを食み又ぶたさけとをたべる。すべてこれ摂理である。み恵みである。善である。どうです諸君。ご異議がありますか。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ぶた角煮かくに 春 第三十二 料理の原則
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ぶた夢想家むさうかでした。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)