若葉わかば)” の例文
君が御名みなさちの井の、ゐどのほとりの常磐木ときはぎや、落葉木らくえふぼく若葉わかばして、青葉あをばとなりて、落葉おちばして、としまた年と空宮くうきうに年はうつりぬ四十五しじふいつ
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
たけおは、ぼんやりとまえって、あちらのたか若葉わかばが、大空おおぞらにけむっているのを、こころから、うつくしいとおもって、ながめていました。
花かごとたいこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
これで若葉わかばうつくしいいろや、新緑しんりよく緑色みどりいろのこともおわかりになつたとおもひますから、ぎには樹木じゆもく生活せいかつについてすこしおはなしをしませう。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
しんたのむねをりたところに、かたがわには椿つばきがありました。いまはなって、浅緑あさみどりやわらかい若葉わかばになっていました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
木ぎが、ふたたびみずみずしい若葉わかばをつけはじめたころのことでした。あるとき、この国の王さまが、森でりをして、シカをっていきました。
「後添えでいらっしゃる、若殿様とはまましい仲だが、至っておむつまじい。奥方には今年十九になる若葉わかば様という、それはそれは綺麗なお嬢様がある」
さて、若葉わかば青葉あをばくもいろ/\の山々やま/\ゆきかついだ吾妻嶽あづまだけ見渡みわたして、一路いちろながく、しか凸凹でこぼこ、ぐら/\とする温泉みちを、親仁おやぢくのだから、途中みちすがら面白おもしろい。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
引連ひきつれいではしたれどさわがしき所は素より好まねば王子わうじあたりへ立越てかへで若葉わかば若緑わかみどりながめんにも又上野より日暮ひぐらし里などへ掛る時はかれ醉人の多くして風雅ふうがを妨げ面白おもしろからねば音羽通を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ことふゆしたからはるあたまもたげる時分じぶんはじまつて、つくしたさくらはな若葉わかばいろへるころをはつた。すべてが生死しやうしたゝかひであつた。青竹あをだけあぶつてあぶらしぼほどくるしみであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
若葉わかばがふっくらとしげった木々のあいだに、大きなわら屋根が見え、それから米倉こめぐらの白いかべが見えてきました。その白い壁は朝の日をうけて、あたたかそうにひかっていました。
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
谷中やなかから上野うえのける、寛永寺かんえいじ土塀どべい沿った一筋道すじみち光琳こうりんのようなさくら若葉わかばが、みちかれたまんなかたたずんだ、若旦那わかだんな徳太郎とくたろうとおせんのあにの千きちとは、おりからの夕陽ゆうひびて
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
女中は矢張眼を伏せたまゝ、『千本桜』の若葉わかば内侍ないじのやうに上品に口をつぼめて
御相みさういとどしたしみやすきなつかしき若葉わかばだちなか盧遮那仏るしやなぶつ
みだれ髪 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
港をよろふ山の若葉わかばに光さしあはれ静かなるこのゆく春や
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
枇杷びは若葉わかばをたべたので
若葉わかばかがやくかげにこそ
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
には若葉わかば神飾かみかざ
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
かけてまたときつ思案しあんにもつるゝ撚糸よりいと八重やへなげきはまたことなりしげ若葉わかばさまたげとおほせられしはことならずやくらまよひとたんたまへどさとりたればこその御取持おとりもちなれおもなかのお兩方ふたかた生涯しやうがいのぞみもたのみも御讓おゆづり申しておもくこと些少いさゝかなきを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そらいろがコバルトいろひかって、太陽たいようがにこやかに、ひがしのいきいきとした若葉わかばもりにさえ微笑ほほえめば、おじいさんは、かならずやってきました。
からすの唄うたい (新字新仮名) / 小川未明(著)
やまざくらのように緑色みどりいろ若葉わかばをもつもの、がきおほいかなめもちのように紅色べにいろのうつくしい若芽わかめをもつものもあり
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
代助は縁側へ出て、にはからさきにはびこる一面の青いものを見た。花はいつしか散つて、今は新芽しんめ若葉わかばの初期である。はなやかなみどりがぱつとかほに吹き付けた様な心持ちがした。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
わけても若葉わかば樣は、母上樣の潔白のため一日一刻も早く、そののろひの願文を書いた惡戯者を搜し出し、父上樣の御怒りもなだめて上げたいと、葬式の仕度もせぬおむづかりやうぢや。
若葉わかばかげきしづたひに、上流じやうりう一本橋いつぽんばしはうからすた/\と跣足はだした。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
仁左衛門さんとこ大欅おおけやきが春の空をでて淡褐色たんかっしょくに煙りそめる。雑木林のならが逸早く、くぬぎはやゝ晩れて、芽をきそめる。貯蔵かこい里芋さといもも芽を吐くので、里芋を植えねばならぬ。月の終は、若葉わかば盛季さかりだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
わが故郷ふるさとは、楠樹くすのき若葉わかばほのかにににほひ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
つみつくりなれわれゆゑにひと二人ふたりまでおなおもひにくるしむともいざやしらがき若葉わかばつゆかぜにゆふぐれの散歩さんぽがてら梨本なしもとむすめ病氣びやうきにて別莊べつそう出養生でやうじやうとや見舞みまひてやらんとてしばおとづれしにお八重やへはじめて對面たひめんしたりはゞはんの千言百言ちこともゝことうさもつらさもむねみておんともはず義理ぎりとも
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「また、来年らいねん若葉わかばのころには、きっときますから、どうぞ、みなさんお達者たっしゃでいてください。」といったのでありました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
はる若葉わかば新緑しんりよくもりうつくしさとともに、なつ濃緑こみどりがすんだのちあきはやし紅葉もみぢ景色けしきも、いづれおとらぬ自然しぜんほこりです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
「だが、可哀想だよ、一層氣の毒なのはあの若葉わかばとかいふ娘さ」
あるやまに一ぽんのかえでのがありました。もうながいことそのやまえていました。はるになると、うつくしい若葉わかばし、あきになるとみごとに紅葉こうようしました。
葉と幹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
がけからたれさがったえだに、ひかりらして、若葉わかばおもてながれるように、てらてらとしていました。
あるいえもんのところに、おおきなしいのがありました。すずめが、そのえだなかつくっていました。さわやかなかぜいて、きらきらと若葉わかばなみだてていました。
木の上と下の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はるびよりの、あたたかなでした。はたけなか古墳こふんのかたわらには、一ぽんのかきのがありましたが、小枝こえだにのびた、つやつやしい若葉わかばは、かぜにふかれてひかっていました。
うずめられた鏡 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこには、するど無数むすうとげがあって、そとからのてきまもってくれるであろうし、そのやわらかな若葉わかばたまご孵化ふかして幼虫ようちゅうとなったときの食物しょくもつとなるであろうとかんがえたからでした。
冬のちょう (新字新仮名) / 小川未明(著)
若葉わかばのけむるようなはやしを、なみだて、ふいてきたかぜ
心は大空を泳ぐ (新字新仮名) / 小川未明(著)