老人ろうじん)” の例文
そのはなは、のめずりたおれた老人ろうじん死体したいを、わらつておろしているというかたちで、いささかひとをぞつとさせるような妖気ようきただよわしている。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
もちろん、老人ろうじんこころざしとならなかったばかりか、B医師ビーいしは、老人ろうじんきだったらしいすいせんを病院びょういんにわえたのでありました。
三月の空の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
浴衣ゆかたかみの白い老人ろうじんであった。その着こなしも風采ふうさい恩給おんきゅうでもとっている古い役人やくにんという風だった。ふきいずみひたしていたのだ。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
老人ろうじんたちは、ごんごろがねわかれをしんでいた。「とうとう、ごんごろがねさまもってしまうだかや。」といっているじいさんもあった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
そう言いながら、老人ろうじんは五フランの金貨きんかを八まいテーブルの上にのせた。バルブレンはそれをさらいこむようにしてかくしに入れた。
老人ろうじんつえると、二人は一番高いとう屋根やねにあがりました。王子はまだこんな高いところへあがったことがありませんでした。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
わたくし祖父じじ年齢としでございますか——たしか祖父じじは七十あまりで歿なくなりました。白哲いろじろ細面ほそおもての、小柄こがら老人ろうじんで、は一ぽんなしにけてました。
勘作はそのことばに従って石磴をおりて往った。そして、土手を内へ入って人家のある方へ歩いていると、はたして牛を牽いた老人ろうじんがやって来た。
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
老人ろうじんは松女をひざからおろしてちょっとむきなおる。はいったふたりはおなじように老人に会釈えしゃくした。老人はたってものをふたりにすすめる。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
老人ろうじんは子供よりもっとうれしかったが、わざと平気へいきな声で——感動かんどうしかかってることに自分じぶんでも気づいていたから——いった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
山城やましろ苅羽井かりはいというところでおべんとうをめしあがっておりますと、そこへ、ちょうえきあがりのしるしに、かお入墨いれずみをされている、一人の老人ろうじんが出て来て
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
それにつづいては小体こがらな、元気げんきな、頤鬚あごひげとがった、かみくろいネグルじんのようにちぢれた、すこしも落着おちつかぬ老人ろうじん
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
ぎんのようなひげあごからたれて風をうけているのが、そのときには、下からもありありとあおがれた。老人ろうじんはやがてむくこずえにすがって、蜘蛛くもがさがるようにスルスルとりてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
老人ろうじんあたまから代助を小僧視してゐるうへに、其返事が何時いつでも幼気おさなげを失はない、簡単な、世帯離しよたいばなれをした文句だものだから、馬鹿ばかにするうちにも、どうも坊ちやんは成人しても仕様がない
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
『これはなことをはるゝものじや、あんなおほきいし如何どうしてたもとはひはずがない』と老人ろうじんに言はれて見ると、そでかるかぜひるがへり、手には一本のながつゑもつばかり、小石こいし一つ持て居ないのである。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それで、ひすいを見分みわけるために、御殿ごてんされた老人ろうじんは、きさきくなられると、もはや、仕事しごとがなくなったのでひまされました。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その容疑ようぎのもとは、中内工学士なかうちこうがくし場合ばあいていて、金魚屋きんぎょや老人ろうじんとのあいだ貸借関係たいしゃくかんけいがあり、裁判沙汰さいばんざたまでおこしたという事実じじつからである。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
たずねて村役人むらやくにんいえへいくと、あらわれたのは、はなさきちかかるように眼鏡めがねをかけた老人ろうじんでしたので、盗人ぬすびとたちはまず安心あんしんしました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
でもヴィタリス老人ろうじんも死んだ……わたしはかの女までもくしたかもわからない、という考えが、どうしてこれまで起こらなかったろう。
それは白いひげ老人ろうじんで、たおれてえながら、骨立ほねだった両手りょうてを合せ、須利耶さまをおがむようにして、切なく叫びますのには
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ると、水辺すいえんの、とある巨大おおきいわうえには六十前後ぜんごゆる、一人ひとり老人ろうじんが、たたずんで私達わたくしたちるのをってりました。
王子はまたゆめからさめたような気持きもちで、老人ろうじんかおながめました。それから、うしろの方の一番高い山のいただきしました。
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
老人ろうじんは彼を引寄ひきよせた。クリストフはそのひざ身体からだげかけ、そのむねに顔をかくした。彼はうれしくて真赤まっかになっていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
老人ろうじんは牛を牽いて帰って往った。勘作はそのままやしろへ帰って、堂の上へあがってみると酒やめし三宝さんぽうに盛ってあった。
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
背高せたかく顔の長いやさしそうな老人ろうじんだ。いまおくの、一枚開いた障子しょうじのこかげに、つくえの上にそろばんをおいて、帳面ちょうめんを見ながら、パチパチとたまをはじいてる。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
老人ろうじんいま斯んな事を云つてゐる。——
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その軍隊ぐんたいはきわめて静粛せいしゅくこえひとつたてません。やがて老人ろうじんまえとおるときに、青年せいねん黙礼もくれいをして、ばらのはなをかいだのでありました。
野ばら (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるとき老人ろうじんくちをすべらし、きん売買ばいばい自由じゆうになつたはなしをしたものだから、ハッキリとそれは金塊きんかいだろうということがわかつたわけです。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
その火の前の大きな竹のいすに、白いひげを生やした老人ろうじんがこしをかけていた。その頭にはすっぽり黒いずきんをかぶっていた。
老人ろうじんはいいわけをしてあやまりました。そして、仔牛こうしはあずかっておくことにして、下男げなん物置ものおきほうへつれていかせました。
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
老人ろうじんはもう行かなければならないようでした。私はほんとうに名残なごしく思い、まっすぐに立って合掌がっしょうして申しました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そうわれて、おどろいてりかえると、たき竜神りゅうじんさんが、いつもの老人ろうじん姿すがたで、にこにこしながら、私達わたくしたち背後うしろて、たたずんでられるのでした。
クリストフは、ひどく感動かんどうして、老人ろうじんの顔にやたらに接吻せっぷんした。老人はさらに心を動かされて、彼のあたまを抱きしめた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
「あの老人ろうじんたすけをもとめたくはない。なあに、いのちがけでおりてみせる。ぼくぬか、それとも、うちつかだ」
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
源四郎は、ただハッハッと返事へんじをしながら、なおせっせと掃除そうじをやってる。老人ろうじん表座敷おもてざしきのいろりばたに正座せいざして、たばこをくゆらしながら門のほうを見てる。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
老人ろうじんは半信半疑の顔をした。
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そして、老人ろうじんは、いよいよ山道やまみちにさしかかりますと、やまうえは、まだ、ふもとよりは、もっとあかるくて、ちょうがんでいました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしはほんとになさけなくなって、目にいっぱいなみだをうかべていた。するとヴィタリス老人ろうじんが軽くなみだの流れ出したほおをつついた。
老人ろうじんはだまってしげしげと二人のつかれたなりを見た。二人ともおおきな背嚢はいのうをしょって地図を首からかけて鉄槌かなづちっている。そしてまだまるでの子供こどもだ。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
するとまた、盗人ぬすびとのかしらはじぶんのなみだをこぼしていることにがつきました。それを老人ろうじん役人やくにん
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
不思議ふしぎにも、そのあいだ老人ろうじん姿すがたえたように、どこへいってしまったものかえなくなりました。」と、運転手うんてんしゅこたえました。
白い影 (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしたちはかわいた土の上にいて、水がもうせて来ないので、すっかり気が強くなり、だれも老人ろうじんに耳をかたむけようとする者がなかった。
強い老人ろうじんらしい声が剣舞けんばいはやしをさけぶのにびっくりして富沢とみざわは目をさました。台所の方でだれか三、四人の声ががやがやしているそのなかでいまの声がしたのだ。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
まつりにはわかもの子供こどもはたくさんるが、こんなに老人ろうじんまでがおおぜいはしないのだ。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
若者わかものたちは老人ろうじん言葉ことばおもし、またあのふね無理むりいたてたことなどをおもして、さすがにいい気持きもちはしませんでした。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その老人ろうじんはいつかすっかりわきで聞いていたとみえて、いきなりわたしのほうに指さしして、耳立つほどの外国なまりでバルブレンに話しかけた。
つえにすがったじいさん、あごがにつくくらいがまがって、ちょうど七面鳥しちめんちょうのようなかっこうのばあさん、自分じぶんではあるかれないので、息子むすこにおわれて老人ろうじんもあった。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
老人ろうじんはちょっといきを切りました。私は足もとの小さなこけを見ながら、このあやしい空からちて赤いほのおにつつまれ、かなしくえて行く人たちの姿すがたを、はっきりと思いうかべました。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
老人ろうじんに、くわでこづかれたとおもってかれは、がつき、がさめました。かんがえると、この老人ろうじんは、とっくのまえに、あのへいったひとでした。
きつねをおがんだ人たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
その地主じぬしというのは、うし椿つばきにつないだ利助りすけさんを、さんざんしかったあの老人ろうじんだったのです。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)