真夜中まよなか)” の例文
旧字:眞夜中
太郎たろうは、もしや、おじいさんが、この真夜中まよなか雪道ゆきみちまよって、あちらの広野ひろのをうろついていなさるのではなかろうかと心配しんぱいしました。
大きなかに (新字新仮名) / 小川未明(著)
これがわたしにはきみょうに思えたし、それとともに、売り買いをするのにこんな真夜中まよなかの時間をえらんだということもふしぎであった。
こうひとごといながら、そのばんはだいじそうにちゃがまをまくらもとかざって、ぐっすりました。すると真夜中まよなかすぎになって、どこかで
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そこに、この真夜中まよなか、水音がしていた。裸体になって水垢離みずごりをとっている者がある。白い肌がやがて寒烈な泉に身をきよめて上がってきた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「『偶然にも』などということはどうでもよろしい、ロリー氏。その真夜中まよなかに乗船した乗客は被告一人だけだったのですな?」
しかも彼是かれこれ真夜中まよなかになると、その早桶のおのづからごろりと転げるといふに至つては、——明治時代の本所はたとひ草原には乏しかつたにもせよ
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
やっと目がさめてみると、もう真夜中まよなかで、あらしはとうにやんで、お月さまが、窓からかんかん、ヨハンネスのねている所までさし込んでいました。
どうしてきみが真夜中まよなかにやってきて、ぼくをつれだしたのか、いまになって、やっとわかったよ。ぼくがあの古い都を
それからモーひと申上もうしあげてきたいのは、あの願掛がんがけ……つまり念入ねんいりの祈願きがんでございまして、これはたいていひと寝鎮ねしずまった真夜中まよなかのものとかぎってります。
ところがテンバはどうもまだ真夜中まよなかのようでございます、どこの様子を見ても急に夜が明けそうにありませんと愚痴ぐちこぼして居るです。それはもうそのはずです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
その真夜中まよなか、時計が丁度ちょうど十二時をうつと間もなく、今は営業をやめて住む人もなく化物屋敷ばけものやしきのようになってしまったキャバレー・エトワールの地下室の方角にギーイと
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
真夜中まよなかにごろ/\と雷が鳴った。雨戸のすきから雷が光った。而してざあと雨の音がした。起きて雨戸を一枚って見たら、最早もう月が出て、沼の水にほたるの様に星が浮いて居た。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
おう/\とこゑをかけつてわづか人種ひとだねきぬのをるばかり、八を八百ねんあめなかこもると九日目こゝのかめ真夜中まよなかから大風たいふう吹出ふきだしてそのかぜいきほひこゝがたうげといふところたちま泥海どろうみ
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
倉地がその夜はきっと愛子の所にいるに違いないと思った葉子は、病院に泊まるものとたかをくくっていた岡が突然真夜中まよなかに訪れて来たので倉地もさすがにあわてずにはいられまい。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
真夜中まよなかぎればかへられぬ。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
たして、真夜中まよなかのこと、ぶつかるかぜのために、いえがぐらぐらと地震じしんのようにれるのでした。かぜ東南とうなんから、きつけるのでした。
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ふねの出帆は、それから一時間半の後——真夜中まよなかに馬関を発して、ここからはもうまっすぐに、大坂の安治川あじがわへ向かうという予定なのである。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真夜中まよなかすぎになって、いつものとおり天子てんしさまがおこりをおみになる刻限こくげんになりました。
八幡太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
こんなくら真夜中まよなかに、死んだ人とふたりきりかと思いますと、たまらないほど恐ろしくなりました。ころがるように段々だんだんをかけおりて、大いそぎで牛小屋にとんで帰りました。
それにあのとき空模様そらもようあやしさ、赭黒あかぐろくもみねが、みぎからもひだりからも、もくもくとむらがりでて満天まんてんかさなり、四辺あたりはさながら真夜中まよなかのようなくらさにとざされたとおももなく
……真夜中まよなかに、色沢いろつやのわるい、ほゝせた詩人しじん一人ひとりばかりかゞやかしてじつる。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
船の上では、でも、たれも陽気にたのしくうかれて、真夜中まよなかすぎまでもすごしました。そのなかで、ひいさまは、こころでは、死ぬことをおもいながら、いっしょにわらっておどりました。
時々、あのかた真夜中まよなかにお起きになりましてね、御自分のお部屋の中を往ったり来たり、往ったり来たりしてお歩きになるのが、この上のあそこにいる私どもに聞えることがよくありますの。
すこし廻ったところだから、これから十時、十一時、十二時と、丁度ちょうど真夜中まよなかまでに、三人の話が一とまわりするンじゃ。川波大尉殿、まず君から、なにかソノ秘話ひわといったようなものを始め給え
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
灰色はいいろ着物きものあねは、べつに姿すがたえる必要ひつようもなかったので、あるほしひかりももれないくら真夜中まよなか下界げかいりてきたのです。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
よくにつりこまれて、草芝くさしばの上へあらたまり、おとといの真夜中まよなか呂宋兵衛るそんべえ手策てだてをつくして従僧じゅうそうふたりをあやめ、ひとりの主僧しゅそうをいけどってきて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真夜中まよなかごろのことでした。灰色はいいろネズミたちは、あちこちさがしまわったすえに、とうとう地下室に通じているあなを見つけたのです。それはかべのかなり上のほうについていました。
では、汽車きしやなか一人ひとりつくばつて、真夜中まよなかあめしたに、なべ饂飩うどんかたちなんだ? ……
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
風も無い、死んだようにさびしい真夜中まよなかだった。
夜泣き鉄骨 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ランプのはうすぐらく、うちなからしました。まだ、けなかったのです。しかし、真夜中まよなかぎていたことだけは、たしかでした。
大きなかに (新字新仮名) / 小川未明(著)
もう真夜中まよなかであろう、風はないほうだがかなり高波たかなみ。パッと、みよしにくだけるうしおの花にもうもうたるきりが立ってゆく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
背中せなかに、むつとして、いきれたやうな可厭いやこゑこれは、とると、すれちがつて、とほざま振向ふりむいたのは、真夜中まよなかあめ饂飩うどんつた、かみの一すぢならびの、くちびるたゞれたあの順礼じゆんれいである。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
真夜中まよなかごろ、子供こどもは、あらしのさけびでをさましたのです。小舎こやが、ぐらぐらとうごいて、ブリキのはがれるおとがしていました。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのもだえもいたずらに、三日とたち四日もすでに真夜中まよなかに近い頃——。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
町方まちかた里近さとちかかはは、真夜中まよなかるとながれおとむとふが反対あべこべぢやな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
息子むすこは、あたりが、すでに眠静ねしずまった真夜中まよなかごろ、一人ひとり広場ひろばにやってきますと、はたしてさびしいつきひかりが、くさをばらしていました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「だって」と、雲長はまた笑い、「これから楼桑村へゆけば、真夜中まよなかを過ぎてしまう。初めての家を訪問するのに、あまり礼を知らぬことに当ろう。なにも、明日でも明後日でもよいではないか。 ...
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かねば、わざへて、何処どこともらず、真夜中まよなかにアハヽアハヽわらひをる、吃驚びつくりするとふなえる、——此方こつち自棄腹やけばらどうめて、少々せう/\わきしたくすぐられても、こらへてじつとしてびくまもれば
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
なぜというに、ほしこえは、それはそれはかすかなものであったからであります。ちょうど真夜中まよなかの一から、二ごろにかけてでありました。
ある夜の星たちの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
真夜中まよなかだったが、主殿助は、すぐ本丸へ出かけて行った。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
真夜中まよなかごろでした。秀吉ひできちはふとをさますと、あにをおこさないようにそっととこからぬけだして、犬小屋いぬごやへいってみました。
ペスときょうだい (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あなたは、どこからおいでなされました。この真夜中まよなかいえちがいじゃありませんか。」と、母親ははおやおどろいたかおつきで、おとこをながめながらいいました。
ろうそくと貝がら (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるさむばんのこと、わたしは、もりなかで、ねむれずにをさましていました。すると、真夜中まよなかごろのこと、すさまじいおとがして、ほしが、もりなかちました。
珍しい酒もり (新字新仮名) / 小川未明(著)
じつはわたしたちもあのふねておかしなふねだとおもっていたのです。なんでも昨夜さくや真夜中まよなかごろ、どこからか石炭せきたんはこんできて、んだようなけはいでした。
カラカラ鳴る海 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さむい、くらい、ばんであります。かぜおとが、さびしくかれました。ちょうど、真夜中まよなかごろでありましょう。
少女がこなかったら (新字新仮名) / 小川未明(著)
家内かないひとたちが寝静ねしずまってしまった真夜中まよなかごろ、ひときて、チャン、チャンとはたっていました。
はまねこ (新字新仮名) / 小川未明(著)
真夜中まよなかごろでありました。トン、トン、と、だれかをたたくものがありました。年寄としよりのものですからみみさとく、そのおときつけて、だれだろうとおもいました。
赤いろうそくと人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひるから、よるとなく、つづいた避難ひなんするひとたちのれも、さすがに、真夜中まよなかになると、いずれも、どこかに宿やどるものとみえて、往来おうらいがちょっとのあいだはとだえるのでした。
子供と馬の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それからのちかれは、たびたび真夜中まよなかごろに、このくるまおととこなかいたことがありましたが、いつも、それは、人間にんげんとはおもわれないような、おそろしい姿すがたをしたものが
少女がこなかったら (新字新仮名) / 小川未明(著)
どうして牛女うしおんなが、どこからきたものかと、みんなはかたいました。人々ひとびとはそののちもたびたび真夜中まよなかに、牛女うしおんながさびしそうにまちなかあるいている姿すがたたのでありました。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)