とゝ)” の例文
れを種々さま/″\おもふてるととゝさんだとてわたしだとてまごなりなりのかほたいは當然あたりまへなれど、あんまりうるさく出入でいりをしてはとひかへられて
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「いえ、とゝさんが入用なことがあるから、乙松の迷子札を出せつて、手箱から私に出さして、財布へ入れて出かけたんです」
お前のとゝさんは馬だねえと言はれて、名のりや辛き子心にも顔あからめるしをらしさ、出入りの娼家の秘蔵息子寮住居に華族さまを気取りて
浅草風土記 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
ヂュリ とゝさまの命令おほせごとそむいた不孝ふかうつみくやむことをならうたところに。(膝まづきて)かうして平伏ひれふしてとゝさまのゆるしへいと、あのロレンスどのがはれました。
きゝ其所に居るのはお梅かと言へばお梅はオヽとゝさん何卒どうぞたすけて下されと聞くより上臺は馳寄はせよるに雲助は是を見て邪魔じやまだてなすなとぼう振上ふりあげうつて掛るを引外し脇差わきざしぬい切懸きりかゝるに彼の雲助は逃ながら女を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
仕方しかたがない矢張やつぱわたし丸木橋まるきばしをばわたらずはなるまい、とゝさんもふみかへしておちてお仕舞しまいなされ、祖父おぢいさんもおなことであつたといふ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「そんなものはございません。盲目めくらの家へ入る泥棒もあるまいから——と、とゝさんは締りもろくにさせなかつたのです」
申入まうしいれかぬうちに婚禮こんれいとは何事なにごとぢゃ? とゝさまにうてくだされ、わたしは嫁入よめいりはまだしませぬ。嫁入よめいりすれば如何どうあってもロミオへく、にくいとふあのロミオへ、パリスどのへくよりは。
あのねへさんはおにではないか、とゝさんを怠惰者なまけものにしたおにではないか、おまへ衣類べゞのなくなつたも、おまへうちのなくなつたもみなあのおにめがした仕事しごと
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とゝさんは——あの金を盜られては、生きてゐる張合もないから、助けると思つて殺してくれと、泣いたりあばれたり」
また不幸ふしあはせ同伴つれこのみ、是非ぜひともほか不幸ふしあはせ同伴つれだってねばならぬなら、「チッバルトがなしゃれた」というたつぎに、とゝさまとか、はゝさまとか、乃至ないし二人ふたりもろともとか、乳母うば何故なぜひをらぬ。
まへとゝさんはうまだねへとはれて、のりやらき子心こゞころにもかほあからめるしほらしさ、出入でいりの貸座敷いゑ祕藏息子ひざうむすこ寮住居りようずまひ華族くわぞくさまを氣取きどりて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「親分さん、とゝさんを助けて下さい。父さんは頸をくゝつて死ぬんだといつて、何うなだめても聞いてくれません」
それは成程なるほどやはらかひ衣類きものきて手車てぐるまりあるくとき立派りつぱらしくもえませうけれど、とゝさんやかゝさんにうしてあげやうとおもこと出來できず、いはゞ自分じぶん皮一重かはひとゑ
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
それからとゝさんはお酒ばかり呑んで、乙松が行方不知になつても一向心配をする樣子もなく——江戸の眞ん中を『迷子の迷子の乙松やい』とかねや太鼓で探して歩けるかい
いまびたからとて甲斐かひはなしと覺悟かくごして、太吉たきち太吉たきちそばんで、おまへとゝさんのそばかゝさんと何處どちらい、ふてろとはれて、おいらはおとつさんはきら
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とゝさんは百軒目の大願成就たいぐわんじやうじゆの日だから錢形の親分の鼻をあかせるんだといつて、つまらない手紙なんか出したので、私は一生懸命父さんにお願ひして、代つて行きました。
あれ三ちやんで有つたか、さても好い處でと伴なはれて行くに、酒やと芋やの奧深く、溝板がた/\と薄くらき裏に入れば、三之助は先へ驅けて、とゝさん、かゝさん
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「親分さん——とゝさんの出入りの御屋敷でお目見得以上といふと、三軒しかありません。一軒は金助町の園山若狹わかさ樣、一軒は御徒おかち町の吉田一學樣、あとの一軒は同朋町どうぼうちやうの篠塚三郎右衞門樣」
あれ三ちやんでつたか、さてもところでとともなはれてくに、さかやといもやの奧深おくふかく、溝板どぶいたがた/\とうすくらきうられば、三すけさきけて、とゝさん、かゝさん
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ね親分、お秀はかう言ふんだ——私がうして難儀して居るのも、とゝさんが片輪になつたのも、皆んな熊井熊五郎とかいふ大泥棒のせゐだから、私を可哀想だと思ふなら、熊井熊五郎を縛つておくれ。
旦那だんな御新造ごしんぞくおれいを申ていととゝさんがひましたと、子細しさいらねばよろこかほつらや、まづ/\つてくだされ、すこようもあればときて内外うちと見廻みまはせば
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さればおみせ旦那だんなとてもとゝさんかゝさんをも粗略そりやくにはあそばさず、常々つね/\大切たいせつがりてとこにおへなされし瀬戸物せともの大黒樣たいこくさまをば、れいつぞや坐敷ざしきなかにて羽根はねつくとてさわぎしとき
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ねえさんとばるれば三すけおとゝのやうに可愛かあゆく、此處こゝ此處こゝへとんでかほのぞいて、さぞとゝさんが病氣びやうきさびしくらかろ、お正月せうぐわつきにればあねなんつてげますぞえ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
わたしこと女郎じよらう女郎じよらう長吉ちようきちづらにはせるのもおまへ指圖さしづ女郎じよらうでもいではいか、ちりぽんまへさんが世話せわにはらぬ、わたしにはとゝさんもありかゝさんもあり、大黒屋だいこくや旦那だんなあねさんもある
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
定めて定めて二人揃つて甲斐性のある親をば持つて居るのであろ、私が息子の與太郎は今日の休みに御主人から暇が出て何處へ行つて何んな事して遊ばうとも定めし人が羨しかろ、とゝさんは呑ぬけ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まへとゝさんまごいもんさむとお國元くにもとあらはしたまふもみなこのをりかくげいなり、されば派手者はでしやおくさま此日このひれにして、新調しんちようの三まい今歳ことし流行りうかうらしめたまふ、ふゆなれど陽春ようしゆんぐわつのおもかげ
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
或時あるとききしにおたかおなじくなみだになりてわたしこゝろるものは和女そなたばかりよしさまのことはおもりても御兩親ごりやうしん行末ゆくすゑ心配しんぱいなり明日あすえんきなばかく自由じいうかなふまじ其時そのときたのむは和女そなたぞかしとゝさまのおこゝろよくりて松澤まつざはさまとのなかむかしとほりにしてしゝひとつがおたのみぞとて兩手りやうて
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
とゝさま二の御懇意ごこんいとてはづかしき手前てまへ薄茶うすちやぷくまゐらせそめしが中々なか/\物思ものおもひにて帛紗ふくささばきのしづこゝろなくりぬるなりさてもお姿すがたものがたき御氣象ごきしようとやいま若者わかものめづらしとて父樣とゝさまのおあそばすごとわがことならねどおもあかみて其坐そのざにも得堪えたへねどしたはしさのかずまさりぬりながら和女そなたにすらふははじめてはぬこゝろ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)