)” の例文
さてはや、念佛ねんぶつ題目だいもく大聲おほごゑ鯨波ときこゑげてうなつてたが、やがてそれくやうによわつてしまふ。取亂とりみださぬもの一人ひとりもない。
旅僧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
かたぽうでもいけなけりゃ、せめて半分はんぶんだけでもげてやったら、とおりがかりの人達ひとたちが、どんなによろこぶかれたもんじゃねえんで。……
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
鰯をそのままよく水を切ってバターでジリジリとげても結構です。摺身すりみにして一旦いったん油で揚げたものをまた美味おいしく煮るのもあります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
わたくしと、日出雄少年ひでをせうねんと、ほか一群いちぐん水兵すいへいとは、りくとゞまつて、その試運轉しうんてん光景くわうけいながめつゝ、花火はなびげ、はたり、大喝采だいかつさいをやるつもりだ。
と、徳利をつかんだまま、よろよろと、立ちあがると、ガタピシとぶすまをあけ立てして、庫裡くりの戸棚の中の、ぶたね上げる。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
私の少年時代の玩具といえば、春は紙鳶たこ、これにも菅糸すがいとげる奴凧やっこたこがありましたが、今はすたれました。それから獅子、それから黄螺ばい
我楽多玩具 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「ああ、おまえがさびしがっているから、じきにげてくるとも……。」と、二人ふたりは、わらいながら、だんだんととおざかったのです。
幽霊船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
手毬てまりを高くげるたびに、文句にも力を入れて時間を合わせるので、それが女の子たちにはこの上もなくおもしろかったのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
聴衆は一度にどっとときげた。高柳君は肺病にもかかわらずもっともおおいなる鬨を揚げた。生れてから始めてこんな痛快な感じを得た。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
へえ天麩羅てんぷらかい。長「わからんのう、ながげて短くしたのを揚身あげみといふ。弥「矢張やつぱりあなごなぞは長いのを二つに切りますよ。 ...
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
いまあらためてうかゞひにやうとしてましたといふ、れはなんことだ、貴君あなたのおをさとげられて、馬鹿ばか/\おりきおこるぞと大景氣おほけいき
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
子供こども片足かたあしづゝげてあそぶことを、東京とうきやうでは『ちん/\まご/\』とひませう。土地とちによつては『足拳あしけん』とふところもるさうです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
よろしくまうされたりと、きみの前に出すを見給ひて、一三八片羽かたはにもあらぬはと興じ給ひて、又一三九さかづきげてめぐらし給ふ。
先日、私が久しぶりで阿佐ヶ谷の黄村先生のお宅へお伺いしたら、先生は四人の文科大学生を相手に、気焔きえんげておられた。
花吹雪 (新字新仮名) / 太宰治(著)
かういふ行懸ゆきがゝりり、興世王や玄明のやうなかういふ手下、とう/\火事は大きな風にあふられて大きな燃えくさにはなはだしいほのほげるに至つた。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
淀屋橋筋の春琴の家の隣近所に家居かきょする者はうららかな春の日に盲目の女師匠が物干台に立ち出でて雲雀を空にげているのを
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
さきおとといの雨の闇夜、大岡家を飛び出して、二人とも、濡れ鼠の姿で、懐中ふところのあてもなく、ここへがッてしまってからの、続きであった。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あのときのオリムピック応援歌おうえんかげよ日の丸、緑の風に、ひびけ君が代、黒潮越えて)その繰返しリフレインで、(光りだ、はえだ)と歌うべきところを、みんな
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
あなたは、凡ゆる人生があなたの青春を此處まで運んで來たやうな靜かなしほに乘つて過ぎてゆくものと思ふでせうね。
私は、蓮根れんこんの穴の中に辛子からしをうんとめてげた天麩羅てんぷらを一つ買った。そうして私は、母とその島を見ながら、一つの天麩羅を分けあって食べた。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
(成程かう書いて見ると、不世出の天才をげるほど手数のかからぬ仕事はない。殊に何びとも異論を唱へぬ古典的天才を褒め揚げるのは!)
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
薄く、低く、土煙をげて、片側並木の、田圃道から、村の中へ、三十人余りの、乗馬うまと、徒歩かちの人々が、入って来た。
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
一つの不用ふようぶん運河うんがから鬼怒川きぬがはかよ高瀬船たかせぶねたのんで自分じぶん村落むら河岸かしげてもらふことにして、かれ煙草たばこの一ぷくをもわすれないやうにつけた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
そのうち、突然にお祖父様の右手ががったと思うと、煙管が父のモジャモジャした頭の中央に打突ぶつかってケシ飛んだ。
父杉山茂丸を語る (新字新仮名) / 夢野久作(著)
芭蕉は自ら、古池以後いづれの句も皆我句として人に伝ふべしとさへ誇れるに、後人こうじんが特に古池の一句をぐるを聞かば、芭蕉は必ず不満なるべし。
古池の句の弁 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
皿の物をかちかち突つきながらたてのフライのやうな新しい書物の講釈から、時事問題などが話題にのぼされるのだ。
これがほかの場合だったら、こんな災難さいなんに会えば、どんなにくやしかったかしれない。だが、わたしはもうどらきもりんごのものも思わなかった。
それにさいはひに追手の夕風が吹いた。船頭は帆をげて、かぢをギイと鳴らして、暢気のんきに煙草をふかした。誰の心も船のやうに早く東京に向つてせて居た。
(新字旧仮名) / 田山花袋(著)
だから机博士は、かえって危険を抜けることができ、うれしさに胸をおどらせながら、下り口のところにはまっているをひきあけることができた。
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
中には以前磯野から受け取った手紙を封じ込んだ背負しょげや、死んだ叔母から伝わった歌麿うたまろの絵本などがあった。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
またたこの大きなのが流行り、十三枚十五枚などがある。げるのは浅草とか、夜鷹よたかの出た大根河岸だいこがしなどでした。
江戸か東京か (新字新仮名) / 淡島寒月(著)
春廼舎からは盛んに文学をあおり立てられ、弟分おととぶんに等しい矢崎ですらが忽ち文名をぐるを見ては食指動くの感に堪えないで、周囲の仕官の希望を無視して
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
一切の眞理の源なる泉よりいでし聖なる流れかくその波をげ、かくして二の願ひをしづめき 一一五—一一七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
斬った方は肩をいからせて、三べん刀を高くふりまわし、紫色むらさきいろはげしい火花をげて、楽屋へはいって行きました。
「あら、旦那、何ですねエ」と、お熊は手をげて、たゝくまねしつ「れでもうぐひす鳴かせた春もあつたんですよ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
地に落ちた矢が軽塵けいじんをもげなかったのは、両人の技がいずれもしんに入っていたからであろう。さて、飛衛の矢がきた時、紀昌の方はなお一矢を余していた。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「臭いはする。あの燐の一塊ひとかたまりを空気中に放出しておけば、ふすふすと白煙をげて自燃作用を起す、そのおりに発散するむせるような臭い、そんな臭いがする」
とはらぬのでかいげるのに邪魔じやまだから、其所そこ退いてれなんて威張ゐばらして、あと地主ぢぬしわかつて、有合ありあはせの駄菓子だぐわしして、機嫌きげんつたことなどである。
一時の害の為めに敵となるものは、又た一時の利の為めに味方となるを易しとす。西風には東に飛び、東風には西にがるは紙鳶たこなり、人の心も大方は斯くの如し。
哀詞序 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ケメトスはその涙をいてやって、それから、きっと名前をげると誓って、勇んで都へのぼりました。
彗星の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
床板がぶたになっていて、その下にどうやら階段がついているらしい。地底の穴蔵への入口である。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
雲雀ひばりの鋭い声が二つ三つ続けざまに、霞を縦につらぬいて昇天する。やがて彼が優しく問ひかけた。
ジェイン・グレイ遺文 (新字旧仮名) / 神西清(著)
上等のバタを使うので、出来上できあがりがねっとりしていていささ無気味ぶきみに感ぜられる。蛙はむしろラードのようなものでからりとげた方があっさりしていてよくはないだろうか。
異国食餌抄 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
釣れても釣れなくても、兄弟や近所の友だちと遊ぶよりはおもしろかった。潮が満ちて潟が隠れると衣服を胸までまくしげて、陸へ上るので、衣服はいつも潮臭かった。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
むしろ世に入り込んで独立の実をぐべきこそ吾人も務めであれ。味わうべきは左の歌である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
彼は大きな欠伸あくびをして、トラック小屋の上に近頃塗りかえてげた新しい看板を振り仰いだ。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
路地の入り口で牛蒡ごぼう蓮根れんこんいも、三ツ葉、蒟蒻こんにゃく紅生姜べにしょうがするめ、鰯など一銭天婦羅てんぷらげて商っている種吉たねきちは借金取の姿が見えると、下向いてにわかに饂飩粉うどんこをこねる真似まねした。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
げ女と生れし甲斐かひなさは百年もゝとせの苦樂他人に在りと常から教を受まつれば本夫をつともた生涯しやうがい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
口鬚くちひげの巡査は剣と靴音とあわてた叫声をげながら、例の風呂敷包を肩にした、どう見ても年齢にしては発育不良のずんぐりの小僧とともに、空席を捜し迷うて駈け歩いていた。
贋物 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
チャリン! まくをはねて花道から、しばらく……しばらくと現われる、伊達姿女暫だてすがたおんなしばらく
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)