おお)” の例文
あるまちはずれのさびしいてらに、和尚おしょうさまと一ぴきのおおきな赤犬あかいぬとがんでいました。そのほかには、だれもいなかったのであります。
犬と人と花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、母親ははおやおしえました。するとみんな一生懸命いっしょうけんめい、グワッ、グワッと真似まねをして、それから、あたりのあおおおきな見廻まわすのでした。
じくさいさんの いえは おおきな おやしきで、やしきの まえに おがわが ながれ、そのかわに はしが かかっていました。
一休さん (新字新仮名) / 五十公野清一(著)
そうしたおおどこの旦那衆や親方たちの御蔭で東京に帰って来て、新しい、又は昔の商売をやっている江戸ッ子は随分居る筈である。
で、わたくしかたしんじています。もし来世らいせいいとしたならば、そのときおおいなる人間にんげん智慧ちえなるものが、早晩そうばんこれを発明はつめいしましょう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
男「おおきに待遠まちどおだったろうな、もっと早く出ようと心得たが、何分なにぶん出入でいり多人数たにんずで、奉公人の手前もあって出る事は出来なかった」
大体だいたいおいもうしますと、天狗てんぐ正体しょうたい人間にんげんよりはすこおおきく、そして人間にんげんよりはむしけものり、普通ふつう全身ぜんしんだらけでございます。
親方はなかなか容易よういなことでまごつくような、まのぬけた男ではなかった。ていねいにしかもれいおおふうな様子で、医者を引き止めた。
れからつかまえられたとか斬られたとか、あるいは奥平屋敷の溝の中に人が斬倒きりたおされて、ソレをまた上からやりついたと云うようなおお騒動。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
大和川やまとがわ淀川よどがわの二すいをひいてほりの長さを合計ごうけいすると三八町とかいうのだから、もって、いかにそのおおげさな築城ちくじょうかがわかるであろう。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼はもがくようにして、胸のポケットを探ると、一通の厚ぼったい洋封筒を取出して、やっとの思いで、おおデスクの端にのせた。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「うん。あるだろう。けれどもあぶないじゃないか。ばけものはおおきいんだよ。ぼくたちなんか、はなでふきとばされちまうよ。」
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そういう袖子そでことうさんはやもめで、中年ちゅうねんいにわかれたひとにあるように、おとこ一つでどうにかこうにか袖子そでこたちをおおきくしてきた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのうちにけてしまったので、こんなにおおぜいあつまっているところをうっかりねこつけられては、それこそたいへんだといって
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかし、例のおおコレラが流行した時には、江戸っ子もこれには辟易へきえきしたと見えて、小春とも梅川とも名付け親になる者がなかったらしい。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
おお釣鐘と白拍子と、飛ぶ、落つる、入違いれちがいに、一矢ひとやすみやかに抜取りまして、虚空こくうを一飛びに飛返ってござる。が、ここは風が吹きぬけます。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
外国がいこく戦争せんそうをひきおこすようなことになり、よわくてちいさい日本にっぽんは、つよくておおきい外国がいこくに、うちまかされてしまうにちがいありません。
若旦那わかだんな鯱鉾立しゃっちょこだちしてよろこはなしだと、見世みせであんなに、おおきなせりふでいったじゃないか。あたしゃ口惜くやしいけれどいてるんだよ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
最後さいご吉彦よしひこさんがじぶんで、おおきくおおきく撞木しゅもくって、がオオんん、とついた。わんわんわん、となが余韻よいんがつづいた。すると吉彦よしひこさんが
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
雨はしょぼしょぼ、もみじ番所をすたすた通れば、「八、きのうの女にもてたか」「おおもてよ」。わるい道ではないかいな。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
……なにしろ、馬の尻尾てえやつは如露じょうろで水を撒いて芽を出させるというわけにはゆかない。江戸中のお屋敷じゃおお迷惑。
顎十郎捕物帳:03 都鳥 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
ただ藩主が侍従とか少将とかになった時には、朝廷から口宣を賜わるのでおおらに献上物等もした。その他臨時に献上物をすることもあった。
鳴雪自叙伝 (新字新仮名) / 内藤鳴雪(著)
これが素人しろうとの家で不便利なので外にそういう処がなければ大きな火鉢へおおじょたんでもかけてその中へ置く位なものです。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この稀有けうおおげさな広告がまた小さな仙台の市中をどよめき渡らした。しかし木村の熱心も口弁も葉子の名を広告の中に入れる事はできなかった。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そして、はちしたは、みかんばこおおきさの空洞くうどうで、つまり、はちしたなにかをかくしておく場所ばしょができているのであつた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
きょうおおいに起こって来たというふうである。小畑の胸にもかれの胸にも中学校時代のことがむらむらと思い出された。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
彼が呉子くれこさんを迎えてからは、そうおおぴらには、せびることもできなかったが、彼の代りに出版の代作だいさくをしたり、講演の筋を書いたりして、その都度つど
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「ねえ先生、先生の留守におお先生が見えたけれどネ、私の考えじゃいくらか借りにきたんじゃねえかと思うんだ」
わが寄席青春録 (新字新仮名) / 正岡容(著)
おおいなる病苦は大いなる療治を要する。わたしはクラリモンドが埋められている場所を知っている。わたしたちは彼女の亡骸なきがらを発掘して見る必要がある。
「あいよ。」とおかあさんがって、はこなかから美麗きれい林檎りんごして、おんなにやりました。そのはこにはおおきな、おもふた頑固がんこてつじょうが、ついていました。
料理に使用される材料にしても、時代的な変遷へんせんおおいにあるであろう。今日の料理の堕落だらくは商業主義に独占されたからだと考えられる。家庭の料理は滅びる。
味覚馬鹿 (新字新仮名) / 北大路魯山人(著)
我等われら今度こんど下向候処げこうそろところ其方そのほうたい不束之筋有之ふつつかのすじこれあり馬附之荷物積所うまつけのにもつつみしょ出来申候しゅったいもうしそろつき逸々はやばや談志之旨だんしのむね尤之次第もっとものしだいおおきに及迷惑申候めいわくをおよぼしもうしそろよっ御本陣衆ごほんじんしゅうもって詫入わびいり酒代さかて差出申候さしだしもうしそろ仍而件如よってくだんのごとし
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お糸さんを一足先へかえし、私一人あとから漫然ぶらりと下宿へ帰ったのは、彼此かれこれ十二時近くであったろう。もう雨戸を引寄せて、入口のおおランプも消してあった。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ではみんなよ、はやおおきくなつて、きみたちも勇敢ゆうかんなプロレタリアの鬪士とうしとなつて、きみたちやきみたちのおとうさんおかあさんをくるしめてゐるやつらをたゝきのめしてくれ!
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
そのうちに、気の早い男が、大きなおおおのをかかえて来て、がちゃん/\と馬車をこわしはじめました。
やどなし犬 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
それを考えて行くためにも幸いにまだ僅かな資料がある。かつて鹿島の宣教が、今よりもずっと盛んだった時期があるにしても、人間のあしにはおおよその限りがある。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そういう人は道楽に学問するのがおおいに必要であろうと思う。否、華族さんでなくても、一般に道楽に学問をしたら宜い。即ち学問の研究を好むようにならねばいかぬ。
教育の目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
雨の中に立っておお元気なり。早速足ごしらいをして飛び立つ。案内者を一名雇う。佐十さじゅうさんという頑強日光一の案内老爺おやじ負梯子おいばしごに一行の荷物をのせて雨中を出かける。
見かけによらず如才じょさいない老爺は紅葉を娘の前へだし、これごろうじろ、この紅葉の美しさ、お客さまがぜひお嬢さんへのおみやげにって、おお首おって折ったのぞなどいう。
河口湖 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
小娘こむすめ何時いつかもうわたくしまへせきかへつて、不相變あひかはらずひびだらけのほほ萌黄色もえぎいろ毛絲けいと襟卷えりまきうづめながら、おおきな風呂敷包ふろしきづつみをかかへたに、しつかりと三とう切符ぎつぷにぎつてゐる。……
蜜柑 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「それぁね、」と乗り出して、「お前みたいな子供に言ったって仕様がないけど、アリもアリもおおアリさ!」どうも叔母さんの言葉は、ほんものの下司げすなんだから閉口する。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
おおあり、大あり。……ほうら、猫の方でも、よう知っちょる。猫を好かん奴には寄りつかんが、あんたが来ると、そげな風に、ゾロゾロ、寄って行く。猫は賢いもんばい」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
愚楽老人をじろりと見やって、埃だらけの長半纏ながばんてんの裾をはね、ガッシと組むおおあぐら——。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
四五日前に狼村おおかみむらの小作人が不況を告げに来た。彼はわたしのおおアニキと話をしていた。
狂人日記 (新字新仮名) / 魯迅(著)
自分はその一二ひとふたつを受けながら、シナの水兵は今時分定めて旅順りょじゅん威海衛いかいえいおおへこみにへこんでいるだろう、一つ彼奴きゃつらの万歳を祝してやろうではないかと言うとそれはおもしろいと
遺言 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
マーゲート駅で下車した人々は停車場ステーションを立去って、おお風が吹過ふきすぎたあとのような駅前の広場に、泉原は唯ひとり残された。彼は何処へゆくという的途あてどもなく、海岸通りへ歩を運んだ。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
で、新富座本建築のときは、四十二軒あった附属茶屋を、おお茶屋の十六軒だけ残して、あとはちゅう茶屋も廃した。間口まぐちの広い、建築も立派な茶屋だけ残したのだから、華やかなはずだった。
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
色々の「我」が寄って形成けいせいして居る彼家は、云わばおおきな腫物はれものである。彼は眼の前にくさうみのだら/\流れ出る大きな腫物を見た。然し彼は刀を下す力が無い。彼は久しく機会を待った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
魚のあたりかごみの中りかわからぬ中り、——大魚たいぎょおおゴミのような中りがあり、大ゴミに大魚のような中りがあるもので、そういう中りが見えますと同時に、二段引どころではない、糸はピンと張り
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
それでその遺物のおおいなることは実に著しいものであります。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)