せん)” の例文
旧字:
孝二こうじは、二十せんそうとってきたのを、小泉こいずみ二人ふたりぶんにしてしました。これで、小泉こいずみもこの遊戯ゆうぎくわわることができたのです。
生きぬく力 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「だがさし当たりわたしたちは一せんの金も、一かけのパンもなしに、パリのどぶの中にてられている……おまえおなかがすいたろう」
その布団の持ち主の住んでいた家の家賃やちんは、そのころただの六十せんでした。それだけでもどんなにみすぼらしい家かはおわかりでしょう。
神様の布団 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
そしてももいろの封筒ふうとうへ入れて、岩手ぐん西根山にしねやま、山男殿どのと上書きをして、三せんの切手をはって、スポンと郵便函ゆうびんばこみました。
紫紺染について (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
保吉はばらせんを探りながら、「たけくらべ」、乙鳥口つばくろぐちの風呂敷包み、燕子花かきつばた、両国、鏑木清方かぶらぎきよかた、——その外いろいろのものを思ひ出した。
あばばばば (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
見るも法楽ほうらく聞くも法楽、投げせん蒔銭まきせんいりませぬ。お気に入ったらお手拍子、それで結構でございます。とはいえ食わなければなりません。
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
今日こんにち不図ふと鉄道馬車てつだうばしやの窓より浅草あさくさなる松田まつだの絵看板かんばん瞥見致候べつけんいたしそろ。ドーダ五十せんでこんなに腹が張つた云々うん/\野性やせい遺憾ゐかんなく暴露ばうろせられたる事にそろ
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
すると、ここにせんという大家たいけがありまして、その主人は銭翁と呼ばれ、この郡内では有名な資産家として知られていました。
母に頼んで五せん程の支出をして貰ひまして菊の花の二三本、春なら芍薬しやくやくの一つぐらゐを持つて行くやうな人ばかりでしたが
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
この上、せんなくして能く不憂、能く便ち酔はれては、俺達も早々に住み慣れたる故郷ふるさとを逐電しなければならなくなるであらうと私は、泣かされた。
酒盗人 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
そのつりせん巾着きんちゃくにいれて、そとへ飛びだそうとすると出合であいがしらに、カアーンというかね不意ふいに鳴ったので
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何にしようか」と見廻みまわすと、いろいろなものの名前を書いた白い紙片が、たくさんぶら下っていた。その中に「メロン五十せん」と書いたのがあった。
寺田先生と銀座 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
およめさんは、それから石段をのぼって、おやしろにおさいせんをあげて、ていねいに神さまにおじぎをして、またいそいで、石段をおりて帰って行きました。
たにしの出世 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
友人知己は見るに忍びず、わざわざ実家に舅姑きゅうこいて遺族の手当てを請求しけるに、彼らは少しの同情もなく、ようやく若干の小遣いせんを送らんと約しぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
おや? あれは、誰だったかな? 田辺さんだ、間違い無し。四十歳、女もしかし、四十になると、……いつもお小遣こづかせんを持っているから、たのもしい。
渡り鳥 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「ここに井戸いどってたびひとにのんでもらおうとおもいます。こころざしのあるかたは一せんでも五りんでも喜捨きしゃしてください。」
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
主人しゅじん銭箱ぜにばこからつりせんをつまみだそうとすると、さっと銭箱の中のひとつかみの金貨が空中へいあがった。
それで糊口ここうのための奔走はもちろんの事、往来に落ちたばらせんさがして歩くような長閑のどかな気分で、電車に乗って、漫然と人事上の探検を試みる勇気もなくなって
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
よりわけがすむと、今度こんどは、一山ひとやま売りのもりわけです。いたみはじめたくだものの箱の中から、一山十せんだの二十銭だのというぐあいに、西洋皿せいようざらへもりわけるのです。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
ねだんは二円八十せんで、かっこうもいいし、らしゃも上等です。おとうさんが大切にしなければいけないと仰有おっしゃいました。僕もその帽子が好きだから大切にしています。
僕の帽子のお話 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
そこで、今迄いまゝで毎月まいげつ三銭さんせんかの会費くわいひであつたのが、にはかに十せん引上ひきあげて、四六ばん三十二ページばかり雑誌ざつしこしらへる計画けいくわくで、なほひろく社員を募集ぼしうしたところ、やゝめいばかりたのでした
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
男は無理やりに五拾せん銀貨二、三枚をお千代に握らせ、振返りながら向側の横町よこちょうへ曲った。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
かれまちまわるに病院服びょういんふくのまま、みょう頭巾ずきんかぶり、上靴うわぐつ穿いてるときもあり、あるい跣足はだしでズボンした穿かずにあるいているときもある。そうしてひとかどや、店前みせさきっては一せんずつをう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
はいもと彼等あすこで六だうせんを取つて、どうやらうやらくらしてりましたが、今度こんど此処こゝ停車場ステンシヨン出来できるについて、茶屋ちやゝを出したらからうといふ人のすゝめにまかせて、茶屋ちやゝを始めましたが
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「うちの店ぢや、二十せん以上のお買物のお客でなくちや、お茶を出さないのよ」
蔦の門 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
かれはちょっと考えるようなふうをしたが、その中から二十銭銀貨を一つ出して、ラムネ二本の代七銭と、梨子なし二個の代三銭とのせんを婆さんからもらって、白銅を一つ茶代に置いた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
その不景気の中で東北や北海道の飢饉ききんを知り、ひとり一せんずつの寄付金きふきんを学校へもっていった。そうした中で満州事変まんしゅうじへん上海シャンハイ事変はつづいておこり、幾人いくにんかの兵隊が岬からもおくり出された。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
李生は数ヶ月前にいなくなった豪家のせんという家のむすめのことを思いだした。その女はある夜不意にいなくなったので、銭家では大騒ぎして人をやって探さしたが、どうしても見つからなかった。
申陽洞記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
三十せん料理りょうり 秋 第二百四十九 三十銭料理
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
一間の値い二万せんとやら申します。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
せん銅貨どうくわ子供こども確乎しっかりにぎります
鶴彬全川柳 (新字旧仮名) / 鶴彬(著)
「どなた! おせんちゃん?」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
一株ひとがぶ五十せん
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「あ、もしもし、二せんでも、三せんでも、げてやったら、どうだ?」とかぜが、あといかけていって、紳士しんしみみにささやきました。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)
あの一冊十せんかの本は、たしか全部で百冊あったはずである。もう何回となく読みかえしたそのうちの一冊の末尾には、百冊の題目がずらりと並んでいた。
『西遊記』の夢 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
「それではだいって来ました。そっちは三十三せんですね。おり下さい。それから私の分はいくらですか。」
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そうして、相変らず賭博者の群れからテラせんのようなものを受取っていたので、彼の懐中はいよいよ膨らんだ。
「まアねえ。どうせ兄貴があてにしているなあ、日ごろよく小費こづかせんいている組下の目明しだろうから」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海蔵かいぞうさ、どうしたじゃ。一せんもつかわんで、ごっそりためておいて、おおきなくらでもたてるつもりかや。」
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
この十円札を保存するためには、——保吉は薄暗い二等客車の隅に発車の笛を待ちながら、今朝けさよりも一層いっそう痛切に六十何銭かのばらせんまじった一枚の十円札を考えつづけた。
十円札 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
食料品しょくりょうひんをうっているこじんまりした店では、きゃくにつりせんをわたすために主人しゅじん銭箱ぜにばこのふたをあけた。そのとたん、主人しゅじんはすぐ身近みぢかに人のけはいがせまるような感じをうけた。
十六ページでしたか、定価ていかが三せん、小説の挿絵さしゑを二めん入れました、これよりさき四六ばん時代じだいいま一人ひとり画家ぐわかくはゝりました、横浜よこはま商館番頭しやうくわんばんとうゆめのやうつゝとふ名、実名じつめいわすれましたが
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
門番もんばんところで花を買つて十せん散財さんざいして、おはか掃除さうぢして下さい、塩原多助しほばらたすけはか此方こちらでございませうか、わたし塩原しほばら縁類えんるゐの者でございますが、始めてまゐつたのではかは知りませぬから
塩原多助旅日記 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
とすると、この年になっても、どこぞの親分に使われているその日ぐらしの出前持に過ぎないのであろう。惣菜付の丼一つのあたいは楽屋の様子から考えて二十せんより以上のはずはない。
勲章 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
またモイセイカは同室どうしつものにもいたって親切しんせつで、みずってり、ときには布団ふとんけてりして、まちから一せんずつもらってるとか、めいめいあたらしい帽子ぼうしってるとかとう。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
二十せん弁当べんとう 秋 第二百三十九 二十銭弁当
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
一間の値ひ二万せんとやら申します。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
みすぼらしいふうをして、かさもっていなかったが、いてみると、一せん不足ふそくのためというのだった。もっとも、あのころだけれど。
かたい大きな手 (新字新仮名) / 小川未明(著)
だれがてめえのような女乞食おんなこじきのビタせんを、ったりいたりするバカがあるものか、ものをぬすまれましたという人体にんていは、もう少しなりのきれいな人柄ひとがらのいうこッた
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうか。一せん。それではこれでいいだろうな」大臣だいじん紅宝玉ルビーくびかざりをはずしました。
四又の百合 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)