しうと)” の例文
正俊のしうと井上新左衞門は土井利勝に懇意にしてゐるので、それを利勝に告げた。利勝は正俊に命じて匿名の書を持つて來た男を搜索させた。
栗山大膳 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
「さういつちやおまへあねのことわるくばかりいふやうだが、しうと鬼怒川きぬがはちてんだなんて大騷おほさわぎしたことがつたつけねえ」
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「嫁の道具はまだ返してゐない筈だ。その荷物の中から、わざ/\自分の短刀を持出して、しうとを殺すのはどういふ量見だい」
その恰好を一目でもしうとの山県公に見せたら、顔をしかめて、椿山荘と一緒に養子の株をも売りに出したかも知れなかつた程だ。
掛奉つり候儀恐れ入り奉つり候全く九助さいしうと藤八とも不埓ふらち至極しごく成者共なりと申ければ大岡殿成程其方が申如く一旦裁許さいきよすみたるをやぶらんと爲事おそれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
されば奧方おくがた町子まちこおのづから寵愛てうあいひらつて、あなが良人おつとあなどるとなけれども、しうとしうとめおはしましてよろ窮屈きうくつかたくるしきよめ御寮ごりようことなり
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
遺書を読み上げたのは民子のしうとの土井であつたが、遺児達はそれをかこんで首を垂れ首をさしのばし、聴いてゐた。
鳥羽家の子供 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
其日はお妻の夫もしうとも留守で、家に居るのは唯しうとめばかり。五人も子供が有ると聞いたが、年嵩としかさなのが見えないは、大方遊びにでも行つたものであらう。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
がいむらさきしやべて四十里しじふり歩障ほしやうつくれば、そうにしきへてこれ五十里ごじふりる。武帝ぶていしうとちからへて、まけるなとて、珊瑚樹さんごじゆたか二尺にしやくなるをたまふ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
よつて母ととも遠江とほたふみ国井伊谷に至り、しうとの菅沼治郎右衛門忠久の家に寓す。後徳川家康の今川義元のもとに在るや、其の側に侍す。ついで義元の子氏真に仕ふ。
聞書抄:第二盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
きのふや今日けふ嫁に行つたのでは無し、もう足掛け四年にもなり、お春といふ子までもある。しうと小姑こじうとの面倒があるでは無し、主人の小幡は正直で物柔かな人物。
半七捕物帳:01 お文の魂 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
二里あまりへだてたる村より十九歳のよめをむかへしに、容姿すがたにくからず生質うまれつき柔従やはらかにて、糸織いとはたわざにも怜利かしこければしうとしうとめ可愛かあいがり、夫婦ふうふの中もむつまし家内かない可祝めでたく春をむかへ
かうして、義雄は、親しみの深くなつてた札幌から、しうとの好かない婿養子の如く、追ひ出されたのである。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
パリス しうとカピューレットどのが其樣そのやうにしたいと被言おしゃる。わしとてもそれをおそうしたいとはおもひませぬ。
「有り難う。有り難う」若夫人はしうとからの手紙の封を私の前で切りながら、矢つぎ早やに質問した。
南京六月祭 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
さういへば、しうとの紋七は、夫ではないけれども、彼女に対して、まつたく、注文が多かつた。
山形屋の青春 (新字旧仮名) / 岸田国士(著)
や、松島、こゝに居る山木は君のしうとさうぢやナ、——先頃誰やらが来てしきりに其のうはさし居つた
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
なるほど、姑は居ない、しうとは年齡からいつても八十歳ならば、もはや餘命いくばくもない筈である。とつがせる娘よりは、その母人の方がすつかり乘氣になつてしまつたのだつた。
「郭子儀」異変 (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
それから、一時間の後、五位は利仁やしうと有仁ありひとと共に、朝飯の膳に向つた。前にあるのは、しろがねひさげの一斗ばかりはいるのに、なみなみと海の如くたたへた、恐るべき芋粥である。
芋粥 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
嫁の口から言ひにくいこともあらうかと、しうとしうとめも、夫の勘三郎までも、席を遠慮させて、さて平次は膝をすゝめました。
何もしうとしうとめのやかましいが有るでは無し、わしが欲しくて我が貰ふに身分も何も言ふ事はない、稽古は引取つてからでも充分させられるからその心配もらぬ事
十三夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
引取嫁にいたしくれ候大恩は勿々なか/\私し一生の中に報じられ間敷まじくと存じ心の及ぶだけは孝行をつくし度心得に候處うんしくしうと暫時しばしの中に失ひ其上借財多く出來やむことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
きのうや今日きょう嫁に行ったのでは無し、もう足掛け四年にもなり、お春という子までもある。しうと小姑こじうとの面倒があるでは無し、主人の小幡は正直で物柔らかな人物。
半七捕物帳:01 お文の魂 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
いやがられるつておまへそんなものぢやないよ、しうとだもの、婿むこだのむすめだのといふものは餘計よけいをつけなくちやらないものなんだね」内儀かみさんはたしなめるやうにいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
しうとかたはらにありて、そはよき事也せがれも行べし、実母ばゝどのへもまごを見せてよろこばせ夫婦ふうふして自慢じまんせよといふ。
それから二三日して、西山氏が栖鳳氏を訪ねると、しうとわざとしかつべらしい口ぶりをして言つた。
苦々し気にそれを言つたのはしうとの土井であつて、幾が中村屋と云ふ料理屋の女主人で、今はその母と二人暮の身であることは民子も知つてゐたが、真逆まさかあの父が、と云ふ気がした。
鳥羽家の子供 (新字旧仮名) / 田畑修一郎(著)
ともに身體からだやすましてらくをさせようとふ、それにもしうとたちのなさけはあつた。しかしはくのついた次男じなんどのには、とん蝶々てふ/\菜種なたねはな見通みとほしの春心はるごころ納戸なんどつめがずにようか。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
侯爵も頭撫でて大笑しつゝ「ヤ、松島、最早もうしうとの援兵か、余り現金過ぎるぞ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
しうとの 好かない 婿養子の 如く 追ひ出されて しまつた——
札幌の印象 (新字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
「若旦那の初太郎の嫁のお袖が、殺されたしうとの半兵衞の氣に入らなくて、出すの引くのと言つて居たさうですよ」
文藏の代になりてはべつして毎年いつ都合つがふよく年々實入みいりふゑるに往々ゆく/\しうと甚太夫も此方こなたへ引取べしとしうとめも申により喜び居たりけりさてまた雲切仁左衞門は彼三十七兩の金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
支度したくとても唯今たゞいま有樣ありさま御座ございますからとて幾度いくたびことはつたかれはせぬけれど、なにしうとしうとめのやかましいがるではし、わししくてわしもらふに身分みぶんなにことはない
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「おつたは本當ほんたうしうとくしなかつたさうだな、自分等じぶんらはうあんへは砂糖さたうれてもしうとはうへは砂糖さたうれなかつたなんてしばらまへいたつけが」内儀かみさんはひとり低聲こごゑにいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かつ河陽かやう金谷きんこく別莊べつさういとなむや、花果くわくわ草樹さうじゆ異類いるゐ禽獸きんじうひとつとしてあらざるものなし。とき武帝ぶていしうと王鎧わうがいへるものあり。驕奢けうしや石崇せきそう相競あひきそふ。がいあめもつかまれば、そうらふもつたきゞとす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
将軍のしうと6・18(夕)
今は隱居同樣と言つても、六十そこ/\の耳は少し遠いが、見てくれは達者さうなしうとが迎へてくれました。
きはめて押出おしだ門口かどぐち慈悲じひ一言ひとことれをとわびるもくもなん用捨ようしやあらくれしことばいかりをめてよめでなししうとでなし阿伽あか他人たにんいへでなしなんといふとももうはぬぞ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
みやこなる父母ふぼかへたまひぬ。しうとしうとめらぬきやく許多あまたあり。附添つきそ侍女じぢよはぢらひにしつゝ、新婦よめぎみきぬくにつれ、浴室ゆどのさつ白妙しろたへなす、うるはしきとともに、やまに、まちに、ひさしに、つもれるゆきかげすなり。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しうとしうとめに氣に入る筈もなく、ろくな身寄もないのまでが馬鹿にされる種になり、到頭猫の子のやうに放り出されて、こんなところに落込み、年を老つた叔母と一緒に
聟の勘五郎は三十五、六、しうとの言ひなり放題で、二十年あまり、奉公人同樣の境遇に忍んで來ました。
若さと恥かしさと、恐ろしさにさいなまれて、何を訊いてもはか/″\しい答へはありませんが、しうと半兵衞との仲はあまりよくなかつたらしく、突つ込んで訊くと——
しかし、もつと/\突込んだ本當の原因といふのは、染五郎とお絹の仲が良過ぎて、ツイしうとの六兵衞の存在を忘れ、五十になつたばかりの獨り者の六兵衞は、筋違ひの嫉妬しつと
「お婿むこさんの眞太郎さんは、好い男だけれど生れつき身體が弱い上に、——おしうとさんの八郎兵衞さまは、そりや良いお年寄だけれど、小姑こじうとや、かゝりうどが三人もあるんですもの」
「證據はあり過ぎる位で、——第一、染五郎と割かれて、うんとしうとを怨んでゐるでせう」
當人の娘も後悔こうくわいしたが、此方から追ん出ると、注ぎ込んだ千兩以上の金は、一文も戻らないことになる、——さて、此んな有樣で、夫婦もしうとよめも、いがみ合ひになつて居るとしたら
當てつけられて居るのは言ふ迄もなく嫁のお冬、これは又不思議に丈夫でほんの少しばかりの血の道を起したと言つた顏色、しうとにいやな事を言はれ乍らも甲斐々々しく病人達を介抱して居ります。
つぶれかけた身上が直つたばかりでなく、近頃は外神田から下谷へかけて指折りの店になつた、——娘のお吉は氣性者だから、働きのないしうとむこを追ひ廻して、何時の間にやら相模屋を一人で切り廻し
相手は武士ですが、しうとに變りはありません。
銭形平次捕物控:050 碁敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)