“自慢(じまん)” の例文
「あいつは自慢(じまん)していたが、こんな大根(だいこん)がいくらするもんだ。町(まち)へいって買(か)ったって、知(し)れている。」と、地主(じぬし)はつぶやきました。
大根とダイヤモンドの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私(わたくし)の頭髪(かみ)は大(たい)へんに沢山(たくさん)で、日頃(ひごろ)母(はは)の自慢(じまん)の種(たね)でございましたが、その頃(ころ)はモー床(とこ)に就(つ)き切(き)りなので、見(み)る影(かげ)もなくもつれて居(い)ました。
母は、私が大きい声で、すらすらと本を読む事が、自慢(じまん)ででもあるのであろう。「ふん、そうかや」と、度々優しく返事をした。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
この質屋の「利(り)いちやん」も僕の小学時代の友だちだつた。僕はいつか遊び時間に僕等の家(うち)にあるものを自慢(じまん)し合つたことを覚えてゐる。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
さあ、遣(や)らつせえまし、蕨(わらび)は自慢(じまん)だよ。これでもへい家(うち)で食(く)ふではねえ。お客樣(きやくさま)に賣(う)るだで、澤山(どつさり)沙魚(はぜ)の頭(あたま)をだしに入(い)れて炊(た)くだアからね。
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
大切になし呉(くれ)候事若き者には珍(めづ)らしくお前樣方も嫁を取るゝならば女郎が宜(よろ)しきなどと今は却(かへつ)て自慢(じまん)を爲(なす)程(ほど)なれば家内睦(むつま)しく暮し居たりけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
けれども自分では大層(たいそう)上手(じやうず)なつもりで、自慢(じまん)をして家来(けらい)に見せますると、国王(こくわう)のいふ事だから、家来(けらい)が決して背(そむ)きませんで
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
「うむ、そういってきさまたちに自慢(じまん)しようと思(おも)っていたんだが、じつはそうじゃねえのだ。これにはわけがあるのだ。」
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
吉原(よしわら)の出来事(できごと)、観音様(かんのんさま)の茶屋女(ちゃやおんな)の身(み)の上(うえ)など、おそらく口(くち)を開(ひら)けば、一様(よう)におのれの物知(ものし)りを、少(すこ)しも速(はや)く人(ひと)に聞(き)かせたいとの自慢(じまん)からであろう。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
清はおれを前へ置いて、いろいろおれの自慢(じまん)を甥に聞かせた。今に学校を卒業すると麹町辺へ屋敷を買って役所へ通うのだなどと吹聴(ふいちょう)した事もある。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「三春(みはる)から白河(しらかは)の方(はう)へこんでも横薦(よこごも)乘(の)つけたの繋(つな)いで曳(ひ)いて來(く)つ處(とこ)らえゝかんな、能(よ)く聞(き)いて見(み)せえ、此(こ)の手(て)にや行(い)かねえぞ」彼(かれ)は其(そ)の自慢(じまん)の下(した)から
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
父(とう)さんのお家(うち)の石臼(いしうす)は青豆(あをまめ)を挽(ひ)くのが自慢(じまん)でした。それを黄粉(きなこ)にして、家中(うちぢう)のものに御馳走(ごちさう)するのが自慢(じまん)でした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
その馬がまた甚兵衛の自慢(じまん)でした。何しろ馬方にとっては、馬が一番大切なものです。甚兵衛は親譲(ゆず)りの田畑を売り払って、その馬を買い取ったのでした。
天下一の馬 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そればかりでなく、鬼を退治してみんなの前でいばってやりたいという力自慢(じまん)、度胸自慢(どきょうじまん)の若者(わかもの)も大ぜいいた。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
一心に聴(き)き惚(ほ)れている時には同好の人々がめいめい自慢(じまん)の雲雀を持ち寄って競技に興じていることもある。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
マスノは新らしいセーラー服をきて自慢(じまん)らしかったし、コトエはおばんの作っておいてくれたぞうりの鼻緒(はなお)に赤いきれのないこんでいるのがうれしそうだった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
土地の羊飼達(ひつじかいたち)はもちろん、よそからもおおかみ狩りを自慢(じまん)の連中が続々とやってきて、この悪獣(あくじゅう)を退治(たいじ)しようとしたのであったが、いずれも失敗して引きあげる。
そりや女の驕慢(けうまん)な根性(こんじやう)に對する自然の制裁(せいさい)さ。ところで嬰兒(あかんぼ)に乳を飮ませるのがえらいかといふに、犬の母だツて小犬を育てるのだから、これも自慢(じまん)にはならん。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
これは田畑に体を使つたためであつた。しかしそれまで幾度となく湯殿山に参詣(さんけい)し道中(だうちゆう)自慢(じまん)であつた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
戻(もど)れば太郎(たらう)の母(はゝ)と言(い)はれて何時(いつ)/\までも原田(はらだ)の奧樣(おくさま)、御兩親(ごりようしん)に奏任(そうにん)の聟(むこ)がある身(み)と自慢(じまん)させ、私(わたし)さへ身(み)を節儉(つめ)れば時(とき)たまはお口(くち)に合(あ)ふ物(もの)お小遣(こづか)ひも差(さし)あげられるに
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
舅(しうと)旁(かたはら)にありて、そはよき事也男(せがれ)も行べし、実母(ばゝどの)へも孫(まご)を見せてよろこばせ夫婦(ふうふ)して自慢(じまん)せよといふ。
喰(た)べ飽(あ)きると、密林(みつりん)の上(うへ)を高(たか)く気侭(きまま)に飛(と)ぶのが好(す)きで、またその飛行振(ひかうぶ)りが自慢(じまん)の種(たね)でもあつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
または彼氏自慢(じまん)の映画スタアのサイン入りのブロマイドを何枚となく、貰ったことがあります。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
『私(わたし)だつても學校(がくかう)時代(じだい)はあつてよ』と云(い)つて愛(あい)ちやんは、『そんなに自慢(じまん)しなくッても可(い)いわ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
態(てい)よき言葉を用いて隠蔽(いんぺい)し、暗(あん)に自慢(じまん)するごとくに聞こゆるでもあろうが、正直に自白すれば、近来になって僕もゲーテを尊崇(そんすう)するの念が、十年前にくらべて増してきた。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「いいお点っていうものはね、なんの役(やく)にも立(た)たないんですよ。」と、エムリーヌのお母(かあ)さんはお答(こた)えになりました。「それだからかえって、いただいて自慢(じまん)になるのです。 ...
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
「それなら、あまり自慢(じまん)のできるような家がらじゃありませんね。」と、隊長(たいちょう)は言いました。
みんなは、今日はほこりをかぶって来るでしょうし、それに、今夜はお国自慢(じまん)の会をやって遊ぶ予定でしょう。風呂でもあびて、さっぱりしたほうがいいんじゃありませんか。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
カピ長 まゝ、堪忍(かんにん)して、放任(うちす)てゝおきゃれ、立派(りっぱ)な紳士(しんし)らしう立振舞(たちふるま)うてをる上(うへ)に、實(じつ)を言(い)へば、日頃(ひごろ)ヹローナが、徳(とく)もあり行状(ぎゃうじゃう)もよい若者(わかもの)と自慢(じまん)の種(たね)にしてゐるロミオぢゃ。
ふんと狐の謙遜(けんそん)のような自慢(じまん)のような息の音がしてしばらくしいんとなりました。
土神ときつね (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
自慢(じまん)らしく仲間の子供に語ったほど、それは奇妙な別世界の会話であった。
外国人に見せて自慢(じまん)のできるものは、富士の山か瀬戸内海の景色か、ないしは芸者の手踊りくらいで、他の一等国のごとくに、完備した博物館もなければ、智力で造り上げた巧妙な製作品もない。
教育と迷信 (新字新仮名) / 丘浅次郎(著)
イワーノウナは何(なん)だか嬉(うれ)しくて堪(たま)らなくなつたと見(み)えて一週間前(いつしうかんぜん)に大喧嘩(おほげんくわ)した事(こと)ア忘(わす)れちまつてア………フ………を呼(よ)んで咖啡(こうひい)なんぞを馳走(ちそう)しながら荐(しき)りに色(いろ)んな餘計(よけい)を附(つ)けちやア亭主(ていしゆ)の自慢(じまん)をする
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
でも、すずの兵隊さんは、そんなことを自慢(じまん)したりはしません。
連隊長殿が感心して見ていたといって、常に自慢(じまん)している。
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それがなんの自慢(じまん)になる! それがなんで男の誇(ほこ)りだ!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
親爺(おやぢ)自慢(じまん)で鋏(はさみ)を鳴(な)らす。
とんぼの眼玉 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
ご自慢(じまん)のおひげ
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
彼(かれ)は、往来(おうらい)の上(うえ)に立(た)って、それをのぞきながら、友(とも)だちがやってきたら友(とも)だちにものぞかせて自慢(じまん)をしてやろうと思(おも)っていました。
びんの中の世界 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それ等(ら)の中(なか)には橘姫(たちばなひめ)よりも遥(はる)かに家柄(いえがら)の高(たか)いお方(かた)もあり、又(また)縹緻(きりょう)自慢(じまん)の、それはそれは艶麗(あでやか)な美女(びじょ)も居(い)ないのではないのでした。
「どうも素人(しろうと)の堀川君を相手じゃ、せっかくの発見の自慢(じまん)も出来ない。——とにかく長谷川君の許嫁(いいなずけ)なる人は公式通りにのぼせ出したようだ。」
寒さ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さッさ買(か)いなよ買(か)わしゃんせ。土平(どへい)自慢(じまん)の人参飴(にんじんあめ)じゃ。遠慮(えんりょ)は無用(むよう)じゃ。買(か)わしゃんせ。買(か)っておせんに惚(ほ)れしゃんせ
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
切首(きりくび)と人々申候と少しく自慢(じまん)がてらに長々(なが/\)と申ければ大岡殿成程其遺恨(ゐこん)もある故陸尺の七右衞門は今度(このたび)の一件に世話を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「これで弟子(でし)たちに自慢(じまん)ができるて。きさまたちが馬鹿(ばか)づらさげて、村(むら)の中(なか)をあるいているあいだに、わしはもう牛(うし)の仔(こ)をいっぴき盗(ぬす)んだ、といって。」
花のき村と盗人たち (新字新仮名) / 新美南吉(著)
みんなが感心して眺めているが、一向くだらないものだ。あんなに草や竹を曲げて嬉(うれ)しがるなら、背虫の色男や、跛(びっこ)の亭主(ていしゅ)を持って自慢(じまん)するがよかろう。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「此(こ)んでも桑(くは)の間(あひだ)さ作(つく)つたんだが、思(おも)ひの外(ほか)だつけのさ」亭主(ていしゆ)は自慢(じまん)らしくそれでも態(わざ)と聲(こゑ)を落(おと)していつた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
其(そ)の頼母(たのも)しいのと、當人(たうにん)自慢(じまん)の生白(なまじろ)い處(ところ)へ、先(ま)づ足駄(あしだ)をひつくりかへしたのは、門内(もんない)、團右衞門(だんゑもん)とは隣合(となりあ)はせの當家(たうけ)の家老(からう)、山田宇兵衞(やまだうへゑ)召使(めしつか)ひの、葛西(かさい)の飯炊(めしたき)。
片しぐれ (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
自慢(じまん)も交(ま)じる親切(しんせつ)に螢火(ほたるび)大事(だいじ)さうに挾(はさ)み上(あ)げて、積(つ)み立(た)てし炭(すみ)の上(うへ)にのせ、四邊(あたり)の新聞(しんぶん)みつ四つに折(を)りて、隅(すみ)の方(ほう)よりそよ/\と煽(あほ)ぐに、いつしか是(こ)れより彼(か)れに移(うつ)りて
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
正は近ごろ櫓(ろ)がこげるようになり、それが自慢(じまん)なのであった。先生も思わずにこにこして
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
なぜなら、下のほうに大きな果樹園(かじゅえん)が見えたとき、いかにも自慢(じまん)そうにこうさけびました。