ひそか)” の例文
新字:
朝鮮一条(一八七一年米国艦隊の江華こうか島事件)の関係をひそかに探索するに、此国(アメリカ)の政府あえて再びこれを討伐するの論なし。
黒田清隆の方針 (新字新仮名) / 服部之総(著)
彼等はわたくしが夜ひそかに墨水をわたって東に遊ぶ事を探知したなら、更に何事を企図するか測りがたい。これ真に恐る可きである。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
をどりながら周圍しうゐつて村落むら女等をんならつゝうて勘次かんじ容子ようすてはくすくすとひそか冷笑れいせうあびけるのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
おもひそかはゝ委敷事くはしきことを語りければはゝおどろき今度の御呼出およびだしは吉三郎と對決たいけつさせんとの事なるべければ種々いろ/\御尋おんたづねあるならんが其時そのとき委細ゐさい
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ひそかあんずるに日本の耶蘇教も西洋の仏法も、その性質は同一なれども、野蛮の国土に行なわるればおのずから殺伐の気を促し
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
われは、けふさる戲言ざれごといふことかはといましめつゝも、心の中にその笑顏の涙を掩ふ假面めんなるをおもひて、ひそかに友の情誼に感じぬ。
庄左衛門が主君から長船の刀を拝領したのは、平太郎も知っていてひそかに羨ましく思っているところであった。彼は喜んでそれを借りて見たりした。
魔王物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
衞國ゑいこくはふひそかきみくるまするものつみ(一〇七)げついたる、すでにして彌子びしははむ。ひとき、いてよるこれぐ。彌子びしいつはつてきみくるましてづ。
その後カションはいかなる病気びょうきかかりけん、盲目もうもくとなりたりしを見てこれ等の内情を知れる人々は、因果いんが覿面てきめん気味きみなりとひそかかたり合いしという。
ひそかに古今を達觀し、聊草茅そうぼうに赤心を危するにあらざれども、皷腹承世の創業と云は冨國強兵の二ツに出ざるは無。
他計甚麽(竹島)雑誌 (旧字旧仮名) / 松浦武四郎(著)
しかれどもひそかおもへらく、賢者けんしや旧悪きうあくをおもはずといふも事にこそよれ、冤謫ゑんてき懆愁さうしうのあまり讒言ざんげん首唱しゆしやうたる時平大臣しへいのおとゞ肚中とちゆうに深く恨み玉ひしもしるべからず。
わたくしは古今幾多の伝記を読んであきたらざるものがあつた故に、ひそかに発起する所があつて、自らはからずしてこれに著手した。是はわたくしの試験である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
予はひそかに懷手をして、堅く張り出してゐる腹の一部を撫でて見ながら、何となく頼母しいものゝやうに思つた。
第十八号室より (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
某は心中ふか立腹りつぷくして、ほかの事にかこつけて雲飛を中傷ちゆうしやうつひとらへてごくとうじたそして人を以てひそか雲飛うんぴつまに、じつは石がほしいばかりといふ内意ないゝつたへさした。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
夫でもしや独りで置いて自殺でも企てる様な事が有ては成らぬと思い吾々はひそかに見張をつけて牢から退き
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
当る所ひらき申候。ひそかに思ふ、富国強兵、且雄将のはたらき、東夷皆イウタンを落し申さんと奉存候。
世には斯かる氣高けだかき美しき女子をなごも有るもの哉と心ひそかに駭きしが、雲をとゞめ雲を𢌞めぐらたへなる舞の手振てぶりを見もて行くうち、むねあやしう轟き、心何となく安からざる如く
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
そも此人このひと如何いかなればかゝる細工をする者ぞと思うに連れてひとみは通い、ひそかに様子を伺えば、色黒からず、口元ゆるまず、まゆ濃からずして末ひいで、眼に一点の濁りなきのみか
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
村人どもが高を括つてひそかに舌を吐いてゐる最中に、僅か昨日立つて京都へ行つたばかりの太政官は、もう今日の夕方、紫縮緬の大きな袱紗に包んだ貴い揮毫を捧げつゝ、大きな赭顏あからがほ
太政官 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
其處そこから一千海里かいりはなれて大陸たいりく本島ほんたうとの丁度ちやうど中間ちうかんよこたはれる橄欖島かんらんたうまでひそかふね艤裝ぎさうして、十二の藥液やくえき運送うんさうしてたならば、此方こなたでも海底戰鬪艇かいていせんとうていには、多少たせう發動藥液はつどうやくえきのこつてるから
夜ルひそかニ蟲は月下の栗を穿つ
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
かれすぐ自分じぶんちか手拭てぬぐひかぶつたおつぎの姿すがたおもむろにうごいてるのをた。それ同時どうじひそか草履ざうりおと勘次かんじみゝひゞいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
侍士へ申のべけるに然らば此段申上べしと云て侍士は立歸たり因て名主用右衞門は不思議ふしぎの事に思ひひそかに心つうしてぞ居たりける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
榎本氏のきょ所謂いわゆる武士の意気地いきじすなわち瘠我慢やせがまんにして、その方寸ほうすんの中にはひそかに必敗を期しながらも、武士道のめにあえて一戦をこころみたることなれば
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
... しんひそか(九九)留心りうしんきをおそる」と。武矦ぶこうすなははん、「奈何いかんせん」と。きみつて武矦ぶこうつてへ、「こころみに(一〇〇)くに公主こうしゆもつてせよ。 ...
これすなわち勝氏が特に外交の危機きき云々うんぬん絶叫ぜっきょうして、その声を大にし以て人の視聴しちょう聳動しょうどうせんとつとめたる所以ゆえんに非ざるか、ひそか測量そくりょうするところなれども
しかれどもひそかおもへらく、賢者けんしや旧悪きうあくをおもはずといふも事にこそよれ、冤謫ゑんてき懆愁さうしうのあまり讒言ざんげん首唱しゆしやうたる時平大臣しへいのおとゞ肚中とちゆうに深く恨み玉ひしもしるべからず。
然るに或夜翁助は興奮不安の状が常よりはげしかつたので、妻はひそかに薬を多服せしめた。翁助の興奮は増悪した。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
もしかすると他に女があって、時どき先方へ往ったり、また女の方からも此方へ来てじぶんの寝入るのを待って、ひそかに庭あたりで媾曳あいびきしているかも判らないと思いだした。
宝蔵の短刀 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
小弟ガ論ニひそかニ大兄に言、目今御かゝりの丹波丹後の一件云々大坂四ツ橋大仏や門前御談の事万(わすらるべからず)、十分右の所に御心お御用第一なり。
唯だ小尼公のすゞしき目の我面を見上げて、衆人の罪惡の爲めに代りて我に謝するに似たるありて、われはその辱の疇昔さきよりも忍び易きを覺えたり。ひそかにおもふに我にはまことに弱點あり。
おつぎは自分じぶん毎日まいにちつてたので開墾地かいこんちからはこんだくぬぎみなつてる。おつぎはくぬぎひとりでひそかした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
仕舞ひければ寶澤もともして歸りぬ彼盜取かのぬすみとりし毒藥はひそかに臺所のえんの下の土中どちうへ深くうづめ折をまつて用ひんとたくむ心ぞおそろしけれ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
又門人平川良栄は柏軒のこととしてひそかに人に語つて云ふに、「先生はいつか興に乗じて、己の一番好なものは女、次は酒、次ははなし、次は飯だと仰つたことがある」
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ひととおりの者はこれに欺かるべき有様なれども、ひそかに一方より窺えば、はたして例の偽君子なり。
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これは小千谷の下た町といふ所の酒楼しゆろう酌採しやくとり哥妓げいしやどもなり、岩居がんきよ朋友はういうはかりてひそかこゝまねきおきてきやうさせんためとぞ。かれは狐にあらずして岩居がんきよばかされたるなり。
中助伊藤太夫事、別ニ小弟の志を憐ミ、且積年の思ひも在之、不屈してひそかニ志を振ひ居申候。
また百姓ひゃくしょうはい地租改正ちそかいせいのために竹槍ちくそう席旗せきき暴動ぼうどうかもしたるその余炎よえんいまおさまらず、いわんや現に政府の顕官けんかん中にもひそかに不平士族と気脈きみゃくを通じて、蕭牆しょうしょうへんらんくわだてたる者さえなきに非ず。
孫臏そんびん(二〇)刑徒けいともつひそかせい使つかひく。せい使つかひもつし、ひそかせてともせいく。せいしやう田忌でんき(二一)よみしてこれ(二二)客待かくたいす。數〻しばしばせい諸公子しよこうし(二三)驅逐重射くちくちようせきす。
この時フエデリゴは戸の片蔭にかくれて、ひそかに此群をゑがきぬ。われは母上にいふやう。われは生涯妻といふものをば持たざるべし。われはフラア・マルチノの君のやうなる僧とこそならめといひき。
これは小千谷の下た町といふ所の酒楼しゆろう酌採しやくとり哥妓げいしやどもなり、岩居がんきよ朋友はういうはかりてひそかこゝまねきおきてきやうさせんためとぞ。かれは狐にあらずして岩居がんきよばかされたるなり。
さりながら一旦切腹と思定め候それがしひそかに時節を相待ちおり候ところ、御隠居ごいんきょ松向寺殿は申に及ばず、その頃の御当主妙解院殿よりも出格の御引立をこうむり、寛永九年御国替くにがえみぎりには
然ニ先頃長崎より後藤参政と同船ニて上京仕候処、此頃英船御国ニ来るよしなれバ、又、由井参政と同船ニてスサキ須崎港まで参り居候得とも、ひそかニ事を論じ候得バ、今まで御無音申上候。
下等士族もまた給人分きゅうにんぶんはいは知らぬことなれどもの一条は云々、とて、互にひそかに疑うこともありいきどおることもありて、多年苦々にがにがしき有様なりしかども、天下一般、ぶんを守るのおしえを重んじ
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
(文海披沙)されば獣中じうぢゆうもつとも可悪にくむべきおほかみなり。ひそか以為おもへらく、狼は狼にして狼なれども、人にして狼なるはよく狼をかくすゆゑ、狼なるをみせず。これがため狼毒らうどくをうくる人あり。
其節溝淵広之丞ニ御申聞相願候事件を、同国の重役後藤庄次郎象二郎一〻相談候より余程夜の明候気色、重役共又ひそかに小弟にも面会仕候故、十分論申候。此頃ハ土佐国ハ一新の起歩相見へ申候。
藩中に商業行わるれば上士もこれを傍観ぼうかんするに非ず、往々おうおうひそかに資本をおろす者ありといえども、如何いかんせん生来の教育、算筆さんひつうとくして理財の真情を知らざるが故に、下士に依頼いらいして商法を行うも
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
(文海披沙)されば獣中じうぢゆうもつとも可悪にくむべきおほかみなり。ひそか以為おもへらく、狼は狼にして狼なれども、人にして狼なるはよく狼をかくすゆゑ、狼なるをみせず。これがため狼毒らうどくをうくる人あり。
ひそか冷笑れいしょうしたるもいわれなきにあらず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)