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ふりがな文庫
“
夜着
(
よぎ
)” の例文
「これでもう天井の落ちる心配もなくなつた。」書庫が出来上ると、犬養氏は
夜着
(
よぎ
)
のなかで、安心して
蛙
(
かはづ
)
のやうに両脚を踏み延ばした。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
宗助
(
そうすけ
)
の
答
(
こたへ
)
は
半
(
なか
)
ば
夜着
(
よぎ
)
の
下
(
した
)
から
出
(
で
)
た。
其
(
その
)
聲
(
こゑ
)
が
籠
(
こも
)
つた
樣
(
やう
)
に
御米
(
およね
)
の
耳
(
みゝ
)
に
響
(
ひゞ
)
いた
時
(
とき
)
、
御米
(
およね
)
は
濟
(
す
)
まない
顏
(
かほ
)
をして、
枕元
(
まくらもと
)
に
坐
(
すわ
)
つたなり
動
(
うご
)
かなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
致せと云ながら
直樣
(
すぐさま
)
自宅に立歸りお花が部屋に
直
(
つ
)
と
這入
(
はひれ
)
ばお花はハツト
仰天
(
ぎやうてん
)
して友次郎を
夜着
(
よぎ
)
の中に手早く
隱
(
かく
)
し
側
(
そば
)
に有し友次郎が
脇差
(
わきざし
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
昨夜
(
ゆふべ
)
の収めざる
蓐
(
とこ
)
の内に貫一は着のまま
打仆
(
うちたふ
)
れて、
夜着
(
よぎ
)
も
掻巻
(
かいまき
)
も
裾
(
すそ
)
の
方
(
かた
)
に
蹴放
(
けはな
)
し、
枕
(
まくら
)
に
辛
(
から
)
うじてその
端
(
はし
)
に
幾度
(
いくたび
)
か
置易
(
おきかへ
)
られし
頭
(
かしら
)
を
載
(
の
)
せたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
従兄の
白木
(
しらき
)
の
位牌
(
いはい
)
の前には
燈心
(
とうしん
)
が一本火を澄ましていた。そのまた位牌を据えた机の前には娘たちが二人
夜着
(
よぎ
)
をかぶっていた。
冬
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
▼ もっと見る
夜着
(
よぎ
)
引きかぶればあり/\と浮ぶお
辰
(
たつ
)
の姿、首さし
出
(
いだ
)
して
眼
(
め
)
をひらけば花漬、
閉
(
とず
)
ればおもかげ、
是
(
これ
)
はどうじゃと
呆
(
あき
)
れてまた
候
(
ぞろ
)
眼をあけば花漬
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
いまはたしかにそれよと疑はずなりて、のたまふままに
頷
(
うなず
)
きつ。あたりのめづらしければ起きむとする
夜着
(
よぎ
)
の肩、ながく
柔
(
やわら
)
かにおさへたまへり。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
家付の我儘娘、重二郎は学問に
凝
(
こ
)
って居りますから、
襖
(
ふすま
)
を隔てゝ
更
(
ふけ
)
るまで書見をいたします。お照は
夜着
(
よぎ
)
を
冠
(
かぶ
)
って向うを向いて寝てしまいます。
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
阿爺
(
おとっ
)
さんが天狗になってお
囃子
(
はやし
)
を
行
(
や
)
ってるのじゃないかと思うと、急に何だか
薄気味
(
うすきび
)
悪くなって来て、私は頭からスポッと
夜着
(
よぎ
)
を
冠
(
かむ
)
って小さくなった。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
即
(
すなわ
)
ち
煙草
(
たばこ
)
盆、
枕屏風
(
まくらびょうぶ
)
、
船底枕
(
ふなぞこまくら
)
、
夜着
(
よぎ
)
赤い
友染
(
ゆうぜん
)
、などといったものが現われて来るのだ、そして裸の女が立っていれば如何にも多少気がとがめる事になる
楢重雑筆
(新字新仮名)
/
小出楢重
(著)
寢息
(
ねいき
)
もやがて
夜着
(
よぎ
)
の
襟
(
えり
)
に
白
(
しろ
)
く
花咲
(
はなさ
)
くであらう、これが
草津
(
くさつ
)
の
常
(
つね
)
の
夜
(
よる
)
なのである。けれども
馴
(
な
)
れては
何物
(
なにもの
)
も
懷
(
なつか
)
しい、
吹雪
(
ふゞき
)
よ、
遠慮
(
ゑんりよ
)
なく
私
(
わたし
)
の
顏
(
かほ
)
を
撫
(
な
)
でゝゆけ!
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
夜着
(
よぎ
)
の
襟
(
えり
)
は
汚
(
よご
)
れていた。旅のゆるやかな
悲哀
(
ひあい
)
がスウイトな涙を
誘
(
さそ
)
った。かれはいつかかすかに
鼾
(
いびき
)
をたてていた。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
「どういたしまして、燃えるような
緋縮緬
(
ひぢりめん
)
の
夜着
(
よぎ
)
がありますよ」二人の
洋盃
(
コップ
)
にビールが無くなっているので、山西はかわりを注文して、それに口を
浸
(
つ
)
けながら
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
……何でもその時に女中部屋の時計がコチーンコチーンと二時を打つのを
夜着
(
よぎ
)
の中で聞いたというがね
二重心臓
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
と云ったきり、涙をぽろ/\
零
(
こぼ
)
しているばかりであったが、父も
極
(
き
)
まり悪そうに下を向いて何も云わず、こそ/\と部屋へ逃げ込んで、
夜着
(
よぎ
)
に顔を埋めてしまった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そこへ、優しい聲をして玉が來て、渠の
夜着
(
よぎ
)
の裾へもぐり込まうとしたので、渠は氣味が惡くなり
泡鳴五部作:03 放浪
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
洗面
(
せんめん
)
だらいは、こなごなにこわれていました。
夜着
(
よぎ
)
もまくらも、
寝台
(
しんだい
)
からころげおちていました。
おおかみと七ひきのこどもやぎ
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール・グリム
、
ヴィルヘルム・カール・グリム
(著)
のばし、
夜着
(
よぎ
)
の畳んである方に頭を向けて、うつぶしになっております。これは犯人が、被害者の座っている後ろから抱きついて短刀で心臓部を刺し、それから、背部を
現場の写真
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
そんなことを思う傍らで、まだ
移転
(
ひっこし
)
の日のつづきを思い出しているのだった。翌日に着いた泡鳴の荷物は、荷車に二台の書籍と、あとは
夜着
(
よぎ
)
と、鉄の
手焙
(
てあぶ
)
りだけだった。
遠藤(岩野)清子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
ブウー、ウー、ウー、
警笛
(
けいてき
)
の
声
(
こえ
)
です。まず、
眠
(
ねむ
)
りからさまされたのが、
兄
(
あに
)
の
信
(
しん
)
一でした。まだ
眠
(
ねむ
)
りがまぶたに
残
(
のこ
)
っていて、
顔
(
かお
)
を
夜着
(
よぎ
)
のえりに
埋
(
う
)
めたまま
耳
(
みみ
)
をすましていました。
火事
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
あの匂いが、女の匂いが、あの夜追われて、かくれて、はからずも嗅いだ肌の匂いが、髪の匂いが、女の移り香が、枕からか、
夜着
(
よぎ
)
の
襟
(
えり
)
からか、かすかに匂って来たのである。
流行暗殺節
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
藤十郎の心にそうした、物狂わしい
颷風
(
ひょうふう
)
が起っていようとは、夢にも気付かないらしいお
梶
(
かじ
)
は押入れから
白絖
(
しろぬめ
)
の
夜着
(
よぎ
)
を取出すと、藤十郎の背後に廻りながら、ふうわりと着せかけた。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
玄庵
(
げんあん
)
は、
夜着
(
よぎ
)
の
下
(
した
)
へ
手
(
て
)
を
入
(
い
)
れて、かるく
菊之丞
(
きくのじょう
)
の
手首
(
てくび
)
を
掴
(
つか
)
んだまま
首
(
くび
)
をひねった。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
薪を入れ足し、
夜着
(
よぎ
)
を直して、今は私を見つめる力もなくなつて了つてゐる彼女をしばらく私は眺めてから、窓際の方へ歩いて行つた。雨は
甚
(
ひど
)
く窓硝子に打ちつけ、風も強く吹いてゐる。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
しら綾に鬢の香しみし
夜着
(
よぎ
)
の襟そむるに歌のなきにしもあらず
みだれ髪
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
總
(
すべ
)
て
肌着
(
はだぎ
)
は
日々
(
ひゞ
)
洗
(
あら
)
ひ、
夜着
(
よぎ
)
は六七
日
(
にち
)
毎
(
ごと
)
に
干
(
ほ
)
すべき
事
(
こと
)
。
養生心得草
(旧字旧仮名)
/
関寛
(著)
夜着
(
よぎ
)
は
短
(
みぢ
)
かし
夜
(
よ
)
は
長
(
なが
)
し。
桜さく島:春のかはたれ
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
是は
粗相千万
(
そさうせんばん
)
、(中略)と
後先
(
あとさき
)
揃はぬ事を云ふて、又
本
(
もと
)
の
夜着
(
よぎ
)
へこそこそはいつて、寝るより早く
其処
(
そこ
)
を立ち
退
(
の
)
き、(
下略
(
げりやく
)
)
案頭の書
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
と
夜着
(
よぎ
)
を掛けるとおますは重い夜着や
掻巻
(
かいまき
)
を一度にはね
退
(
の
)
けて、蒲団の上にちょんと坐り、じいッと伴藏の顔を
睨
(
にら
)
むから
怪談牡丹灯籠:04 怪談牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
暗いなかをなお暗くするために眼を
眠
(
ねむ
)
って、
夜着
(
よぎ
)
のなかへ頭をつき込んで、もうこれぎり世の中へ顔が出したくない。
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
盜
(
ぬす
)
み取んと
彼曲者
(
かのくせもの
)
は半四郎が寢たる
夜着
(
よぎ
)
の
脇
(
わき
)
より
徐々
(
そろ/\
)
と腹の
邊
(
あたり
)
へ手を
差入
(
さしいれ
)
ければ後藤は目を
覺
(
さま
)
しはて
奴
(
きや
)
つめが來りしぞと
狸寢入
(
たぬきねいり
)
をして
密
(
ひそ
)
かに
傍
(
そば
)
の夜具を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
火鉢
(
ひばち
)
の
火
(
ひ
)
が
赤
(
あか
)
いのも、
鐵瓶
(
てつびん
)
が
優
(
やさ
)
しい
響
(
ひゞ
)
きに
湯氣
(
ゆげ
)
を
立
(
た
)
てゝゐるのも、ふと
擡
(
もた
)
げてみた
夜着
(
よぎ
)
の
裏
(
うら
)
が
甚
(
はなはだ
)
しく
色褪
(
いろあ
)
せてゐるのも、すべてが
皆
(
みな
)
私
(
わたし
)
に
向
(
むか
)
つて
生
(
い
)
きてゐる——この
年
(
とし
)
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
写真で、被害者がよく太っていることと、
夜着
(
よぎ
)
が畳んだままになっているのを見たとき、被害者がお湯に行ったことと考え合わせて、按摩を雇ったのでないかと思いました。
現場の写真
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
宗吉と同じ長屋に貸蒲団の一ツ
夜着
(
よぎ
)
で、芋虫ごろごろしていた処——事業の運動に
外出
(
そとで
)
がちの熊沢旦那が、お千さんの見張兼番人かたがた妾宅の方へ引取って置くのであるから
売色鴨南蛮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その声は急に
噪
(
さわがし
)
く、
相争
(
あひあらそ
)
ふ
気勢
(
けはひ
)
さへして、はたはたと
紙門
(
ふすま
)
を
犇
(
ひしめ
)
かすは、
愈
(
いよい
)
よ
怪
(
あや
)
しと
夜着
(
よぎ
)
排却
(
はねの
)
けて起ち行かんとする時、ばつさり紙門の倒るると
斉
(
ひとし
)
く、二人の女の姿は貫一が
目前
(
めさき
)
に
転
(
まろ
)
び
出
(
い
)
でぬ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
かう言ひながら、時々思ひ出したやうに
鉦
(
かね
)
を鳴らしたものだ。媼さんはお蔭で亡くなつた爺さんが浄土に生れ代つたもののやうに涙を流して喜んだ。そして暖い
粥
(
かゆ
)
と暖い
夜着
(
よぎ
)
とを恵んでくれた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
冬川は千鳥ぞ
来啼
(
きな
)
く
三本木
(
さんぼんぎ
)
べにいうぜんの
夜着
(
よぎ
)
ほす縁に
舞姫
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
「
寒
(
さむ
)
くなった。
今年
(
ことし
)
は
夜着
(
よぎ
)
を
造
(
つく
)
らねばなるまい。」
火を点ず
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
孔生はまだ
夜着
(
よぎ
)
にくるまって寝ていた。
嬌娜
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
お熱の
工合
(
ぐあい
)
でお悪くなると、ころりと横になる。
甚
(
ひど
)
く寒い、もそっと掛けろよと御意があると、綿の厚い
夜着
(
よぎ
)
を余計に掛けなければなりません。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
すると夜具の中へ
潜
(
もぐ
)
って返事もしないんですもの。こっちは心配だから二度目にまたおこすと、
夜着
(
よぎ
)
の
袖
(
そで
)
から何か云うのよ。本当にあきれ返ってしまうの
吾輩は猫である
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
持て我が
寢所
(
ねどころ
)
へ來りし故
怪敷
(
あやしく
)
思
(
おも
)
ひ
片蔭
(
かたかげ
)
に
隱
(
かく
)
れて
窺
(
うかゝ
)
ひしに
夜着
(
よぎ
)
の上より我を
刺
(
さし
)
候樣子に付き
取押
(
とりおさ
)
へて繩を
掛
(
かけ
)
しなり
此儀
(
このぎ
)
公邊
(
おかみ
)
へ
訴
(
うつた
)
へ此者を
吟味
(
ぎんみ
)
致さんと云ひけるを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
お蓮は酒臭い
夜着
(
よぎ
)
の襟に、冷たい
頬
(
ほお
)
を
埋
(
うず
)
めながら、じっとその響に聞き入っていた。こうしている内に彼女の眼には、いつか涙が一ぱいに漂って来る事があった。
奇怪な再会
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それでも親の慈悲や兄の
情
(
なさけ
)
で
何
(
ど
)
うかして学校へも
行
(
ゆ
)
く様に真人間にして
遣
(
や
)
りたいと思へばこそ
性懲
(
しやうこり
)
を
附
(
つ
)
けよう為に、
昨夜
(
ゆうべ
)
だつて
左様
(
さう
)
だ、一晩裸にして
夜着
(
よぎ
)
も
被
(
き
)
せずに
打棄
(
うつちや
)
つて置いたのだ。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
さばかり
間遠
(
まどほ
)
なりし
逢瀬
(
あふせ
)
なるか、言はでは裂けぬる胸の内か、かく有らでは
慊
(
あきた
)
らぬ
恋中
(
こひなか
)
か、など思ふに就けて、彼はさすがに我身の
今昔
(
こんじやく
)
に感無き能はず、枕を引入れ、
夜着
(
よぎ
)
引被
(
ひきかつ
)
ぎて、
寐返
(
ねがへ
)
りたり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
晋齋も
心中
(
しんちゅう
)
を察していると見え、心持がわるくば寝るがいゝと許しますので、お若は
褥
(
とこ
)
をとって
夜着
(
よぎ
)
引っ被りましたが、何うして眠られましょう
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
圧制されてやむをえずに出す声であるところが本来の陰欝、天然の沈痛よりも一層
厭
(
いや
)
である、聞き苦しい。余は
夜着
(
よぎ
)
の中に耳の根まで隠した。夜着の中でも聞える。
琴のそら音
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
思へば
好事
(
よきこと
)
には泣くとぞ
謂
(
い
)
ふなる
密閉室
(
あかずのま
)
の一件が、今宵
誕辰
(
たんしん
)
の祝宴に
悠々
(
いう/\
)
歓
(
くわん
)
を
尽
(
つく
)
すを
嫉
(
ねた
)
み、不快なる声を発して
其
(
その
)
快楽を乱せるならむか、あはれ
忌
(
い
)
むべしと
夜着
(
よぎ
)
を
被
(
かぶ
)
りぬ。眼は眠れども
神
(
しん
)
は覚めたり。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
十一月の事で寒いから二つの布団の上に小蒲団を敷き、
藤掛鼠
(
ふじかけねずみ
)
の
室着
(
へやぎ
)
の上へ
縫
(
ぬい
)
もようの
掻巻袍
(
かいまきどてら
)
を羽織り、寒くなると
夜着
(
よぎ
)
をかける手当が有りまする。
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
車に寒く、湯に寒く、
果
(
はて
)
は蒲団にまで寒かったのは心得ぬ。京都では
袖
(
そで
)
のある
夜着
(
よぎ
)
はつくらぬものの由を主人から
承
(
うけたまわ
)
って、京都はよくよく人を寒がらせる所だと思う。
京に着ける夕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
夜
常用漢字
小2
部首:⼣
8画
着
常用漢字
小3
部首:⽬
12画
“夜着”で始まる語句
夜着蒲団