見捨みす)” の例文
すみなれたはやしや、やまや、かわや、野原のはら見捨みすて、らぬ他国たこくることは、これらの小鳥ことりにとっても、冒険ぼうけんにちがいなかったからです。
ふるさと (新字新仮名) / 小川未明(著)
来たら留めて置いてくれとのはがきに接した時、いさゝか不審に思いは思いながら、まさか彼がせい見捨みすてようとは思わなかった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
大地震後だいぢしんご餘震よしんあまりに恐怖きようふするため、安全あんぜん家屋かおく見捨みすてゝ、幾日いくにちも/\野宿のじゆくすることは、震災地しんさいちける一般いつぱん状態じようたいである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
戦国のちまた見捨みすてられているおさない者のために、竹生島ちくぶしま神官しんかん菊村宮内きくむらくない、とうとう琵琶湖びわこのそとへまででて、地蔵行者の愛をひろめようとした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
中将ちゅうじょうたいそうおおこりになって、宰相さいしょうをきびしくおしかりになりました。けれどもそんなことで、宰相さいしょうはちかつぎを見捨みすてるはずはありませんでした。
鉢かつぎ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
到頭たう/\此坑このあな見捨みすてるのむをぬにいたつた。(いや土器どきかゝつてゞもれば、けつして見捨みすてるのではい)
『もう無益だめだ/\、とても沈沒ちんぼつまぬかれない。』と船員せんゐん一同いちどうはすでに本船ほんせん運命うんめい見捨みすてたのである。
みんなさようならを言いに来たのであった。そこでわたしたちもまたなつかしい冬の休息所を見捨みすてて、またもやれない漂泊ひょうはくの旅に出て行かなければならなかった。
庭口にはぐちぱなして、さぞかし貴郎あなたのおおこあそばしたことではかつたなれど、病人びやうにん見捨みすてゝかへこともならず、今日けふこのやうにおそくまでりまして、何處どこまでもわたしわろ御座ござんするほどに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
まへ、おまへ、それでおとしたんだけれど、いのちをかけてねがつたものを、おまへそれまでにおもふものを、りうちやん、なんだつてお見捨みすてなさるものかね、わかつたかい、あれ、あれをおきよ。もういよ。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
その黒ずんだえんの四方がぼかされたように輝いて、ちょうど今我々が見捨みすてて来た和歌の浦の見当に、すさまじい空の一角を描き出していた。嫂は今その気味の悪い所をまゆを寄せて眺めているらしかった。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし、目弱王まよわのみこは、私ごとき者をもたよりにしてくださって、いやしい私のうちへおはいりくださっているのでございますから、私といたしましては、たとえ死んでもお見捨みすて申すことはできません。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
見捨みすてたが
赤い旗 (旧字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
しかし、こんなに、みんながこの深林しんりん見捨みすてて、出発しゅっぱつしたあとにも、二十や、三十のは、みんなといっしょにゆかずにあとにとどまりました。
北海の波にさらわれた蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「しかしなにやら、くるしんでおりますものを、このまま見捨みすててまいるのもつれないようにぞんじますが」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふとまなこつたのは、いまこのふね責任せきにん双肩さうけんになへる船長せんちやうが、卑劣ひれつにも此時このとき舷燈げんとうひかり朦朧もうろうたるほとりより、てんさけび、ける、幾百いくひやく乘組人のりくみにんをば此處ここ見捨みすてゝ
そんなわけで、木らしい木を見ようとすると、おか見捨みすてて谷間へと下りて行かねばならぬ。
あれきつちやんそれはおまへ勘違かんちがひだ、なにわたし此處こゝはなれるとておまへ見捨みすてることはしない、わたしはほんとに兄弟きやうだいとばかりおもふのだもの其樣そん愛想あいそづかしはひどからう、とうしろからがひじめにめて
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そして、いいこえでうたってください。きっとあなたは、いいこえます、そして、わたしまれてんだ、このはやしを、いつまでも見捨みすてないでください。
ふるさとの林の歌 (新字新仮名) / 小川未明(著)
てんいまやかの朝日島あさひたうくるしめる櫻木海軍大佐さくらぎかいぐんたいさ誠忠せいちうをばつひ見捨みすてなかつたかと、兩人ふたり不測そゞろ感涙かんるいながるゝやうおぼえて、わたくし垂頭うつむき、武村兵曹たけむらへいそうかほ横向よこむけると、此時このとき吾等われらかたはら
どうしてこのことはあの人たちを見捨みすてないかぎり、やめられないのだ。
まさばかるべけれどそれすらひと見捨みすてゝはがたかるべしとてつく/″\と打歎うちなげけどひとすべきなみだならねばつく笑顏ゑがほ片頬かたほさびしく物案ものあんじのしうなぐさめながらみだるゝねぬなわこひはくるしきものなるにやるとはえて覺束おぼつかなきひと便たよりを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そのとき、主人しゅじんは、この見捨みすててゆかなければならぬのを、なげきましたばかりでなく、おんなは、おっとわかれなければならぬのを、たいへんにかなしみました。
ちょうと三つの石 (新字新仮名) / 小川未明(著)
十五分たつと、わたしたちはパリを後に見捨みすてた。
見捨みすてゝじやうなしがおまへきかあはれといへば深山みやまがくれのはなこゝろさぞかしとさつしられるにもられずひとにもられずさきるが本意ほんいであらうかおなあらしさそはれてもおもひと宿やどきておもひとおもはれたらるともうらみはるまいもの谷間たにまみづ便たよりがなくは
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そして、いけうえを、なつかしそうに一しゅうしたかとおもうと、ここを見捨みすてて、陣形じんけいつくって、たがいにわしながら、かなたへとえていってしまったのであります。
がん (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ぼくたちはきみを見捨みすてはしないよ」
かれらは、やがてとしをとり、気力きりょくがなくなり、永久えいきゅうにふるさとを見捨みすてなければならないのでした。
砂漠の町とサフラン酒 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかし、またいじらしい子供こども姿すがたると、これを見捨みすてられるものかとむちたれるのです。
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
あわれなおとこは、またまったくなかから、見捨みすてられた、さびしい人間にんげんとなってしまいました。
窓の下を通った男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
天使てんしは、このにぎやかな都会とかい見捨みすてて、とおく、あてもなくゆくのをかなしくおもいました。けれど、まだ自分じぶんは、どんなところへゆくだろうかとかんがえるとたのしみでもありました。
飴チョコの天使 (新字新仮名) / 小川未明(著)
なければ、らずにしまったことだ、そうだ、おれは、なかったことにして、このままいってしまおう……と、よわかれ自分じぶんこころをはげまして、そのまま小犬こいぬ見捨みすてて
犬と古洋傘 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このままに見捨みすてていっては、かみさまのばちたる。きっとかみさまが、わたしたち夫婦ふうふ子供こどものないのをって、おさずけになったのだから、かえっておじいさんと相談そうだんをしてそだてましょう。
赤いろうそくと人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
牛女うしおんな子供こどもは、あるとしはる西にしやまあらわれた母親ははおやゆるしもけずに、かってにその商家しょうかからして、汽車きしゃって、故郷ふるさと見捨みすてて、みなみほうくにへいってしまったのであります。
牛女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
また、ひとりがほかのとびやたかなどにかかって、いじめられるようなときがあれば、そのひとりのともだちを見捨みすてるようなことは、しませんでした。あくまで、そのともだちをたすけました。
翼の破れたからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
もしも、あなたがもっとながあいだわたしをこんなにあたたかにらしてくださらなかったなら、わたしは、ほんとうにこごえてんでしまったでしょう。どうか、もうわたしを見捨みすてないでくださいまし。
太陽とかわず (新字新仮名) / 小川未明(著)
新聞しんぶんは、金持かねもちに、なんで、こまったものを見捨みすてたかときました。
船でついた町 (新字新仮名) / 小川未明(著)