いき)” の例文
みみずは、おもいきりいきながいて、ジーイ、ジーイ、といい、かえるは、ふとく、みじかく、コロ、コロ、といって、うたっていました。
春の真昼 (新字新仮名) / 小川未明(著)
誠に有難ありがたい事で、わたくしもホツといきいて、それから二の一ばん汽車きしや京都きやうと御随行ごずゐかうをいたして木屋町きやちやう吉富楼よしとみろうといふうちまゐりました
牛車 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
兩手りやうてをわなわなふるはせて、肩でいきを切りながら、眼を、眼球がんきうまぶたの外へ出さうになる程、見開いて、唖のやうに執拗しうねく默つてゐる。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
王さまは、またいつものようにかなしい思いで石のぞうをながめながら、ためいきをついて、思わず大きな声でこういってしまいました。
しばらくしてから、羊の中の一ぴきが、なにか答えましたが、そのとき、そばにいる二、三びきのものが、深いためいきをつきました。
三日目の日盛ひざかりに、彼は書斎のなかから、ぎら/\するそらいろ見詰みつめて、うへからおろほのほいきいだ時に、非常に恐ろしくなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
いきり立って、次には、ここにある、ここにいる自分に持っている、ないとは逃げ口上——と膝詰よせて返答を迫ったということです
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しゃがんで、からだをちぢめながら、おそろしさにいきをころしていたが、やがて、なんともいえないほど、いい気持になってきた。
馬はまたいきをつぐために立ち止り、車掌は下りて来て、下り坂の用心に車輪に歯止はどめをかけ、乗客を入れるために馬車のドアけた。
黒い枕木まくらぎはみなねむり、赤の三角さんかくや黄色の点々、さまざまのゆめを見ている時、若いあわれなシグナルはほっと小さなためいきをつきました。
シグナルとシグナレス (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いきくやうに、一度いちどんで、しばらくぴつたとしづまつたとおもふと、いとゆすつたやうにかすかたのが、たちまち、あの大地震おほぢしんであつた。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
咄嗟とっさに腹をめた私は、赤いレッテルの生長液の入った壜をとりあげて栓を抜くと、グッといきに生長液をんだのであった。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
「あああ。」ヒンドバッドは、そう、ためいきをついて、荷をかつぎ上げました。そして、天をあおぎながら、ひとりごとを言ったのです。
そのとたんに、しっぺい太郎たろうをつれた六部ろくぶが、はあはあいきりながらんでました。六部ろくぶはあわててむすめ長持ながもちからしてやって
しっぺい太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
いきに吾がふ君はとりが鳴くあづまの坂を今日か越ゆらむ」(同・三一九四)等、結句の同じものがあるのは注意すべきである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ふくろはおしなをまだ子供こどものやうにおもつて迂濶うくわつにそれを心付こゝろづかなかつた。本當ほんたうにさうだとおもつたときはおしなもなくかたいきするやうにつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
さて其外そのほかでは、なんであらうか? 性根しゃうねみだれぬ亂心らんしん……いきをもむるにがもの。……いのち砂糖漬さとうづけにするほどあまもの。さらば。
すると、そのうちに、こうして藻掻もがいている私のすぐ背後で、誰だかわかりませんがかすかに、いきをしたような気はいが感ぜられました。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
こんないきもらしながら、大伴氏のふるい習しを守って、どこまでも、宮廷守護の為の武道の伝襲に、努める外はない家持だったのである。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
やすいきを入て居けるゆゑ怖々こは/″\前へ行先生只今の者に能々うけたまはりし處熊谷にて御世話になりたる者のよしに候と云ば後藤は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
茂吉の「わがからだ机に押しつくるごとくにしてみだれごころをしづめつつり」「いきづまるばかりにいかりしわがこころしづまり行けと部屋をとざしつ」
茂吉の一面 (新字新仮名) / 宇野浩二(著)
「あの二階は静でいゝ。仕事ができるよ。この春、○○先生から頼まれた飜訳も、もう一いきだ。五六百円にはなるだらう。」
来訪者 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
やゝしばしありて雪子ゆきこいきしたきはめてはづかしげのひくこゑして、もう後生ごしやうねがひで御座ござりまする、其事そのことふてくださりますな
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そして、ちよつといきれたやうな樣子やうすをすると、今度こんどはまたあたま前脚まへあしさかんうごかしながらかへしたつちあなした。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
汝急いで家に帰れ、さて父がまだいきしいたら救い得る故、清酒、鹿脯ろくほを供えて我を祭り、我名を三度呼べ、我必ず至るべし。
あいちやんはいまこそげるにときだとおもつてにはかにし、つひにはつかれていきれ、いぬころの遠吠とほゞえまつたきこえなくなるまではしつゞけました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
その先に、イシドロ、ベーダ及び想ふこと人たる者の上に出でしリッカルドのいきの、燃えて焔を放つを見よ 一三〇—一三二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
私はこれからゆっくりといきして、ゆるやかに神気を養い、更に私の画業の楽しみをつづけてゆこうかと考えています。
「どなた!」と、まだ聞いたことのない卵のように円いなまめかしい声で呼ばれると、慌てて門へけ出しながら、ほっいきつくのであった。
幻影の都市 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
で由三は些と若いいきでも吹込まれたやうな感じがして、フラ/\となかはいツた。かすかに手先を顫はしながら、額を取上げて、左見右とみかう見してゐて
昔の女 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
いろいろたずねてみるとようすがわるい、きゅうに医者いしゃにも見せたがまにあわなく、そのうちまもなくいきった。
告げ人 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
袖襟そでえりへ雪を吹入れて全身みうちこゞえいきもつきあへず、大風四面よりふきめぐらして雪をうづ巻揚まきあぐる、是を雪国にて雪吹といふ。
汽車が見えなくなったときかれはようやくさくをはなれて長いいきをついた。それからじっと大通りの方を見やった。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
この次の日曜には、行田からいま一いきくるまを飛ばしてやって来たまへ。この間、白滝しらたきの君に会ったら、「林さん、お変りなくって?」と聞いていた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
と、れかられへとはなしつゞけていきひまい、ドクトルはみゝがガンとして、心臟しんざう鼓動こどうさへはげしくなつてる。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
うんといきをつめて、目を充血させると、少し涙が出るかも知れないと思って、やってみたが、だめだった。もう、涙のない女になったのかも知れない。
女生徒 (新字新仮名) / 太宰治(著)
いのきちは、はあはあと、いきをはずませながら、そのボートのまわりを、ぐるぐるまわった。みよこも、まわった。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
「いったいどんなものを歌う必要ひつようがあるのか?」ゴットフリートは長い間だまっていてから、ほっといきをしていった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
彼が戦いに敗れ地獄にち、しばらく夢中に卒倒してあった後、たちまちいきふき返して、わが身辺を見廻わすと、彼の同僚および彼のひきいたる軍勢は
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
内部なかはいってホッと一といきつくもなく、たちま産土うぶすな神様かみさま御神姿おすがたがスーッと神壇しんだん奥深おくふかくおあらわれになりました。
そのうちに第二次大戦がはじまり、ラーゲルレーヴさんは、この戦争せんそうがだんだん大きくなっていくのを心配しながら、一九四〇年にいきをひきとりました。
実在の網に捕われ、いかなる時もいき深くして思い煩わず、美しき流れにたくましき手足を任す人こそめでたけれ。流れはその人の美しき岸に打ち寄する……。
やがて、あついコーヒーがはこぼれ、わかいふなのりはひといきつくと、まだこうふんのさめないようすで話しだした。
戦闘で倒れた八人の中で、たった三人だけがまだいきがあり、——それは、銃眼のところで撃たれた海賊の一人と、ハンターと、スモレット船長とである。
金と引換ならまだしも、無償ただで、おれが金をかけて買つたものを取られてしまふのだ。彼は、いきふさがりかけたと感じた。そして、すこし、あわてたと思つた。
四人 (新字旧仮名) / 芥川多加志(著)
ふたりのいきづかいや、腕時計の秒をきざむ音までが聞こえるほど、部屋のなかはしずまりかえっていました。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
火事場かじば纏持まといもちのように、いきせきってんでたのは、おな町内ちょうない市村座いちむらざ木戸番きどばん長兵衛ちょうべえであった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「なんのいきって……。どういったらいいかなあ、空気くうきいき神様かみさまいき、いろんなもののいき……ただいきだよ」
風ばか (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
実に神はかく人を母の胎内に造りしのみならず、これに生命と恩恵とを授け、これを顧みて、あたかも母がその子の寝息ねいきを守るが如くに人のいきを守るのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
林太郎はしろ公をだきながら、ゆびのつめをかんでいるばかりです。おっかさんは大きなためいきをついて
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)