)” の例文
子供こどもは、もはや、うみうえ航海こうかいいていました。なぜなら、あおなみあおそらのほかには、なにもることができなかったからです。
汽船の中の父と子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ひるがへつて歐米おうべいれば、さすがに母語ぼごくまでもこれを尊重そんてうし、英米えいべいごときはいたるところに母語ぼごりまはしてゐるのである。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
こけでぬるぬるした板橋の上に立って、千穂子は流れてゆく水の上を見つめた。藁屑わらくずが流れてゆく。いつ見ても水の上はきなかった。
河沙魚 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
こころ合はでもいなまむよしなきに、日々にあひ見てむこころくまでつのりたる時、これに添はするならいさりとてはことわりなの世や。
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
今日こんにち私はくまでもこの自然宗教にひたりながら日々を愉快ゆかいごしていて、なんら不平の気持はなく、心はいつも平々坦々へいへいたんたんである。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
第一、こうしてくまでも床の間を背に、玄蕃に刀をらせないように用心を払う訳もないし、何より、身体にすきがあるはずである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
所は奈良で、物寂ものさびた春の宿にの音が聞えると云う光景が眼前に浮んでまでこれにふけり得るだけの趣味を持って居ないと面白くない。
高浜虚子著『鶏頭』序 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
沢山たくさんえる、何処どこにもあるからということが価値の標準となるとすれば、きっぽくてあさはかなのは人間それ自身なのではあるまいか。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
内実はくまでも鎖攘主義さじょうしゅぎにして、ひたすら外人をとおざけんとしたるその一例をいえば、品川しながわ無益むえき砲台ほうだいなどきずきたるその上に
ろとは、大島小學校おほしませうがくかう神聖しんせいなる警語けいごで、その堂々だう/\たる冲天ちゆうてんいきほひと、そのくまで氣高けだかい精神せいしんと、これが此警語このけいご意味いみです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
我よく是を知る、我等の智は、かのまこと(これより外には眞なる物一だになし)に照らされざれば、くことあらじ 一二四—一二六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
耳にきたらその時に、黙って、突くとも斬るともするがよい。世阿弥はここにかがまったきり、とても、逃げる体力はないのだから。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この様子を見て美留藻は、めた、両親はくまで自分を紅矢と思っていると安心しました。そしてなおも弱り切った声で——
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
宿の主将ていしゅ対手あいてにしてを打っていた武士は、その碁にもいて来たので主翁をれてうしろの庭へ出た。そこは湯本温泉の温泉宿であった。
山寺の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
しかしこれはくまで事実であった。ではこの事実をどう説き明かすか。それはゼムリヤ号の煙が、もう少し治るのを待たねばならない。
地球発狂事件 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
きりやう好みの源吉が、飾屋かざりやの小町娘を、金にかして申受けたといふ經緯いききつ、——半年ほど前に、幾つのゴシツプを飛ばしたことでせう。
ちやんと勧善懲悪くわんぜんちようあく道理だうりがおわかりになるからかずに見てらつしやるのだ、其道理そのだうりわからなければ退屈たいくつして仕舞しまわけぢやアないか
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
お粥を拵えろのといってこれだけの材料を使うけれどもお粥の不味まずいのに玉子の半熟に牛乳をただ飲まさせられては病人もきるからね。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
うちるほどなら此樣こん貧乏世帶びんぼうしよたい苦勞くろうをばしのんではませぬとくに貧乏世帶びんぼうしよたいきがきたなら勝手かつて何處どこなりつてもらはう
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
遊びきると、命を助けてやる。それから、どこかへ行って、尻尾の輪の中にすわると、罪の無さそうな顔をして、空想にふける。
中野あたりの麦畑が霞んで、松二、三本、それを透して富士がボーっと夢のよう、何というやさしい景色だろうと、かず眺めつつ過ぎた。
白峰の麓 (新字新仮名) / 大下藤次郎(著)
化度けどしたいというのが、即ち仏菩薩なので、何も蓮花れんげの上にゆったり坐って百味の飲食おんじきくらこうとしているのが仏菩薩でも何でも無い。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「カッフェーももうきたからね。やっぱり芸者が一番いいな。少しピンとしたやつをどうかしようと思っているんだがね。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
『ハートフォード福音伝道者エヴァンジェリスト』誌の記事も、また、大使館公録のものも、みんな算哲様が、金にかした上での御処置だったのでございます
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「もう二三日してから行って下さいね。それだと、妾も一緒に行くかも知れないわ。箱根も妾何だかき/\して来たから。」
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
圧制あっせい偽善ぎぜん醜行しゅうこうたくましゅうして、ってこれをまぎらしている。ここにおいてか奸物共かんぶつども衣食いしょくき、正義せいぎひと衣食いしょくきゅうする。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
あらゆる暴虐ぼうぎゃくいた身を宮殿をしのぐような六波羅ろくはらの邸宅の黄金こがねの床に横たえて、美姫びきを集めて宴楽えんらくにふけっております。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
それらの人々は何ごとにも容易にくことを知らない。一人の女人にょにんや一つの想念イデエや一本の石竹せきちくや一きれのパンをいやが上にも得ようとしている。
十本の針 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
少し掘って帰られただけではきたりないではありませんか。なぜみささぎをすっかりこわして来てくださらないのです
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
強い犬が好きだった。犬にきて来たら、こんどは自分で拳闘にり出した。中学で二度も落第して、やっと卒業した春に、父と乱暴な衝突をした。
花火 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それを知りながらU氏は御祈祷を頼みにして、老母と二人の子供との生活を続けるために、勇ましくくまで働いた。
小さき者へ (新字新仮名) / 有島武郎(著)
竜一は少しきっぽい性質で、一つの遊びをそう永く続けようとはしない。次郎もこの部屋でだけは、大てい竜一の言いなりになって遊ぶのである。
次郎物語:01 第一部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
何處どこうちからもそれ相應さうおうほとけへというてそなへる馳走ちさういて卯平うへいはじめて滿足まんぞくしたくちぬぐふことが出來できたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
ただそれ好奇心のくことを知らざるやいずれの辺にか新奇を求めんとししかして鋭才の輩立てこの機に投ずるあり。
史論の流行 (新字旧仮名) / 津田左右吉(著)
「おや! 一番いちばんおおきいのがまだれないでるよ。まあ一体いったいいつまでたせるんだろうねえ、きしちまった。」
言わば、小さな暴君にかれて顧みられない玩具。Or ——発狂した悪魔詩人が、きまって毎夜の夢にさまよう家並やなみ、それがこのハルビンである。
踊る地平線:01 踊る地平線 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
『もういゝ、玄竹げんちく其方そち江戸攻撃えどこうげききた。なうこつな。』と、但馬守たじまのかみ玄竹げんちくのぶツきらぼうひたいことをふのが、きでたまらないのであつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
うたがうて立戻たちもどり、わし所行しょぎゃううかゝひなどいたさうなら、てん照覽せうらんあれ、おのれが四たい寸々すん/″\切裂きりさき、くことをらぬこのはかこやすべくらさうぞよ。
性来憂鬱を好み、日頃煩悶はんもんを口癖にしてむことを知らない。前記の言葉はその一例であるが、これは浅間麻油の聞きいた(莫迦ばかの)一つ文句であった。
小さな部屋 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
王子はそれを見て、夢のような心地ここちになられました。森の精の踊りはいつまでも続きました。いくら続いてもきないほどのおもしろい踊りでありました。
お月様の唄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
が、わたくしとしては天狗てんぐさんの力量りきりょうおどろくよりも、しろそのくまで天真爛漫てんしんらんまん無邪気むじゃきさに感服かんぷくしてしまいました。
画家でありかつ詩人であるこのホワイト君は、アメリカの物質文化にき果てた挙句あげく、新しい霊感を求めて、アマゾンの秘境を放浪していた男であるらしい。
保名やすなからだもとどおりになるにはなかなか手間てまがかかりました。むすめはそれでも、毎日まいにちちっともきずに、親身しんみ兄弟きょうだい世話せわをするように親切しんせつ世話せわをしました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
(十四) 子曰く、君子は食かんことを求むるなく、きょ安からんことを求むるなく、わざくしてことを慎み、有道にいて正す。学を好むというべきなり。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
あしは長し、食にはきたり、自由を得ただちょうの胸には、春風吹きわたり、ひづめの下には春の雲がわく。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
しかし彼は、それらの不健全な議論にき、自分が愛しておりまた恐らく愛されている、その不安定な混濁した性質の女と、暗々裏に行うたたかいに飽いていた。
だが、私が用うのはいつもこの手段のほかはなく、そうしてその場限りで何の効もないので、今ではもう母の方で、もう聞ききたよという顔をするのだった。
地球儀 (新字新仮名) / 牧野信一(著)
私は昼間階下したの暗いのにいて二階へあがつて来て居る子供等が、紙片かみきれ玩具おもちや欠片かけら一つを落してあつても
遺書 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
きることもそうだが、土が見られないのと、土のうつくしさがあらされることもおもな原因だった。そこで彼の命令によって民さんは篠竹の株を起しはじめた。
生涯の垣根 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
しかるに、中根なかね危急ききふわすれてじうはなさず、くまでじうまもらうとした。あの行爲かうゐ、あの精神せいしんまさ軍人精神ぐんじんせいしん立派りつぱ發揚はつやうしたもので、まこと軍人ぐんじんかがみである。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)