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去年天正十年の初夏から、ことし十一年の夏までの間に、秀吉の位置は、秀吉自身すら、内心、驚目きょうもくしたであろう程な飛躍をげた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてその物置へは多少の手入ていれを加えて、つまり肺結核の大学生を置いてやることにしたという。或る日この大学生は縊死いしげた。
白い光と上野の鐘 (新字新仮名) / 沼田一雅(著)
永「七兵衞さんは知るまいが、金を貸すもお前故だ、是まで出家をげても、お前を見てわしは煩悩がおこって出家は遂げられませんぜ」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いかに信心の複雑化した時代でも、個々の一家の力では、なしげ得ることではなく、またその必要もなく、権能も有り得なかった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
ほ一層の探索と一番の熟考とをげて後、きたくは再び来らんもおそからず、と失望のうち別に幾分の得るところあるをひそかに喜べり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
さだまりの女買おんながい費込つかいこんだ揚句あげくはてに、ここに進退きわまって夜更よふけて劇薬自殺をげた……と薄気味悪るく血嘔ちへどを吐く手真似で話した。
菜の花物語 (新字新仮名) / 児玉花外(著)
ひとりや(六二)猜忍さいにん人也ひとなり其少そのわかときいへ、千きんかさねしが、(六三)游仕いうしげず、つひ其家そのいへやぶる。(六四)郷黨きやうたうこれわらふ。
〔譯〕ぜんは必ず事をし、けいは必ず人をづく。歴代れきだい姦雄かんゆうの如き、其ぬすむ者有り、一時亦能く志をぐ。畏る可きの至りなり。
ロレ さうした過激くわげき歡樂くわんらくは、とかく過激くわげきをはりぐる。煙硝えんせうとが抱合だきあへばたちま爆發ばくはつするがやうに、勝誇かちほこ最中さなかにでもほろせる。
してその実行はここに述べた俸給以上の働きをするにある。五十円取る人が七十円の仕事をぐれば、二十円は俸給以上の働きである。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
猛狒ゴリラるいこのあな周圍しうゐきばならし、つめみがいてるのだから、一寸ちよつとでも鐵檻車てつおりくるまそとたら最後さいごたゞちに無殘むざんげてしまうのだ。
けれども三千代と最後の会見くわいけんげた今更いまさらちゝの意にかなふ様な当座の孝行は代助には出来かねた。彼は元来が何方付どつちつかずの男であつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
もし、まだ許嫁いいなづけがなかったなら、なんでもないし、許嫁があるにしても、たくさん賄賂をつかえば、はかりごとはげられるよ。
嬰寧 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
特殊なるこの美術は圧迫せられたる江戸平民の手によりて発生し絶えず政府の迫害をこうむりつつしかもくその発達をげたりき。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
げ功成った一代の英雄や成功者が、老後に幾人のめかけを持っても、おそらくその心境には、常にちない蕭条しょうじょうたるものがあるであろう。
老年と人生 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
昨年さくねん、ご当地とうちで、おどおりいたしましたむすめは、さる地方ちほうにおいて、たわらかさねまするさいに、腹帯はらおびれて、非業ひごう最期さいごげました。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かつてシューベルトが最高至純の域にまで押上げたドイツのリードを、シューマンはさらに変った方法によって高度の発達完成をげた。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
我輩の如きは、君も見て知っているだろうが、小鳥峠の上で、仏頂寺と見事に心中をげたんだ、仏頂寺の友誼ゆうぎじゅんじたんだぜ。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
彼女の実家は仏教の篤信者とくしんじゃで、彼女の伯母おばなぞは南無阿弥陀仏なむあみだぶつとなえつゝ安らかな大往生だいおうじょうげた。彼女にも其血が流れて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そうしてゆっくりとこの実験をげて、呉一郎としての君の記憶を回復させさえすれば、モウ何もかもこっちのものだと考え付いたんだ。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
この比較ひかくは一応それとして、彼らの憂愁が一体どこに根ざし、どういうところから特異な形成をげたかが、ここでは問題になるでしょう。
「はつ恋」解説 (新字新仮名) / 神西清(著)
おゝ、自然しぜんてきたいして、みづから、罵倒ばたうするやうな木像もくざうでは、前方さき約束やくそくげんのも無理むりはない……駄物だもの駄物だもの駄物だもの
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
雨に濡れた敷石の上に、緑色のドレスを着た女が頭蓋骨を粉砕されて無惨な死をげていた。真紅まっかな血が顔から頸筋をベットリ染めている。
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
しかし、まアくびにもならずに勤めていましたので、父はそんな私を見て安心したのか、二年後の五月には七十六歳の大往生をげました。
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
とうとう年来の宿望をげる日がやってきたのだ。それとともに、生きてふたたびこの娑婆しゃばへ出てこられようとも思われない。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
御邊ごへん可惜あたら武士を捨てて世をのがれ給ひしも、扨は横笛が深草の里に果敢はかなき終りをげたりしも、起りを糾せばみな此の重景が所業にて候ぞや
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
良人おっととの再会さいかい模様もよう物語ものがたりましたついでに、おなころわたくしがこちらで面会めんかいげた二三の人達ひとたちのおはなしをつづけることにいたしましょう。
しかし、彼女の仕事は立派に爲しげられたのであつた。彼女のいた音色は、ざされた記憶のドアを打ち落したのである。
水車のある教会 (旧字旧仮名) / オー・ヘンリー(著)
うれはしきクレオパトラは今もこの物の爲に泣く、彼はその前より逃げつゝ、蛇によりてにはかなるむごき死をげき 七六—七八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
世俗の空気にさらされて、それ相応に萌芽を出し生長をぐるものなれば、その出来不出来は、その培養たる教育の良否によって定まることなり。
家庭習慣の教えを論ず (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
父上はその本望をげた、父はねがっていた死處を得られたのだ、しかも誰にもまして華ばなしく、うらやむべき死處を。
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
父の生前にはその志をげるように努め、父の没後にはそのやり方を尊重して三年の間改めない、というごときは誠に孝の至れるものであるが
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
実にこの差別は天地霄壌てんちしょうじょうもただならざる差別であって、ヨブは大苦難のさかずきを飲みしために、ついにかくの如き霊的進歩をぐるに至ったのである。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
龍の昇天は兎も角も、かうした奇怪な娘が奇怪な死をげた事実だけは、たしかに水戸の城下に起つたに相違あるまい。
梟娘の話 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
しかしこの噴火ふんかいてもつと權威けんいある調査ちようさげたラクロア教授きようじゆは、同年どうねん十二月十六日以來じゆうにがつじゆうろくにちいらい數回すうかいわた同現象どうげんしよう目撃もくげきした。
火山の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
ついに非望のげられないことをさとった紀昌の心に、成功したならば決して生じなかったにちがいない道義的慚愧ざんきの念が、この時忽焉こつえんとして湧起わきおこった。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
するといくどでもげるまでは強情に繰り返すのだった。しまいには瞳がすわって鼻のあなを大きく開けて荒い息をしている顔が軒燈で物凄かった。
豆腐買い (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
営業者五百戸、製薬者は八百人近く、年産額二千四、五百万円といわれます。不思議な発達をげたものであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
せっせとまぐさをかきまぜているときのこころの深いやさしいそぶり。……恐らくは、げられそうもない馬との約束。
キャラコさん:10 馬と老人 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
父が壮烈な自殺をげた時は、ちょうど隣家に遊びに行っていた。そのために危く不幸な死を逃れることができた。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
世をとどろかす事業をげて見せばやと、ある時は髪結かみゆいとなり、ある時は洗濯屋、またある時は仕立物屋ともなりぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
きのふまで君をしたひしも、けふはたちま怨敵あたとなりて、本意ほいをもげたまはで、いにしへより八九あとなきつみを得給ひて、かかるひなの国の土とならせ給ふなり。
彼は今度は同じ項式の分解を三角法によってなしげようとくわだてた。彼の頭の中にはこの難問題の解決に役立つかとおもわれるいくつかの定理が隠見した。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
浪路の狂熱は、げられぬおのが願望について、くり言をしているうちに、ますますあおられて来るのであった。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
しかしながらはやしくぬぎいくとほのばして迅速じんそく生長せいちやうげようとしても、ひやゝかなあきふゆ地上ちじやうみちびくのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あのひと不幸ふしあはせな一生で死んでしまつたが、私はあのひとが志望をげてゐたらば、立派な働きをしてゐたであらうと思つて、勿體もつたいないことをしたと思つてゐる。
日本橋あたり (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
思ひ行末ゆくすゑを案じけるに今迄一點の罪ををかせし事もなきに斯る無實むじつの罪をうけやいばかゝ非業ひごふ最期さいごげ五體を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
八月六日も恰度ちょうど、学校へ行く日で、その朝、西練兵場の近くで、この子供はあえなき最後をげたのだった
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
それは私が始め出立しゅったつの時分に立てた真実の目的はチベットにおいて充分仏教の修行しゅぎょうげ、少なくとも大菩薩だいぼさつになって日本に帰りたいという決心でありました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「いやいや、勝は一人で行こう。それくらいの甲斐性かいしょうがなければ、自分の目的をげられませんもの」
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)