かがや)” の例文
まだ昨日きのうったあめみずが、ところどころのくぼみにたまっていました。そのみずおもてにも、ひかりうつくしくらしてかがやいていました。
幾年もたった後 (新字新仮名) / 小川未明(著)
つめは地面をひっかきしっぽはみじかくふとくなり、耳はつったち、口からはあわをふき、目は大きくひらいて、ほのおのようにかがやきました。
が、中根なかね營庭えいていかがや眞晝まひる太陽たいやうまぶしさうに、相變あひかはらずひらべつたい、愚鈍ぐどんかほ軍曹ぐんそうはうけながらにやにやわらひをつづけてゐた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
月は野の向こうにのぼって、まるくかがやいていた。銀色ぎんいろもやが、地面じめんとすれすれに、またかがみのような水面すいめんただよっていた。かえるが語りあっていた。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
めくらぶどうは、まるでぶなの木ののようにプリプリふるえてかがやいて、いきがせわしくて思うようにものえませんでした。
めくらぶどうと虹 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
らんとしてかがやくこと落日の赤き程度にして、周囲暗黒なるがために特に燦然たり、他の火は水平につらなりて蕩漾とうようするも、この火球は更に動かず。
地震なまず (新字新仮名) / 武者金吉(著)
海のかなたの大空を見上げたとき、女の子の眼はきらきらとかがやきました。両手が合されました。『主のいのり』をとなえたように思われます。
さびしいがはあたつてゐる。すべてが穏かな秋のなかばのあかるさだ。かがやきの無いかがやき。物音の無い、人のも無い庭、森閑とした庭、幽かな庭。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
やがてきらきらと、みずうみの上にかがやきだしたはるの日をあびて、ふわりふわりちて行く白いものの姿すがたがはっきりとえました。
白い鳥 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
その頭上に、七月の太陽が、カアッと一面に反射して、すべては絢爛けんらんと光りかがやき、明るさとまぶしさに息づいているのです。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
その頃の事にして時は冬の夜の寒く晴れわたり満天糠星ぬかぼしのこぼれんばかりにかがやける中を、今より姨捨てに行かなんとて湯婆たんぽを暖めよと命ずるなり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ああ、あの花のようにかがやきにち、あの広葉のようにお心広く、おやさしくいらっしゃる天皇を、どうして私はおしたわしく思わないでいられよう
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
彼女の目蓋まぶたがそっと上がって、またもやその明るい眼がわたしの前に優しくかがやき出したかと思うと、またしても彼女はにっとあざけるように笑った。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
頭上には、精鋭なるドイツ機隊のつばさかがやき、そして海岸には、平舟ひらぶねふなべりをのり越えて、黒き洪水こうずいのような戦車部隊が!
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ろう細工ざいくのようなりんごや、青い葉の上にならべられた赤いいちごなどが、細い水玉みずたまをつけてきらきらとかがやきます。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
わが応援おうえんの士官たちも思わず顔を見合わせましたが、M大尉の顔はりんとしてかがやいているだけでしたので、人々はまずあんどのむねをなでおろしました。
国際射的大競技 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
遠くの向うに、明かな日光の暖かに照りかがやく海をひかえて、上衣うわぎを着た美しい男と、紫のそでを長くいた美しい女が、青草の上に、判然はっきりあらわれて来た。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ここに仰せになるには「この處は海外に向つて、カササの御埼みさきき通つて、朝日の照りかがやく國、夕日のかがやく國である。此處こそはたいへん吉いところである」
の音だけの海の上で、子どもたちの歌声は耳によみがえり、つぶらな目のかがやきはまぶたのおくに消えなかった。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
いつでも何でも訊いてくれといわんばかりにかがやいている良師良友の辞典を措き忘れて、わからぬ事を、わからぬままに、よそへ向って、うろうろしている愚を
辞典のすすめ (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかしをとこ咄嗟とつさに、わたしを其處そこ蹴倒けたふしました。丁度ちやうどその途端とたんです。わたしはをつとなかに、なんともひやうのないかがやきが、宿やどつてゐるのをさとりました。
藪の中 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
えんえんともえあがる猛火もうかに、三じゃく青竜刀せいりゅうとうをあおくかがやかし、ゆくてに立った六しゃくゆたかの明兵みんぺいがあった。
三両清兵衛と名馬朝月 (新字新仮名) / 安藤盛(著)
それに一生をささげていない青年、そうした青年が輩出はいしゅつしてこそ、日本の国士がすみずみまで若返り、民族の将来が真にかがやかしい生命の力にあふれるのであります。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
浅草は今では活動写真館が軒を並べてイルミネーションをかがやかし、地震で全滅しても忽ち復興し
楽隊がくたいがにぎやかに鳴り出しました。と、きえちゃんにふんした新吉が、まずまくのかげからあらわれました。それから、むねに金銀の星のかがやく服を着たわか姉さんが現れました。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
わたくしただちに統一とういつめて、いそいで滝壺たきつぼうえはしますと、はたしてそこには一たい白竜はくりゅう……爛々らんらんかがや両眼りょうがん、すっくとされた二ほんおおきなつのしろがねをあざむくうろこ
男前だと思って、本当にしょっているわ。寺田の眼は急にかがやいた。あの男だ。あの男がこの女中を口説こうとしたのだ。寺田は何思ったか、どうだ、もう一本してやろうか。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
土饅頭どまんじゅうぐらいな、なだらかなおか起伏きふくして、そのさきは広いたいらな野となり、みどり毛氈もうせんをひろげたような中に、森や林がくろてんおとしていて、日の光りにかがやいてる一筋ひとすじの大河が
強い賢い王様の話 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
前なる四輪の豪奢ごうしゃな馬車には、霊公とならんで嬋妍せんけんたる南子夫人の姿が牡丹ぼたんの花のようにかがやく。うしろの見すぼらしい二輪の牛車には、さびしげな孔子の顔が端然たんぜんと正面を向いている。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
これまでの洋行帰りは、希望にかがやく顔をして、行李の中から道具を出して、何か新しい手品を取り立てて御覧に入れることになつてゐた。自分は丁度その反対の事をしたのである。
妄想 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
切り髪のお蓮様は、いたくやつれているように見えるものの、その美しさはいっそうのかがやきを添えて、見る人の心に、いい知れぬ憐れみの情を喚び起こさずにはおかないのでした。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
白鯉しろこいうろこを以て包んだり、蜘蛛くもの糸を以て織りなした縮羅しじらきぬを引きはえたり、波なき海をふちどるおびただしい砂浜を作ったり、地上の花をしぼます荘厳そうごん偉麗いれいの色彩を天空にかがやかしたり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
蜒々えんえんとしたなぎさを汽車はっている。動かない海と、屹立きつりつした雲の景色けしきは十四さいの私のかべのように照りかがやいて写った。その春の海を囲んで、たくさん、日の丸の旗をかかげた町があった。
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
しかしです、新生活しんせいかつあかつきかがやいて、正義せいぎかちせいするようになれば、我々われわれまちでもおおいまつりをしてよろこいわいましょう。が、わたしはそれまではたれません、その時分じぶんにはもうんでしまいます。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
かがやく蒼空をいまき出すように頭上の薄膜はくまくの雲は見る見るはがれつつあった。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
或る時は、そのやや真深かにかぶった黄いろい麦藁帽子むぎわらぼうしの下から、その半陰影はんいんえいのなかにそれだけが顔の他の部分と一しょにもうとしないで、大きく見ひらかれた眼が、きらきらとかがやいていた。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
えりあたあき狐色きつねいろかがやいていた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
さけぶようにいつてかがやかした。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
かがやくはがねのかぶとよりが固く
太陽の子 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
かのかがやける豊かなる宝は
自然界しぜんかい法則ほうそくがあれば、人間界にんげんかいにも法則ほうそくがある。どのほしても、ほこらしげに、またやすらけくかがやくのは、天体てんたい法則ほうそくまもるからだ。
アパートで聞いた話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それに、目を見れば、おそろしくなるばかりです。それは黄色きいろくて、そのうしろに火がもえてでもいるように、キラキラとかがやいています。
ゆるやかにのぼって行く雲の上に、月はまるく明るくかがやいていました。月がわたしに話してくれたことをお聞きください。
少女のギルダは、まるでぶなの木の葉のようにプリプリふるえてかがやいて、いきがせわしくて思うように物がえない。
マリヴロンと少女 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
「あ、お父さん」ボーイ・スカウトの服装に身を固めた素六は、緊張のおもてかがやかせて、立止たちどまった。「いよいよ警戒管制が出ましたから、僕働いてきます!」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
(この時の音楽おんがくはひときわかがやかしいものだった。)それから、はは食卓しょくたくに食物を運ぶ時の音楽おんがくもあった——その時、彼は喇叭らっぱの音で彼女をせきたてるのだった。
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
そのラッカアりの船腹が、仄暗ほのぐらい電燈に、丸味をおび、つやつやしく光っているのも、みょうに心ぼそい感じで、ベランダに出ました。遥か、浅草あさくさ装飾燈そうしょくとうが赤くかがやいています。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
びが、片手かたてっぺたにあててどなります、すると正面の幕がさっと上がり、中から、むねに金銀の星のかがやく赤い服をきた少女を、二人ずつ乗せた馬が三、四頭出て来ます。
曲馬団の「トッテンカン」 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
もうすっかりあかるくなって、日がのぼりかけました。くさの上のつゆがきらきらかがやしました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
上は高天原たかまのはらまでもあかあかと照らし、下は中つ国までいちめんに照りかがやかせておりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)