たん)” の例文
凝然ぢつとしたしづかなつきいくらかくびかたむけたとおもつたらもみこずゑあひだからすこのぞいて、踊子をどりこかたちづくつての一たんをかつとかるくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
とあやしまれたがのちによく見れば、独楽こま金輪かなわの一たんに、ほそい金環きんかんがついていて、その金環から数丈すうじょうひも心棒しんぼうにまいてあるのだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そして折り尺の一たんをにぎって、他のはしを高くお面のほうへ近づけた。すると、お面の両耳が、ぷるぷるッとせみの羽根のようにふるえた。
怪星ガン (新字新仮名) / 海野十三(著)
それから近来では極東問題などというものが、今まさにたんを日清戦争から惹起している有様で、なかなかこの外交の範囲が広くなって来た。
外交の方針 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
中国では毎年この日を民族の紀念日としてメーデー以上の騒ぎをするが、昭和七年の日支事変の遠因もここからたんを発している部分が多い。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
ぞ頼みけるこれ陰徳いんとくあれば陽報やうはうありとのたとへの如く此事このこと後年こうねんに至つて大岡殿の見出しにあづかる一たんとはなりぬされば新藤夫婦は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
私の親馬鹿は、このへんからたんを発しているらしい。その後、数年って私は長女が小学校へ入学したとき、『親馬鹿の記』という随筆ずいひつを書いた。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
こゝを以て一たんを二丈七尺としても二万四千四百八十四度*5手をはたらかせざればたんをなさず、其凡そのおよそをいふのみ。
諸家の増益はたんを梁の武帝の時に成つた陶隠居の集註にひらき、次で唐の高宗の顕慶中に蘇敬の新修本草が成つた。又唐本草とも云ふ。是は七世紀の書である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
それは、ちょうど、私共が当大学を卒業致します時で、正木先生が卒業論文として『胎児の夢』と題する怪研究を発表されたのに、たんを発したので御座いました
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
いわく、すべて宗教の事よりたんを開き、あるいは宗教の事に托して起したる戦争は、左の四件をあらわす。
外国人はおのおのそのみとむるところの政府に左袒さたんして干渉かんしょうたんを開くのおそれありしといわんか。
浴槽ゆぶねの一たん後腦こうなうのせて一たん爪先つまさきかけて、ふわりとうかべてつぶる。とき薄目うすめあけ天井際てんじやうぎは光線窓あかりまどる。みどりきらめくきり半分はんぶんと、蒼々さう/\無際限むさいげん大空おほぞらえる。
都の友へ、B生より (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
勿論もちろんこの問題もんだい專門家せんもんかよつ飽迄あくまで研究けんきうされねばならぬのであるが。我輩わがはいは、こゝにはふか哲學的議論てつがくてきぎろんにはらないで、きはめて通俗的つうぞくてきこれくわんする感想かんさうの一たんべてよう。
建築の本義 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
それに、めるやうな友染いうぜん縮緬ちりめんが、たんものをほどいたなりで、一種ひといろかゝつてたんです。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
是非の心偏すれば、民或は兄弟かきせめぎ父子相うつたふ者有り。凡そ情の偏するや、四たんと雖遂に不善ふぜんおちいる。故に學んで以て中和をいたし、過不及かふきふ無きにす、之を復性ふくせいの學と謂ふ。
近代の指揮法のたんを開いた人として極めて重要な指揮者であるニキシュについては、近衛秀麿の『シェーネベルク日記』などになかなか面白いいろいろなことが書かれてある。
誠は指頭しとうよりほとばしって、とが毛穎もうえいたんに紙を焼く熱気あるがごとき心地にて句をつづる。白紙が人格と化して、淋漓りんりとして飛騰ひとうする文章があるとすれば道也の文章はまさにこれである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かくあるも道理なれ、甲比丹カピタンクックは、太平洋を航して、幾多の群島を発見せり。仏蘭西フランス安南アンナンに向い、その交渉のたんひらけり。露人は既に南下の勢に乗じて、樺太のなかばを占略せり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
成程先達せんだっ集古しゅうこ十種と申す書物で見ましたが、一たんかき入れを致して其の上を栗色の革にて包みまして、柄はかば糸にて巻き、目貫は金壺笠きんつぼがさに五三の桐でございまして、鍔袋もやはり栗色革
これをばむすがみひかへさせて綿銘仙めんめいせん半天はんてんたすきがけの水仕業みづしわざさすることいかにしてしのばるべき、太郎たらうといふもあるものなり、一たんいかりに百ねんうんとりはづして、ひとにはわらはれものとなり
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
西尾小左衛門は、部下を連れて、荷駄方から木綿の荷を受け取り、こりを解いて、四、五十たんの布を、信長のわきへ積みかさねた。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
先驅さきがけひかり各自てんでかほ微明ほのあかるくして地平線上ちへいせんじやう輪郭りんくわくの一たんあらはさうとする時間じかんあやまらずに彼等かれらそろつて念佛ねんぶつとなへるはずなので
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
戦乱は何時いつまで続くか分らぬが、この教訓に依って、人類がいわゆる罪悪を自覚して、ここに初めて平和のたんを開くのである。
大戦乱後の国際平和 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
その礎石の爆発にたんを発して、かの二十五階の摩天閣まてんかくたるエディ・ホテルが安定を失って、ぐらぐらとかたむき始めたかと思うと
(ちゞみはくぢらざし三丈を定尺とす)うみはじむるよりおりおろしさらしあげてたんになすまでの苦心労繁くしんらうはんおもひはかるべし。
如何なればにはか變更へんかうせしぞ此事逐一ちくいち申し上よと言れて忠兵衞おそる/\一たんかくとは約したれど箇樣々々の醫師いし來りて彼お光こそ癲癇病てんかんやみなりとテレメンテーナと言ふ藥のことを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
〔評〕江藤新平しんぺい、前原一誠いつせい等の如きは、皆維新いしんの功臣として、勤王二なく、官は參議さんぎに至り、位は人臣のえいきはむ。然り而して前後皆亂を爲し誅に伏す、惜しいかな。豈四たんへんありしものか。
みづうみの一たんは、ふね松蔭まつかげゑがいて、大弦月だいげんげつごとかゞやいた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しかしながら歴史的に国民として脳裡のうりに一日も忘れることの出来ぬところの帝国の文明的運動の始まりは、明治大帝御即位にたんを発している。
吾人の文明運動 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
一ぽうを見ると、そこにすばらしく大きいむく大木たいぼくがある。その高いこずえの一たんがちょうど、鳥居とりい横木よこぎにかかっているので
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
柿丘秋郎と白石博士との両家庭が、非常に親しい交際つきあいをするようになったのは、実にこうした事情にたんを発していた。
振動魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
これいかんとなれば縮を一たんになすまでに人のらうする事かぞへつくしがたし。なか/\手間てま賃銭ちんせんあて算量つもる事にはあらず、雪中に籠居こもりをる婦女等ふぢよらむなしくせざるのみの活業いとなみ也。
唐鍬たうぐは刄先はさき卯平うへいあたまちかむしろの一たんかすつてふかつちつた。かれはそれから燒盡やきつくして一ぱいおきになつた自分じぶんうちちかつた。かれおそろしい熱度ねつどかんじて少時しばし躊躇ちうちよしてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
と、京の使臣にも洩らしたことがある程だし、越後との長期にわたる合戦も、実に、それへ発足するための一部戦としてたんを開いたものだった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
国民の無力のために、それに代る事が出来なかったんである。それが、今日偶然憲法の解釈に論を及ぼすのたんを開いた。が、まだなんらの形を為さぬ。
手持ちの兵は少ないし、よしんば、兵力があったにせよ、散所ノ太夫を相手とすれば、たちまち、合戦のたんとなる。
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
またこの弊に打克つことが出来ないような国民ならば、国家の衰亡はこれよりそのたんを発するのである。
選挙人に与う (新字新仮名) / 大隈重信(著)
たんをかまえ、秀吉に一口実を与えて、戦をはじめ出したのであるから、それだけでも、信孝のぶたか亡きあと、この名血族の断絶も、はや遠くない気がされるのだった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あおい駿河するがの海岸線の一たんには、家康いえやす居城きょじょうが、松葉でつつんだ一菓子かしのごとく小さくのぞまれる。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(最低保証の定給制もいくらか有ったのかもしれないが)——たとえば、写経一はりぜにもん、四十張で布一たん、八十張であしぎぬ一匹、といった程度。そして食物は一切精進だ。
美しい日本の歴史 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし、流行のたんはここからでも、それを欲する時好じこうの素地は一般にあった。朝廷方でも、みな時好にならい、男でも、うす化粧して、まゆをかき、紅さえほおにいている若公卿が殖えて来ている。
姓は二字の皇甫こうほ、名はたん
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)