こおり)” の例文
「いままで通ってきた大きなみずうみこおりがゆるんでいて、キツネがわたれないようになっていたら、もってこいの場所なんだけどなあ。」
また、あるときは、この氷山ひょうざんが、まるで蒸気機関じょうききかんのついているこおりふねのように、おそろしい速力そくりょくで、まえはしってゆくこともありました。
幽霊船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのとき、お妃さまのむねのなかにすくっていた思いあがりのあついこおりがとけて、お妃さまは心のそこから後悔こうかいしました。そして
とうとうそれはかたかたこおってきて、子家鴨こあひるうごくとみずなかこおりがめりめりれるようになったので、子家鴨こあひるは、すっかりその場所ばしょこおり
はすの花のいているときもあるし、ほたるの飛んだばんもあったし、こおりの上に雪のつもっているときもありました。
清造と沼 (新字新仮名) / 宮島資夫(著)
パキン! パキン! と二ど三ど、忍剣の鉄杖が舞ってうけたかと思うと、佐分利の大刀は、こおりのかけらが飛んだように三つに折れてつばだけが手にのこった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
沙車さしゃの春のおわりには、野原いちめんやなぎの花が光ってびます。遠くのこおりの山からは、白い何ともえずひとみいたくするような光が、日光の中をってまいります。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
その雪をいただいた山がこおりけずったような裾を、紅、緑、紫の山でつつまれた根まで見える、見晴の絶景ながら、窓の下がすぐ、ばらばらと墓であるから、またおびえようと
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひたいでるとこおりの様につめたいが、地蔵眉の顔は如何にも柔和で清く、心の美しさもしのばれる。次郎さんをはじめ此家の子女むすこむすめは、皆小柄こがらの色白で、可愛げな、そうしてひんい顔をして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
こおり解けて水の流るゝ音すなり 子規
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「あのたかやまには、まだ、ゆきがあるな。」と、かれは、こおりをけずったような、さきのとんがった、かがやくみねとれていました。
雲のわくころ (新字新仮名) / 小川未明(著)
というのは、とつぜん、大きなこおりのかたまりが、あっちにもこっちにもあらわれてきて、たがいにぶっつかりあっているのです。
やがて、雪とこおりにとざされるようになりますと、女の子はあわれなけものみたいに、木の葉のあいだにもぐりこんで、こごえないようにしました。
なんでたまろう、二じょう白虹はっこう、パッと火花をちらしたかと思うと、燕作の鈍刀なまくらがパキンと折れて、こおりのごとき鋩子きっさき破片はへん、クルッ——と虚空こくうへまいあがった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
が、翌朝よくあさはやく、一人ひとり百姓ひゃくしょうがそこをとおりかかって、このことつけたのでした。かれ穿いていた木靴きぐつこおりり、子家鴨こあひるれて、つまのところにかえってました。
おまえたちはみなこれから人生という非常ひじょうなけわしいみちをあるかなければならない。たとえばそれは葱嶺パミールこおり辛度しんどながれや流沙るさの火やでいっぱいなようなものだ。
ちょうど、このくにには、あかいそりが五つありました。このそりは、なにかことのこったときに、いぬにひかせて、こおりうえはしらせるのでした。
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
ガンたちは遊びつかれますと、こおりの上に飛んでいって、二時間ばかり休みました。その日の午後も、午前とほとんど同じようにしてすごしました。
こおりのようにこごえた手が、ビッショリとしずくをたらしてそこへすがってきた。——と同時に、滝壺のなかからはいあがってきた少年をみたふたりは、おもわず声をあげて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これをもってこおりのはった川へいってね、氷にあなをあけて、このより糸をすすいでおいで。」
夏に銅のつぼに水を入れ壺の外側そとがわを水でぬらしたきれでかたくつつんでおくならばきっとそれはえるのだ。なんべんもきれをとりかえるとしまいにはまるでこおりのようにさえなる。
翌朝よくあさると、はたして湖水こすいおもては、かがみのごとくひかって、かたくりつめたこおりは、武士ぶしをやすやすと、むこうのきしまで、わたらせてくれたのでした。
きつねをおがんだ人たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
またおもいものをはこびながら、手で水をすくうことも考えることのできないときは、そこから白びかりがこおりのようにわたくしの咽喉のどせてきて、こくっとわたくしの咽喉のどを鳴らし
イーハトーボ農学校の春 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
大男たちはかんゆかにおろしました。若者わかものはそのそばへいって、ふたをとってみました。すると、なかにはひとりの死人しにんがねていました。顔にさわってみますと、まるでこおりのようにつめたいのです。
こおりえん
剣の四君子:02 柳生石舟斎 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのは、いつにないさむよるでしたが、けはなれると、いつのまにか、うみうえには昨日きのうのように、一めんこおりりつめてひかっていたのです。
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
きたからこおりのようにつめたいすきとおったかぜがゴーッとふいてきました。
いちょうの実 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ほかの子供こどもたちが、こおりすべりをおもしろがってしていますなかに、ひとりこの少年しょうねんのみは、しずみがちにすべっていました。
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
あれは合理的ごうりてきだと思う。湧水わきみずがないので、あのつつみへけた。こおりがまだどてのかげには浮いているからちょうど摂氏零度せっしれいどぐらいだろう。十二月にどてのひびをめてから水は六分目までたまっていた。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
くすりいにいったり、こおりあたまやしたりして、ちいさい子供こどもちからで、できるだけ看病かんびょうをしました。親方おやかたは、しわのったじりに、なみだをためて
春風の吹く町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おおきなみずたまりをつくって、そのなかへ、こおりのかけらをげいれておきます。くまは、あつさにこらえられないので、幾度いくどとなく、そのみずなかひたります。
白いくま (新字新仮名) / 小川未明(著)
たまたまかみあいだからのないかおあらわれたかとおもうと、ガラスだまのようにひかったが、こおりのようにつめたくあたりをまわしていたのであります。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
なまりいろにすこしのすきまもなく、りつめたこおりは、金属きんぞくのようなおとをたてて、いしは、どこまでも、どこまでもうなりながら、ころがってゆきました。
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
「もう、こおりすべりをしているのでないかしらん? ぼっちゃんもいっしょに?」とおもうと、むねがどきどきとしました。
愛は不思議なもの (新字新仮名) / 小川未明(著)
このあたりのうみには、ほとんど、毎日まいにちのごとくこうした氷山ひょうざんました。あるときは、悠々ゆうゆうとして、このおおきなこおりかたまりは、あてもなくながれてゆきました。
幽霊船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただ、いつのことであったか、こうした氷山ひょうざんが、きしちかづいてきましたときに、人々ひとびとは、なんだかくろちいさなものが、こおりうえちているのをました。
幽霊船 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるのこと、そのくにおとこひとたちがこおりうえで、なにかいそがしそうにはたらいていました。ふゆになると、うみうえまでが一めんこおりりつめられてしまうのでした。
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、おかあさんは、ごはんもあまりめしあがらず、よるもねむらずにまくらもとにすわって、こおりまくらのこおりがなくなれば、とりかえたりしてくださいました。
笑わなかった少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ただしろ荒寥こうりょうとした鉛色なまりいろひかこおり波濤はとう起伏きふくしていて昼夜ちゅうや区別くべつなく、春夏秋冬はるなつあきふゆなく、ひっきりなしに暴風ぼうふういている光景こうけいかぶのでした。
台風の子 (新字新仮名) / 小川未明(著)
つきが、しばらくをたってのちに、このあたりの海上かいじょうらしたときは、こおりけはじめて、あざらしのらしている太鼓たいこおとが、なみあいだからきこえました。
月とあざらし (新字新仮名) / 小川未明(著)
おおかみも今夜こんやさむいとみえて、ふっ、ふっとしろいきいていました。そして、こおりった水盤すいばんのようなつきかって、うったえるようにほえるのでありました。
春になる前夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)
脂肪しぼうのたくさんな、むくむくとあついしろくまはそこを平気へいきあるいていました。また、こおりける時分じぶんになれば、けわしいやまほうへのこのことかえってゆきました。
白いくま (新字新仮名) / 小川未明(著)
ものは、まあ、これでもしかたがないが、あついのには、こまってしまいました。するとしろきれをかぶったおとこが、おおきなこおりかたまりみずなかんでゆきました。
白いくま (新字新仮名) / 小川未明(著)
とうとう、こがらしのふく、季節きせつとなりました。すると、水盤すいばんみずは、こおりのようにつめたかったのです。
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)
エー心臓しんぞうは、こおりで、ぐっとにぎられたように、ぞっとして、ものがいえなく、ふるえていました。
死と話した人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あねは、なんとおもったか、足音あしおとのしないようにしずかに、その子供こどものそばにちかづきました。そして、こおりのようにやかなくちびるで、子供こどものりんごのようなほおに接吻せっぷんしました。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、良吉りょうきちからあつなみだながして、ともにすがりました。しかしともこおりのようにつめたかったのです。そして、かおいろは、ろうのようにすきとおってえました。
星の世界から (新字新仮名) / 小川未明(著)
かわうえにはゆきもっていました。そして、そのしたながれは、まっていました。おじいさんはゆきこおりやぶると、そのしたに、くろみずがものすごく、じっと見上みあげています。
都会はぜいたくだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
便所べんじょへつれていったり、また夜中よなかにまくらのこおりをとりかえてやったりしました。なかには
だまされた娘とちょうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると、彼女かのじょむねかなしく、じこめていたこおりけるようながしました。そして、どこをても、まだ冬空ふゆぞらであったが、はるかぜが、まちや、木立こだちくようながしました。
ある冬の晩のこと (新字新仮名) / 小川未明(著)