)” の例文
そのそばにえている青木あおきくろずんで、やはり霜柱しもばしらのためにいたんではだらりとれて、ちからなくしたいているのでありました。
小さな草と太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
此方こちら焚火たきびどころでい。あせらしてすゝむのに、いや、土龍むぐろのやうだの、井戸掘ゐどほり手間てまだの、種々いろ/\批評ひひやうあたまからかぶせられる。
れ絹の風に開く中から見える女衣装は花のにしきを松原に張ったようであったが、男の人たちの位階によって変わった色の正装をして
源氏物語:35 若菜(下) (新字新仮名) / 紫式部(著)
襟髮えりがみを取つて八五郎が引立てると、素直に首をれて、トボトボと歩きますが、もとの庄司の家へ歸るのを、ひどく嫌がる樣子です。
舌の上にはとろとろした血のりがたまっていたではないか。彼はその舌で、ポトポトと赤いしずくをらしながら、口辺をめ廻した。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
二郎はいたくい、椅子のうしろに腕を掛けて夢現ゆめうつつの境にありしが、急に頭をあげて、さなりさなりと言い、再びまなこを閉じ頭をれたり。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
かまちがすぐにえんで、取附とッつきがその位牌堂。これには天井てんじょうから大きな白の戸帳とばりれている。その色だけほのかに明くって、板敷いたじきは暗かった。
縁結び (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「——誰かがさらって……」といって入口の方をゆびさしたと思うと、ガックリと頭をれた。ジュリアはまた失心してしまったのだった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
××もまた同じことだった。長雨ながあめの中に旗をらした二万トンの××の甲板かんぱんの下にも鼠はいつか手箱だの衣嚢いのうだのにもつきはじめた。
三つの窓 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
犬は、ぱつとけだして逃げる、と思ひのほか、同じ場所に首をれてじつとしてゐるのでした。鳥右ヱ門は拍子ひやうしぬけがしました。
鳥右ヱ門諸国をめぐる (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
しかも昨日御殿坂で例ののっそりがひとしおのっそりと、往生したとりのようにぐたりと首をれながら歩行あるいて居るを見かけましたが
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
大木のこずえからは雨もっていないのにしずくがぽたりぽたりとれ、風もないのに梢の上の方にはコーッという森の音がこもっていた。
鬼退治 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
お蔦 食べる物をあげたいけど、ここの家はしみれで話にならない。あたしの身上ありッたけやるから、どこかで何か食べてお行き。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
だがそれでも足りないと見え、塗り込めになっている書棚があり、昆虫を刺繍した真紅まっかぬのが、ダラリと襞をなしてかかっている。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
母は悲しそうに首をれた。しばしば言葉もとぎれた。もう一度顔をあげたときにはあきらめたように、ややはきはきとものを言った。
二人はどう返事をしていいかわからぬらしく、病人が休もうとするときの看護人のように、腕をれ、遊ばせたまま、待っていた。
審判 (新字新仮名) / フランツ・カフカ(著)
この勵ますことば第二の火よりわがもとに來れり、是においてか我は目を擧げ、かの先に重きに過ぎてこれをれしめし山を見ぬ 三七—三九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
この人は漁夫に変装して日々桂川かつらがわりをれ、幕府方や会津桑名の動静を探っては天龍寺にある長州軍の屯営とんえいに通知する役を勤めた。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
だが俺は、いくら貴様が、入壇したからといっても、まだ乳くさい十歳とおやそこらのはなれを、一人前の沙門しゃもんとは、認めないのだ。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「しかたがない。これ、せがれ。死人の首でも取ッてごまかして功名しろ」と腰に弓を張る親父おやじが水鼻をらして軍略を皆伝すれば
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
見かねた美都子が、その小犬を抱きあげてやると、俯向うつむいていたハルミは、そのまま顔も上げないで、両手をだらんとらしてしまった。
睡魔 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
いずれも表の構えは押しつぶしたようにのきれ、間口まぐちせまいが、暖簾の向うに中庭の樹立こだちがちらついて、離れ家なぞのあるのも見える。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
例えば、我は越後の者なるが、何月何日の夜、この山路やまみちにて若き女の髪をれたるに逢えり。こちらを見てにこと笑いたりというたぐいなり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しかし幸いにも野原の中に、一つの古い井戸がありました。そしてその井戸には、一筋の藤蔓ふじづるが下の方へれ下がっていました。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
今日もお昼に、彼らは、足を引きずり、羊のれのようにぞろぞろ中学校から帰ってくる。にんじんは、首をれて歩いていた。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
かの真女児が家に尋ねいきて見れば、門も家もいと大きに造りなし、六三しとみおろし六四すだれれこめて、ゆかしげに住みなしたり。
「そんだが、年齡としになつて懲役ちようえきぐなれも」ぢいさんはずつとれたあたまおさへてわらひこけた。ばあさんもどつと哄笑どよめいた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その目が素晴らしく大きく鼻と額とっ着いてほおの毛がふっさり達筆にれ、ドロンとした目をしてこちらを見ている所をこっちから見ると
おなじ年明ねんあきを引摺り込むにしても、もう少し眞人間らしいのを連れて來ればいゝのに、權三の奴めも見かけによらねえはならし野郎だ。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
真子まなごなす御神の子等は、木綿ゆうあさね髪らし、胸乳むなぢをしあらはし出だし、裳緒もひもをばほとに押し垂れ、歌ひ舞ひ仕へまつらふ、今日の尊さ
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
着ているのは、ふわりとしたうすしゃの服で、淡青うすあお唐草模様からくさもようがついていた。かみはイギリス風に、長いふさをなして両のほおれかかっていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
余が口笛くちぶえいたら、彼女かのじょはふっと見上げたが、やがて尾をれて、小さな足跡あしあとを深く雪に残しつゝ、裏の方へ往って了うた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そのうえには、どんよりした鉛筆でぼかしたような曇った日ざしが、おそい秋頃らしく、重く、低い雲脚くもあしれていたのです。
寂しき魚 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
籠のれを内から掲げながら、立ち出でた総髪の男を見たとき、彼は嬉しさのあまり躍り上りたかった。それは紛れもなく和田直之進だった。
仇討三態 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
酒売りの女が私たちの声を聞いて売りつけに来たのです。この酒は棕櫚の幹に切り傷をこしらへて、そこかられるしづくでつくるやつなのです。
亜剌比亜人エルアフイ (新字旧仮名) / 犬養健(著)
動く景色けしきは見えぬ。口は動かしているかも知れんが、言葉はまるで聞えぬ。男はやがて首をれた。女は山の方を向く。顔は余の眼に入らぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さわやかにもたげた頭からは黄金のかみが肩までれて左の手を帯刀おはかせのつかに置いてきっとしたすがたで町を見下しています。
燕と王子 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
箱のようなきわめて小さな舟を岸から四、五間乗り出して、りをれていた三人の人がいつのまにかいなくなっていた。湖水はさざなみも動かない。
春の潮 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
うれしさうにえずたはむれたりえたりして、呼吸苦いきぐるしい所爲せゐか、ゼイ/\ひながら、其口そのくちからはしたれ、またそのおほきななかぢてゐました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
うそをつけ。つらあらったやつが、そんな粗相そそうをするはずァなかろう。ここへて、よく人形にんぎょうあしねえ。こうに、こんなにろうれているじゃねえか
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
君子きみこ不審いぶかしさに母親はゝおや容子ようすをとゞめたとき彼女かのぢよ亡夫ばうふ寫眞しやしんまへくびれて、しづかに、顏色かほいろ青褪あをざめて、じろぎもせずをつぶつてゐた。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
やがて、らした綱が二百ファゾムほどになったとき、底に達したらしく、かすかな手応え……。いよいよ、地底の晦冥国キンメリアへ。
人外魔境:10 地軸二万哩 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
そこにたたずんだ容姿すがたをちらと見ると、蒼ざめた頬のあたりに銀杏返いちょうがえしのびんの毛が悩ましくれかかって、赤く泣いた眼がしおしおとしてうるんでいる。
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
が、それと同瞬どうしゅん、駕籠の中から、れをいて突き出して来た銀ののべ棒——三尺の秋水しゅうすいだ。声がした。「つばを見ろ!」
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
影に区切られた地面の向うには、初秋の午後の強い日光をあびて、伸びた雑草がいちように葉先をれてい、そこから、蒸れた草の香が匂って来た。
今わたくしの作る火は大空高くカムムスビの命の富み榮える新しい宮居のすすの長くさがるようにげ、地の下は底の巖に堅く燒き固まらして
大佐たいさばかりでない、快活くわいくわつなる武村兵曹たけむらへいそうも、其他そのた水兵等すいへいらも、電光艇でんくわうていより上陸じやうりくした一同いちどうは、こと/″\色蒼いろあほざめ、かうべれて、何事なにごとをかふかかんがへて樣子やうす
葉石氏はしょうが出阪の理由を知らず、婦女の身として一時の感情に一身を誤り給うなと、ねんごろなる教訓をれ給いき。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
踏分々々ふみわけ/\たどり行て見ば殊の外なる大家なり吉兵衞は衣類いるゐ氷柱つらゝれ其上二日二夜海上にたゞよ食事しよくじもせざれば身體しんたいつかはて聲もふるへ/\戸のそとより案内を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
お下げにった女生徒と鼻をらした男生徒とがぞろぞろと下駄箱のほうに先を争って出て行った、いずれの教室にも同じような言葉がくり返される。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)