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踏分々々
踏分々々たどり行て見ば殊の外なる大家なり吉兵衞は
衣類も
氷柱垂れ其上二日二夜海上に
漂ひ
食事もせざれば
身體疲れ
果聲も
震へ/\戸の
外より案内を
踏分々々たどり
行て見れば人家にはあらで
一簇の
樹茂りなれば
甚く望みを失ひはや
神佛にも
見放され此處にて一命の
果る事かと
只管歎き
悲みながら猶も向を
踏分々々彼お三婆の
方へ
到りぬ今日は
怪からぬ大雪にて
戸口へも出られずさぞ寒からんと存じ
師匠樣より
貰ひし酒を
寒凌ぎにもと少しなれど
持來りしとて
件の
徳利と
竹皮包を