両手りょうて)” の例文
旧字:兩手
吉坊よしぼうは、両手りょうてあたまうえにのせて、きよちゃんがあちらへゆけば、そのほう見送みおくり、こちらへくればまたはなさずに、むかえていました。
父親と自転車 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのばん郵便局長ゆうびんきょくちょうのミハイル、アウエリヤヌイチはかれところたが、挨拶あいさつもせずにいきなりかれ両手りょうてにぎって、こえふるわしてうた。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
こうおじいさんはいながら、もも両手りょうてにのせて、ためつ、すがめつ、ながめていますと、だしぬけに、ももはぽんと中から二つにれて
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
竹童は遠退とおの跫音あしおとへいくどもれいをいったが、両手りょうてで顔をおさえているので、それがどんなふうの人であったか、見送ることができなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
のちにわかつたが、原因げんいん青酸加里せいさんかりによる毒殺どくさつだつた。死体したい両手りょうてがつきのばされて、はちのふちにつかみかかろうという恰好かっこうをしている。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
それから女の子にやさしくカムパネルラのとなりのせきゆびさしました。女の子はすなおにそこへすわって、きちんと両手りょうてを組み合わせました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
また泣きだしたくなったけれど、こわさのほうがさきにたって、両手りょうていききかけながら、いちもくさんにはしって行く。
のあたり、うした荘厳無比そうごんむひ光景ありさませっしたわたくしは、感極かんきわまりて言葉ことばでず、おぼえず両手りょうてわせて、そのつくしたことでございました。
両手りょうてで頭をかかえて書物しょもつ挿絵さしえに見入っている時でも——台所だいどころのいちばんうす暗い片隅かたすみで、自分の小さな椅子いすすわって、夜になりかかっているのに
ジャン・クリストフ (新字新仮名) / ロマン・ロラン(著)
そのとたんに、小人はネコの青い目がそばで光っているのを見つけますと、両手りょうてに赤んぼうを持ったまま、こまりきって、つっ立ってしまいました。
吾にえった彼の眼の前に、両手りょうてにつまんで立った鶴子のしろ胸掛むねかけから、花の臙脂えんじがこぼれそうになって居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
さっきまでは、とにかくにげられそうな希望きぼうがあった。まどへ両手りょうてをかけてさえしまえば、飛越台とびこしだい要領ようりょうででも、どうにか制動室へからだをはこぶことができると思っていた。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
二人ふたりはかわりばんこに、いずみのふちの、しだやぜんまいのうえ両手りょうてをつき、はらばいになり、つめたいみずにおいをかぎながら、鹿しかのようにみずをのみました。はらのなかが、ごぼごぼいうほどのみました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
両手りょうてといっしょに、からだじゅうも透明とうめいになったのかい?」
林太郎はそのしろ公を両手りょうてで高くさしあげて
あたまでっかち (新字新仮名) / 下村千秋(著)
そして、ちかづくと両手りょうてへほかの子供こどもがひとりずつすがり、もうけっしてだれにも先生せんせいわたさないというふうにして、あるいていきました。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは白いひげ老人ろうじんで、たおれてえながら、骨立ほねだった両手りょうてを合せ、須利耶さまをおがむようにして、切なく叫びますのには
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
と、おかあさんは両手りょうてをひろげてつかまえようとしました。その少女おとめ姿すがたは、もうたかたかそらの上へがっていって、やがてえなくなりました。
白い鳥 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
イワン、デミトリチは昨日きのうおな位置いちに、両手りょうてかしらかかえて、両足りょうあしちぢめたまま、よこっていて、かおえぬ。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
おかあさんの心は、絶望ぜつぼうのあまり、いまにもはりさけそうです。両手りょうてをふりしぼりながら、うったえるように、わが子の名まえを大きな声で呼びあるきました。
だが、目はぬのをもってふさがれ、両手りょうては杭にしばりつけられている二人の怒声どせいは、むざんな役人たちの心に、ありふれた、世迷よまごととしかひびかなかった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしは、人をかきわけて、鉄格子てつごうしのはまったまどに向かった自分の場所ばしょへたどりつくと、両手りょうてあたまの下へあてがってあおむけにごろりとて、目をつぶりました。
女子おなごでありながらおぼえず両手りょうてそらにさしあげて、こえかぎりにわあッとさけんでしまいました……。
老人ろうじんはやつれてていました。海蔵かいぞうさんはまくらもとに両手りょうてをついて
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
紹介しょうかいする。其尾について、彼は両手りょうてをついて鄭重ていちょうにお辞儀じぎをする。皆が一人〻〻ひとりひとり来ては挨拶する。石山氏の注意で、樽代たるだい壱円仲間入のシルシまでに包んだので、皆がかわる/″\みやげのれいを云う。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
あめは、しだいに小降こぶりになってきました。少年しょうねんは、両手りょうてに、四かくのかんや、びんをつつんだのをかかえて、自動車じどうしゃにもどってきました。
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「お前、郷里くにはどこだ。」農夫長のうふちょう石炭凾せきたんばこにこしかけて両手りょうてを火にあぶりながら今朝けさ来た赤シャツにたずねました。
耕耘部の時計 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
さるは、「ざまをみろ。」といながら、こんどこそあまいかき一人ひとりじめにして、おなかのやぶれるほどたくさんべて、その上両手りょうてにかかえきれないほどって
猿かに合戦 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
すると丁度ちょうどハバトフもブローミウム加里カリびんたずさえてってた。アンドレイ、エヒミチはおもそうに、つらそうにおこしてこしけ、長椅子ながいすうえ両手りょうて突張つッぱる。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
そのエスさまは、どうかというと、みんなのまんなかで、両手りょうてをさしのべながら、子どもたちを祝福しゅくふくしたり、つみくおかあさんたちを祝福したりしていらっしゃる。
わたくしはこのときほどびっくりしたことはめったにございませぬ。わたくしいそいで座布団ざぶとんはずして、両手りょうてをついて叩頭おじぎをしたまま、しばらくはなん御挨拶ごあいさつ言葉ことばくちからないのでした。
一火いっかはもうしわけがないと、龍太郎りゅうたろう忍剣にんけんたちのまえに両手りょうてをついて謝罪しゃざいした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
幸三こうぞうは、そこにあったおも鉄板てっぱん両手りょうてをかけました。しかし、それは、容易よういげることすらできないほど、おもかったのでありました。
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おじいさんはやさしくいました。「木ペンぐした。」キッコは両手りょうてを目にあててまたしくしく泣きました。
みじかい木ぺん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
くるとしの二がつ十五にちは、お釈迦しゃかさまのおくなりになった御涅槃ごねはんの日でしたが、二さいになったばかりの太子たいしは、かわいらしい両手りょうてをおわせになり、西にしほうそらかって
夢殿 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ふとだなあ。」といって、無邪気むじゃき子供こどもたちは、ちいさな両手りょうてひらいて、ふとみききついて、見上みあげるものもあれば
学校の桜の木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
気がついて見るとほんとうにタネリは大きな一ぴきのかにかわっていたのです。それは自分の両手りょうてをひろげて見ると両側りょうがわに八本になってびることでわかりました。
サガレンと八月 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
いながら、そこらをまわしますと、ちょうどかわきしふたかかえもあるような大きなすぎの木がっていました。金太郎きんたろうはまさかりをほうりして、いきなりすぎの木に両手りょうてをかけました。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「そう、せてくれない?」と、あねは、両手りょうてして、おとうとから、二まいかさわせたカンバスをろうとした。
金歯 (新字新仮名) / 小川未明(著)
青年はなんともえずかなしそうな顔をして、じっとその子の、ちぢれたぬれた頭を見ました。女の子は、いきなり両手りょうてを顔にあててしくしくいてしまいました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
くまはへいこうして、両手りょうてをついてあやまって、金太郎きんたろう家来けらいになりました。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おじいさんは、おくから、かきといもぼんにのせてってきておんなわたし、べつにゆでたくりを一握ひとにぎり、それは、自分じぶんから子供こども両手りょうてれてやりながら
とうげの茶屋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そこから一つるがふらふらとちて来て、また走り出したインデアンの大きくひろげた両手りょうてちこみました。インデアンはうれしそうに立ってわらいました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
牛若うしわかはいって、弁慶べんけいをおこしてやりました。弁慶べんけい両手りょうてについて
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
きんぼうは、やさしくいわれると、ますますからだすぶって、そらいて、両手りょうてをだらりとれて、かおいっぱいにおおきなくちけてしました。
泣きんぼうの話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
みんなは、ひそひそはなしている。するとしゅっこは、いきなり両手りょうてで、みんなへ水をかけ出した。
さいかち淵 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
和尚おしょうさんはねこじんとねずみのじんのまんなかにつっって、両手りょうてをひろげて
猫の草紙 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「この松原まつばらおくにもおうちがありますか?」といって、薬売くすりうりの少年しょうねんは、たずねたのです。おんなは、両手りょうてについたすなをはらって、少年しょうねんかおました。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ああ、ただも一度いちど二本の足でぴんぴん歩いてあの楽地らくちの中のいずみまで行きあのつめたい水を両手りょうてすくってむことができたらそのままんでもかまわないとう思うだろう。
百姓ひゃくしょう両手りょうてにつけて
姨捨山 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)