)” の例文
牛にはなんにもありつけなかったような場所で、馬は食いものを拾うことができるのである。それに、寒さにも比較的よくえる。
竹童は龍太郎の立ちぎわにそういったが、ひとりになるとまたさびしさにえぬもののごとく、ションボリと陣屋の空を見あげていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つて、それ引揚ひきあげたが、如何どうつてえられぬので、ふたゝ談判だんぱんかうとおもつてると、友人いうじん眉山子びさんしれい自殺じさつ
感にえて首を振りながらお供につづこうとすると、忠相はぼんやりと立ちどまって、いま栄三郎のはいって行った露地の口を見守った。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
またなんじらのためにすべてのひとにくまれん。されどおわりまでしのぶものはすくわるべし。このまちにて、めらるるときは、かのまちのがれよ。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「早くしたまえ」紳士はがたくなって叫んだ。「君は卑怯ひきょうだ。君は僕の表情からどちらがそのコップだかを読もうとしている。それは卑怯だ」
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
康頼 神々は正しく照覧しょうらんしていられます。えしのんで祈ってあきなかったらいつかはわれわれの日がきっと来るでしょう。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
全くベアトリーチェにそゝげり、されど淑女いとつよくわが目にきらめき、視力みるちからはじめこれにへざりしかば 一二七—一二九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
それが殆ど折れそうなくらいにしないながら自分の花を持ちえているそばなどを通り過ぎる時は、私は何んだか切ないような気持にすらなった。
美しい村 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
「いい陶器とうきというものは、こんなくるしみをえなければ、愛玩あいがんができないものか。」と、殿とのさまはうたがわれたこともあります。また、あるときは
殿さまの茶わん (新字新仮名) / 小川未明(著)
シモン博士はもうまりかねて飛上った。「私はそんな莫迦らしい議論をしておる暇はない」と腹立たしげに彼は叫んだ。
あのすごい水圧に対してえる材料といえば、鉄材とセメントを使ってするにしても、たいへんな量がなければならない。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
失望しつはう煩悶はんもんとがごツちやになツてへず胸頭むなさき押掛おしかける………其の苦惱くなう、其のうらみ、誰にうつたへやうと思ツても訴へる對手あひてがない。喧嘩けんくわは、ひとりだ。悪腕わるあがき
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
渤海奇毒きどくの書、唐朝官家に達す。なんじ高麗こうらいを占領せしより、吾国の近辺に迫り、兵しばしばさかいを犯す。おもうに官家の意に出でむ。われ如今じょこんうべからず。
岷山の隠士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
諸君、吾人ごじんは内外多数の迫害はくがいえて、今日までビジテリアン同情派の主張を維持いじして来た。然もこれ未だ社会的に無力なる、各個人個人においてである。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
苦しさえがたけれど、銭はなくなる道なお遠し、ごんという修行、にんと云う観念はこの時の入用なりと、歯をくいしばってすすむに、やがて草鞋わらじのそこ抜けぬ。
突貫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
福鼠ふくねずみれずにあたまつて、かないでふことには、『勿論もちろんいまわたしはうとおもつてところだ』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
なほらざるとき全身ぜんしん冷水れいすゐそゝぎてそのいたみまつたりしゆゑに、其後そのご頭痛づつうおこごと全身ぜんしん冷水灌漑れいすゐくわんがいおこなひしが、つひ習慣しふくわんとなり、寒中かんちゆうにも冷水灌漑れいすゐくわんがいゆるをたり。
命の鍛錬 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
彼等は二人ともひどく刺されて、大変痛かったのですが、それが世界始まって以来感じられた最初の痛さであっただけに、彼等には一層え難く思われました。
現在に立ち到つて、何ものも所有しないと云ふ孤独には、富岡はへてゆけない淋しさだつた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
青々せいせいたる春の柳、家園みそのゆることなかれ。まじはりは軽薄けいはくの人と結ぶことなかれ。楊柳やうりうしげりやすくとも、秋の初風はつかぜの吹くにへめや。軽薄の人は交りやすくして亦すみやかなり。
綾麻呂 お前はこれからはこの厳しい生活にえる強い人間にならなければいけないんだぞ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
彼は煙草たばこをねだった。この男からのがれたさに(それにまた、待ち遠しさにえかねもして)
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
しかもその妻のごとき、純日本的な可憐かれんな女を、彼のいわゆる『野蛮人やばんじん』である西洋人の社会に、孤独で生活させることの痛ましさは、想像だけでもえがたい残忍事ざんにんじだった。
召使ひ居候下女は何か可笑しさにへぬ如く殆ど酒にひたる人かと見ゆる様子を致居候。
まへ落葉濶葉樹らくようかつようじゆ淡緑色たんりよくしよくうつくしいのにはんして、こゝでは針葉樹しんようじゆ暗緑色あんりよくしよくで、はやしなか濕氣しつきおほく、またしたにはかげへるえてゐるほかに蘚苔類こけるい澤山たくさんえてゐます。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
とんでもない! もしあの男がほんとうの天才だとすれば、そのくらいのするどい非難にだってえることができるさ。あの男を個人的にほめる者はいくらでもある。われわれはあの男を
滝の水を見るにつけてもがたいのはその事であった、いや、冷汗ひやあせが流れますて。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
のちのしるしにせばやと思いてその髪をいささか切り取り、これをわがねてふところに入れ、やがて家路に向いしに、道の程にてえがたく睡眠をもよおしければ、しばらく物蔭ものかげに立寄りてまどろみたり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
頭の中の流れは、ちょうど空を走る銀河のように、滾々こんこんとしてどこからかあふれて来る。彼はそのすさまじい勢いを恐れながら、自分の肉体の力が万一それにえられなくなる場合を気づかった。
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
ひとでいい、ひとでいいからいたいとの、せつなるおもいのがたく、わざと両国橋りょうごくばしちかくで駕籠かごてて、頭巾ずきん人目ひとめけながら、この質屋しちやうらの、由斎ゆうさい仕事場しごとばおとずれたおせんのむねには
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
一つには、例の痛みにへられなくなつた樣子である。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
あまりの痛々しさに、聽くにへなかつたのでせう。
銭形平次捕物控:311 鬼女 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
うつくしさにえず落ちてしまった
貧しき信徒 (新字新仮名) / 八木重吉(著)
それを見た新九郎は、まったく感にえてしまった。かかるわざに立ちむかっておくのも、いい修行となるであろうと思った。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
けれど、すべてのうつくしい婦人ふじんは、弱々よわよわしかったように、きさきくびのまわりにけられた、あおいし首飾くびかざりのおもみをささえるにえられないほどでした。
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
その上九州の本土を離れてからは何という退屈だったろう。みやこにかえってから、も一度この島に来るというようなことはとてもえられないことだ。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
彼答へて、しかいふ汝は何者なればアンテノーラを過ぎゆきて人の頬を打つや、汝若し生ける者なりせば誰かはこれにへうべきといふ 八八—九〇
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
圧力にもえるし、また服の内がわは電熱であたためるようになっているから、からだが氷になる心配もない
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「然うさ、五十百歩ひやくぽさ」と、友は感慨かんがいへないといふふうで、「少許すこしめて、少許知識ちしきおほいといふばかり、大躰だいたいおいて餘りたいした變りはありやしない。 ...
虚弱 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
諏訪栄三郎! と聞いて、娘十八、白い顔にぱっと紅葉が散ったかと思うと、座にも居えぬように身をもんで、考えもなく手が畳をなでるばかり——返辞はない。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
全く何時襲うかも知れない嵐のことを考えると、彼女はいても立ってもまらなくなった。
目撃者 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
る、る』と幻子げんし調子てふしりながらつてくので、るにえぬ。
このご説法のころは、われらの心もいまだ仲々善心もあったじゃ、小禽の家に至るとお説きなされば、はや聴法ちょうほうの者、みな慄然りつぜんとして座にえなかったじゃ。今は仲々そうでない。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
御行 (もはやえかねたような詠嘆調えいたんちょうにて)ああ、何と云うたえなる楽の音だ。……これが、このあじけない現世うつしよのことなのだろうか?………いいや、これはもう天上の調べだ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
たきみづるにつけてもがたいのは其事そのことであつた、いや、冷汗ひやあせながれますて。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と言いながら眼をげて源三が眼の行くかたを見て、同じく禽の飛ぶのを見たお浪は、たちまちにそのこころさとって、えられなくなったか泫然げんぜんとして涙をおとした。そして源三が肩先かたさきとらえて
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
私は骨つきの方の鰺をしゃぶりながら風呂屋ふろや煙突えんとつを見ていた。「どんなに叱られていたか」何と云う乱暴な聞き方であろう、私は背筋が熱くなるような思いをえて、与一の顔を見上げた。
清貧の書 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
香央かさだ女子むすめ磯良いそら、かしこにきてより、つとき、おそく臥して、常に舅姑おやおやかたへを去らず、五〇をつとさがをはかりて、心を尽して仕へければ、井沢夫婦は五一孝節をでたしとてよろこびにへねば
それでもあいちやんは粗暴そばう振舞ふるまひこのみませんでしたから、出來できるだけそれをしのんでました。『競技ゲームいま工合ぐあひつてる』つてあいちやんはすこしく談話はなしはずませやうとしました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)