さかん)” の例文
西人のわが草木を愛玩あいがんし、わが草木を貴重するは、実に先生より始りました。先生の功は、まことにさかんなるものではありますまいか。
禾花媒助法之説 (新字新仮名) / 津田仙(著)
反之これにはんして或る場合にはあたかも革命時代の如く組織の如何は比較的閑却せられ、社会の内部における個人のみがさかんに活躍する時代があります。
流れ行く歴史の動力 (新字新仮名) / 津田左右吉(著)
そう思ったけれどもいっしょになる前には邪魔にならなかった先の夫の幻影が、今はさかんに私をして嫉妬の焔に悶えしめたのであった。
雪の日 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
かうしてゐる中にも、時はつて行つた。ある夜はすさまじい風雨がやつて来た。本堂ばかりではない、自分の居間にも雨がさかんつた。
ある僧の奇蹟 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
堀割は丁度真昼の引汐ひきしお真黒まっくろな汚ない泥土でいどの底を見せている上に、四月の暖い日光に照付けられて、溝泥どぶどろの臭気をさかんに発散している。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
仕事はさかんで、島をおとのうとおさの音をほとんど戸ごとに聞くでありましょう。特色ある織物としてこの島にとっては大切な仕事であります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
不知庵主人フチアンシユジンやくりしつみばつたいする批評ひゝやう仲々なか/\さかんなりとはきゝけるが、病氣びやうき其他そのたことありて今日こんにちまでにたるはわづか四五種しごしゆのみ
「罪と罰」の殺人罪 (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
西蔵の聖山カイラスは多数の印度教徒が巡礼するので名高い。キルギス土人間には殊に山岳崇拝がさかんに行われているとの事である。
山の今昔 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
眼もほとんど青年のように、ほがらかな光を帯びている。殊に胸を反らせた態度や、さかん手真似ジェスチュアを交える工合は、鄭垂氏よりもかえって若々しい。
上海游記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
総じてその地方の俳句会さかんなる時はその会員の句皆面白く俳句会衰ふる時はあるだけの会員ことごとく下手になる事不思議なるほどなり。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
三週間前から切符を売出したが、平生の十倍に当る価格の切符が僕が五日目に出掛けた時大抵売切れて居たのでそのさかんな人気がわかる。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
近頃は社員中にも食道楽がさかんになって食物問題を注意しますから順番をめて一人ずつその日の御馳走役を引受けるものが出来ました。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
日本にも以前はそういう無茶苦茶な事が随分さかんに行われていて、それがために天子様も久しく王政を復古遊ばす事が出来ず、佐久間象山さくましょうざん
女子の独立自営 (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
この黒い太い破れた二本の烟突からさかんのような黒い烟が上って、やはり青田の上に影を落して町の方へと靡いたのであろう。
暗い空 (新字新仮名) / 小川未明(著)
もっともこの種の映画は、既に外国、特に独逸ドイツさかんに作られ、その手法が出来上っているので、比較的楽に立派なものが出来るのであろう。
科学映画の一考察 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
すなわちそのみちとはなし、今の学校を次第しだいさかんにすることと、上下士族相互あいたがい婚姻こんいんするの風をすすむることと、この二箇条のみ。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
このごろ欧羅巴ヨーロツパの西部戦線にゐる英軍の塹壕ざんがう内では、彼方あつちでも此方こつちでもキツチナア元帥に遭つたといふ風説がさかんに行はれてゐる。
六時、起きて雨戸をあけると、白いひかりがぱっと眼をた。縁先えんさきまで真白だ。最早もう五寸から積って居るが、まださかんに降って居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかして近来、文化ますます進むにしたがい、自家において子女を教育する、はるかに学校にまされりとの説ますますさかんなり。
教育談 (新字新仮名) / 箕作秋坪(著)
その時もその花畑の中にラジオの車がえてあってさかんうたを歌うていた以外には少しも感興をそそるものはありませんでした。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
そして、ちよつといきれたやうな樣子やうすをすると、今度こんどはまたあたま前脚まへあしさかんうごかしながらかへしたつちあなした。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
雪下ゆきふるさかんなるときは、つもる雪家をうづめて雪と屋上やねひとしたひらになり、あかりのとるべき処なく、ひる暗夜あんやのごとく燈火ともしびてらして家の内は夜昼よるひるをわかたず。
この時司の禿かぶろであった娘が、浜照はまてるという名で、来月突出つきだしになることになっていた。栄次郎は浜照の客になって、前よりもさかんあそびをしはじめた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
丁度一昨年あたりから禿は中気が出ていまだに動けない。そいつを大小便の世話までして、女の手一つでさかんに商売をしてゐるのだ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ここに梓が待人まちびと辻占つじうら、畳算、夢のうらないなどいう迷信のさかんな人の中に生れもし育ちもし、且つ教えられもしたことをあらかじめ断っておかねばならぬ。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「旧暦のとし、山の狸が園遊会をやってさかんに舞踏します。その歌にいわく、いさ、としので、御山婦美おやまふみまいぞ。スッポコポンノポン」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
初めければこれまた所々しよ/\の屋敷に出入もふえ段々だん/\と勝手も能成よくなり凡夫ぼんぷさかんなるときは神もたゝらずといふことむべなるかな各自仕合能光陰つきひ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
翌日よくじつ新聞しんぶんには、やみなか摸摸すり何人なんにんとやらんで、何々なに/\しなぬすまれたとのことをげて、さかん会社くわいしや不行届ふゆきとどき攻撃こうげきしたのがあつた。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
私はそれを見て、同じように涙が止りませんでした。父はにこにこして煙草タバコを吸われるだけ、さかんに話すのは次兄一人です。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
そこで仏蘭西革命でさかんに唱導された主義は何かといえば、第一自由、第二平等、第三親睦である。この中でも最もおもきをなしたのは自由の思想である。
デモクラシーの要素 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
一体目というものはミスチックなものだ、近代フランス美術界で名うての、ルドンも一時さかんに目の玉をかいたものだ。
ばけものばなし (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
三月三日の、丁度私たちが戸塚のうちでさかんにお雛様を眺めていた時分書いて下すったお手紙、珍しく早くつきました。
まへさんはさかんところて、元氣げんきよくはたらいたのはよろしい、これからは、其美そのうつくしいところて、うつくしいはたらきをもるがからう。うつくしいことを。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
彼の秘書官の如く働くので、社員中に大分不平嫉妬しつとの声がさかんなのです、けれど一身の毀誉褒貶きよはうへんごときは度外にきて
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
むかし浅草にさかんなりし、牛ドンの味。カメチャブと称し、一杯五銭なりしもの。大きな丼は、オードンと称したり。
下司味礼賛 (新字新仮名) / 古川緑波(著)
ことに徳川時代にっていよいよさかんになったのはたれも知る通りである。しかもそれが最も行われたのは享保きょうほう以前のことで、その後はかたき討もよほど衰えた。
かたき討雑感 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大正十三年の一月から十一月まで警視庁で検閲した映画の数が一万八千巻、千六百フィート、切った長さが約六万フィート……以て如何に「活動」がさかんであるかがわかる。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
メソヂスト教会は不用人物の巣窟なり、クエークル派は偽善なり、ユニテリアン派は偶像教にまさる異端なりと、もし某氏の宗教事業のさかんなるを聞けばいわく
基督信徒のなぐさめ (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
けだし、尋ねようと云う石田の宿所は後門うらもんを抜ければツイ其処では有るが、何分にも胸に燃す修羅苦羅しゅらくらの火の手がさかんなので、暫らく散歩して余熱ほとぼりを冷ます積りで。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
これは実際有りましたお話でございます。の辺は追々と養蚕がさかんに成りましたが、是は日本にっぽん第一の鴻益こうえきで、茶と生糸の毎年まいねんの産額は実におびたゞしい事でございます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
慶雲二年天下疫癘さかんにして、百姓多くうせたりしかば、土牛を造り追儺ついなといふ事始りき。異国の書には、農事のために時を示さんとて、土牛を立つる由見えたり。
大正九年も終る暮のちまたを、夕ぐれ時に銀座の、さかんな人渦の中を、泳ぐというより漂ってわたしはいった。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
Hofbräuホーフブロイ のやうなあんなさかんな麦酒店でもその三階は十月半ばには既に閉鎖したほどであつた。
日本大地震 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
早晩予も形体は無きに至るも、一双の霊魂は永く斗満の地上にあって、其さかんなるを見てたのしまん事を祈る。
関牧塲創業記事 (新字新仮名) / 関寛(著)
これさへ昨日黒衣めが、和殿を打ちしと聞き給ひ、喜ぶことななめならず、たちま守護まもりを解かしめつ。今宵は黄金丸を亡き者にせしいわいなりとて、さかんに酒宴を張らせたまひ。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
紀元節きげんせつ當日たうじつさかんなる光景くわうけい、つゞいて、電光艇でんくわうてい試運轉式しうんてんしき大異變だいゐへんから、今回こんくわい使命しめい立到たちいたつたまで奇譚きだんは、始終しじう彼等かれらをヤンヤとはせて、吾等われら孤島こたう生活中せいくわつちう
手にした折詰を見ると、こは如何いかに、底は何時いつしかとれて、内はからんからん、ついに大笑いをして、それからまた師匠のうちへ帰っても、さかんみんなから笑われたとの事だ。
今戸狐 (新字新仮名) / 小山内薫(著)
やがて男共は料理してさかんにやったらしかった。なかなかうまいです少々如何いかがですかとって。一わんを予の所へ持て来たけれども。予はついに一口を試むるの勇気もなかった
牛舎の日記 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
この時に当って沖縄人は支那大陸に通じて臣を朱明に称し、さかんにその制度文物を輸入したのであります。当時の沖縄人はやがて、支那人に扮した日本人であったのである。
琉球史の趨勢 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
「残った連中を煽動せんどうして、同盟罷業ひぎょうをやらせようと、さかんき廻っているということですが」