)” の例文
昨夜分るゝまで藻西を無罪と認めしに今朝はや藻西が其妻に煽起そゝのかされて伯父を殺せし者と認め藻西の妻を調べんと思えるなるか
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
「ほんまは光ちゃん『電話かけたのんに何でよ帰って来えへんねん! 姉ちゃんの方がよっぽど実意ある』いうて怒りやはるねん」
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
だんちるやうにりたときくろ狐格子きつねがうし背後うしろにして、をんな斜違はすつかひ其處そこつたが、足許あしもとに、やあのむくぢやらの三俵法師さんだらぼふしだ。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
る/\うちあやしふね白色檣燈はくしよくしやうとう弦月丸げんげつまる檣燈しやうとう並行へいかうになつた——や、彼方かなた右舷うげん緑燈りよくとう左舷さげん紅燈こうとう尻眼しりめにかけて
目覚めさむればに近し。召使ふものの知らせにて離れの一間ひとまに住み給ひける母上捨て置きてはよろしからずと直様すぐさま医師を呼迎よびむかへられけり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
節子は正月らしい着物に着更きかえて根岸の伯母を款待もてなしていた。何となく荒れて見える節子の顔のはだも、岸本だけにはそれがや感じられた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
これから朝まで何も食べずにすごさねばならぬと思うと、もうや頭の中では、今朝から見て来た空虚な空ばかりがぐるぐると舞い始めた。
上海 (新字新仮名) / 横光利一(著)
門松かどまつ注目飾しめかざりはすでに取り払われて正月もや十日となったが、うららかな春日はるびは一流れの雲も見えぬ深き空より四海天下を一度に照らして
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
感歓かんくわんまりて涙にむせばれしもあるべし、人を押分おしわくるやうにしてからく車を向島むかふじままでやりしが、長命寺ちやうめいじより四五けん此方こなたにてすゝむひくもならず
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
と云いさま、ガアッとたんの若侍の顔にき付けました故、流石さすがに勘弁強い若侍も、今は怒気どき一度にかおあらわれ
昼過ひるすぎからすこ生温なまあたゝかかぜやゝさわいで、よこになつててゐると、何処どこかのにはさくらが、霏々ひら/\つて、手洗鉢てあらひばちまはりの、つはぶきうへまでつてる。
背負揚 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
あお』がや第二巻になりました由。この老人の年がまた一つ加わったことになります。それだけ『青』という青年のすくすくと成長していった事を喜びます。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
や声を震わしています。二人は香潮と聞いてハッと驚きましたが、併しこんな化物が香潮などとは思いも寄りませぬから、異口同音に怒鳴り付けました——
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「何うもや——いや早や、さて早や、おさて早や、早野勘平、早駕はやかごで、早や差しかかる御城口——」
三人の相馬大作 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
かさあつちのがひどへんおとだとおもつてうちにやおつこちんなえゝもんで、こまつたこと出來できたのせ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
日頃のあらゆる憤懣ふんまんが、ヒステリィの女房のこと、やくざな子供達のこと、貧乏のこと、老後の不安のこと、もや帰らぬ青春のこと、それらが、金比羅舟々の節廻しを以て
木馬は廻る (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
時計とけいるとや九。ゴールデンゲートから此処迄こゝまでに四時間じかんかゝつた勘定かんぢやうになる。
検疫と荷物検査 (新字旧仮名) / 杉村楚人冠(著)
若い人たちヤンガ・ジェネレイションのあいだにおける性道徳の衰退——なんかとリンゼイ判事あたりが慨世的にはしゃぎ立ててるうちに、英吉利イギリスでは、や一つの新戦法が発明されて、どんどん実用に供されている。
踊る地平線:11 白い謝肉祭 (新字新仮名) / 谷譲次(著)
「おようじゃねえや。んだってまつつぁんこんなはやくッからやってたんだ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
の一つ二つ残れる広き所に散りぼひたる長椅子の上には、私より先にや三四人の人、白き団扇うちはを稀に動かしつつねむりを求めてあるを見受けさふらふ三十分さんじつぷんもその一人ひとりとなりてありさふらひけん。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「おや、この小僧、小耳がええな。ほんとだとも。世間、隠れもねえことだ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さては花漬売はなづけうりが心づかず落しゆきしかと手に取るとたん、其人そのひとゆかしく、昨夕ゆうべの亭主が物語今更のように、思い出されて、叔父おじの憎きにつけ世のうらめしきに付け、何となくただたつ可愛かわい
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
がうと響く遠音とほねとゝもに、汽車が北から南へ走るのが、薄絹をいて手遊品おもちやの如く見えた。其の煙突からは煙とゝもに赤く火をき出した。やみやぢり/\と石段を登つて來さうであつた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「およう、ございます。」と言った。娘は十七、八の年頃であった。コーヒーはうまかった。パンもうまかった。テレビが始まった。スイスの村の景色が映った。老人も娘も共に見ていた。
老人と鳩 (新字新仮名) / 小山清(著)
邪魔じゃましよっとじゃなか! よウおッ母さんのところへ、いんじょれ!」
風琴と魚の町 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
石炭をばや積み果てつ。中等室のつくゑのほとりはいと静にて、熾熱燈しねつとうの光の晴れがましきもいたづらなり。今宵は夜毎にこゝに集ひ来る骨牌カルタ仲間も「ホテル」に宿りて、舟に残れるは余一人ひとりのみなれば。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
そこへ行くと、私のこれから申上もうしあげようと思う話は、譬喩と諷刺と当て込みと教訓で練り固めたようなもので、まことにや恐縮千万ですが、よく噛みしめて、言外の意を味わって頂きたいと存じます
百日紅の花の盛りを秋蝉のいちやに来て急き啼けりあはれ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
夜も明けやらぬにや燃えつきてしまった。
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
アンは、やもう目をとじていた。
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今はや吾が血をどらず
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
よせんか」
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
背戸口せどぐちは、充満みちみち山霧やまぎりで、しゅうの雲をく如く、みきなかばを其の霧でおおはれた、三抱みかかえ四抱よかかえとちが、すく/\と並んで居た。
貴婦人 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
なかにも年少ねんせう士官等しくわんら軍刀ぐんたうつかにぎめて、艦長かんちやう號令がうれいつ、舷門げんもんほとり砲門ほうもんほとり慓悍へうかん無双ぶさう水兵等すいへいらうでさすつてる。
「出たかのう。馬車はもう出ましたかのう。いつ出ましたな。もうちとよ来ると良かったのじゃが、もう出ぬじゃろか?」
(新字新仮名) / 横光利一(著)
土手へあがった時には葉桜のかげは小暗おぐらく水を隔てた人家にはが見えた。吹きはらう河風かわかぜに桜の病葉わくらばがはらはら散る。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「光ちゃん、よしいでわ!」いいながら、二人ともけったいな顔して下い降りて行たことありましてん。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
御両親は掌中たなぞこたまいつくしみ、あとにお子供が出来ませず、一粒種の事なればなおさらに撫育ひそうされるうちひまゆく月日つきひ関守せきもりなく、今年はや嬢様は十六の春を迎えられ
其方そのかたさしてあゆむ人はみな大尉たいゐかうを送るの人なるべし、両国橋りやうごくばしにさしかゝりしは午前七時三十分、や橋の北側きたがは人垣ひとがきたちつどひ、川上かはかみはるかに見やりて、みどりかすむ筑波つくばの山も
隅田の春 (新字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
「しかしもくそもねえ。底へ行って見届けるのが一番ええじゃありませんか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
目科は之を聞きさては罪人や既にそうまで罪に服したるやと驚きしものゝ如く
血の文字 (新字新仮名) / 黒岩涙香(著)
それをおみつは十二やそこらで、や月々の不淨ふじやうを見るさうなと言ひ出したものがあつて、さう言へばさうらしいなア、なぞと合槌あひづちを打つものも現はれ、けがれた娘を神前に出したたゝりは恐ろしい
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
富谷とみたに氏など来給ひて、や消火しつくしたる如しと仰せられさふらふ
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
私の頭は、やいそがしく嫌疑者の列挙につとめ出した。
吹きとほる山松風の向ひ風群禽むらどりたまや近づきぬ
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
紅海に船や浮ぶ帰帆
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
「婆あ、よせんか」
寺坂吉右衛門の逃亡 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
「およう」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
いまや、お慈悲じひ、お慈悲じひこゑれて、蒋生しやうせい手放てばなしに、わあと泣出なきだし、なみだあめごとくだるとけば、どくにもまたあはれにる。
麦搗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「馬車はいつ出るのでござんしょうな。悴が死にかかっていますので、よ街へ行かんと死に目にえまい思いましてな。」
(新字新仮名) / 横光利一(著)