寺坂吉右衛門の逃亡てらさかきちえもんのとうぼう
「肌身付けの金を分ける」 と、内蔵之助が云った。大高源吾が、風呂敷包の中から、紙に包んだ物を出して、自分の左右へ 「順に」 と、いって渡した。人々は、手から手へ、金を取次いだ。源吾が 「四十四、四十五、四十六っ」 と、いって、その最後の一つ …