旅人たびびと)” の例文
堀川百首ほりかはひやくしゆ兼昌かねまさの哥に、「初深雪はつみゆきふりにけらしなあらち山こし旅人たびびとそりにのるまで」この哥をもつても我国にそりをつかふのふるきをしるべし。
うつくしいおひめさまがいられて、いい音楽おんがく音色ねいろが、よるひるもしているということだ。」と、また一人ひとり旅人たびびとがいっていました。
お姫さまと乞食の女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
旅人たびびとたちはしずかにせきもどり、二人ふたりむねいっぱいのかなしみにた新しい気持きもちを、何気なくちがったことばで、そっとはなし合ったのです。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ここに草のいおりを結んで、謀叛むほん人と呼ばれた父の菩提ぼだいとむらいながら、往き来の旅人たびびとに甘酒を施していた。比丘尼塚のぬしはこの尼であると。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
丁度ちやうど、おとなりで美濃みのくにはうから木曽路きそぢはひらうとする旅人たびびとのためには、一番いちばん最初さいしよ入口いりぐちのステエシヨンにあたつてたのが馬籠驛まごめえきです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
先程見た一人の旅人たびびとはこの遍路であつたのだから、遍路は彼此かれこれ三十分も此処ここに休んで居るのであつた。遍路は眼が悪いといふことを云つた。
遍路 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
千葉ちば埼玉さいたま、あの大河たいが流域りうゐき辿たど旅人たびびとは、時々とき/″\いや毎日まいにちひとふたツは度々たび/″\みづ出會でつくはします。これ利根とねわすぬまわすみづんでる。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
今斯うして旅人たびびとになって既に東京を離れた心持で見渡すに、僕の生れたところは決して日頃受けている印象ほど汚いまちでない。
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
じゅうぶんな手当てあてをしたのであるが、そういう縁故えんこをもたぬ貧乏な旅人たびびとには、旅は誠にういものつらいものであった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そして、かれもまた、カアーン、カアーンと、地蔵菩薩じぞうぼさつかね手向たむけながら、すすきをける旅人たびびとのひとりとなって、いずこともなく歩きだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「王様の宮殿きゅうでんは、美しいけれど、大理石の建物たてものがないのは、玉にきずだとある旅人たびびともうしていました。大理石のとうでもたてられてはいかがですか?」
巨男の話 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
アノなに素裸体すつぱだかで物置きの中に棒縛ぼうしばりになつてるものがあるが、あれはなんだね。亭「あれはなんで、旅人たびびとでございます。僧「なにを悪い事をしたのだえ。 ...
詩好の王様と棒縛の旅人 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
さびに馬上の身を旅合羽たびがっぱにくるませたる旅人たびびとあとよりは、同じやうなるかさかむりし数人の旅人相前後しつつ茶汲女ちゃくみおんなたたずみたる水茶屋みずちゃやの前を歩み行けり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
初め立戻り皆々はたへ集まりぬ此時左京は大膳に向ひ貴殿の御異見ごいけんしたがはず我意がいつのりて參りしか此雪で往來には半人はんにん旅客りよかくもなし夫ゆゑ諸方しよはう駈廻かけまはり漸く一人の旅人たびびと
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
森のはずれのおかのそばにあった小さな小屋などは、つかれきった旅人たびびとならだれでも大よろこびをして、めてもらうところですが、ニールスたちは気にもとめませんでした。
子供らしい私は、故郷ふるさとを離れても、まだ心の眼で、懐かしげに故郷の家を望んでいました。固よりそこにはまだ自分の帰るべき家があるという旅人たびびとの心で望んでいたのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
故郷に入れられなかった両親を持つ私は、したがって旅が古里であった。それ故、宿命的に旅人たびびとである私は、この恋いしや古里の歌を、随分侘しい気持ちで習ったものであった。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
(おれは旅人たびびとらしい。わが家は、きっと、遠い広東カントン省かどこかにあるのであろう)
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
壽永三年三月の末、夕暮ゆふぐれちかき頃、紀州きしゆう高野山をのぼり行く二人の旅人たびびとありけり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
駕籠かごつてかうかとおもつたけれど、それも大層たいそうだし、長閑のどか春日和はるびよりを、麥畑むぎばたけうへ雲雀ひばりうたきつゝ、ひさりで旅人たびびとらしい脚絆きやはんあしはこぶのも面白おもしろからう、んの六ぐらゐの田舍路ゐなかみち
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
札所ふだしよめぐりの旅人たびびとは、すゞろ家族うからしのぶらむ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ああわたしは一人の旅人たびびと
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
旅人たびびとまなこをくりて、夕されば
海潮音 (新字旧仮名) / 上田敏(著)
旅人たびびとむねれたり
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
まだうら若き旅人たびびと
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
堀川百首ほりかはひやくしゆ兼昌かねまさの哥に、「初深雪はつみゆきふりにけらしなあらち山こし旅人たびびとそりにのるまで」この哥をもつても我国にそりをつかふのふるきをしるべし。
旅人たびびとは、それと反対はんたいやまについて、だんだんおくふかはいってゆきました。山々やまやまにはみかんが、まだなっているところもありました。
島の暮れ方の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それですから、北上川のきしからこの高原の方へ行く旅人たびびとは、高原に近づくにしたがって、だんだんあちこちに雷神らいじんを見るようになります。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
はかみちは、むらのものだけがとほみちです。旅人たびびとらないみちです。田畠たはたけはたら人達ひとたちえるたのしいしづかなみちです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
たすけ起こすと、心なき旅人たびびとかな。朝がけに禁制の峠を越したのであった。峰では何事もなかったが、坂で、つまずいて転んだはずみに、あれとわめく。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
なみの旅人たびびとのはかどるよりは数日もはやく里数りすうをとって、もなく、家康いえやす領地りょうち遠江とおとうみの国へ近づいてきた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
久助君のたましいは、長い悲しみの連鎖れんさのつづきを、くたびれはてながら旅人たびびとのようにたどっていた。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
見かけすくくれ候樣申候此時始めてかほを見候へば五ヶ年以前私し實家じつか柏原宿の森田屋方へ泊りし旅人たびびとにてと夫より其せつのことどもくはしく申立後父銀五郎病死びやうし致せしより其所を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
旅人たびびと宿やどりせむしもらばぐくめあめ鶴群たづむら 〔巻九・一七九一〕 遣唐使随員の母
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
杉の林は尽きて、さらに雑木ぞうきの林となりました。路のはたには秋の花が咲き乱れて、すすきの青い葉は旅人たびびとの袖にからんで引き止めようとします。どこやらではうぐいすが鳴いています。
綺堂むかし語り (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
四日目の朝いつものように七時前にうちを出て観音かんのん境内けいだいまで歩いて来たが、長吉はまるで疲れきった旅人たびびと路傍みちばたの石に腰をかけるように、本堂の横手のベンチの上に腰をおろした。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
私は旅人たびびと
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
旅人たびびと
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
旅人たびびとは、このはなしいているうちに、自分じぶん子供こども時分じぶん、ちょうど、それとおなじように、般若はんにゃめんをほしがったことをおもしました。
般若の面 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はら/\とつて、うしろの藁屋わらやうめ五六羽ごろつぱ椿つばき四五羽しごは、ちよツちよツと、旅人たびびとめづらしさうに、くちばしをけて共音ともねにさへづつたのである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ほんの通りかかりの二人の旅人たびびととは見えますが、じつはお互がどんなものかもよくわからないのでございます。
雁の童子 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
見れば北側きたがわ矢来やらいそと、人かげまばらなあとにのこって、なにかヒソヒソとささやき合ってる旅人たびびとがある。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
街道かいだうとほ旅人たびびとたれでもその休茶屋やすみぢやややすんでくとえて、おさるさんもよくひとれてました。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
春のあたたかい日のこと、わたしぶねにふたりの小さな子どもをつれた女の旅人たびびとがのりました。
飴だま (新字新仮名) / 新美南吉(著)
幸ひふもとの往來へ罷出まかりいで一當ひとあてあてんとぞんずるなり就ては御手下を我等に暫時ざんじ貸給かしたま一手柄ひとてがらあらはし申さんと云ふ大膳かくと聞て左京殿に我手をかすはいと易けれど此大雪では旅人たびびと尾羽をは
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
四日目の朝いつものやうに七時前にうちを出て観音くわんおん境内けいだいまで歩いて来たが、長吉ちやうきちはまるで疲れきつた旅人たびびと路傍みちばたの石にこしをかけるやうに、本堂の横手よこてのベンチの上にこしおろした。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
僕らもそこで暫時ざんじ休んだ。遍路は昨日のと違って未だ若い青年である。先ほど見た一人の旅人たびびとはこの遍路であったのだから、遍路はかれこれ三十分も此処ここに休んでいるのであった。
遍路 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
こういう旅人たびびとは小田原や三島の駅にさまよっていて、武家の家来に幾らかの賄賂わいろをつかって、自分も臨時にその家来の一人に加えて貰って、無事に箱根の関を越そうというのである。
半七捕物帳:14 山祝いの夜 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
旅人たびびと
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
少年しょうねんが、あるいていくと、旅人たびびとは、にっこりとわらいました。少年しょうねんは、やさしい、どこかのおじさんだとおもうと、きゅうになつかしくなりました。
その日から正直になった話 (新字新仮名) / 小川未明(著)