ぢやう)” の例文
新字:
しかし、御安心ごあんしんください。——ゆきなか跣足はだし歩行あることは、都會とくわいぼつちやんやぢやうさんが吃驚びつくりなさるやうな、つめたいものでないだけは取柄とりえです。
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
もぬけのからなりアナヤとばかりかへして枕元まくらもと行燈あんどん有明ありあけのかげふつとえて乳母うばなみだこゑあわたゞしくぢやうさまがぢやうさまが。
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
昂奮こうふんしないでおきなさいツ。ではこれから自分達じぶんたちみちが、どんなにけはしい、文字もじどほりの荊棘いばらみちだつてことが、生々なま/\しい現實げんじつとして、おぢやうさん、ほんとにあなたにわかつてゐるんですか……
彼女こゝに眠る (旧字旧仮名) / 若杉鳥子(著)
村井むらゐさん、いまがたぢやうさんがかさつておいんしたよ。』
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ながらぢやうさまは何處いづこへぞお姿すがたえぬやうなりと人騷ひとさわがせするもあり乳母うばろく/\あはさずおたかかたへ寢床ねどこなら浮世うきよ雜談ざふだん諷諫ふうかん
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ゆきしづむ……しろがねくし照々てら/\と、兩方りやうはうびんに十二まい黄金こがねかんざしたま瓔珞やうらくはら/\と、おぢやうさん。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
らずひきしかばなどたまるべき微塵みぢんになりてうらみをのこしぬぢやうさま御覽ごらんじつけてどくがりたまこのそこねたるは我身わがみらせよかはりにはあたらしきのを
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かんざしゆら氣勢けはひは、彼方あちらに、おぢやうさんのはうにして……卓子テエブル周圍まはりは、かへつて寂然ひつそりとなりました。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
拙郎やつがれ皆目かいもくるはずなけれど、一昨年をとゞし病亡なくなりしぢやうさまの乳母うばが、常日頃つねひごろあそびにてのはなしなりといふ、おとしは十九なれどまだまだ十六七としかえず
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
南無成田山不動明王なむなりたさんふどうみやうわう、とひとへとなへて、あなたがた御運長久ごうんちやうきう無事ぶじそくさい、またわかぢやうたちの
松の葉 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おいたはしきこととは太吉たきちひぬ、おくらへり、こゝろなきおさんどんのすゑまでぢやうさまにつみありとはいさゝかもはざりき、黄八丈きはちぢやうそでなが書生羽織しよせいばおりめして
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
が、そばへもせぬ下働したばたらきをとこなれば、つるぎ此處こゝにありながら、ことともぞんぜなんだ。……成程なるほどべ、と給仕きふじつて、鸚鵡あうむこれへ、といそいでぢやうに、で、こしもとたせたのよ。
印度更紗 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
彼方あなたとはたちちがふてふにはれぬかたであつた、わたしでさへ植村樣うゑむらさまなんだといたときにはお可愛想かあいさうことをとなみだがこぼれたもの、おぢやうさまのになつてはつらからうではないか
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
百人一首ひやくにんいつしゆのおぢやうさんの、「いくののみち」もそれか、と辿たどつて、はる/″\と城崎きのさきで、佐渡さどおきふねんで、キラリと飛魚とびうを刎出はねだしたから、きたなくもおびやかされたのである。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あの親切しんせつやさしいかたふてはわるいけれど若旦那わかだんなさへかつたらおぢやうさまも御病氣ごびやうきになるほどの心配しんぱいあそばすまいに、左樣さういへば植村樣うゑむらさまかつたら天下てんか泰平たいへいをさまつたものを
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ときに、川鐵かはてつむかうあたりに、(水何みづなに)とかつた天麩羅屋てんぷらやがあつた。くどいやうだが、一人前いちにんまへ、なみで五錢ごせん。……横寺町よこでらまちで、おぢやうさんのはつのお節句せつくときわたしたちはこれ御馳走ごちそうつた。
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
れほどの地邸ぢやしき公債こうさいなにほどかはもちたまふならんが、それぢやうさまがじんまくだけ漸々やう/\なるべしと、ツてやうはなしなり、老爺ぢいなんとしてそのやうにくわしくるぞとへば
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
蔦屋つたやさんのおぢやうさんに、おにかゝりたくてまゐりました。」
雪霊記事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ぢやうさまはそれほどまでに雪三せつざうちからおぼしめしてか、それとも一のおたはむれか、御本心ごほんしんおほけられたしとむるを、糸子いとこホヽとわらひて松野まつのひざかるきつ、たはむれかとはだけあさ
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さることなれど御病氣ごびやうきにでも萬一もしならばとりかへしのなるべきならずぬし誰人たれびとえぞらねど此戀このこひなんとしてもかなまゐらせたしぢやうさまほどの御身おんみならば世界せかいもなくうれひもなく御心安おこゝろやすくあるべきはず
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ぢやうさまがたはには追羽子おひはご餘念よねんなく、小僧こざうどのはまだお使つかひよりかへらず、おはりは二かいにてしかもつんぼなれば子細しさいなし、若旦那わかだんなはとればお居間いま炬燵こたついまゆめ眞最中まつたゞなかおがみまするかみさまほとけさま
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
此儘このまゝすぐにとそこ/\身仕度みじたくして庭口にはぐちでんとする途端とたんぢやうさま今日けふもおかけか何處どこへぞと勘藏かんざうがぎろ/\おそろしけれどおくしてなるまじとわざとつくる笑顏ゑがほあいらしく今日けふもとは勘藏かんざうひどいぞや今日けふはとはねばてにを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
いとゞしく御不愍ごふびんがりさておやひとあはれのことやまづ庭口にはぐちより部屋へやまでうへきたしとてたまひぬいまこそ目馴めなれたれ御座敷おざしき結搆けつこうにはのたゝずまひ華族くわぞくさまにやとうたがひしはいつぢやうさまの御言語容姿おものごしにもりしものそのうつくしきぢやうさま御親切ごしんせつにも女子同志をなごどうし
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)