内々ない/\)” の例文
たちまち、縣下けんか豐岡川とよをかがは治水工事ちすゐこうじ第一期だいいつき六百萬圓ろつぴやくまんゑんなり、とむねらしたから、ひとすくみにつて、内々ない/\期待きたいした狐狸きつねたぬきどころの沙汰さたでない。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
添書そえしょの通りお宅にてこれを解き御覧の上渡邊様方に勤め居り候御兄様おあにさまへ此の文御見せ内々ない/\御重役様へ御知らせ下され候様願いあげ※尚
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
あのとき愚老ぐらう不審ふしんおもひました。岸和田藩きしわだはんのお武士さむらひ夜分やぶん内々ない/\えまして、主人しゆじん美濃守みののかみ急病きふびやうなやんでゐるによつててくれとのおはなし
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
といつて、内々ない/\喧嘩の心積りをしてゐた。秀和は俳諧こそ其角よりは下手だつたが、以前が侍だけに、うでぷしはずつと太いのを持つてゐた。
相糺あひたゞし候處嘉川主税之助惣領そうりやう藤五郎と申者に候と御旗本はたもとの事故内々ない/\申立てければ越前守殿是を聞れ扨々不行跡ふぎやうせき千萬なり是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
全体ぜんたいだれに頼まれた訳でもなく、たれめてくれる訳でもなく、何を苦しんで斯様こんな事をするのか、と内々ない/\愚痴ぐちをこぼしつゝ、必要に迫られては渋面じふめんつくつて朝々あさ/\かよふ。
水汲み (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
山田やまだすで其作そのさく版行はんかうしたあぢを知つてるが、石橋いしばしわたしとは今度こんど皮切かはきりなので、もつと石橋いしばしは前から団珍まるちんなどに内々ない/\投書とうしよしてたのであつたが、かくして見せなかつた
硯友社の沿革 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
うつわらはるゝはずなんなみだ化粧つくりがはげてはどくなりうし乘換のりかへるうまきはなし内々ない/\ることならんを
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
如何どうするだろうと内々ない/\局の朋輩も噂していた程であったが、お秀は顔にも出さず、何時も身の周囲まわり小清潔こざっぱりとして左まで見悪みにく衣装なりもせず、平気で局に通っていたから
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
ひめ一時いちじ本物ほんものかとおもつて内々ない/\心配しんぱいしましたが、けないはずだから、ためしてようといふので、をつけさせてると、ひとたまりもなくめら/\とけました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
やゝながめなをぴよんとねた——こいつつてやあがる。前後左右ぜんごさいう、たゞいぬはしまいかと、内々ない/\びく/\ものでことを。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
典「だからいけぬと云うに、無理遣りに連れ出して、内々ない/\ならば仕様も無いが、ういう茶見世へ参って恥を与えるとはしからん事」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と、内々ない/\は広い京都中でこの羽織の似合ふのは、富豪ものもちの自分を差措さしおいてはほかに誰も居るまいとでも思つてゐるらしかつた。
搖起ゆりおこし此事を内々ない/\はなしければ友次郎もよろこびて何分共に願ひ候といはれて亭主も夫婦の者の其心根こゝろねさつ本意ほんいならぬ事にはあれつひ其意そのいにまかせけり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ワルスの調しらべ面白く、吾も内々ない/\靴のかゝとを上げ下げして、今にも踊り出さうになりぬ。
燕尾服着初めの記 (新字旧仮名) / 徳冨蘆花(著)
ところが美濃守殿みののかみどのの一けんで、はゞ五まん千石ぜんごくいへつかつぶれるかを、其方そちたなごころにぎつたも同樣どうやう、どんなひがかりでもけられるところだと、内々ない/\注意ちういしてゐると、潔白けつぱく其方そち
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
されどもれは横町よこてううまれて横町よこてうそだちたる地處ぢしよ龍華寺りうげじのもの、家主いゑぬし長吉ちようきちおやなれば、おもてむき彼方かなたそむことかなはず、内々ない/\此方こちようをたして、にらまるゝとき役廻やくまわりつらし。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何か此のかた内々ない/\の用談があっておでになったのだから、みん彼方あちらって、此方こっちへ来ないようにするがいゝ、お連れがあるようですね
其處そこ原稿料げんかうれうは?……んでもない、わたしはまだ一枚いちまいかせぎはしない。先生せんせいのは——内々ない/\つてゐるが内證ないしようにしてく。……
春着 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この画家ゑかきは、今日まで二見が浦から少からぬ画料をあげてゐるので、内々ない/\この島の地主の積りで居たのかも知れなかつた。
追拂ふが如くに悦び片時も早く立退たちのかせんと内々ない/\さゝやきけるとなり斯て天一坊の方にてはまづ京都きやうとの御旅館の見立役みたてやくとして赤川大膳は五六日先へ立て上京し京中きやうちう明家あきや
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
田中屋たなかや柔和おとなしぶりにごまかされて、一つは學問がくもん出來できおるをおそれ、横町組よこてうくみ太郎吉たらうきち、三五らうなど、内々ない/\彼方あちらがたになりたるも口惜くちをし、まつりは明後日あさつて、いよ/\かたいろえたらば
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
奉「柳が不義を存じながら、主人半右衞門へ内々ない/\にいたし居ったは、其の方共も同家に奉公中密通いたし居ったのであろうがな」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
田舍ゐなかづくりの籠花活かごはないけに、一寸いつすん(たつた)もえる。内々ない/\一聲ひとこゑほとゝぎすでもけようとおもふと、うして……いとがると立所たちどころ銀座ぎんざやなぎである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
B小説家の新作小説は、先日こなひだ月賦払ひでやつと買取つたモウパツサン全集の焼直しに過ぎないとかいふ事を、ごく内々ない/\吹聴ふいちやうするのを道楽にしてゐる。
あねたちの難義なんぎゆるやうなれば、いましばらくまりてと、母君はヽぎみものやはらかにのたまひたれど、おゆるしのいでしに甲斐かひなく、夫々それ/\支度したくして老實まめやか侍女つきらみ、出立しゆつたつ何日々々いつ/\内々ない/\とりきめけるを
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
持ちやアがる、はゝア分った、こりゃアなんだな、兄貴おめえは女房が死んで六年にもなるから、内々ない/\小兼とくッついて居るんだな
が、いづれものにちかいのであるから、またばける、といはれるのをおもんぱかつて、内々ない/\遠慮ゑんりよがちにはなしたけれども、じつは、みゝづくはきである。第一だいいちかたち意氣いきだ。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ランシング氏に聴かれて、また長つたらしい演説でもされては困るから、ごく内々ない/\で耳打をするが、実はその聖書は、氏の夫人が結婚の当時、贈り物にしたものである。
表店おもてだなを立派に張って居ても内々ない/\は一両の銭に困る事もあるものだ、百両くれろと云っても、そんなにわっちはおめえさんにお恵みをする縁がねえ
それから、これはごく内々ない/\の話だが、汽車には寝台車といふものがあつて、相当の料金さへ出せば、誰にも顔を見られず、一人でカーテンのなかで思ひ出し笑ひが出来る仕掛になつてゐるさうだ。
それについてはお隣の源次郎様をと内々ない/\殿様にお勧め申しましたら、殿様が源次郎はまだ若くッて了簡りょうけんが定まらんからいかんと仰しゃいましたよ
以上狐狸こり退治の秘伝、親類縁者たりともごく内々ない/\の事内々の事。
長「へい、そう御親切に仰しゃってくださるならお話をいたしましょうが、何卒どうぞ内々ない/\に願います………実アわたくしア棄児です」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
内々ない/\ぼやいてゐまいものでもない。
此の信樂という人はしたるい身分でもないが、理非明白な人でありますから、お目付になって、内々ない/\叛謀人むほんにん取調べの掛りを仰付けられました。
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
秋「婆アちっと頼みたい事があるが、明日あした手前のうちわしくがな、其の飴屋という者を内々ない/\で私に会わしてくれんか」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼様かような事に相成りまして、誠に何うもお目にとまり恐れ入りますが、どうか御尊父様へも武田様にも内々ない/\に願います
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
此処こゝへ粂之助が忍んで来て、お嬢さんを誘い出すような事になったのは、大方鳶頭も内々ない/\知ってるのではないか、粂之助と共謀ぐるになってお嬢様を誘い出し
闇夜の梅 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こゝが妙なもので、三千円のうち、当人に内々ない/\で百円使い込んでるとこでございますから、春見のいう言葉が自然におど付きますから、此方こちら猶更なおさら心配して
中には内々ない/\張子連はりこれんなどと申しまして、師匠がどうかしてお世辞の一言ひとことも云うと、それに附込んで口説落くどきおとそうなどと云う連中れんじゅう経師屋きょうじや連だの、あるいは狼連などと云う
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
右「よし/\、それで文治の素性すじょう並びに日頃の行状は能く相分った、少し思う仔細があるから、内々ない/\にて蟠龍軒と申す者の素性及び行状を吟味いたすよう取計らえ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
蟠「やア何時いつにか出来上ってしまったな、ウム、旨い、しかし婆ア近所へもごく内々ない/\にしてくれえ」
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
改めて夫婦の盃をさせ内々ない/\の婚姻を致させましたから、猶更睦じく両人は毎日葛西の小岩井村を出て、浅草の観音へ参詣を致して、是から江戸市中を流して歩るきます。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それに以前もと吉原よしはら一遍いつぺんでもあなたの所へ出たことがあるんですから、良人うちのひとに知れると悋気りんきではありませんが、いやな顔でもされるとあなたも御迷惑ごめいわくでございませうから内々ない/\で。
山「はい、少し内々ない/\の話があって参ったが、此処で話しも出来んが、何処か離坐敷はなれはないか」
藤「全くは是から訴えようと内々ない/\下話したばなしもございましたので、処を盗み取られましたんで」
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
清「えゝ少し旦那様に内々ない/\お目にかゝってお話がしとうございまして参りましたが、おうちかたに知れちゃアよろしくありませんから、どうか人のねえ所へお通しを願いたいもので」
いもんじゃア有りやせんが銘仙かなんかの着物が出来ておつな帯をしめましたよ、なりをすると結髪むすびがみで働いて居る時よりゃア又く見えるね、内々ない/\魚などを買って喰う様子でげすぜ
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
娘は表向の御新造ごしんぞとして、内々ない/\ところは其の女を御新造として置いてもいゝ、わたくしが取る分まいを其の女にやりますから宜しい、わたくしが行って其の女に逢って頼みましょう、其の女は何者じゃ