見入みい)” の例文
といって、ある日そっとむすめあとから一間ひとまはいってきました。そしてむすめ一心いっしんかがみの中に見入みいっているうしろから、けに
松山鏡 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
わたしは、じっと、このあおいろ見入みいっていると、たましいも、も、いっしょに、どこかとおいところへえていきそうにおもいます。」
ひすいを愛された妃 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのあぶ羽音はおとを、くともなしにきながら、菊之丞きくのじょう枕頭ちんとうして、じっと寝顔ねがお見入みいっていたのは、お七の着付きつけもあでやかなおせんだった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
燒趾やけあとはひから青銅せいどうのやうにかはつた銅貨どうくわはぽつ/\とけたかはのこしてあざやかな地質ぢしつけてた。かれはそれをちかづけてしばら凝然ぢつ見入みいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それにこうして平然と、画面に見入みいっていていいものかしら、赤外線男の出てくるには屈強くっきょうな地下室ではないか。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
あいちやんはじツかんがはじめました、『さて、わたしがそれをうちれてつてうしやう?』やがてまたひどうなつたので、あいちやんはおどろいて其顏そのかほ見入みいりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
見入みいっているのではない。まさしくそれは心に聴き入っていると言った方が適切である。万一の場合を気遣って、御警固旁々かたがた座に控えていた者はたった四人。
十万石の怪談 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
凄いほどな麗人といふよりも美しい野の少女があけの頬を火照ほてらしながら、それでも瞳を反らしてしまはずに、うるんだ眼差しで、凝と見入みいつてゐるやうな、捨てがたい
(旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
かゝりけれどもほ一ぺん誠忠せいちうこゝろくもともならずかすみともえず、流石さすがかへりみるその折々をり/\は、慚愧ざんぎあせそびらながれて後悔かうくわいねんむねさしつゝ、魔神ましんにや見入みいれられけん、るまじきこゝろなり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かへるともせず、ひそやかに、はた、はてしなく見入みいりぬる。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
被衣かつぎのひまに見入みいるれば、あな『われ』なりき
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
ひと一ばい熱心に見入みいるのも道理どうりなわけ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おとうとは、めずらしい写真しゃしん見入みいったり、またいてあるおもしろそうな記事きじに、こころうばわれて、いろいろの空想くうそうにふけるであろうとおもったのでした。
波荒くとも (新字新仮名) / 小川未明(著)
飴売あめうり土平どへい道化どうけ身振みぶりに、われをわすれて見入みいっていた人達ひとたちは、っていたような「おせんがた」というこえくと、一せいくびひがしけた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
彼は爛々らんらんたる眼で見入みいった。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
おいほけて、見入みいるしばしを
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
それから、子供こどもはひとり、そらとりかげばかりでなく、はなや、いしや、や、なににたいしてもじっと見入みいって、ふかくものをおもうようになったのであります。
はてしなき世界 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ははほうへはかずに、四畳半じょうはんのおのが居間いま這入はいったおせんは、ぐさまかがみふたはずして、薄暮はくぼなかにじっとそのまま見入みいったが、二すじすじえりみだれたびんを、手早てばやげてしまうと
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「ああ、それがいい。この意味いみは、どうやらわかるようだ。」と、先生せんせいは、いつまでも見入みいっていました。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのむすめは、不思議ふしぎおもって、そのはなにわえました。そうして、朝晩あさばんはなみずをやって、彼女かのじょはじっとそのはなまえにかがんで、そのはな見入みいりました。
夕焼け物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
むすめにあうかしら?」と、くびをかしげて見入みいられたであろう母親ははおやのすがたさえ、にうかんでくるのでした。
田舎のお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、しばらくうっとりとして、周囲まわりいているはなや、ちょうにじっと見入みいっていましたが、しまいには、自分じぶんもなにかのうたくちずさむのでありました。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
くまは、さも同意どういもとめるように、ただちに、さかだるのまえにきて、じっとそれに見入みいっていたのです。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おんなはこなかから、なろうそくをげました。そして、じっとそれに見入みいっていましたが、やがてかねはらって、そのあかいろうそくをってかえってゆきました。
赤いろうそくと人魚 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いままであそびにをとられていた子供こどもらは、まるくしてそのじいさんの周囲しゅういあつまって、片方かたほうはこうえてたいろいろの小旗こばたや、不思議ふしぎ人形にんぎょうなどに見入みいったのです。
空色の着物をきた子供 (新字新仮名) / 小川未明(著)
子供こどもに、そのは、どんなふうにうつったでしょうか。それをだれもひとはありません。しかししょうちゃんは、そのうちわをつと、じっとその見入みいっていました。
遠方の母 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「まことに、けっこうなしなです。」と、りこうものはただいったきりで、あくまで仏像ぶつぞう見入みいっていました。おとこは、その言葉ことばしんじられないような、へんな気持きもちがしました。
天下一品 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれは、この黄昏方たそがれがたに、じっとさかずきをって、見入みいりながら、利助りすけというような名人めいじんが百年前ねんまえむかし、このなか存在そんざいしていたことについて、とりとめのない空想くうそうから
さかずきの輪廻 (新字新仮名) / 小川未明(著)
けれど、この子供こどもが、だまって、じっとものに見入みいっているのをて、こころうちに、どんなことをかんがえているか? やはり、だれもそのことをるものはなかったでありましょう。
はてしなき世界 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それに、じっと見入みいっていると、そのころ、いっしょにくさや、はなをつんであそんだ近所きんじょおんなや、おとこ姿すがたが、ありありとさきにちらつくようにうつってくるのでした。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二郎じろうは、しみじみと、このみじかあおあかけられた一ぽんふえに、見入みいっていました。
赤い船のお客 (新字新仮名) / 小川未明(著)
二人ふたりは、ほかにだれもいないときに、銀貨ぎんかして見入みいっていました。すると、とおい、みなとまちや、そらや、おかや、木立こだちかげが、ありありとゆめのように、記憶きおくかんでくるのでした。
幸福に暮らした二人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
あたまを、かしげながら、ほこりに、よごれたかみを、あけてみると、べいごまが、六つばかりはいっていました。しん一は、きゅうになつかしいものを、いだしたようにしばらくそれに見入みいっていました。
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
とこなつのはなは、あたまげて、じっと太陽たいようひかり見入みいっていました。このとき、あおそらをかすめて、どこからともなく、一とりんできました。最初さいしょは、ほんのくろてんのようにえたのです。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おかあちゃんが、おかあちゃんが……。」といいました。あわれな子供こどもは、ものいわない見入みいって、きやむのがつねでありました。そして、ちいさなゆびで、うちわにかれた、おんなひとゆびさして
遠方の母 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そんな、ささやきがこえると、答案とうあん見入みいっていられた先生せんせい
生きぬく力 (新字新仮名) / 小川未明(著)