せい)” の例文
「じらすなよ、金はおかみが出すご褒美。それでも不足というんなら、そうだ、頭を下げる。せい、この兄貴が、頭をさげて、こう頼む」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せいちゃん、あのおにわいているあかはなはなんだかっている?」と、一人ひとりが、まって垣根かきねあいだからのぞこうとしたのでした。
子供どうし (新字新仮名) / 小川未明(著)
伯夷量何ぞせまきというに至っては、古賢の言にると雖も、せいせいなる者に対して、忌憚きたん無きもまたはなはだしというべし。擬古ぎこの詩の一に曰く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
みんな黒んぼ会を、大へん楽しみにして待ちましたが、郵便局のせいちやんだけは、ただ一人ビク/\して恐れてゐました。
黒んぼ会 (新字旧仮名) / 槙本楠郎(著)
せい兄さんはネ、お母さん」素六そろくが呼びかけた。「この前うちへ帰って来たとき、また近く戦争があるんだと云ってたよ」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「こいつのイ、樽屋たるやせいさの子供だけどのイ、下駄を一足やっとくれや。あとから、おっ母さんがぜにもってくるげなで」
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
せいさんと清さんのお袋といっしょにおとよさんは少しあとになってくる。おとよさんは決して清さんといっしょになって歩くようなことはないのだ。
隣の嫁 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
奥から続いて出て来たのは、おせいという酌婦、色白の丸顔で、お葉よりも二三歳ふたつみつ若く見えた。これも幾らか酔っているらしい、苦しそうに顔をしかめて
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
途中に十丈ほどの険阻な断崖がけがありますから、入学して一ヶ月ほどは女中のおせいに送り迎えさせましたが、後には義夫一人で往復するようになりました。
安死術 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
入けれどもお熊は祝言しうげんの夜より癪氣しやくけおこり難儀なんぎなりとてはゝそばかしおくまちう八母はせい三郎と毎夜まくらならべて一ツをなすこと人外にんぐわいの仕方なりされども又七は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
せい八という下男を連れて成田へ参詣に出掛けまして、小和田こわだの原へかゝりました頃は、日の暮々でございまする。
家の近くにいちゃいけないというなら、あたしからおせいちゃんにはそう云うよ。ばかばかしい。人の情人いろおとこ
実際、この尾張というところは、信長を産み、秀吉を産み、頼朝を育て、その他、加藤のせいちゃんも、前田の利公としこうも、福島のまさあにいも、みんなこの尾張が出したんだ。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
せいちゃん、しっかり!」と手塚は叫んだ。近藤勇こんどういさみふんした役者は清ちゃんという名前なのだ。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
しかし彼を呶鳴りつけたので、ある程度まで気がせいせいしたせいか、一緒の部屋にいたあの溺死者のことを考えたときに感じたような不愉快な気分はすっかり忘れてしまった。
のち清明せいめいせいをかえて、阿倍あべ晴明せいめいといった名高なだかうらないの名人めいじんはこの童子どうじのことです。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
私は柳屋の娘というと黄縞きじま黒襟くろえりで赤い帯を年が年中していたように印象されている。弟のせいちゃんは私が一番の仲よしで町ッ子の群れのうちでは小ざっぱりした服装なりをしていた。
山の手の子 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
「悪いというても、せいちゃんのような鍛冶屋のせがれには、わかるまいけんどな。この車に積んどる蜜柑を、今日、問屋で、言い値で引きとらなんだら、破産じゃと、親父おやじがいうとった」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
中屋とまでいはれては黙つてはゐられませぬ、松つあんならぬ弟のせいさん、浮気らしいがあの人なら一日でも遊んで見たいと兼て思つてをりました、なるほどさうありさうな事ではあれど
そめちがへ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
相手方あひてかた勿論もちろん仲間内なかまうちおほく、始終しじうかほあはせるのが六だん佐佐木茂索ささきもさく、三だん和木わぎせいらう、三だん池谷いけのやしんらうなどで、ときに六だん菊池寛きくちくわん、五だん廣津和郎ひろつかづを、七だん川崎備寛かはさきびくわん、六だん濱尾はまをらう、四だん古川緑波ふるかはりよくは
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
おかしなぐあいだなと思い、栄二が男に話しかけようとしたとき、小走りに来る足音が近づき、せいさんどこ、と云う女の声が聞えた。男は振り向いてここだと答え、闇をすかして栄二を見あげた。
さぶ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と女中さんと話ながらせいさんが入って来た。伝さんとおなじの、黒い、麻の着物のしりはしょりをおろして、手ぬぐいで、麻裏草履を穿いて来た足前つまさきをはたいて、上って来て、キチンとお辞儀をした。
(船の中に向って声をかける)おいせい大工、ちょっとこいよ。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
こうちゃんはうまくやってみせました。すると、せいさんは、こうちゃんに、これについて、つぎのようなおもしろいはなしをしてかせました。
日月ボール (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おふざけでないよ。ちゃんと、ほんとは知ってるくせに。黄泥岡こうでいこうの一件を、せいさんが耳にしていないはずないわ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せいさん、あゝ悪い事は出来ないものだ、其の申訳もうしわけは春見丈助必らず致します、どうか此処こゝでは話が出来ませんから、蔵の中でお話を致します、れんようにお話を
もっとも、紅子と素六とは、せい兄さんも話せるようになった、だがこれは日頃の罪滅つみほろぼしの心算つもりなんだろう、なんてらずぐちを叩きながら、盛んにポリポリやってたようだ」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
彼は間もなくかの貴公子に別れ、せい州へ行ってという役人の家に足をとどめていると、ある日、ひとりの旅人が一匹の猴を連れて城内に入り込んだという報告があった。
あてがひてあそびに追遣おひやあとには娘おくま番頭ばんとうちう髮結かみゆひせい三郎ともに入込いりこみ下女のおひさお菊もおつね仕込しこまれ日毎に酒宴しゆえん相手あひてをなしたりしが或日おつねきん出して下男げなん云付いひつけさけさかな
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ここおいて清の独り緋をるを見て之を疑う。ちょうおわる。せい奮躍してを犯さんとす。帝左右に命じて之を収めしむ。剣を得たり。せい志のぐべからざるを知り、植立しょくりつして大にののしる。衆その歯をけっす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「聞きはせんが、それに違わん。さっき、せいやんと、井場の船具商で、ロオプを買うて、弁財天通りまで来たら、昨日の連中が、四斗樽を車力に積んで、曳いて行きよった。……なあ、清やん」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
せい、そんなとこで何しとるだ、この寒いに。」
百姓の足、坊さんの足 (新字旧仮名) / 新美南吉(著)
可憐かれん新管、せいにしてかつなることを
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ほんとうに、このときばかりはおこって、せいちゃんのあといかけました。せいちゃんは、うしなって、酒屋さかやさんのみせみました。
仲よしがけんかした話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
昨日も昨日とて、御当家浪人の井関紋左衛門いぜきもんざえもん様や徳兵衛とくべえ様、又、岡野治太夫おかのじだゆう様も大岡おおおかせいろう様もお訪ねなされましての、種々いろいろと、お話しでございましたわい
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ムヽ今けえった、誰だせいさんか、今帰ったが、まつで詰らねえ小博奕こばくちへ手を出して打って居ると、突然だしぬけに手が這入へえって、一生懸命に逃げたが、仕様がねえから用水の中へ這入って
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と、自転車で駈けつけてきたのは、警報班長の髪床屋かみどこやせいさんだった。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たゞすは誠になげかしき事なりと種々いろ/\利解りかいあつさげられけれども双方さうはう得心とくしんなければ是非なく吟味ぎんみとぞなりにけるころ享保きやうほ十二年十月双方さうはうそう呼出よびだしの人々には白子屋庄三郎ならびつまつねむすめくま番頭ばんとうちう下男げなん長助ちやうすけ下女げぢよひさきくむこまた大傳馬町おほでんまちやう居付ゐつき地主ぢぬし彌太やた加賀屋長兵衞等かがやちやうべゑとうなり此砌このみぎり髮結かみゆひせい三郎は出奔しゆつぽんして行方ゆくへ知れず大岡殿彌太郎に向は
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
せいちゃんがいているから、かんにんしておやりよ。」と、このとき、あちらから、ときさんの、甲高かんだかさけごえがしました。
仲よしがけんかした話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「あああの、おふくろ様と一つのいおりに住んでござらっしゃる公孫こうそんせいさんなら、わしが家のつい近所じゃが」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これなるせいの乳をまして八さいまでは養育したが、もう八歳にもなったから返してくれろとの頼みに依り、早速親許へ引渡した時に、其の方の実父角右衞門より長らく忰が御厄介になり
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
このせいさんには、いろいろなおかしいはなしがあります。あるのこと、ひまでこまっていました。そこへうつくしいモダンガールがやってきました。
日月ボール (新字新仮名) / 小川未明(著)
越中ざかいの勝山城かつやまじょうには、丹羽権兵衛を入れて、七尾城に対抗せしめ、阿尾城あおじょうには、菊地右衛門入道きくちうえもんにゅうどうとその子、伊豆守いずのかみを。——森山城もりやまじょうには、神保氏張じんぼうじはる同苗どうみょうせいろうを。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せいさんは、おどろいてくるまからりて、まごまごして、やっとなおしてうごそうとしてると、いつのまにか、おんなえてえなかったのです。
日月ボール (新字新仮名) / 小川未明(著)
せいさん……おまえ今夜、秀八に金をやったろう」
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「あ、しようよ。」と、せいちゃんが、こたえたので、しんちゃんはいそいで、うちかえって、たくさん新聞紙しんぶんしってきました。
仲よしがけんかした話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おや、せいどん」
春の雁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しょうちゃんは、まだ、鉄道てつどうのおじさんの洋服ようふくのボタンをたことがないとおもいました。せいちゃんも、こうちゃんも、まだっていなかったのでしょう。
金色のボタン (新字新仮名) / 小川未明(著)
「どれ、せいちゃんと、はやしへいって、やまがらをぼうや。」と、正雄まさおは、またしました。いつしか、たのしいあきぎ、ゆきふゆがきました。
へちまの水 (新字新仮名) / 小川未明(著)
せいちゃん、ぼくいまきたばかりなのさ。あのさくらしたに、いぬててあるよ。」と、正二しょうじはこのとき、とりんでいくほうしながら、いいました。
野菊の花 (新字新仮名) / 小川未明(著)