日本にっぽん)” の例文
(微笑)今までにない盗みの仕方、——それも日本にっぽんと云う未開の土地は、十字架や鉄砲の渡来と同様、やはり西洋に教わったのです。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
外国がいこくから、日本にっぽんへわたり、ひとからひとへ、てんてんとして、使用しようされてきたので、時計とけいも、だいぶとしをとっているとおもいました。
時計と窓の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それは、江戸幕府えどばくふのおわりにちかいころでしたが、そのころの日本にっぽん社会しゃかいは、まだ、さむらいがいちばんえらいとされていました。
日本にっぽん国中くにじゅう方々ほうぼうめぐりあるいて、あるとき奥州おうしゅうからみやこかえろうとする途中とちゅう白河しらかわせきえて、下野しもつけ那須野なすのはらにかかりました。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
日本にっぽんとロシヤが、うみこうでたたかいをはじめていました。海蔵かいぞうさんはうみをわたって、そのたたかいのなかにはいってくのでありました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
日本にっぽん一の御子みこからまたなきものにいつくしまれる……。』そうおもときに、ひめこころからは一さい不満ふまん、一さい苦労くろうけむりのようにえてしまうのでした。
御利益ごりやくを持ちまして日本にっぽんへお帰しを願います…おや旦那彼処あすこ高坏たかつきのような物の上に今坂だか何だか乗って居ります、なんでも宜しいお供物くもつを頂かして
都はおろか、日本にっぽんじゅうに隠れのない、名家の弟子のかずに入ることは身のほまれであると、千枝松は涙をながして喜んだ。叔父たちにも異存はなかった。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
差出さしでがましうござんすが、お座興にもと存じて、お客様の前ながら、申上げます、とお嬢様、御口上ごこうじょう。——内に、日本にっぽんと云ふ、草毟くさむしりの若い人がりませう……ふと思ひ着きました。
印度更紗 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
これをヤマトタチバナと改称すると提議したのは、土佐とさ〔高知県〕出身で当時柑橘界かんきつかいの第一人者であった田村利親としちか氏であったが、その後、私はさらにそれを日本にっぽんタチバナの名に改訂かいていした。
植物知識 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
山嵐のようにおれが居なくっちゃ日本にっぽんが困るだろうと云うような面をかたの上へせてる奴もいる。そうかと思うと、赤シャツのようにコスメチックと色男の問屋をもって自ら任じているのもある。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
明治九年に国学者阿波あわの人某が、福沢のあらわす所の『学問のすゝめ』をはくして、書中の「日本にっぽん蕞爾さいじたる小国である」の句を以て祖国をはずかしむるものとなすを見るに及んで、福沢に代って一文を草し
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
日本にっぽんを去るにのぞみて梅十句
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
国土こくど日本にっぽんとこしへの母
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
きつねは大いばりで獅子ししくび背負せおって、日本にっぽんかえってました。これが、いまでも、おまつりのときにかぶる獅子頭ししがしらだということです。
物のいわれ (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
ところが、こんど、キリストきょうをしんずるアメリカが、日本にっぽんくにをひらかせて、自由じゆうにぼうえきをやろうといってきたのです。
「ああ、おじさんも、日本にっぽん子供こどもは、そんとか、とくとかいうことなんか、かんがえてはいけない。ただしいことをしなければならぬといった。」
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのころ自転車じてんしゃ日本にっぽんにはいってたばかりのじぶんで、自転車じてんしゃっているひとは、田舎いなかでは旦那衆だんなしゅうにきまっていました。
牛をつないだ椿の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
が、出来るだけ悠然ゆうぜん北京官話ペキンかんわの返事をした。「我はこれ日本にっぽん三菱公司みつびしこうしの忍野半三郎」と答えたのである。
馬の脚 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
日本にっぽんもうくに古来こらい尚武しょうぶ気性きしょうんだお国柄くにがらであるめ、武芸ぶげい偵察ていさつ戦争いくさ駈引等かけひきとうにすぐれた、つまり男性的だんせいてき天狗てんぐさんはほとんど全部ぜんぶこのくにあつまってしま
これは実際有りましたお話でございます。の辺は追々と養蚕がさかんに成りましたが、是は日本にっぽん第一の鴻益こうえきで、茶と生糸の毎年まいねんの産額は実におびたゞしい事でございます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おのれ、日本にっぽん薩摩国さつまのくに鹿児島を知らぬかと呼ばはると、伸び/\とした鼻の下をやっと縮めたのは、おおきな口をけてあきれたので。薩摩は此処ここから何千里あるだい、と反対あべこべに尋ねたのである。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
彼は酔ったような心持で、そのがくの流れて来る方をそっと窺うと、日本にっぽん長柄ながえ唐傘からかさに似て、そのへりへ青や白の涼しげな瓔珞ようらくを長く垂れたものを、四人の痩せた男がめいめいに高くささげて来た。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
日本にっぽんの花の提灯ちょうちんともるもと
五百五十句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
おばあさん、こんど、六十けんもあるおおきな飛行船ひこうせんが、三千とおい、ドイツから、わずか四日よっか五日間いつかかんで、日本にっぽんんでくるというんですよ。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのころの日本にっぽんは、どの土地とちも、このふるいおきてでおさめられていましたが、とりわけ、九州きゅうしゅうのいなかである中津なかつは、それがつよいのでした。
けれどそこのうみからは、どうしても日本にっぽんくにはいのぞみがないので、ぐるりとそとまわって、但馬国たじまのくにからがりました。
赤い玉 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
じつにすばらしいはな日本にっぽんにはあるものだ。いつかおとうさんが、日本にっぽんほど自然しぜんにめぐまれているくにはないとおっしゃったが、ほんとうにそうだとおもう。
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
とむしゃ/\喰いまして、「腹が減るとうまい物で、旦那これは日本にっぽんに違いない、日本にっぽんらしい味がする」
「万歳! 日本にっぽん万歳! 悪魔降伏。怨敵おんてき退散たいさん。第×聯隊万歳! 万歳! 万々歳!」
将軍 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
また、きんさんは、でんぐりがえりをしたり、逆立さかだちをしながら、ちゃわんのなかみずんでみせたのでした。親方おやかたは、日本にっぽんはいいところだといっていました。
春風の吹く町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
いんさまのおいのちをとって、日本にっぽんくにをほろぼそうとしたわたしのたくらみは、だんだん成就じょうじゅしかけました。それを見破みやぶったのは陰陽師おんみょうじ安倍あべ泰成やすなりでした。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
英国いぎりす竜動ろんどんより三時間で往復の出来る処、日本にっぽんで云えば横浜のような繁昌はんじょうな港で、東京とうけいで申せば霊岸島れいがんじま鉄砲洲てっぽうずなどの模様だと申すことで、その世界に致してお話をします。
あの大十字架おおくるすの星の光は阿媽港あまかわの空には輝いていても、日本にっぽんの空には見られません。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
わたしはとうとう泰成やすなりのためにいのせられて、正体しょうたいあらわしてしまいました。そしてこの那須野なすのはらんだのです。けれども日本にっぽん弓矢ゆみやくにでした。
殺生石 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そのうち、おばあさんは、病気びょうきになられたのです。ちょうどそのころ、ドイツから、ツェッペリンはくごうが、日本にっぽんんでくるといううわさがたっていました。
おばあさんとツェッペリン (新字新仮名) / 小川未明(著)
馬「日本にっぽんは広いけれども鹿児島熊本ならまだしも、支那朝鮮などと来ては困りますねえ」
「お前はもう甚内では無い。阿媽港甚内はこの首なのだ、あの天下に噂の高い、日本にっぽん第一の大盗人おおぬすびとは!」(笑う)ああ、わたしは愉快です。このくらい愉快に思った事は、一生にただ一度です。
報恩記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そしていちばんおしまいに、大きなふねして、宝物たからもののこらずそれにんで、おひめさまと二人ふたり、またふねって、もなく日本にっぽんくにかえってました。
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
むかしは、いまよりももっと、まつみどりあおく、すないろしろく、日本にっぽん景色けしきは、うつくしかったのでありましょう。
羽衣物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さア其処そこです、文治殿こそは日本にっぽんに二三とあるまじき天晴あっぱれ名士と心得ますが、うでござるな、その日本名士が上州あたりの長脇差や泥坊が、御法度ごはっとを犯して隠れているよごれた国へまいりますか
後の業平文治 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それでシナの天子てんしさまが日本にっぽんかえすことをしがって、むりやりめたため、日本にっぽんかえることができないで、そのままこうで、一しょうらしてしまいました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
むかしえらひとは、みんなそうしたひとたちでありました。また、ちいさな日本にっぽんくにが、おおきなくにたたかって、つことができたのは、日本人にほんじんにこの精神せいしんがあったからです。
真吉とお母さん (新字新仮名) / 小川未明(著)
わたしが、もしんだら、おまえは、正直しょうじきはたらいて、日本にっぽん自分じぶんまれたくにおもって、ながらすがいい。
春風の吹く町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
さてこの天日矛命あまのひぼこのみことというのは、もと新羅しらぎくに王子おうじでした。それがどうして日本にっぽんわたってて、こちらにむようになったか、それにはこういうおはなしがあります。
赤い玉 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
「ああ、ともだちさ、ぼくらは、みなが、いいひとになって、日本にっぽんくにが、ますますつよくなるようにと、紙芝居かみしばいをしてあるいているんだ。」と、おじさんがこたえました。
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
仲麻呂なかまろんでからは、日本にっぽんのこった子孫しそん代々だいだい田舎いなかにうずもれて、田舎侍いなかざむらいになってしまいました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
とうさん、よくわかりました。いま日本にっぽんひとは、おとこでもおんなでも、としよりでも子供こどもでも、一人ひとりのこらず、ちからをあわせて、ちあがらなければならぬときがきたんです。
赤土へくる子供たち (新字新仮名) / 小川未明(著)
それからこのたまみみてれば、鳥獣とりけもの言葉ことばでも、草木くさきいしころの言葉ことばでも、手にるようにかります。この二つの宝物たからもの子供こどもにやって、日本にっぽん一のかしこい人にしてください。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おまえのことは、さっき、よく宿やどひとたのんでおいた。日本にっぽんひとは、こまったものを見殺みごろしにしない。
春風の吹く町 (新字新仮名) / 小川未明(著)