トップ
>
布子
>
ぬのこ
ふりがな文庫
“
布子
(
ぬのこ
)” の例文
手織縞
(
ておりじま
)
のごつごつした
布子
(
ぬのこ
)
に、よれよれの半襟で、
唐縮緬
(
とうちりめん
)
の帯を
不状
(
ぶざま
)
に鳩胸に高くしめて、髪はつい通りの束髪に結っている。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
かくてもあられねば
妻
(
つま
)
は
着
(
き
)
たる
羽織
(
はおり
)
に
夫
(
をつと
)
の
首
(
くび
)
をつゝみてかゝへ、
世息
(
せがれ
)
は
布子
(
ぬのこ
)
を
脱
(
ぬぎ
)
て父の
死骸
(
しがい
)
に
腕
(
うで
)
をそへて
泪
(
なみだ
)
ながらにつゝみ
脊負
(
せおは
)
んとする時
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
白粉
(
おしろい
)
のところ
剥
(
は
)
げになった顔が、寒気立ち、
埃
(
ほこり
)
まみれの髪を茫々にしたままで、老人の物を直したらしい縞目のわからない
布子
(
ぬのこ
)
を着ていた。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
湯のような美女の涙が、
布子
(
ぬのこ
)
を通して太股に流れるのを、権次は手の付けようの無い心持で、我慢しました。それは、実に恐ろしい魅惑です。
黄金を浴びる女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
広い土間へ入って、
框
(
かまち
)
のそばに切ってある大きな爐に手をかざしていた盲縞の
布子
(
ぬのこ
)
を着ている五十格好のお神さんに、一夜の宿をお願い申した。
酒徒漂泊
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
▼ もっと見る
露
(
あら
)
わにした胸に並んで見える肋骨の併列と、
布子
(
ぬのこ
)
ともかたびらともつかない広袖の一枚を打ちかけた姿と言い、誰が見ても
三途
(
さんず
)
の川に頑張って
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
庄三郎は
織色
(
おりいろ
)
の羽織を
著
(
き
)
まして、
二子
(
ふたこ
)
の茶の
黒
(
くろっ
)
ぽい
縞
(
しま
)
の
布子
(
ぬのこ
)
に縞の前掛に、帯は八王子博多を締めて、商人然としている。
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
茶に
染返
(
そめかへ
)
したる
布子
(
ぬのこ
)
なり是は
取置
(
とりおけ
)
と申付られ
頓
(
やが
)
て火も
鎭
(
しづま
)
りしかば皆々火事場を
引
(
ひか
)
れけり扨又喜八は
危
(
あやふ
)
くも袖を切て其の場を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
そこを付け入って更にかれの袖を引っ
掴
(
つか
)
むと、男はもう絶体絶命になったらしく、着ている
布子
(
ぬのこ
)
をするりと脱いで、素裸のままでまた駈け出した。
半七捕物帳:37 松茸
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
垢
(
あか
)
じみた木綿
布子
(
ぬのこ
)
につつまれた小男の——一体どこに、そんな魅力があったかといえば、黙って、大地から嘉兵衛を見上げている日吉の眼だった。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
二人の情通露見したる時に、朋輩勘十郎の
奸策
(
かんさく
)
同時に落ち来りて、清十郎が
布子
(
ぬのこ
)
一枚にて追払はるゝ段より、お夏の愛情は一種の神韻を帯び来れり。
「歌念仏」を読みて
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
高座では若手の
落語家
(
はなしか
)
橘家圓太郎が、この寒さにどんつく
布子
(
ぬのこ
)
一枚で、チャチな風呂敷をダラリと帯の代わりに巻きつけ、トボけた顔つきで車輪に御機嫌を伺っていた。
円太郎馬車
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
老婆はその花束を裏の縁側へ置いて、やっとこしょと上へ昇り、
他処
(
よそ
)
往きの
布子
(
ぬのこ
)
に着更え、幅を狭く
絎
(
く
)
けた黒繻子の帯を結びながら出て来たところで、人の跫音がした。
地獄の使
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
背丈
(
せい
)
が五尺と一寸そこらで。年の頃なら三十五六の。それが頭がクルクル坊主じゃ。眼玉落ち込み歯は総入歯で。
痩
(
や
)
せた
肋骨
(
あばら
)
が洗濯板なる。着ている
布子
(
ぬのこ
)
が畑の
案山子
(
かかし
)
よ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
布子
(
ぬのこ
)
の下の
襦袢
(
じゅばん
)
から、ポチリと色
褪
(
さ
)
めた赤いものが見えるので、引っぱりだして見ると、黒ちりめんに
牡丹
(
ぼたん
)
の模様の古いのだった。
綴
(
は
)
ぎ
綴
(
は
)
ぎで、大きな二寸もある紋があった。
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
先刻
(
さっき
)
内々戸の
透
(
すき
)
から見たとは違って、是程までに美しいそなたを、今まで木綿
布子
(
ぬのこ
)
着せて
置
(
おい
)
た親の
耻
(
はずか
)
しさ、小間物屋も
呼
(
よば
)
せたれば
追付
(
おっつけ
)
来
(
くる
)
であろう、
櫛
(
くし
)
簪
(
かんざし
)
何なりと
好
(
すき
)
なのを取れ
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
二人を送り出して、今まで徳さんの息子が着ていた磯臭いボロ
布子
(
ぬのこ
)
を身につけると、私は小屋の窓際にうずくまって、障子の蔭から目ばかり出して、小舟の行手を見守っていた。
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
家
(
うち
)
へ帰る途中にも、折々インヴァネスの羽根の下に抱えて来た銘仙の
包
(
つつみ
)
を持ち
易
(
か
)
えながら、それを三円という安い
価
(
ね
)
で売った男の、粗末な
布子
(
ぬのこ
)
の
縞
(
しま
)
と、赤くてばさばさした髪の毛と
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いわゆる
布子
(
ぬのこ
)
としては信州秋山の例のように、これらの繊維の
屑
(
くず
)
を綿のようにほごして中に入れたろうと思うことは、今でも麻の屑をヲグソと謂って、それに使っているのからも想像せられる。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
一巻のブックを
懐
(
ふところ
)
にして、
嘉平治平
(
かへいじひら
)
の
袴
(
はかま
)
の
焼海苔
(
やきのり
)
を
綴
(
つづ
)
れる如きを
穿
(
うが
)
ち、フラネルの
浴衣
(
ゆかた
)
の洗ひ
曬
(
ざら
)
して
垢染
(
あかぞめ
)
にしたるに、
文目
(
あやめ
)
も分かぬ
木綿縞
(
もめんじま
)
の
布子
(
ぬのこ
)
を
襲
(
かさ
)
ねて、ジォンソン帽の
瓦色
(
かはらいろ
)
に化けたるを頂き
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
膝きりの
布子
(
ぬのこ
)
を着、足首まで水に這入って静かに糸を垂れている。
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
夏たちて
布子
(
ぬのこ
)
の綿はぬきながらたもとにのこる春のはな
帋
(
がみ
)
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
楽屋にては小親の
緋鹿子
(
ひがのこ
)
のそれとは違い、黒き
天鵞絨
(
びろうど
)
の
座蒲団
(
ざぶとん
)
に、
蓮葉
(
はすは
)
に片膝立てながら、
繻子
(
しゅす
)
の襟着いたる
粗
(
あら
)
き
竪縞
(
たてじま
)
の
布子
(
ぬのこ
)
羽織りて
被
(
き
)
つ。
照葉狂言
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
饅頭形
(
まんじゅうがた
)
の編笠をかぶり、
尻端折
(
しりっぱしょ
)
りをした
布子
(
ぬのこ
)
の下に、ほっそりした紺の
股引
(
ももひき
)
をはいた脚が、いかにもいなせなように見えた。
へちまの木
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
子持縞
(
こもちじま
)
の
布子
(
ぬのこ
)
を着て、無地小倉の帯を締め、千住の河原の煙草入を提げ、
不粋
(
ぶすい
)
の
打扮
(
こしらえ
)
のようだが、もと
江戸子
(
えどっこ
)
だから
何処
(
どっ
)
か気が利いて居ります。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
さう思つて見ると、成程物置の裏の井戸端に、大きい
盥
(
たらひ
)
に漬けたまゝ、泥の附いた、薄汚い
布子
(
ぬのこ
)
のあるのを、平次はしやがみ込んで見て居ります。
銭形平次捕物控:251 槍と焔
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
結びて手拭
冠
(
かぶ
)
り
拭
(
たへ
)
の
布子
(
ぬのこ
)
の
裾
(
すそ
)
端折
(
はしをり
)
片手
(
かたて
)
に
古
(
ふる
)
びし岡持下げ足元輕く立歸る
老婆
(
らうば
)
は長屋の
糊賣
(
のりうり
)
お金營業仕舞て
這入來
(
はひりく
)
る
姿
(
すがた
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
寒いはずだ、
膝行袴
(
たっつけばかま
)
に
筒袖
(
つつそで
)
の
布子
(
ぬのこ
)
一枚、しかし、腰の刀は身なりにも年にも似あわぬ名刀の
銀
(
しろがね
)
づくり。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
○秋山に夜具を持たる家は此
翁
(
おきな
)
の家とほかに一軒あるのみ。それもかのいらにて
織
(
おり
)
たるにいらのくずを入れ、
布子
(
ぬのこ
)
のすこし大なるにて
宿
(
とま
)
り
客
(
きやく
)
のためにするのみ也とぞ。
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
お時は
一張羅
(
いっちょうら
)
の晴れ着をぬいで、ふだん着の
布子
(
ぬのこ
)
と着替えた。それから大事そうに抱えて来た大きい風呂敷包みをあけて、扇子や手拭や乾海苔や
鯣
(
するめ
)
などをたくさんに取り出した。
箕輪心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
汚ない
布子
(
ぬのこ
)
を着て、手によごれた風呂敷包を抱え込んでいましたが、案内もなくはいって来て、それを
咎
(
とが
)
められる前に、早くも関守氏の前の庭先へ、ピタリと土下座をきってしまい
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
どんつく
布子
(
ぬのこ
)
の袖組み合はせ、腕拱きつゝ
迂濶〻〻
(
うか/\
)
歩き、御上人様の
彼様
(
あゝ
)
仰やつたは
那方
(
どちら
)
か一方おとなしく譲れと諭しの謎〻とは、何程
愚鈍
(
おろか
)
な
我
(
おれ
)
にも知れたが、嗚呼譲りたく無いものぢや
五重塔
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
瀬戸物
(
せともの
)
の
釦
(
ぼたん
)
の
着
(
つ
)
いた
白木綿
(
しろもめん
)
の
襯衣
(
しやつ
)
を
着
(
き
)
て、
手織
(
ており
)
の
硬
(
こは
)
い
布子
(
ぬのこ
)
の
襟
(
えり
)
から
財布
(
さいふ
)
の
紐
(
ひも
)
見
(
み
)
たやうな
長
(
なが
)
い
丸打
(
まるうち
)
を
懸
(
か
)
けた
樣子
(
やうす
)
は、
滅多
(
めつた
)
に
東京
(
とうきやう
)
抔
(
など
)
へ
出
(
で
)
る
機會
(
きくわい
)
のない
遠
(
とほ
)
い
山
(
やま
)
の
國
(
くに
)
のものとしか
受
(
う
)
け
取
(
と
)
れなかつた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
植木屋の
布子
(
ぬのこ
)
の肩に、手を柔かに掛けた、弱腰も
撓
(
たわ
)
むと見える帯腰に、もの優しい羽織の紋の、藤の細いは清葉であった。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
揉みあっているうちに着崩れたものか、
縞目
(
しまめ
)
もわからないような古
布子
(
ぬのこ
)
の前がはだけ、平べったい胸や、
晒
(
さら
)
し
木綿
(
もめん
)
を巻いた腹があらわになっていた。
霜柱
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
淺葱
(
あさぎ
)
の
股引
(
もゝひき
)
に木綿
布子
(
ぬのこ
)
、
藁
(
わら
)
しべで髮を結つた、非凡の無頓着さで、江戸の中でこんなのを見るのは——場所が場所だけに、錢形平次にも異樣な感じです。
銭形平次捕物控:223 三つの菓子
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
フヽヽ
其
(
そ
)
の
桟留縞
(
さんとめじま
)
の
布子
(
ぬのこ
)
に、それで
宜
(
よ
)
い、
袴
(
はかま
)
は
白桟
(
しろざん
)
の
御本手縞
(
ごほんてじま
)
か、
変
(
へん
)
な姿だ、ハヽヽ、のう
足袋
(
たび
)
だけ新しいのを持たしてやれ。弥「ぢやア
往
(
い
)
つて
参
(
まゐ
)
ります。 ...
にゆう
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
そして、それからの一冬を、木綿
布子
(
ぬのこ
)
一枚の彼が、寒空に針など売って、何処をどう
彷徨
(
さまよ
)
った果てかは知れないが——年も明けて、翌
天文
(
てんもん
)
の二十二年、桃の花のさかり頃。
新書太閤記:01 第一分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
夫
(
それ
)
に引変え
破
(
やぶれ
)
褞袍
(
おんぼう
)
着て
藁草履
(
わらぞうり
)
はき腰に
利鎌
(
とがま
)
さしたるを農夫は拝み、
阿波縮
(
あわちぢみ
)
の
浴衣
(
ゆかた
)
、
綿八反
(
めんはったん
)
の帯、洋銀の
簪
(
かんざし
)
位
(
ぐらい
)
の御姿を見しは
小商人
(
こあきんど
)
にて、風寒き北海道にては、
鰊
(
にしん
)
の
鱗
(
うろこ
)
怪しく光るどんざ
布子
(
ぬのこ
)
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
呉
(
くれ
)
と聲を
掛
(
かけ
)
しかば喜八ハイと答へて
揚戸
(
あげど
)
を
上
(
あげ
)
る
時
(
とき
)
袂
(
たもと
)
の
斜
(
はす
)
に
引裂
(
ひきさけ
)
てあるゆゑ軍平は
眼
(
め
)
を
留
(
とめ
)
て見るに
縞柄
(
しまがら
)
も昨夜の
布子
(
ぬのこ
)
に
相違
(
さうゐ
)
なければ
直
(
すぐ
)
に召捕んとせしが
取迯
(
とりにが
)
しては一大事と
然有
(
さあら
)
ぬ
體
(
てい
)
にて煙草を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
瀬戸物の
釦
(
ボタン
)
の着いた
白木綿
(
しろもめん
)
の
襯衣
(
シャツ
)
を着て、手織の
硬
(
こわ
)
い
布子
(
ぬのこ
)
の
襟
(
えり
)
から財布の
紐
(
ひも
)
みたような長い
丸打
(
まるうち
)
をかけた様子は、
滅多
(
めった
)
に東京などへ出る機会のない遠い山の国のものとしか受け取れなかった。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
幅狭き
布子
(
ぬのこ
)
の
上掻
(
うわがえ
)
を
引張
(
ひっぱ
)
り合せて、膝小僧を押包み、煮染めたような
手拭
(
てぬぐい
)
にて、汗を
拭
(
ふ
)
き拭き
畏
(
かしこま
)
り、手をつきて美人の顔、じっと見詰むる眼に涙。
貧民倶楽部
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……包が出来ると、お祖父さんに起きて貰い、
布子
(
ぬのこ
)
を二枚重ねた上から
綿入半纏
(
わたいればんてん
)
をさらに二枚着せ、頭巾を
冠
(
かぶ
)
らせた。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
木綿物らしい貧しい
布子
(
ぬのこ
)
、油氣のない胡麻鹽の頭、
不潔
(
ふけつ
)
らしさはないにしても、何んといふ凄まじい
身扮
(
みなり
)
でせう。
銭形平次捕物控:196 三つの死
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
それじゃア此の
布子
(
ぬのこ
)
を貸せと云ってはア何でも持出して遣い果した
後
(
あと
)
で、何うにも斯うにも仕方が無いが、まア真実の
甥
(
おい
)
だからと云って文吉も可愛がって居たゞが
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
人は
待春
(
まつはる
)
とか
年暮
(
くれ
)
とかいえ、
源内兵衛
(
げんないひょうえ
)
は秋からの
布子
(
ぬのこ
)
一袖。
洟
(
はな
)
たれの子、しらくも頭の子、ひかん
病
(
や
)
みの子、乳の出ぬ乳に泣く子と吠える女房などの住む
茅
(
あば
)
ら
屋
(
や
)
から、この
布令
(
ふれ
)
を知ると飛び出して
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼
(
かれ
)
は
坂井
(
さかゐ
)
を
辭
(
じ
)
して、
家
(
うち
)
へ
歸
(
かへ
)
る
途中
(
とちゆう
)
にも、
折々
(
をり/\
)
インヷネスの
羽根
(
はね
)
の
下
(
した
)
に
抱
(
かゝ
)
へて
來
(
き
)
た
銘仙
(
めいせん
)
の
包
(
つゝみ
)
を
持
(
も
)
ち
易
(
か
)
へながら、それを三
圓
(
ゑん
)
といふ
安
(
やす
)
い
價
(
ね
)
で
賣
(
う
)
つた
男
(
をとこ
)
の、
粗末
(
そまつ
)
な
布子
(
ぬのこ
)
の
縞
(
しま
)
と、
赤
(
あか
)
くてばさ/\した
髮
(
かみ
)
の
毛
(
け
)
と
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
朝
疾
(
と
)
くから、出しなには寒かったで、
布子
(
ぬのこ
)
の
半纏
(
はんてん
)
を着ていたのが、その陽気なり、働き通しじゃ。親仁殿は
向顱巻
(
むこうはちまき
)
、
大肌脱
(
おおはだぬぎ
)
で、
精々
(
せっせっ
)
と
遣
(
や
)
っていた
処
(
ところ
)
。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その男は五十年配で、綿入の
布子
(
ぬのこ
)
に綿入の
半纏
(
はんてん
)
を重ね、
垢
(
あか
)
じみた毛糸の
衿巻
(
えりまき
)
を頭から
頸
(
くび
)
へぐるぐる巻きつけていた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
金は
唸
(
うな
)
るほど持つて居るに違ひない癖に、よれ/\の
布子
(
ぬのこ
)
一點づつ、お百などは
腰切半纒
(
こしきりばんてん
)
に
二布
(
ふたの
)
を引つかけて、髮の毛などは雀の巣よりも淺ましい姿です。
銭形平次捕物控:302 三軒長屋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
布
常用漢字
小5
部首:⼱
5画
子
常用漢字
小1
部首:⼦
3画
“布子”で始まる語句
布子連
布子半纏
布子半纒
布子絆纒