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然有
傘をもさゝず
歩行致したるやと
大聲に
尋問られしかば
流石の長庵内心に
驚怖と雖も
然有ぬ
體にて這は思ひも寄らぬ御尋問を
掘出されし由を
慥に
承まはり
及たり
扨々浦山敷事なり何卒其古金の内を少々
拙者へ
配分致し賜れと云ふに兵助は
發と思へど
然有ぬ
風情にて貴殿には
然ことを
呉と聲を
掛しかば喜八ハイと答へて
揚戸を
上る
時袂の
斜に
引裂てあるゆゑ軍平は
眼を
留て見るに
縞柄も昨夜の
布子に
相違なければ
直に召捕んとせしが
取迯しては一大事と
然有ぬ
體にて煙草を