太鼓たいこ)” の例文
「いえ信念しんねんさへあればだれでもさとれます」と宜道ぎだう躊躇ちうちよもなくこたへた。「法華ほつけかたまりが夢中むちゆう太鼓たいこたゝやうつて御覽ごらんなさい。 ...
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
太鼓たいこをうつばちという棒がある。その撥には、いろいろな種類があるが、棒のさきに丸い玉のついた撥があるのをごぞんじであろう。
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ぼんの十六日のつぎの夜なので剣舞の太鼓たいこでもたたいたじいさんらなのかそれともさっきのこのうちの主人しゅじんなのかどっちともわからなかった。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
このとき、つきは、ちいさな太鼓たいこが、草原くさはらうえしてあるのをて、これを、あわれなあざらしにっていってやろうとおもったのです。
月とあざらし (新字新仮名) / 小川未明(著)
大勢おおぜいの人が松明たいまつをふりかざし、かね太鼓たいこを打ち鳴らし、「おーい……おーい……」と呼びながら、川の土手どてから、こちらへやって来ます。
ひでり狐 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そこで裸体はだかで手をかれて、土間の隅を抜けて、隣家となり連込つれこまれる時分には、とびが鳴いて、遠くで大勢の人声、祭礼まつり太鼓たいこが聞えました。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「それはもう御隠居様ごいんきょさま滅法めっぽう名代なだい土平どへいでござんす。これほどのいいこえは、かね太鼓たいこさがしても、滅多めったにあるものではござんせぬ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
とことん、とことん、とんことんとん、と拍子でもとっているように仕事場でたるを叩く音が太鼓たいこのように地続きの荒神様こうじんさまの森へひびきわたる。
(新字新仮名) / 壺井栄(著)
ただし心配をしたのは三時間か四時間で、いまだかね太鼓たいこの騒ぎには及ばぬうちに、幸いに近所の農夫が連れて戻ってくれた。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
晩餐ばんさんをはると踊子をどりこさそ太鼓たいこおとやうやしづけた夜氣やきさわがしてきこはじめた。のきつた蚊柱かばしらくづれてやが座敷ざしきおそうた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その中には太鼓たいこだのほらがいだののおとまじって、まるで戦争せんそうのようなさわぎが、だんだんとこちらのほうちかづいてました。
葛の葉狐 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
鐘のかわりに茶碗を、太鼓たいこのかわりに足踏みして。——夕食が済んだあと、三人がいきなり立ち上り、茶碗を叩きながら
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
この書、太鼓たいこ喇叭らつぱ竪琴たてことなどを描きたる銅版画の表紙の上に、Kakkoku Engekishi なる羅馬字ロオマじを題す。
両三日来夜になると雷様かみなりさま太鼓たいこをたゝき、夕雲ゆうぐもの間から稲妻いなずまがパッとしたりして居たが、五時過ぎ到頭大雷雨だいらいうになり、一時間ばかりしてれた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
忘れも致しません、五月二十六日の朝まだき、おっつけとらの刻でもありましたろうか、北の方角に当って時ならぬ太鼓たいこの磨り打ちの音が起りました。
雪の宿り (新字新仮名) / 神西清(著)
祖父は三業さんぎょう取締の役員もしていたようで、二六新報にろくしんぽうの計画した娼妓しょうぎ自由廃業の運動の際にも、また救世軍きゅうせいぐんがその遊説の太鼓たいこを廓内にまで持ち込んだ時にも
桜林 (新字新仮名) / 小山清(著)
或る時、そこの神楽殿で、楽師たちが太鼓たいこを打っているのを見て、幼い武蔵は、奇異な眼をかがやかして
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
俺の気のせいだって? 馬鹿なっ! 確かに、確かに、俺は太鼓たいこの様な判だってしてやる。彼奴は俺の話を聴いている内に、とうとううっぷしてしまったじゃないか。
恐ろしき錯誤 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この辺では太鼓たいこ橋といっとる。木食もくじき上人が架けたというが、たぶん、南蛮式とでもいうのだろう。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)
〃 鈴の音——古代イランでは、帝王の出御しゅつぎょするときに鈴を振り、太鼓たいこを鳴らす習慣があった。
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
また永田町首相官邸かんていの付近には、青年団体や日蓮宗にちれんしゅうの信者などがしかけて、ラッパをき、太鼓たいこを鳴らし、叛軍のために万歳ばんざいを唱えたが、どこからも制止されなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
かうむるとも明朝あすは未明に登城に及び直々ぢき/\將軍家しやうぐんけに願ひ奉るよりほかなしと思案をきはめ家來を呼び出され明朝みやうてうは六時の御太鼓たいこ相※あひづに登城致すあひだ其用意そのよういいたすべしと云付けられたり
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
長女 あの太鼓たいこね、おキンちゃんとこのにいさんがたたいてるのよ。今年ことしはじめてだって。
病む子の祭 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
まくが動く。立見たちみ人中ひとなかから例の「かはるよーウ」とさけぶ声。人崩ひとなだれがせまい出口のはうへと押合おしあうちまくがすつかり引かれて、シヤギリの太鼓たいこ何処どこわからぬ舞台の奥から鳴り出す。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
太鼓たいこ袋笛ふくろぶえが鳴りわたりました。女たちは歌いました。そしてラクダのまわりには、喜びの砲声ほうせいが鳴りひびきました。花婿はなむこはいちばんたくさん、いちばん強く鉄砲を打ちました。
で始めにはチベット流の音楽、ちょうど日本のしょう篳篥ひちりき及び太鼓たいこようなもの音調そのままで行列を整えて参ります。もちろんこの行列には鉄砲、槍、刀の類を持って来るような者は少しもない。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
みんな大きな声で、さっさと無表情むひょうじょうに歌った。まるで太鼓たいこでもたたくような工合ぐあいだ。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
太鼓たいこおとまじつて、ひゆう/\とふえらしいものも、だん/\間近まぢかきこえてた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
つきかゞやいてゐるそらひゞくおしろ太鼓たいこ。それは、もう門限もんげんだといふらせなのです。だがまうしばらく、つのをつてくれとかんじるのは、現在げんざい心持こゝろもちのなくなるのをしむこゝろなのです。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
ぐわつ初午はつうまには、おうちぢいやがおほきな太鼓たいこ持出もちだして、そのやしろわきさくらえだけますと、そこへ近所きんじよ子供こどもあつまりました。とうさんもその太鼓たいこたゝくのをたのしみにしたものです。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
徳右衞門は、太鼓たいこ腹を搖すぶつて、怪我人らしくもない大きい聲で笑ふのです。
二階の広間で御馳走ごちそうをして、深川でもと芸者をしていたという二人の血びきのおたけさんという女を呼んで、人交ひとまぜしないで御酒を飲んでいましたが、やがておじいさんが太鼓たいこをたたき
ひたいにつのをはやし、毛皮のまえだれをかけ、毛深いはだをした男たちは、うつむいたまま、腕とももを高くあげて、黄銅のにょうはちをなりひびかせ、物狂わしく太鼓たいこをたたいている。
日中、浅間の煙を望んで、東の空か東南の秩父山の方へ流れていれば、明日は太鼓たいこ判を捺したように晴天である。もし、煙が山肌を這って東へ降りれば、明日は強暴雨戸を押し倒すほどの浅間颪。
わが童心 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
ふとってはいるがむしろ小男の部だ。その代り腹ばかり太鼓たいこのようにふくれている。ビールの招牌かんばんにありそうな便々とした腹を持っていて普通の洋服ではぼたんが合わん仕立屋がズボンの仕立に閉口する位だ。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
ふえふかず太鼓たいこたゝかずしゝまひの後足あとあしとなるむねのやすさよ
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
と、太鼓たいこをたたくような音を出すだけだ。
ねむい (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
まよひ子の太鼓たいこきく夜のおぼろかな 壺中
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
おや太鼓たいこうちやがおどる。
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
太鼓たいこ叩いて 笛吹いて
ベンヺ て、太鼓たいこを。
静かなる太鼓たいこのとろぎ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
この仲間はずれの男は袴だけはつけているが、後鉢巻は倹約して、抜身の代りに、胸へ太鼓たいこけている。太鼓は太神楽だいかぐらの太鼓と同じ物だ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
つきが、ばして太鼓たいこひろったのを、だれもづきませんでした。そのつきは、太鼓たいこをしょって、きたほうたびをしました。
月とあざらし (新字新仮名) / 小川未明(著)
ヤ、へば、今夜こんや遊廓前くるわまへ毘沙門樣びしやもんさまのお裏祭禮うらまつり。あれ、おきなさりまし、どんどろ/\と、きざんだ太鼓たいこきこえます。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
忘れも致しません、五月二十六日の朝まだき、おつつけとらの刻でもありましたらうか、北の方角に当つて時ならぬ太鼓たいこの磨り打ちの音が起りました。
雪の宿り (新字旧仮名) / 神西清(著)
単に迷子と名づけた場合でも、やはりかね太鼓たいこたたき方は、コンコンチキチコンチキチの囃子はやしで、芝居で「釣狐つりぎつね」などというものの外には出でなかった。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
同年輩どうねんぱいみなをどりくのである。おつぎには幾分いくぶんそれがうらやましくぼうつとして太鼓たいこれてた。やはらかなつきひかりにおつぎの肌膚はだしろえてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
真先まっさきに、紫地に白く「千歳村粕谷少年音楽隊」とぬいた横旗を立てゝ、村の少年が銀笛ぎんてき太鼓たいこ手風琴てふうきんなぞピー/\ドン/\にぎやかにはやし立てゝ行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そこで、村の壮健そうけんな人達が集まって、二三十人一かたまりになって出かけました。松明たいまつ、棒、太鼓たいこかね石油缶せきゆかん、そんなものをめいめい持っていきました。
ひでり狐 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)