土方どかた)” の例文
勘次かんじ利根川とねがは開鑿工事かいさくこうじつてた。あきころから土方どかた勸誘くわんいう大分だいぶうまはなしをされたので近村きんそんからも五六にん募集ぼしふおうじた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
うして、んだツて馬鹿ばかな、土方どかた眞似まねたいなことるんだらうと侮辱的ぶぢよくてきかほが、あり/\と焚火たきびけむりあひだからえるのである。
土方どかたでかつ盗賊でありながら、一つの夢想をいだいていた。彼はモンフェルメイュの森の中に埋められてるという宝のことを信じていた。
或時あるとき土方どかたとなり、或時あるときは坑夫となって、それからそれへと際限はてしもなく迷い歩くうちに、二十年の月日は夢と過ぎた。彼の頭には白髪しらがえた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
新宿八王子間の電車線路工事が始まって、大勢の土方どかたが入り込み、村は連日れんじつ戒厳令のもとにでも住む様に兢々きょうきょうとして居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「早く言えば土方どかたの親分見たいなものだから、一遍の喧嘩で有らゆる車掌が憎くなるくらい子分が可愛いのさ。これでっとは好いところもあるよ」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
そこにはいくにん土方どかた工夫こうふはいっていて、むかしからの大木たいぼくをきりたおし、みごとないしをダイナマイトでくだいて、そのあとから鉄道てつどういておりました。
眠い町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
で、同宿のほかのてあいのように、土方どかただとか車力だとかいうような力業ちからわざでなく、骨も折れずにいい金を取って、年の若いのに一番稼人かせぎにんだと言われている。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
きくのおりき土方どかた手傳てつだひを情夫まぶつなどゝ考違かんちがへをされてもならない、それむかしのゆめがたりさ、なんいまわすれて仕舞しまつげんとも七ともおもされぬ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
荷馬車にばしや土方どかた怒鳴どなられる——そのあひだに帽子は風の方向に走つてゆく。かう言ふ人は割合に帽子を手に入れる。
拊掌談 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
たまに見たり聞いたりする土方どかた仕事の同級生たちの、サボったり、喧嘩けんかしたり、映画を見たりダンスを習ったりするその余剰なエネルギーを、ぼくはふと
煙突 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
顔がむくむくふくれていて、おまけにあんなかぶらなくてもいいようなあなのあいたつばの下った土方どかたしゃっぽをかぶってその上からまたほおかぶりをしているのだ。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
土方どかたなどと云う労働者によく見る様な、あの細いがチリチリと巻かって、頭の地を包み、何となく粗野な、惨酷な様な感じを与える頭の形恰をこの男は持って居るけれ共
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
軍人か土方どかたの親方ならばそれでも差支さしつかえはなかろうが、いやしくも美と調和を口にする画家文士にして、かくの如き粗暴なる生活をなしつつ、ごうも己れの芸術的良心にはずる事なきは
妾宅 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
ちやうどまち場末ばすゑむでる日傭取ひようとり土方どかた人足にんそく、それから、三味線さみせんいたり、太鼓たいこらしてあめつたりするもの越後獅子ゑちごじゝやら、猿廻さるまはしやら、附木つけぎものだの、うたうたふものだの
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
目黒停車場ステーションの掘割は全線を通じて最も大規模の難工事であった。小林浩平は数多の土方どかたや工夫を監督するために出張して、長峰に借家をする。一切の炊事は若い工夫が交代かわりばんに勤めている。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
土方どかたの喧嘩で頭割りなどと、後から決して云いはせんから、どんどん飲んで貰いたい、間もなく隈井さんも天野さんも来るだろう、天野さんが賛成であることはわしが太鼓判たいこばんを押しておく
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
と、土方どかた風の男が一人縄で何かガラガラ引きずりながら引っぱって来るのを見ると、一枚の焼けトタンの上に二尺角くらいの氷塊をのっけたのを何となく得意げに引きずって行くのであった。
震災日記より (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それ程、石かつぎや、材木曳きがしたいなら、自分だけここを出て、独り暮しで土方どかたでも何でもしたらいいじゃないか。おまえさんは、根が作州さくしゅうの田舎者、そのほうが生れ性に合っているのでしょ。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それで、その高地を崩していた土方どかたは、まるで熱いお湯から飛びだしてきたように汗まみれになり、フラフラになっていた。皆の眼はのぼせて、トロンとして、腐ったにしんのように赤く、よどんでいた。
人を殺す犬 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
同僚の測量師は川へ飛込まなかった罰で、ワシントンが大統領になった頃には多分土方どかたか何かになっていたろう。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
京王電鉄調布上高井戸間の線路せんろ工事こうじがはじまって、土方どかた人夫にんぷ大勢おおぜい入り込み、鏡花君の風流線にある様な騒ぎが起ったのは、夏もまだ浅い程の事だった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「そんぢやよかつた、土方どかたなんちやろく奴等やつらねえつていふからどうしたかとおもつてな」おしなくびもたげた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
つまたる不貞腐ふてくされをいふてむとおもふか、土方どかたをせうがくるまかうが亭主ていしゆ亭主ていしゆけんがある、らぬやつうちにはかぬ、何處どこへなりともてゆけ、てゆけ
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たとい乞食をするにしても、土方どかたをするにしても、これからほか土地へ行こうと云うには、多少の路銀ろぎんが無くてはならぬ。咄嗟とっさあいだにお葉はこれを思い出したのであった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ぐわつ十八にち土方どかたからハガキがて、土器どきたから、加瀬村かせむら菱沼鐵五郎ひしぬまてつごらうたくまでいとある。
「それゃうそでさあ大工もほんのちょっとです。土方どかたをやめてなったんです。その土方もまたちょっとです。それから前は知りません。土方ばかりじゃありません、飴屋あめやもやったていますよ。」
バキチの仕事 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
其時そのときに(地底探檢記ちていたんけんき一五七ぺいじ參照さんせう貝灰かひばい原料げんれうとすべく土方どかた大發掘だいはつくつをしてたのをはじめてり、それから六ぐわつ十四またつてたが、兩度りやうどともじつ大失望だいしつばうであつた。
暫時しばらく土方どかた道普請みちぶしんを見物していたが、急に伯父さんの顔が見たくなった。彼様ああいう顔の人が寝たら如何どういう顔になるだろうと思ったら、土方の喧嘩なんかつまらなくなった。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
其扮装そのいでたちを見て察するに、近来この土地へ続々流れ込んで来る坑夫か土方どかたの仲間らしい。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
ましてや土方どかた手傳てづたひしてくるま跡押あとおしにとおやうみつけてもくださるまじ、あゝつまらぬゆめたばかりにと、ぢつとにしみてもつかはねば、とつちやん脊中せなかあらつておれと太吉たきち無心むしん催促さいそくする
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
土方どかた親方おやかたついいてると、すで一月以上ひとつきいじやう發掘はつくつつゞけてるので、う二三にち此所こゝ終局しうきよくだ。これは貝灰かひばい原料げんれうとして、横濱よこはま石灰製造所いしばいせいざうしよつたのだといふ。
東面山麓とうめんさんろく山土さんど崩壞ほうくわいして堆積たゐせきしたる一に、祝部高坏土器いはひべたかつきどき發見はつけんしたので、如何どう此所ここあやしいと、人類學者じんるゐがくしやならぬ土方どかた船町倉次郎ふなまちくらじらうといふのが、一生懸命しやうけんめいすゝんでほか
ぎには、宅前たくまへあらたなる貝塚かひづかから、なにぬかとうたが、土方どかたくびつて、たらば破片はへんでもつてけツておまへさんがつたので、隨分ずゐぶんはつけたが、なにかツたといふ。
發掘はつくつはじめ(其他そのた方面はうめんおい角力すまふつた)てからは、身體しんたい健康けんかう非常ひじやう良好りやうかうで、普通ふつう土方どかたとしても一にんまへ業務げふむれるやうつてると、益々ます/\おほおほきく遺跡ゐせきやうになり
それを幻花子げんくわしがチラとみゝはさんで、大井村中おほゐむらぢうのこらずさがして、やうや野中氏のなかし寶庫ほうこ突留つきとめるともなく、貝塚かいづかの一ひらいて其所そこ養鷄場ようけいぢやう設立せつりつする大工事だいこうじおこり、此期このき利用りようして土方どかた買收ばいしう
發見はつけんしたのは、明治めいぢ四十ねんぐわつの四で、それは埋立工事うめたてこうじもちゐるために、やまつち土方どかた掘取ほりとらうとして、偶然ぐうぜん其怪窟そのくわいくつ掘當ほりあてたのであるが、いはやなかから人骨じんこつ武器ぶき玉類たまるゐ土器等どきなどたのでもつ