滿)” の例文
新字:
莊重さうちような修道院の建物と、またそこにみなぎる美しくも清らかな空氣とをいろいろに空想し思ひ描く一種の敬虔けいけんな氣持が滿ちてゐた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
しばらくしてあをけむり滿ちたいへうちにはしんらぬランプがるされて、いたには一どうぞろつと胡坐あぐらいてまるかたちづくられた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あはれむだらうか? いとふだらうか? それともまた淺猿あさましがるだらうか? さうしてあの可憐いぢらしくも感謝かんしや滿ちた忠實ちうじつ愛情あいぢやう
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
兎角とかくするうちにつき滿ちた。いよ/\うまれるといふ間際まぎはまでつまつたとき、宗助そうすけ役所やくしよながらも、御米およねことがしきりにかゝつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ちゝゆめだ、とつてわらつた、……祖母そぼもともにきてで、火鉢ひばちうへには、ふたゝかんばしいかをり滿つる、餅網もちあみがかゝつたのである。
霰ふる (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
汝の願ひの一部は滿つべし、そは汝けづられし木を見、何故に革紐かはひもまとふ者が「迷はずばよくゆるところ」と 一三六—一三八
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
若者わかものおもはずはしました。るがうち波間なみまはなれ、大空おほぞら海原うなばらたへなるひかり滿ち、老人らうじん若者わかもの恍惚くわうこつとして此景色このけしきうたれてました。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
その泣くさまは、青山は枯山なす泣き枯らし河海うみかはことごとに泣きしき。ここを以ちてあらぶる神の音なひ二二狹蠅さばへなす皆滿ち、萬の物のわざはひ悉におこりき。
つは敬愛けいあいする大佐たいさは、かゝ大秘密だいひみつをもあきらかもらほどわたくし信任しんにんしてるかとおもふと、うれしさはむね滿あふれて、その知遇ちぐうかんずること益々ます/\ふかきとともに、わたくしこゝろくるしめるのは
チッバルトは其儘そのまゝたん逃去にげさりましたが、やがてまたってかへすを、いま復讐ふくしうねん滿ちたるロミオがるよりも、電光でんくわうごとってかゝり、引分ひきわけまするひまさへもござらぬうちに
瀧口殿は六波羅上下に名を知られたる屈指の武士、希望に滿てる春秋長き行末を、二十幾年の男盛をとこざかりに截斷たちきりて、樂しき此世を外に、身を佛門に歸し給ふ、世にも憐れの事にこそ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
すみ燒灰等やけばいなどが、小石こいしかこまれた一小部分せうぶぶん滿ちてるのを見出みいだしただけである。
晏子あんしけ六しやく滿たず、齊國せいこくしやうとして、諸矦しよこうあらはる。
物ことごとくよみがへり、あかねさす日ぞ滿たむ。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
うしほふたたび滿ち來ずや
草わかば (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
わがのぞみ滿らひなん
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
やはらかさに滿たされた空氣くうきさらにぶくするやうに、はんはなはひら/\とまずうごきながらすゝのやうな花粉くわふんらしてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
是故にいかなるわざはひのわが身にせまるやを聞かばわが願ひ滿つべし、これあらかじめ見ゆる矢はその中る力弱ければなり。 二五—二七
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
以前いぜん少年せうねん手傳てつだつて、これからつゝみいて、人參にんじん卓子テエブル一杯いつぱい積上つみあげる。異香いかう室内しつない滿つ——で、たふとさが思遣おもひやられる。
人参 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しお滿ちる珠を出して溺らせ、もし大變にあやまつて來たら、しおる珠を出して生かし、こうしてお苦しめなさい
この打合うちあはせがをはると、大佐たいさ命令めいれいで、輕氣球けいきゝゆう海岸かいがん砂上しやじやう引出ひきいだされ、水素瓦斯すいそがす充分じふぶん滿たされ、數日分すうじつぶん食料しよくれうと、飮料水いんれうすいと、藥品やくひん買入かひいれや、船舶せんぱく雇入やとひいれのめにつひや
この光は智の光にて愛これに滿ち、この愛はまことさいはひの愛にて悦びこれに滿ち、この悦び一切の樂しみにまさる 四〇—四二
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
なつやうやけると自然しぜんこゝろ焦燥あせらせて、霖雨りんうひくみづ滿たしめて、ほりにもしげつたくさぼつしてきしえしめる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
公園こうゑん廣場ひろばは、すで幾萬いくまんひと滿ちてた。わたしたちは、外側そとがはほりむかつた道傍みちばたに、やう/\のまゝのむしろた。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
はなの、うして、二本ふたもとばかりかれたあとを、をとこかごのまゝ、撫子なでしこも、百合ゆりむね滿つるばかりあづけられた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
したくと學士がくし背廣せびろあかるいくらゐ、いまさかりそらく。えだこずゑたわゝ滿ちて、仰向あをむいて見上みあげると屋根やねよりはたけびたが、つゐならんで二株ふたかぶあつた。すもゝ時節じせつでなし、卯木うつぎあらず。
人魚の祠 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)