大路おほぢ)” の例文
ゴシツクの塔が中断せられて意外な所でさきを見せたり、高い屋根の並ぶ大路おほぢが地下鉄道のほらの様に見えたりするのも霧のせいだ。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
アマルフイイの市はつゝめる貨物しろものをみだりに堆積したるさまをなせり。羅馬なる猶太街ゲツトオの狹きも、これに比べては尚通衢つうく大路おほぢと稱するに足るならん。
大路おほぢあなぎつきのかげになびいてちからなささうの下駄げたのおと、村田むらたの二かい原田はらだおくきはおたがひのにおもふことおほし。
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
たゞ此時このとき大路おほぢときひゞいたのは、肅然しゆくぜんたる騎馬きばのひづめのおとである。のあかりにうつるのは騎士きし直劍ちよくけんかげである。
露宿 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そも/\われは寄辺よるべない浮浪学生ふらうがくしやう御主おんあるじ御名みなによりて、もり大路おほぢに、日々にちにちかてある難渋なんじふ学徒がくとである。おのれいまかたじけなくもたふと光景けしき幼児をさなご言葉ことばいた。
神の義こゝに地のしもとなりしアッティラとピルロ、セストを刺し、また大路おほぢをいたくさわがしし 一三三—
神曲:01 地獄 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
とゞろく胸をおさへつゝ、朱雀すざくかたに來れば、向ひよりかたちみだせる二三人の女房の大路おほぢを北に急ぎ行くに、瀧口呼留めて事の由を尋ぬれば、一人の女房立留りて悲しげに
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
をのげて大路おほぢに出づれば、一七九明けたるといひし夜はいまだくらく、一八〇月は中天なかぞらながら影らう々として、風ひややかに、さて正太郎が戸は明けはなして其の人は見えず。
それから何日か後の月夜、姫君に念仏をすすめた法師は、やはり朱雀門の前の曲殿に、ごろもの膝を抱へてゐた。すると其処へさむらひが一人、悠々と何か歌ひながら、月明りの大路おほぢを歩いて来た。
六の宮の姫君 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
大路おほぢのさま静になりぬれば、例の窓より見やるに、こゝは道行く人はなくて、をとこをみなおのれ/\が家居の前に畳敷きかさね、調度めくもの夜の物など見上ぐるまでに積みあげ、そが中にこぞりゐて
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
日は沈み山紫に空赤く大路おほぢ小路こうぢ灯火ともし見えそむ
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
行人かうじんの古めく傘に、薄灯うすひ照り、大路おほぢ赤らみ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
巴里パリイ大路おほぢく君は
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
乾きたる冬の大路おほぢ
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
我が良人をつと今宵こよひも帰りのおそくおはしますよ。我が子は早くねむりしに、帰らせ給はゞきようなくやおぼさん。大路おほぢの霜に月こほりて、踏む足いかに冷たからん。
軒もる月 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つきのはじめにあきてば、あさ朝顏あさがほつゆはあれど、るゝともなき薄煙うすけむりのきめぐるもひでりかげほのほやまくろそびえて、やがあつさにくづるゝにも、熱砂ねつさみなぎつて大路おほぢはしる。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
大路おほぢに出づれば馬車ひきもきらず。羅馬の人を載せたるあり、外國の客を載せたるあり。往くあり、還るあり。こは都の習なる夕暮の逍遙あそびのりといふものにいでたる人々なるべし。
くれなゐ花氈くわせん敷く間の遊楽や、大路おほぢかがよひ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
いちの中、大路おほぢ
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
廓内なかおほきいうちにも大分だいぶ貸付かしつけがあるらしうきましたと、大路おほぢちて二三にん女房にようぼうよその財産たからかぞへぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
鐘の音は我をサンピエトロの寺に誘ひぬ。嘗て外國人とつくにびとありて此寺の堂奧はこゝに盡きたりとおもひぬといふ、いと廣き前廳まへにはに、人あまたれたるさま、大路おほぢの上又天使橋の上に殊ならず。
前栽せんざい強物つはものの、はないたゞき、蔓手綱つるたづな威毛をどしげをさばき、よそほひにむらさきそめなどしたのが、なつ陽炎かげろふ幻影まぼろしあらはすばかり、こゑかして、大路おほぢ小路こうぢつたのも中頃なかごろで、やがて月見草つきみさうまつよひぐさ
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
衰残の心の大路おほぢ暮れゆけば顧みもせぬ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
さてもあやしや車上しやじやうひと萬世橋よろづよばしにもあらず鍋町なべちやうにもあらず本銀町ほんしろかねちやうぎたり日本橋にほんばしにもとゞまらず大路おほぢ小路こうぢ幾通いくとほりそも何方いづかたかんとするにか洋行やうかうして歸朝きてうのちつま
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
九段下より神田へ出づる大路おほぢには
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
大路おほぢ見渡みわたせばつみなき子供こどもの三五にんひきつれていらいたらいたなんはなひらいたと、無心むしんあそびも自然しぜんしづかにて、くるわかよくるまおとのみ何時いつかわらずいさましくきこえぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
月の大路おほぢへ戸を出でぬ。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
大路おほぢゆく辻占つぢうらうりのこゑ、汽車のふえの遠くひゞきたるも、なにとはなしにたましひあくがるゝ心地こゝちす。
月の夜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大路おほぢよどむもののおと。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
なんとせんみち間違まちがへたり引返ひきかへしてとまた跡戻あともどり、大路おほぢいづれば小路こうぢらせ小路こうぢぬひては大路おほぢそう幾走いくそうてん幾轉いくてんたつゆきわだちのあとながひきてめぐりいづればまた以前いぜんみちなり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
つめたうひか大路おほぢ
全都覚醒賦 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
今歳ことし今日けふ十二ぐわつの十五にち世間せけんおしつまりてひと往來ゆきかひ大路おほぢにいそがはしく、お出人でいり町人てうにん歳暮せいぼ持參ぢさんするものお勝手かつて賑々にぎ/\しく、いそぎたるいゑにはもちつきのおとさへきこゆるに
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
大路おほぢ青ずみ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
歌よみがましきは憎くき物なれど、かかることには身にしみて思ふ友ともなりぬべし。大路おほぢゆく辻占つじうらうりのこゑ、汽車の笛の遠くひゞきたるも、なにとはなしに魂あくがるゝ心地す。
あきあはせ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
れはすこしもこゝろまらねども美登利みどり素振そぶりのくりかへされて正太しようたれいうたず、大路おほぢ往來ゆきゝおびたゞしきさへ心淋こゝろさびしければにぎやかなりともおもはれず、ともしごろよりふでやがみせころがりて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
魂祭たまゝつぎて幾日いくじつ、まだ盆提燈ぼんぢようちんのかげ薄淋うすさびしきころ新開しんかいまちいでくわん二つあり、一つはかごにて一つはさしかつぎにて、かごきく隱居處いんきよじよよりしのびやかにいでぬ、大路おほぢひとのひそめくをけば
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
良人をつと今宵こよひかへりのおそくおはしますよ、はやねぶりしにかへらせたまはゞきようなくやおぼさん、大路おほぢしもつきこほりてあしいかにつめたからん、炬燵こたつもいとよし、さけもあたゝめんばかりなるを
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)