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ふりがな文庫
“
單衣
(
ひとへ
)” の例文
新字:
単衣
おつなは何時ものやうに、粗末な鼠つぽい
阿波縮
(
あはちぢみ
)
の
單衣
(
ひとへ
)
を着て、彼の枕元に立つて居た。「
素麺
(
そうめん
)
が出來たから下へ行つておあがりよ。」
少年の死
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
傷は出合ひがしらに胸を突かれたものの、刄物は幅の狹い匕首らしく、
單衣
(
ひとへ
)
の乳の下を一とゑぐり、なか/\物凄い手際です。
銭形平次捕物控:210 飛ぶ女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
あんまり多過ぎない髮は何時も銀杏返で、洗ひざらした
單衣
(
ひとへ
)
ものに、めりんすの帶をしめた哀れつぽい姿の、うしろつきがひどくよかつた。
大阪の宿
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
おつぎが
洗
(
あら
)
ひ
曝
(
ざら
)
しの
袷
(
あはせ
)
を
棄
(
す
)
てゝ
辨慶縞
(
べんけいじま
)
の
單衣
(
ひとへ
)
で
出
(
で
)
るやうに
成
(
な
)
つてからは
一際
(
ひときは
)
人
(
ひと
)
の
注目
(
ちうもく
)
を
惹
(
ひ
)
いた。
例
(
れい
)
の
赤
(
あか
)
い
襷
(
たすき
)
が
後
(
うしろ
)
で
交叉
(
かうさ
)
して
袖
(
そで
)
を
短
(
みじか
)
く
扱
(
こき
)
あげる。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
冷たしとは思ふまじしかも此日は風寒く重ね着しても身の震ふに
褸
(
つゞれ
)
の
單衣
(
ひとへ
)
裾
(
すそ
)
短かく濡れたるまゝを絞りもせず其身はまだも
堪
(
こら
)
ゆべし二人の子供を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
▼ もっと見る
不斷衣
(
ふだんぎ
)
の
袷
(
あはせ
)
と袷羽織とめりやすのシヤツとがある外には、樺太の夏に向きかかつた時拵らへた銘仙の
單衣
(
ひとへ
)
に
對
(
つゐ
)
の銘仙の袷羽織を着てゐるばかりだ。
泡鳴五部作:03 放浪
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
居
(
ゐ
)
て
見
(
み
)
、
首筋
(
くびすぢ
)
が
薄
(
うす
)
かつたと
猶
(
なほ
)
ぞいひける、
單衣
(
ひとへ
)
は
水色友仙
(
みづいろゆうぜん
)
の
凉
(
すゞ
)
しげに、
白茶金
(
しらちやきん
)
らんの
丸帶
(
まるおび
)
少
(
すこ
)
し
幅
(
はゞ
)
の
狹
(
せま
)
いを
結
(
むす
)
ばせて、
庭石
(
にはいし
)
に
下駄
(
げだ
)
直
(
なほ
)
すまで
時
(
とき
)
は
移
(
うつ
)
りぬ。
たけくらべ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
まだ
梅雨
(
ばいう
)
の時期にはならないが、昨日も今日も、いつ晴れるとも知らず降りつゞく雨は、已に袷からセルの
單衣
(
ひとへ
)
を着た氣早い人の肩に羽織を着せかけ
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
貴族鼠
(
きぞくねずみ
)
の
縐高縮緬
(
しぼたかちりめん
)
の
五紋
(
いつゝもん
)
なる
單衣
(
ひとへ
)
を
曳
(
ひ
)
きて、
帶
(
おび
)
は
海松地
(
みるぢ
)
に
裝束切模
(
しやうぞくぎれうつし
)
の
色紙散
(
しきしちらし
)
の
七絲
(
しつちん
)
……
淡紅色紋絽
(
ときいろもんろ
)
の
長襦袢
(
ながじゆばん
)
——
火の用心の事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
少時
(
しばらく
)
すると由三は、薄茶のクシャ/\となツた中
折
(
をり
)
を被ツて、
紺絣
(
こんがすり
)
の
單衣
(
ひとへ
)
の上に、
丈
(
たけ
)
も裄も引ツつまツた間に合せ物の羽織を着て、庭の方からコソ/\と家を出た。
昔の女
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
千代松はまだ少し早いが輕いからよいので着て來た
紺飛白
(
こんがすり
)
の
單衣
(
ひとへ
)
の裾を
捲
(
まく
)
つて、式臺に腰を下ろした。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
この節の素足のこゝちよさ、尤も、
袷
(
あはせ
)
から
單衣
(
ひとへ
)
になり、シャツから晒木綿の襦袢になり、だん/\いろ/\なものを脱いだ後で、私達はこの節の素足にまで辿り着く。
短夜の頃
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
灯
(
ひ
)
もつけない部屋のうちに、お葉のネルの
單衣
(
ひとへ
)
が只白く淋しかつた。
襖
(
ふすま
)
を開け放した彼女の座敷に、ほの白く新らしい箪笥が見えて、鏡臺の鏡が遠い湖の表のやうに光つてゐるのであつた。
三十三の死
(旧字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
宗助
(
そうすけ
)
は
寒
(
さむ
)
いと
云
(
い
)
ひ
乍
(
なが
)
ら、
單衣
(
ひとへ
)
の
寐卷
(
ねまき
)
の
上
(
うへ
)
へ
羽織
(
はおり
)
を
被
(
かぶ
)
つて、
縁側
(
えんがは
)
へ
出
(
で
)
て、
雨戸
(
あまど
)
を一
枚
(
まい
)
繰
(
く
)
つた。
外
(
そと
)
を
覗
(
のぞ
)
くと
何
(
なん
)
にも
見
(
み
)
えない。たゞ
暗
(
くら
)
い
中
(
なか
)
から
寒
(
さむ
)
い
空氣
(
くうき
)
が
俄
(
には
)
かに
肌
(
はだ
)
に
逼
(
せま
)
つて
來
(
き
)
た。
宗助
(
そうすけ
)
はすぐ
戸
(
と
)
を
閉
(
た
)
てた。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
單衣
(
ひとへ
)
の袍の十二枚、毛氈の數亦同じ、 230
イーリアス:03 イーリアス
(旧字旧仮名)
/
ホーマー
(著)
平次は乾いた手拭を持つて來て、ザツと八五郎の身體を拭かせ、お靜が待つて來た
單衣
(
ひとへ
)
と、手早く着換へをさせるのでした。
銭形平次捕物控:236 夕立の女
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
鬼怒川
(
きぬがは
)
を
徃復
(
わうふく
)
する
高瀬船
(
たかせぶね
)
の
船頭
(
せんどう
)
が
被
(
かぶ
)
る
編笠
(
あみがさ
)
を
戴
(
いたゞ
)
いて、
洗
(
あら
)
ひ
曝
(
ざら
)
しの
單衣
(
ひとへ
)
を
裾
(
すそ
)
は
左
(
ひだり
)
の
小褄
(
こづま
)
をとつて
帶
(
おび
)
へ
挾
(
はさ
)
んだ
丈
(
だけ
)
で、
飴
(
あめ
)
は
箱
(
はこ
)
へ
入
(
い
)
れて
肩
(
かた
)
から
掛
(
か
)
けてある。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
久しく堂内の日陰に居た
單衣
(
ひとへ
)
の肌には、廊下を
傳
(
つたは
)
つて流れて來る風が、いやに薄寒く感じられて來た。
歓楽
(旧字旧仮名)
/
永井荷風
、
永井壮吉
(著)
あくる
朝
(
あさ
)
風
(
かぜ
)
すゞしきほどに
今
(
いま
)
一人
(
ひとり
)
車
(
くるま
)
に
乘
(
の
)
りつけゝる
人
(
ひと
)
のありけり、
紬
(
つむぎ
)
の
單衣
(
ひとへ
)
に
白
(
しろ
)
ちりめんの
帶
(
おび
)
を
卷
(
ま
)
きて、
鼻
(
はな
)
の
下
(
した
)
に
薄
(
うす
)
ら
髯
(
ひげ
)
のある
三十位
(
さんじふぐらゐ
)
のでつぷりと
肥
(
ふと
)
りて
見
(
み
)
だてよき
人
(
ひと
)
うつせみ
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
先刻
(
さつき
)
から
脱
(
ぬ
)
いでゐた
絽縮緬
(
ろちりめん
)
の羽織をまた着て、
紺地
(
こんぢ
)
に
茜色
(
あかねいろ
)
の
大名縞
(
だいみやうじま
)
のお
召
(
めし
)
の
單衣
(
ひとへ
)
と、白の勝つた
鹽瀬
(
しほぜ
)
の丸帶と、
友染
(
いうぜん
)
の絽縮緬の
長襦袢
(
ながじゆばん
)
とに、配合の
好
(
よ
)
い色彩を見せつゝ
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
義雄はそれを自分のかすりの
單衣
(
ひとへ
)
に着かへさせ、重い雛人形の樣に横抱きにして
褥
(
とこ
)
に入れる。
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
此時
(
このとき
)
、
白襟
(
しろえり
)
の
衣紋
(
えもん
)
正
(
たゞ
)
しく、
濃
(
こ
)
いお
納戸
(
なんど
)
の
單衣
(
ひとへ
)
着
(
き
)
て、
紺地
(
こんぢ
)
の
帶
(
おび
)
胸
(
むな
)
高
(
たか
)
う、
高島田
(
たかしまだ
)
の
品
(
ひん
)
よきに、
銀
(
ぎん
)
の
平打
(
ひらうち
)
の
笄
(
かうがい
)
のみ、
唯
(
たゞ
)
黒髮
(
くろかみ
)
の
中
(
なか
)
に
淡
(
あは
)
くかざしたるが、
手車
(
てぐるま
)
と
見
(
み
)
えたり、
小豆色
(
あづきいろ
)
の
膝
(
ひざ
)
かけして
森の紫陽花
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
額から胸から流れる汗にぐつしより濡れた
單衣
(
ひとへ
)
の氣持惡く肌に絡みついた體を崩し、親子が立際に置いて行つた大きな菓子折を目の前にして、つくづくと自分の年をとつた事を感じたのである。
貝殻追放:013 先生の忠告
(旧字旧仮名)
/
水上滝太郎
(著)
收めたり
夜具
(
よるのもの
)
も清くして取扱ひ丁寧なり
寐衣
(
ねまき
)
とて
袷
(
あはせ
)
を
出
(
いだ
)
したれど我はフラネルの
單衣
(
ひとへ
)
あればこれにて寐んと一枚を戻せしにいかに
惡
(
あし
)
くは聞取りけん此袷
汚
(
きたな
)
しと退けしと思ひ忽ち持ち行きて換へ來りしを
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
博多
(
はかた
)
の帶、
越後上布
(
ゑちごじやうふ
)
の
單衣
(
ひとへ
)
、——どう見ても
丁稚
(
でつち
)
や手代の風俗ではありませんが、仔細あつて、横山町の遠州屋の主人はツイ先頃
非業
(
ひごふ
)
の死を途げ
銭形平次捕物控:032 路地の足跡
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
おつぎは
出
(
で
)
る
時
(
とき
)
に
吹消
(
ふつけし
)
たブリキの
手
(
て
)
ランプを
點
(
つ
)
けて、まだ
容子
(
ようす
)
がはき/\としなかつた。
勘次
(
かんじ
)
は
先刻
(
さつき
)
の
風呂敷包
(
ふろしきづゝみ
)
を
解
(
と
)
いた。
小
(
ちひ
)
さく
疊
(
たゝ
)
んだ
辨慶縞
(
べんけいじま
)
の
單衣
(
ひとへ
)
が
出
(
で
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
太つたからだを
飛白
(
かすり
)
の
單衣
(
ひとへ
)
に包んだまま、あぐらをかき、短い眞鍮の
煙管
(
きせる
)
を横にくはへながら、柔和に而も自慢らしく自分のやつてゐることを語るのを聽くと、義雄には、然し
泡鳴五部作:03 放浪
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
白木綿
(
しろもめん
)
の
布子
(
ぬのこ
)
、
襟
(
えり
)
が
黄色
(
きいろ
)
にヤケたのに、
單衣
(
ひとへ
)
らしい、
同
(
おな
)
じ
白
(
しろ
)
の
襦袢
(
じゆばん
)
を
襲
(
かさ
)
ね、
石持
(
こくもち
)
で、やうかん
色
(
いろ
)
の
黒木綿
(
くろもめん
)
の
羽織
(
はおり
)
を
幅廣
(
はゞびろ
)
に、ぶわりと
被
(
はお
)
つて、
胸
(
むね
)
へ
頭陀袋
(
づだぶくろ
)
を
掛
(
か
)
けた、
鼻
(
はな
)
の
隆
(
たか
)
い、
赭
(
あか
)
ら
顏
(
がほ
)
で
松の葉
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
手織縞
(
ておりじま
)
の
單衣
(
ひとへ
)
に
綿繻珍
(
めんしゆちん
)
の帶を締めて、馬鹿に根の高い
丸髷
(
まるまげ
)
に赤い
手絡
(
てがら
)
をかけた人が、
友染
(
いうぜん
)
モスリンの
蹴出
(
けだ
)
しの間から、太く黒い足を見せつゝ、
後
(
うしろ
)
から二人を追ひ拔いて、
停車場
(
ステーシヨン
)
に
駈
(
か
)
け込んだ。
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
「空色の
單衣
(
ひとへ
)
と青い帶を見ると、誰でも私と間違へます。薄暗い四疊半にゐるのを私と思ひ込んで、障子の外からひと思ひに突いたとしたら——」
銭形平次捕物控:125 青い帯
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
樟
(
くす
)
の造林へは諦めをつけたのだ。季節は急に暑くなつて一兩日このかた
單衣
(
ひとへ
)
に脱ぎ替へたのであるから水を行くのは猶更心持がよい。ころころといふ幽かな樣な聲がそこここに聞える。
炭焼のむすめ
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
つづいて、氷峰が
單衣
(
ひとへ
)
一つのへこ帶、握りぎんたまで、ぬツと這つて來る。
泡鳴五部作:03 放浪
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
何處
(
どこ
)
か
大商店
(
だいしやうてん
)
の
避難
(
ひなん
)
した……
其
(
そ
)
の
店員
(
てんゐん
)
たちが
交代
(
かうたい
)
に
貨物
(
くわもつ
)
の
番
(
ばん
)
をするらしくて、
暮
(
く
)
れ
方
(
がた
)
には
七三
(
しちさん
)
の
髮
(
かみ
)
で、
眞白
(
まつしろ
)
で、この
中
(
なか
)
で
友染
(
いうぜん
)
模樣
(
もやう
)
の
派手
(
はで
)
な
單衣
(
ひとへ
)
を
着
(
き
)
た、
女優
(
ぢよいう
)
まがひの
女店員
(
をんなてんゐん
)
二三人
(
にさんにん
)
の
姿
(
すがた
)
が
見
(
み
)
えた。
露宿
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
商人らしく地味な
紬
(
つむぎ
)
の
單衣
(
ひとへ
)
を着て、帶はきちんと締めてをります。さすがに衣紋は崩れて、みぞおちのあたり、ひどく脹れてゐるのが目立ちます。
銭形平次捕物控:152 棟梁の娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
藍
(
あゐ
)
なり、
紺
(
こん
)
なり、
萬筋
(
まんすぢ
)
どころの
單衣
(
ひとへ
)
に、
少々
(
せう/\
)
綿入
(
めんいり
)
の
絽
(
ろ
)
の
羽織
(
はおり
)
。
紺
(
こん
)
と
白
(
しろ
)
たびで、ばしや/\とはねを
上
(
あ
)
げながら、「それ
又
(
また
)
水
(
みづ
)
たまりでござる。」「
如何
(
いか
)
にも
沼
(
ぬま
)
にて
候
(
さふらふ
)
。」と、
鷺歩行
(
さぎあるき
)
に
腰
(
こし
)
を
捻
(
ひね
)
つて
行
(
ゆ
)
く。
深川浅景
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
單衣
(
ひとへ
)
の尻を端折つて、三文朝顏の世話を燒き乍ら、平次は氣のない返事をして居ります。素足に冷たい土の感觸、こいつはまた、滅法良い心持です。
銭形平次捕物控:303 娘の守袋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
影法師
(
かげぼふし
)
も
露
(
つゆ
)
に
濡
(
ぬ
)
れて——
此
(
こ
)
の
時
(
とき
)
は
夏帽子
(
なつばうし
)
も
單衣
(
ひとへ
)
の
袖
(
そで
)
も、うつとりとした
姿
(
なり
)
で、
俯向
(
うつむ
)
いて、
土手
(
どて
)
の
草
(
くさ
)
のすら/\と、
瀬
(
せ
)
の
音
(
おと
)
に
搖
(
ゆら
)
れるやうな
風情
(
ふぜい
)
を
視
(
なが
)
めながら、
片側
(
かたかは
)
、
山
(
やま
)
に
沿
(
そ
)
ふ
空屋
(
あきや
)
の
前
(
まへ
)
を
寂
(
さみ
)
しく
歩行
(
ある
)
いた。
月夜
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
着物は寢卷の上に晝の
單衣
(
ひとへ
)
を重ね、帶がなくて細紐だけの姿は、多分夜中に誰かに呼び覺されて、寢卷の上へあわてて着物を引つ掛けたものでせう。
銭形平次捕物控:231 鍵の穴
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
手傷と言つても、
單衣
(
ひとへ
)
の上からで大したものでなく、この生活力の旺盛な男の元氣には、さしたる變りもありません。
銭形平次捕物控:220 猿蟹合戦
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
「ところでもう一つ訊き度いが、主人は夜中に殺されたといふのに、寢卷姿ではなくて、ちやんと
單衣
(
ひとへ
)
を着て、角帶を締めて居るのはどういふわけだ」
銭形平次捕物控:170 百足屋殺し
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
良い男のくせに、顏は恐怖と苦痛に歪んで、妙に物凄まじく、胸の脇差は拔いてありますが、黒つぽい
單衣
(
ひとへ
)
をひたして、疊も障子も恐ろしい
血飛沫
(
ちしぶき
)
です。
銭形平次捕物控:170 百足屋殺し
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
色の淺黒い、苦み走つた男振りも、わざと狹く着た
單衣
(
ひとへ
)
もすつかり板に付いて、名優の
強請場
(
ゆすりば
)
に見るやうな、一種拔き差しのならぬ凄味さへ加はります。
銭形平次捕物控:051 迷子札
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
決して綺麗ではありませんが、
氣性者
(
きしやうもの
)
らしいうちに愛嬌があつて地味な木綿の
單衣
(
ひとへ
)
も、こればかりは娘らしい赤い帶も、言ふに言はれぬ一種の魅力でした。
銭形平次捕物控:051 迷子札
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
折目の入つた
單衣
(
ひとへ
)
を着て、十九、
二十歳
(
はたち
)
が精々と思はれる若さを、紅も白粉も拔きの、痛々しいほど無造作な髮形、——それから發散される
素朴
(
そぼく
)
な美しさは
銭形平次捕物控:080 捕物仁義
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
人目を忍ぶ地味な
單衣
(
ひとへ
)
、帶だけが燃えるやうで、白い皮膚と、黒ずんだ血とに妖しい對照を見せて居ります。
銭形平次捕物控:263 死の踊り子
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ポンと飛込んで來たのは、舞臺で本雨を浴びて來たやうな意氣な兄イ、濡れた
單衣
(
ひとへ
)
をクルクルと脱ぐと
銭形平次捕物控:031 濡れた千両箱
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
平次の
狙
(
ねら
)
ひは極めて簡單でした。風呂場の
盥
(
たらひ
)
の中に、
單衣
(
ひとへ
)
を突つ込んで置いた男——あの一國者の國松は、その場を去らず、八五郎のクソ力で組み伏せられたのです。
銭形平次捕物控:185 歩く死骸
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
意氣な
單衣
(
ひとへ
)
を七三に端折つて、
懷中
(
ふところ
)
の十手は少しばかり突つ張りますが、夕風に
胸毛
(
むなげ
)
を吹かせた男前は、我ながら路地のドブ板を、橋がかりに見たてたい位のものです。
銭形平次捕物控:099 お篠姉妹
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
六人乘りの
傳馬
(
てんま
)
、
呑手
(
のみて
)
が揃つてゐるらしく、近寄るとプンと
酒精
(
アルコール
)
が匂ひさうな中に、二十一、二の半元服の若い女が、
單衣
(
ひとへ
)
の肩を紅に染めて、
姑
(
しうとめ
)
らしい老女の介抱を受け
銭形平次捕物控:310 闇に飛ぶ箭
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
羽織
(
はお
)
つた女の
單衣
(
ひとへ
)
をかなぐり捨てると、平次は曲者の
利腕
(
きゝうで
)
を取つて、縁側にねぢ伏せたのです。
銭形平次捕物控:090 禁制の賦
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
單
部首:⼝
12画
衣
常用漢字
小4
部首:⾐
6画
“單衣”で始まる語句
單衣物