去年きょねん)” の例文
それから、去年きょねんの歌をうたって火にきかせてやりました。火はゆらゆらとゆらめいて、こころからよろこんでいるようにみえました。
去年の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「おかあさん、つきは、去年きょねんはるとちがって、あたりがあんなあとになったので、びっくりしたでしょうね。」と、少年しょうねんがいいました。
夢のような昼と晩 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ことに去年きょねんからのここら全体ぜんたい旱魃かんばつでいま外へあそんで歩くなんてことはとなりやみんなへわるくてどうもいけないということを云った。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
若君わかぎみはもうお忘れでございましょうが、去年きょねん、お父上ちちうえ勝頼かつよりさまに僧侶そうりょをおしたいなされて菊亭家きくていけへおしあそばしたことを」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
去年きょねんの夏、ヤッローがまだ毛の黄色い子ガモだったころ、アシのあいだから、「セーサルがきたぞォ! セーサルがきたぞォ!」
きちちゃんが、去年きょねん芝居しばいんだときだまってとどけておくんなすったお七の衣装いしょう、あたしにろとのなぞでござんしょう」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ここ一、二年水害すいがいをまぬがれた庭は、去年きょねんより秋草がさかんである。花のさかりには、まだしばらくまがありそうだ。主人はけさも朝涼ちょうりょうに庭を散歩さんぽする。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
このうら山には、とてもけわしい場所がありますんでね、馬車ばしゃなんか通れやしませんよ。去年きょねんでしたか、馬車ばしゃがひっくりかえりましてね、お客さんと馬車屋ばしゃやにました。
読書どくしょかれ病的びょうてき習慣しゅうかんで、んでもおよれたところものは、それがよし去年きょねん古新聞ふるしんぶんであろうが、こよみであろうが、一ようえたるもののように、きっとってるのである。
六号室 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
彼等夫妻は千曲川ちくまがわほとりに家をもち、養鶏ようけいなどやって居た。而して去年きょねんの秋の暮、胃病いびょうとやらで服薬して居たが、ある日医師が誤った投薬の為に、彼女は非常の苦痛をして死んだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
発見者はっけんしゃは、老人ろうじんうちのすぐとなりにんでいて、去年きょねんあたり開業かいぎょうした島本守しまもとまもるという医学士いがくしだつたが、島本医師しまもといしは、警察けいさつ事件じけん通報つうほうすると同時どうじに、大要たいようつぎのごとく、その前後ぜんご事情じじょうべた。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
わたしが、去年きょねんあき、ここへやってきたときに、だれかいぬてたものがあった。いぬは、クンクンかなしそうなこえしていていました。
風と木 からすときつね (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうして、ハシバミの木立こだちの枝を見あげては、去年きょねんの秋のがまだ残っていはしないかと、一生けんめいさがしていました。
去年きょねんの九月古い競馬場けいばじょうのまわりから掘って来てえておいたのだ。今ごろ支柱を取るのはまだ早いだろうとみんな思った。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
江戸えど民衆みんしゅうは、去年きょねん吉原よしわら大火たいかよりも、さらおおきな失望しつぼうふちしずんだが、なかにも手中しゅちゅうたまうばわれたような、かなしみのどんぞこんだのは
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
その自分にたいして、去年きょねんうたときには、某牛舎ぼうぎゅうしゃておって、うん安藤あんどうかといったきり、おきもしなかった。
(新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
小鳥は、なかよしの去年きょねんの木のところへまたかえっていきました。
去年の木 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ついに、このかもめは、きたをさしてながたびのぼりました。かれは、去年きょねんきた時分じぶんのことなどをおもしていろいろの感慨かんがいにふけりました。
馬を殺したからす (新字新仮名) / 小川未明(著)
きっと今年は去年きょねん旱魃かんばつめ合せと、それから僕の授業料じゅぎょうりょうぐらいをってみせる。実習は今日も苗代掘なわしろほりだった。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それは、去年きょねんの秋にたねをまいたライ麦畑むぎばたけです。冬じゅう雪の下でも、ずっと緑の色をしていたのでした。
去年きょねん梅見時分うめみじぶんから伊勢新いせしん隠居いんきょ骨折ほねおりで、させてもらった笠森稲荷かさもりいなり水茶屋みずぢゃやたちま江戸中えどじゅう評判ひょうばんとなっては、きょう大吉だいきちかえった有難ありがたさを、なみだともよろこぶよりほかになく
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
去年きょねんのけんか、わすれたか。」
二ひきの蛙 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
おれなども、去年きょねんけがをしなけりゃ、とっくにここにはいないのだ。今年ことしきずもなおったし、どこかへゆかなけりゃならないかもしれない。
みつばちのきた日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
去年きょねんの秋のようにあんなつめたい風のなかなら仕事しごともずいぶんひどかったのですけれども、いまならあんまり楽でただ少しかた重苦おもくるしいのをこらえるだけです。
イーハトーボ農学校の春 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
かあさんが、去年きょねんれに、まちからってきてくださったお人形にんぎょうは、さびしいふゆあいだ少女しょうじょといっしょに、なかよくあそびました。
春近き日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
私は去年きょねんのちょうど今ごろの風のすきとおったある日のひるまを思い出します。
おきなぐさ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
水盤すいばんなかに、五ひきの金魚きんぎょれてやりますと、去年きょねんからいた金魚きんぎょは、にわかににぎやかになったのでたいへんによろこんだようにえました。
水盤の王さま (新字新仮名) / 小川未明(著)
あしにゴムぐつでぴちゃぴちゃ水をわたる。これはよっぽどいいことになっている。前にも一ぺんどこかでこんなことがあった。去年きょねんの秋だ。腐植質フィウマスの野原のたまり水だったかもしれない。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
みねさんは、去年きょねん学校がっこうたのでした。きょうはおみせ公休日こうきゅうびです。叔母おばさんのおうちへいってきたといって、きれいな着物きものていました。
東京の羽根 (新字新仮名) / 小川未明(著)
去年きょねんれ、ぼりへいったときに、おじいさんが、「新年しんねんは、三がにちあいだ懸賞けんしょうつきで、かんぶなをたくさんいれますよ。」
ある少年の正月の日記 (新字新仮名) / 小川未明(著)
このごろ、ぶなのは、はるちかづいたせいか、そらると、去年きょねんなつんできたかわらひわのことをおもすのでした。
縛られたあひる (新字新仮名) / 小川未明(著)
去年きょねんはる子供こどもたちは、おとうさんにつれられて、おばあさんや、おじいさんのんでいなされる田舎いなかへいったのでした。
さまざまな生い立ち (新字新仮名) / 小川未明(著)
あちらを、鈴木すずきくんが、おかあさんとあるいているのが、にはいりました。かれは、去年きょねんまで、おなじ学校がっこうにいて、わたくしと同級生どうきゅうせいだったのです。
どこかで呼ぶような (新字新仮名) / 小川未明(著)
ねんは、こうしてめぐってきた。はたけにも、にわにも、去年きょねんのそのころにいたはなが、またに、むらさきいていたのでした。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
少年しょうねんは、去年きょねんのいまごろ、かわからすくいあみで、ふなのを四、五ひきばかりとってきました。そして、にわにおいてあった、水盤すいばんなかれました。
川へふなをにがす (新字新仮名) / 小川未明(著)
去年きょねんのちょうどいまごろにも、このおかあさんのかえるは、さかとおりへて、ちいさな子供こどもたちのぴょんぴょんおもしろそうにぶのをながめていました。
お母さんのひきがえる (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると、あのいえ壁板しとみに、去年きょねんいなくなった、わたしのいもうと着物きものたのがかかっていましたので、ついぼんやりと思案しあんれていたのでございます。
島の暮れ方の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
金魚きんぎょりがきた……。」といって、かれは、すぐに、うちそとてみました。こころのうちでっていた、去年きょねん金魚きんぎょったおじいさんでありました。
金魚売り (新字新仮名) / 小川未明(著)
我慢がまんをしろ、我慢がまんをしろ、おれなどは去年きょねんあきから、たらずにいるのだ。それでもだまって不平ふへいをいわないじゃないか、我慢がまんをしろ、我慢がまんをしろ。」
小さな草と太陽 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかしかんがえてみると、やるようなにわとりはなかったのです。いずれも去年きょねん秋高あきたかしてったので、いま、たまごをよくんでいるのでありました。
おおかみと人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
去年きょねんも、この月半つきなかばにやまりたのだが、今年ことしは、いつもよりふゆはやいらしい。」と、主人しゅじんは、って、まど障子しょうじけて、裏山うらやまほうをながめました。
深山の秋 (新字新仮名) / 小川未明(著)
またなつがめぐってきました。するとあやは、去年きょねんったうみほおずきのことをおもしました。ある、あやはおばあさんのうちをたずねてゆきました。
海ほおずき (新字新仮名) / 小川未明(著)
やがてたかいすぎのが、はいりました。つづいてあかいかきのはいりました。そのそばにわらがあって、すべてが去年きょねんのままの景色けしきでありました。
もずとすぎの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
はたして、やますと、もうゆきはなかった。そこには、すでに、はるがきているように、はたけには、青々あおあおとして、去年きょねんが、あたらしいしていました。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
子供こどもは、去年きょねんはるまれたので、まだ、今年ことしはるにはあわないのであります。すると、母親ははおやはいいました。
魚と白鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうおもうと、つぎからつぎと去年きょねんのことがおもされて、なつかしくなりました。もずは、野原のはらして、やまして、見覚みおぼえのあるむらへとんできました。
もずとすぎの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「これは、去年きょねんったです。」といって、らんのけてくれました。また、りょうちゃんのおとうさんの、病気びょうきによくきくというくさけてくれました。
春風の吹く町 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すでに、去年きょねんのいまごろ、塹壕ざんごうなかで、異郷いきょうそらながらいった、戦友せんゆう言葉ことばが、おもされたのでした。
少女と老兵士 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おじいさん、もずがきましたよ、きっと去年きょねんのもずですね。」と、おんながいっていました。おんなは、おともだちと縁側えんがわで、お人形にんぎょうしてあそんでいました。
もずとすぎの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
去年きょねん竹子たけこさんがぼうててくれましたので、いまは、ひとにふまれたり、とりにつつかれたりする心配しんぱいはなくて、まことにすみれは安心あんしんして、太陽たいようひかりびて
つばきの下のすみれ (新字新仮名) / 小川未明(著)