近所きんじょ)” の例文
近所きんじょいえの二かいまどから、光子みつこさんのこえこえていた。そのませた、小娘こむすめらしいこえは、春先はるさきまち空気くうきたかひびけてこえていた。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そとからて、何人なんぴとか、ここにかなしみがあるとおもうだろうか。むろんここには近所きんじょまでせまった飢餓きがもなければ貧困ひんこんもなかったのでした。
子供は悲しみを知らず (新字新仮名) / 小川未明(著)
若者わかものは、近所きんじょぬのたんわりに、手綱たづなとくつわをってうまにつけますと、さっそくそれにって、またずんずんあるいて行きました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
そのことが広く知れわたると、近所きんじょの人たちはもちろんのこと、遠くからも大ぜいの人びとがやってきて、いろんな事をうらなってもらった。
「ご近所きんじょを通りかかりましたのに、あなた様のごきげんもうかがわずに、だまって通るほうはございませんので、おじゃまにあがりました。」
近所きんじょの人もみんな、こういった。けれども、ただ、みよこのうちのおじさんだけが、いのきちのかんがえにさんせいしてくれた。
ラクダイ横町 (新字新仮名) / 岡本良雄(著)
少し話して行けと云うたら、また近所きんじょさけが出来たからと云うて、急いで帰った。鮭とは、ぶら下がるの謎で、首縊くびくくりがあったと云うのである。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
みんなして、近所きんじょ飛鳥山あすかやまへ、お花見はなみかけたあのとき、いつものとおり、あたしとおまえとは夫婦ふうふでござんした。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
製薬には兎角とかく徳利とくり入用にゅうようだから、丁度よろしい、塾の近所きんじょ丼池筋どぶいけすじ米藤こめとうと云う酒屋が塾の御出入おでいり、この酒屋から酒を取寄せて、酒はのん仕舞しまって徳利は留置とめお
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
先生はよろこんで、記念きねんの写真をとろうといい、近所きんじょの写真屋さんをたのんで、一本松まで出かけた。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
その近所きんじょにはいまでもきつねたぬきがいるそうで、ふゆよるなど、ひと便所べんじょにゆくため戸外こがいるときには、をあけるまえに、まず丸太まるたをうちあわせたり、はしらたけでたたいたりして
ごんごろ鐘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
二人ふたりもんまえ口争くちあらそいをしていたのをみたという、近所きんじょひとからの聞込ききこみもないではない。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
これが源右衛門の口で近所きんじょ界隈かいわいにひろまると、女を見る一同の眼が同情に変ったが、その中で一番熱心に味方になって世話をやきだしたのは、言うまでもなく差配の源右衛門だった。
あるとし近所きんじょ避暑ひしょにきていた大学生たちが、自分の家のえんがわへ腰をかけて、一つぶよりの水蜜桃をむしゃむしゃと、まるで馬が道ばたの草をでもたべるようにたべちらすのを見た時の
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
ぼくはあの図を出して先生になおしてもらったら次の日曜に高橋君たかはしくんたのんで僕のうちの近所きんじょのをすっかりこしらえてしまうんだ。僕のうちの近くなら洪積こうせき沖積ちゅうせきがあるきりだしずっと簡単かんたんだ。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それどころか、あくるあさ、おいなりさんをみにいくと、近所きんじょのおばあさんが、おみきとあぶらあげをそなえて、なにやらくちなかでぶつぶつとなえながら、しんみょうにおがんでいるではありませんか。
いずれは、この近所きんじょどもたちでした。ふたりづれのおとこが、どこからか往来おうらいてきました。どちらも六つか、七つぐらいです。
戦争はぼくをおとなにした (新字新仮名) / 小川未明(著)
はがっかりして、しそうなかおをしながら、近所きんじょ百姓馬ひゃくしょううまりて、それにってしおしおとかえっていきました。
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
おとうさんもおかあさんも、学校の先生も、学校の友だちも、近所きんじょの子どもも、だれもすきにはなれませんでした。
子供こどもきな袖子そでこは、いつのにか近所きんじょいえからべつ子供こどもいてて、自分じぶん部屋へやあそばせるようになった。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
が、先刻せんこくしん七におこののあとわせたすきに、二人ふたりとも、どこぞ近所きんじょへまぎれてったのであろう。もう一んで松江しょうこうみみには、容易ようい返事へんじもどってはなかった。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そこで、あるとき、親子と、そのほか近所きんじょで知りあいの若い人たちをおおぜい、いなかのやしきにまねいて、一週間しゅうかんあまりもとめて、ありったけのもてなしぶりをみせました。
青ひげ (新字新仮名) / シャルル・ペロー(著)
近所きんじょでもよくつていることですが、老人ろうじんはかなりへんくつな人物じんぶつです。ひどく用心ようじんぶかくて、昼日中ひるひなかでも、もん内側うちがわしまりがしてあり、門柱もんちゅう呼鈴よびりんさないと、もんをあけてくれません。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
三郎さぶろうや、あんなに、ご近所きんじょでやかましくおっしゃるのだから、ボンを、だれかほしいというひとがあったら、やったらどうだい。」
少年の日の悲哀 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それからは文福ぶんぶくちゃがまの評判ひょうばんは、方々ほうぼうにひろがって、近所きんじょの人はいうまでもなく、遠国えんごくからもわざわざわらじがけでる人で毎日まいにち毎晩まいばんたいへんな大入おおいりでしたから
文福茶がま (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
子供こどもきなおはつ相変あいかわらず近所きんじょいえから金之助きんのすけさんをいてた。頑是がんぜない子供こどもは、以前いぜんにもまさる可愛かわいげな表情ひょうじょうせて、袖子そでこかたにすがったり、そのあとったりした。
伸び支度 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この近所きんじょ揚弓場ようきゅうばねえさんなららねえこと、かりにもおまえさん、江戸えどばん評判ひょうばんのあるおせんでげすぜ。いくら若旦那わかだんな御威勢ごいせいでも、こればッかりは、そう易々やすやすたァいきますまいて
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
にわ金魚鉢きんぎょばちに、なにかかくしているとがついてからは、近所きんじょからもつまはじきされている老人ろうじんたいし、ことさら親切しんせつにしてやつて、そのかくしているものがなにかということをるのにつとめたのでした。
金魚は死んでいた (新字新仮名) / 大下宇陀児(著)
あるのこと、よっちゃんは、おかあさんといっしょに、近所きんじょの、よっちゃんをかわいがってくださるおばさんのおうちへゆきました。
時計とよっちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
近所きんじょにもう相手あいてがなくなると、つまらなくなって金太郎きんたろうは、一にちもりの中をかけまわりました。
金太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
しかし、すみをたくさんうだけの資力しりょくのないものはどうしたらいいか、それよりしかたはないのだ。近所きんじょに、宏荘こうそう住宅じゅうたくはそびえている。
三月の空の下 (新字新仮名) / 小川未明(著)
桃太郎ももたろうはだんだん成長せいちょうするにつれて、あたりまえの子供こどもにくらべては、ずっとからだも大きいし、ちからがばかにつよくって、すもうをとっても近所きんじょむらじゅうで、かなうものは一人ひとりもないくらいでしたが
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
みんなは、おはなをさがしあるきました。しかし、いつも近所きんじょにいるのが、そのにかぎって、どこへいったか、そのかげえませんでした。
赤いえり巻き (新字新仮名) / 小川未明(著)
「もし、もし、おまえさん、この近所きんじょみずところりませんか。」
一本のわら (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
勇蔵ゆうぞうも、近所きんじょひとたちも、同情どうじょうをしてくれたけれど、きるみちは、畢竟ひっきょう自分じぶんはたらくよりもほかにないということをかれ自覚じかくしたのです。
僕はこれからだ (新字新仮名) / 小川未明(著)
一寸法師いっすんぼうし往来おうらいあるいていると、近所きんじょ子供こどもたちがあつまってきて
一寸法師 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
あるのこと、まさちゃんは、大将たいしょうとなって、近所きんじょちいさなヨシさんや、三郎さぶろうさんたちといっしょにはらっぱへじゅずだまりにゆきました。
左ぎっちょの正ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
あるとき近所きんじょ温泉おんせんはいってきずのりょうじをしていました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
光子みつこさんが、学校がっこうへいこうとすると、近所きんじょのおばあさんが、あかちゃんをおぶって、たるみちうえっていました。
お姉ちゃんといわれて (新字新仮名) / 小川未明(著)
もし、この近所きんじょであったら、自分じぶんもいってみようとおもって、みみましてみましたけれど、それらしいこえなどはこえてこなかったのであります。
金の輪 (新字新仮名) / 小川未明(著)
すると、された人々ひとびとや、その近所きんじょひとたちが、付近ふきんでうろうろしたり、大騒おおさわぎをしたりしているさまが、えるようながしました。
火事 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゆうちゃんは、にいさんや、ねえさんや、また、近所きんじょ叔母おばさんに、これをせたら、どんなによろこばれるだろうとおもいました。
銀のペンセル (新字新仮名) / 小川未明(著)
「おばあさん、どうかそのおはなしかしてください。」と、近所きんじょ子供こどもたちも、大人おとなたちも、そこにすわっておられたおばあさんにたのみました。
青いランプ (新字新仮名) / 小川未明(著)
時子ときこさんは、二つ羽子板はごいたってきました。二人ふたりは、羽根はねをついていました。すると、近所きんじょ子供こどもたちがあつまってきて
東京の羽根 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ほんとうに、どく人々ひとびとですね。」と、夜警やけいをしている近所きんじょひとたちが、そのなかでも、子供こどもを三にんも四にんもつれて、みすぼらしいふうをして
子供と馬の話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
まちひとは、おどろいて、かえって、そのことを近所きんじょひとたちにはなしました。みんなは、こんどいっしょにいって、その少年しょうねんとどけようといいました。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
「どうか、いえのことはあんじないで、おくにのためにはたらいてください。」と、近所きんじょ人々ひとびとが、げんさんにいいました。
クラリネットを吹く男 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こんなはなしをしていると、あそびにきていた、近所きんじょおとこは、二、三ねんまえ東京とうきょうへいって、よく西郷さいごう銅像どうぞうてきたので
銅像と老人 (新字新仮名) / 小川未明(著)
正吉しょうきち学校がっこうからかえると、近所きんじょ武夫たけおくんとさそいあって、はらっぱへあそびにいき、くさうえにねころんでいました。
空にわく金色の雲 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼくは、おとなりのしょうちゃんと二人ふたりで、カチ、カチと、ひょうしをたたいて、近所きんじょを、用心ようじんにまわりました。
風七題 (新字新仮名) / 小川未明(著)