處々ところ/″\)” の例文
新字:処々
村落むら處々ところ/″\にはまだすこしたけたやうなしろ辛夷こぶしが、にはかにぽつとひらいてあをそらにほか/\とうかんでたけこずゑしてた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
むかしのまゝ練壁ねりかべ處々ところ/″\くづちて、かはら完全くわんぜんなのは見當みあたらくらゐそれに葛蔓かづらのぼつてますから、一見いつけん廢寺ふるでらかべるやうです。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
大平の瀧見臺へ到る途中、瀧の流れる見當へと行く右手の、道も無い林間叢裏に處々ところ/″\鐵網を張つて人の通行をさせぬやう用心してあるのが見えた。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
で、まち便たよりなく、すうと月夜つきよそらく。うへからのぞいて、やまがけ處々ところ/″\まつ姿すがたくさびれて、づツしりとおさへてる。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さてかく變りて後この聖なる建物たてものその處々ところ/″\より頭を出せり、即ち轅よりは三、かどよりはみな一を出せり 一四二—一四四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
ローザラインのほしのやうな眼附まみつき、あの高々たか/″\としたひたひ、あの眞紅まっくれなゐくちびる、あの可憐かはゆらしいあし、あの眞直まっすぐすね、あのぶる/\とふるへる太股ふともゝ乃至ないしその近邊ちかまにある處々ところ/″\けていのりまするぞ。
わたしおこしてくだされ、何故なぜ身躰からだいたくてとふ、それは何時いつつまゝに驅出かけいだしてだいをとことらへられるを、振放ふりはなすとておそろしきちからせばさだめていたからう生疵なまきず處々ところ/″\にあるを
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ひがし西にしみなみ三方さんぽうこのしま全面ぜんめんで、見渡みわたかぎ青々あを/\としたもりつゞき、處々ところ/″\やまもある、たにえる、またはるか/\の先方むかう銀色ぎんしよく一帶いつたい隱見いんけんしてるのは、其邊そのへん一流いちりうかはのあることわかる。
勘次かんじ午餐過ひるすぎになつてそとた。紛糾こぐらかつたこゝろつてかれすこ俛首うなだれつつあるいた。あたゝかなひかりはたけつち處々ところ/″\さらりとかわかしはじめた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その尾花をばな嫁菜よめな水引草みづひきさう雁來紅ばげいとうをそのまゝ、一結ひとむすびして、處々ところ/″\にその屋根やねいた店小屋みせごやに、おきなも、うばも、ふとればわかむすめも、あちこちに線香せんかうつてゐた。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おな新開しんかいまちはづれに八百髮結床かみゆひどこ庇合ひあはひのやうな細露路ほそろぢあめかさもさゝれぬ窮屈きうくつさに、あしもととては處々ところ/″\溝板どぶいたおとあなあやふげなるをなかにして、兩側りようがはてたる棟割長屋むねわりながや
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さうしてぎつとんでおもつた草刈籠くさかりかご脊負せおつた。其處そこらのはたけにはつちひらいたやうに處々ところ/″\ぽつり/\と秋蕎麥あきそばはなしろえてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
白帆しらほあちこち、處々ところ/″\煙突えんとつけむりたなびけり、ふりさければくももなきに、かたはらには大樹たいじゆ蒼空あをぞらおほひてものぐらく、のろひくぎもあるべきみきなり。おなじだい向顱卷むかうはちまきしたる子守女こもりをんな三人さんにんあり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
身内みうちいたからん筒袖つゝそで處々ところ/″\ひきさかれて背中せなかこしすなまぶれ、めるにもめかねていきほひのすさまじさにたゞおど/\とまれし、ふでやの女房にようぼうはしりてきおこし、背中せなかをなですなはらひ、堪忍かんにんをし
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
時々とき/″\むらくものはら/\とかゝるやうに處々ところ/″\くさうへめるのはこゝに野飼のがひこまかげ
二た面 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
天柱てんちうくだけ地維ちいかくるかとおもはるゝわらこゑのどよめき、中之町なかのちやうとほりはにわか方角ほうがくかはりしやうにおもはれて、角町すみちやう京町きやうまち處々ところ/″\のはねばしより、さつさせ/\と猪牙ちよきがゝつた言葉ことば人波ひとなみくるむれもあり
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
これは……しかし、菖蒲あやめ杜若かきつばたは——翌日よくじつやまみづ處々ところ/″\た、其處そこにも、まだ一輪いちりんかなかつた。つぼんだのさへない。——さかりちやう一月ひとつきおくれる。……六月ろくぐわつ中旬ちうじゆんだらうとふのである。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かしかるべし御覽ごらんぜずやとわりなくすゝめてしばめづらしくともなでぬひとこゝろのうやむやはらずやしげ木立こだちすゞしくそでかぜむねにしゝうえはたす小田をだ早苗さなへ青々あほ/\として處々ところ/″\かわずこゑさま/″\なるれもうたかや可笑をかしとてホヽしうれもうれしく彼方かしこかやぶきこゝ垣根かきねにはうちしきやうなりはな
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
處々ところ/″\くさうへめるのは、野飼のがひこまかげがさすのである。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)