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背
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せなか
ふりがな文庫
“
背
(
せなか
)” の例文
お庄は
背
(
せなか
)
や
股
(
もも
)
のあたりにびっしょり汗を掻きながら、時々蓄音機の前や、風鈴屋の前で足を休めて、
背
(
せなか
)
で眠りかける子供を揺り起した。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
がたぴしする戸ばかりをあつかい慣れている彼れの手の力があまったのだ。妻がぎょっとするはずみに
背
(
せなか
)
の赤坊も眼を
覚
(
さま
)
して泣き出した。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「
母様
(
おっかさん
)
に逢いに行くんだ。一体、私の
背
(
せなか
)
に
負
(
お
)
んぶをして、目を
塞
(
ふさ
)
いで飛ぶところだ。構うもんか。さ、手を
曳
(
ひ
)
こう、
辷
(
すべ
)
るぞ。」
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「なかなか冷えるね」と、西宮は小声に言いながら後向きになり、
背
(
せなか
)
を
欄干
(
てすり
)
にもたせ変えた時、
二上
(
にあが
)
り新内を
唄
(
うた
)
うのが
対面
(
むこう
)
の座敷から聞えた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
と見れば
後
(
あと
)
の
小舎
(
こや
)
の前で、昇が
磬折
(
けいせつ
)
という風に腰を
屈
(
かが
)
めて、其処に
鵠立
(
たたずん
)
でいた洋装紳士の
背
(
せなか
)
に向ッて
荐
(
しき
)
りに礼拝していた。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
▼ もっと見る
「此所に
温順
(
おとな
)
しくしておいで、ね、賢い児だから……」と言つて、お母さんは黒ちやんの
背
(
せなか
)
を優しく
叩
(
たた
)
いてやりました。
熊と猪
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
丁
(
とん
)
、と一つ、軽く
背
(
せなか
)
を叩かれて、
吃驚
(
びっくり
)
して後を振返って見ると、旦那様はもう
堪
(
こら
)
えかねて様子を見にいらしったのです。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「親方、早く私に
背
(
せなか
)
の刺青を見せておくれ、お前さんの命を貰った代りに、私は
嘸
(
さぞ
)
美しくなったろうねえ」
刺青
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と、其処に鍵を掛け忘れた切戸でも
開
(
あ
)
いていたと見えて、ギギーという
幽
(
かすか
)
な
軌音
(
きしりね
)
と共に、其戸に
背
(
せなか
)
を持たせかけたまま彼の体は建物の中へ
洵
(
まこと
)
に自然に辷り込んだ。
人間製造
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
子供
(
こども
)
の
兩足
(
りようあし
)
を
捕
(
とら
)
へて
倒
(
さか
)
さにつるし、
顏
(
かほ
)
を
外
(
そと
)
に
向
(
む
)
けて、
膝
(
ひざ
)
もて
背
(
せなか
)
を
撞
(
つ
)
くと
云
(
い
)
ふのですさうすれば、
曾
(
かつ
)
ての
實驗
(
じつけん
)
に
依
(
よつ
)
て
出
(
で
)
るから、
之
(
これ
)
を
遣
(
や
)
ツて
見
(
み
)
て
呉
(
く
)
れと
熱心
(
ねつしん
)
に
勸
(
すゝ
)
めました
手療法一則:(二月例会席上談話)
(旧字旧仮名)
/
荻野吟子
(著)
人夫が
蕗
(
ふき
)
の葉や
蓬
(
よもぎ
)
、
熊笹
(
くまざさ
)
引かゞってイタヤの
蔭
(
かげ
)
に敷いてくれたので、関翁、余等夫妻、鶴子も新之助君の
背
(
せなか
)
から下りて、一同草の上に足投げ出し、
梅干
(
うめぼし
)
菜
(
さい
)
で
握飯
(
にぎりめし
)
を食う。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
「おい何うかしたの? ……何処か悪いの?」と言って、掌で
背
(
せなか
)
をサアッ/\と撫でてやった。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
すなはち地にも倒れつべし、されども秀郷、天下第一の大剛の者なりければ、更に一念も動ぜずして、
彼
(
かの
)
大蛇の
背
(
せなか
)
の上を、荒らかに踏みて、
閑
(
しずか
)
に上をぞ越えたりける、しかれども大蛇もあへて驚かず
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
あまり咳が出るので、
背
(
せなか
)
をたたいてやりながら
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
お雪は剥くものを剥いてしまうと、それを
目笊
(
めざる
)
に入れて、水口にいる女中の方へ渡した。そして柱に
背
(
せなか
)
を
凭
(
もた
)
せて、そこにしゃがんでいた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
小児等しばらく
逡巡
(
しゅんじゅん
)
す。画工の機嫌よげなるを見るより、一人は、画工の
背
(
せなか
)
を
抱
(
いだ
)
いて、凧を煽る真似す。一人は
駈出
(
かけだ
)
して距離を取る。その
一人
(
いちにん
)
。
紅玉
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
丘の所に大きな
猪
(
ゐのしし
)
が
一疋
(
いつぴき
)
の可愛い坊やと一緒に
臥
(
ね
)
てゐました。おツ母さんは、坊やの
背
(
せなか
)
を
叩
(
たた
)
きながら
熊と猪
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
次郎さんは鼻血を
滴
(
た
)
らしつゝ、弟の泣く
方
(
かた
)
へ走せ寄って吾を
忘
(
わす
)
れて
介抱
(
かいほう
)
した。父は次郎さんを愛してよく
背
(
せなか
)
に
負
(
おぶ
)
ったが、次郎さんは
成丈
(
なるたけ
)
父の
背
(
せな
)
を弟に
譲
(
ゆず
)
って自身は歩いた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
馬が
溺
(
いば
)
りをする時だけ彼れは
不性無性
(
ふしょうぶしょう
)
に
立
(
たち
)
どまった。妻はその暇にようやく追いついて
背
(
せなか
)
の荷をゆすり上げながら溜息をついた。馬が溺りをすますと二人はまた黙って歩き出した。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
女は黙って
頷
(
うなず
)
いて肌を脱いた。折から朝日が刺青の
面
(
おもて
)
にさして、女の
背
(
せなか
)
は燦爛とした。
刺青
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
奥山の秋のことですから、
日中
(
ひるなか
)
とは違いましてめっきり寒い。山気は襲いかかって人の
背
(
せなか
)
をぞくぞくさせる。見れば
樹葉
(
きのは
)
を
泄
(
も
)
れる月の光が幹を伝って、流れるように地に落ちておりました。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
産婆が赤い
背
(
せなか
)
の丸々しい産児を、両手で
束
(
つか
)
ねるようにして、次の
室
(
ま
)
の湯を張ってある盥の傍へ持って行ったのは、もう十時近くであった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
小児等
(
こどもら
)
しばらく
逡巡
(
しゅんじゅん
)
す。画工の機嫌よげなるを見るより、一人は、画工の
背
(
せなか
)
を
抱
(
いだ
)
いて、凧を煽る真似す。一人は
駈出
(
かけだ
)
して距離を取る。其の
一人
(
いちにん
)
。
紅玉
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
秋のはじめから、奥様は虫歯の
御煩
(
おわずらい
)
で時々
酷
(
ひど
)
い
御苦痛
(
おくるしみ
)
をなさいましたのです。
烈
(
はげ
)
しくなると私を御離しなさらないで、切ないような目付をなさりながら、私の
背
(
せなか
)
に
御頭
(
おつむり
)
を押しつけておいでなさる。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ある時、高等小学の修身科で彼は熱心に忍耐を説いて居たら、生徒の一人がつか/\立って来て、教師用の
指杖
(
さしづえ
)
を取ると、
突然
(
いきなり
)
劇
(
はげ
)
しく先生たる彼の
背
(
せなか
)
を
殴
(
なぐ
)
った。彼は
徐
(
しずか
)
に顧みて何を
為
(
す
)
ると問うた。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
お増は押入れから自分の着物を出して来て、
背
(
せなか
)
へ
被
(
か
)
けたり、火鉢の
抽斗
(
ひきだし
)
から売薬を捜して飲ませたりしたが、磯野の腹痛は止まなかった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「
可恐
(
おそろ
)
しい早さだ、放すな!」と滝太郎は
背
(
せなか
)
をお雪に差向ける。途端に
凄
(
すさま
)
じい音がして、わっという声が沈んで聞える。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「こんな時に顔を出しておきましょうと思って、方々歩きまわって来たよ」おとらは行水をつかいながら、
背
(
せなか
)
を流しているお島に話しかけた。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
枝折戸
(
しおりど
)
の外を、柳の下を、がさがさと
箒
(
ほうき
)
を当てる、
印半纏
(
しるしばんてん
)
の円い
背
(
せなか
)
が、
蹲
(
うずく
)
まって、はじめから見えていた。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お今に自分が浅井の
背
(
せなか
)
を流さしておいた湯殿の戸の側へ、お増はそっと身を寄せて行ったり、ふいに戸を明けて見たりした。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
我
(
われ
)
と
我
(
わ
)
が
想像
(
さうざう
)
に
酔
(
よ
)
つて、
見惚
(
みと
)
れた
玉
(
たま
)
の
膚
(
はだえ
)
の
背
(
せなか
)
を
透
(
とほ
)
して、
坊主
(
ばうず
)
の
黒
(
くろ
)
い
法衣
(
ころも
)
が
映
(
うつ
)
る、と
水
(
みづ
)
の
中
(
なか
)
に
天守
(
てんしゆ
)
の
梁
(
うつばり
)
に
釣下
(
つりさ
)
げられた、
其
(
そ
)
の
姿
(
すがた
)
を
獣
(
けもの
)
の
襲
(
おそ
)
ふ、
其
(
そ
)
の
俤
(
おもかげ
)
を
歴然
(
あり/\
)
と
見
(
み
)
た。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
笹村が持ち込んで来た行李に腰かけて、落着きのない家を見廻していると、岡田の細君は、
背
(
せなか
)
で泣く子を
揺
(
ゆす
)
りながら縁側をぶらぶらしていた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
(可いから、可いから。)と、
低声
(
こごえ
)
でおっしゃってね、
背
(
せなか
)
を撫でて下さるもんだから、仕方なしに下りて行くと、お客はもう帰っていてね、嫌な眼で
睨
(
にら
)
まれたよ。
化銀杏
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
急に
落胆
(
がっかり
)
して毎日の病院通いも張合いが脱け、
背
(
せなか
)
や腕にぴったり板を結び着けられた自由の利かぬ体を、二階の空間に蒲団を
被
(
かぶ
)
って寝てばかりいた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
横手の土塀際の、あの
棕櫚
(
しゅろ
)
の樹の、ばらばらと葉が鳴る蔭へ入って、黙って
背
(
せなか
)
を
撫
(
な
)
でなぞしてな。
朱日記
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
他人の中に育ってきたお蔭で、誰にも
痒
(
かゆ
)
いところへ手の
達
(
とど
)
くように気を使うことに慣れている自分が、若主人の
背
(
せなか
)
を、昨夜も流してやったことが
憶出
(
おもいだ
)
された。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
突当
(
つきあたり
)
の
煉瓦
(
れんが
)
の私立学校と
背
(
せなか
)
合せになっている
紋床
(
もんどこ
)
の親方、名を紋三郎といって大の
怠惰者
(
なまけもの
)
、若い
女房
(
かみさん
)
があり、
嬰児
(
あかんぼ
)
も出来たし、
母親
(
おふくろ
)
もあるのに、東西南北、その日その日
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「笹村君は、これでもう何年になるいな。」と、
健啖家
(
けんたんか
)
のT—は、肺病を患ってから、背骨の丸くなった
背
(
せなか
)
を一層丸くして、とめどもなく
椀
(
わん
)
を替えながら苦笑した。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そういえば用が用、仏像を頼みに
行
(
ゆ
)
くのだから、と
巡礼染
(
じゅんれいじ
)
みたも心嬉しく、浴衣がけで、草履で、二つ目へ出かけたものが、人の
背
(
せなか
)
で浪を渡って、船に乗ろうとは思いもかけぬ。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
背
(
せなか
)
を
抱
(
いだ
)
くように
背後
(
うしろ
)
に立った按摩にも、
床几
(
しょうぎ
)
に近く裾を投げて、向うに腰を掛けた女房にも、目もくれず、
凝
(
じっ
)
と天井を仰ぎながら、
胸前
(
むなさき
)
にかかる湯気を忘れたように手で
捌
(
さば
)
いて
歌行灯
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お今は何の気もつかぬらしい顔をして力一杯
背
(
せなか
)
を
擦
(
こす
)
っていた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
山家
(
やまが
)
の
者
(
もの
)
には
肖合
(
にあ
)
はぬ、
都
(
みやこ
)
にも
希
(
まれ
)
な
器量
(
きりやう
)
はいふに
及
(
およ
)
ばぬが
弱々
(
よわ/\
)
しさうな
風采
(
ふう
)
ぢや、
背
(
せなか
)
を
流
(
なが
)
す
内
(
うち
)
にもはツ/\と
内証
(
ないしよう
)
で
呼吸
(
いき
)
がはづむから、
最
(
も
)
う
断
(
ことは
)
らう/\と
思
(
おも
)
ひながら、
例
(
れい
)
の
恍惚
(
うつとり
)
で
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
お手の指が白々と、こう
輻
(
やぼね
)
の上で、糸車に、はい、綿屑がかかったげに、月の光で動いたらばの、ぐるぐるぐると輪が廻って、
爺
(
じじい
)
どのの
背
(
せなか
)
へ、荷車が、
乗被
(
のっかぶ
)
さるではござりませぬか。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
可
(
いい
)
心持に、すっと足を
伸
(
のば
)
す、
背
(
せなか
)
が浮いて、
他愛
(
たわい
)
なくこう、その
華胥
(
かしょ
)
の国とか云う、そこへだ——引入れられそうになると、何の樹か知らないが、
萌黄色
(
もえぎいろ
)
の葉の茂ったのが、上へかかって
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
熊の
背
(
せなか
)
が、
彳
(
たたず
)
んだ
婦人
(
おんな
)
の
乳
(
ち
)
のあたりへ、黒雲のようにかかると、それにつれて、一所に横向きになって
歩行
(
ある
)
き出しました。あとへぞろぞろ大勢
小児
(
こども
)
が……国では珍らしい
獣
(
けもの
)
だからでしょう。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
一時
(
ひとしきり
)
は魔の
所有
(
もの
)
に
寂寞
(
ひっそり
)
する、
草深町
(
くさぶかまち
)
は静岡の
侍小路
(
さむらいこうじ
)
を、カラカラと
挽
(
ひ
)
いて通る、一台、
艶
(
つや
)
やかな
幌
(
ほろ
)
に、夜上りの澄渡った富士を透かして、燃立つばかりの鳥毛の
蹴込
(
けこ
)
み、友染の
背
(
せなか
)
当てした
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
旅客は
腕車
(
くるま
)
を見送りながら、お鶴の
塵
(
ちり
)
を払ったあとを、
背
(
せなか
)
一つ撫でて離れ
わか紫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ボーンと飛んで、額、
頸首
(
えりくび
)
、
背
(
せなか
)
、手足、殿たちの
身体
(
からだ
)
にボーンと留まる、それを所望じゃ。物干へ抜いて、大空へ
奪
(
と
)
って帰ろう。
名告
(
なの
)
らしゃれ。蠅がたからば名告らしゃれ。名告らぬと
卑怯
(
ひきょう
)
なぞ。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
山を
覆
(
くつがえ
)
したように
大畝
(
おおうねり
)
が来たとばかりで、——
跣足
(
はだし
)
で
一文字
(
いちもんじ
)
に
引返
(
ひきかえ
)
したが、
吐息
(
といき
)
もならず——寺の門を入ると、
其処
(
そこ
)
まで
隙間
(
すきま
)
もなく
追縋
(
おいすが
)
った、
灰汁
(
あく
)
を
覆
(
かえ
)
したような海は、自分の
背
(
せなか
)
から放れて
去
(
い
)
った。
星あかり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
山
(
やま
)
を
覆
(
くつがへ
)
したやうに
大畝
(
おほうねり
)
が
來
(
き
)
たとばかりで、——
跣足
(
はだし
)
で
一文字
(
いちもんじ
)
に
引返
(
ひきかへ
)
したが、
吐息
(
といき
)
もならず——
寺
(
てら
)
の
門
(
もん
)
を
入
(
はひ
)
ると、
其處
(
そこ
)
まで
隙間
(
すきま
)
もなく
追縋
(
おひすが
)
つた、
灰汁
(
あく
)
を
覆
(
かへ
)
したやうな
海
(
うみ
)
は、
自分
(
じぶん
)
の
背
(
せなか
)
から
放
(
はな
)
れて
去
(
い
)
つた。
星あかり
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
“背”の意味
《名詞》
背(せ、せい)
背中。胴の後ろ側のうち、腰より頭に近(ちか)い部分。胸と腹の反対側。
ものを人や動物(の胴)に見立ときの背中に当たる部分。刃の切(き)れない方の縁。
服や道具の中で、人の背中に接する部分。
身長。
(出典:Wiktionary)
背
常用漢字
小6
部首:⾁
9画
“背”を含む語句
背負
背後
背丈
背嚢
背高
背向
背景
山背
背中
引背負
背反
背延
背屈
背負梯子
違背
背恰好
中背
背負上
背伸
刀背
...