)” の例文
そして面倒臭さうに顏をしかめてこちらをじツとながめてゐたが、「今下の人が、もうきお晝だと云うてたのに——なんにも無いよ」
落葉やとりの糞で汚れた小庭へ下りて久し振りで築山へも登つたが、昔の庭下駄は歩きつけない足にも重くつて、きに息苦しくなつた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
選名術の先生に私のことを見て貰うたついでに聞いてやつたら、福島福造といふ名と四十四といふ年を言うただけで、先生はきに
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
「坊ちやん、待つてらつしやいましよ。今きこれを洗つて了ひますからね。あのさつきの人形のお相撲はどうなさいまして?」
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
其鞄の中にかにごろ/\と入れてある櫛や簪や笄や鬢附などを取り出して、斯んな髪結道具を入れて置く疊紙たたうを一枚張らうと思ひ立つた。
俳諧師 (旧字旧仮名) / 高浜虚子(著)
このき下の所には、帯のやうな靄が掛かつてゐますが、その靄の向うを御覧になると海が広く見えてゐるのでございます。
うづしほ (新字旧仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
俺あき見分けらあ。機関兵はせて色が蒼白あをじろいや。水兵はまる/\とふとつて色が黒いや。何故なぜつてよ、機関兵は石炭のこなほこりや、油煙を
ある職工の手記 (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
或る夜には、うとうと眠つて居て、ふと目が覚めると、き一町ほどのかみにある村の小学校から、朗らかなオルガンの音が聞え出して来た。
到頭とう/\其中そのうちでも權勢家けんせいか一人ひとりらしくえたねずみが、『すわたま諸君しよくん、まァたまへ、ぼくきにそれのかわくやうにしてせる!』と呶鳴どなりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
『やア、ぼくいま、フアーマーをしてところだ。まアあがたまへ。あしあらふ。離座敷はなれざしき見晴みはらしがいから』ときやくこのむ。
陽氣やうき加減かげんか、よひまどひをして、町内ちやうない大銀杏おほいてふ、ポプラの古樹ふるきなどでことがあると、ふくろだよ、あゝ可恐こはい。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「親の半兵衞はいよ/\お吉と福松を、一緒にする氣だつたやうで、容易にウンと言はないお吉に、本人の福松がかに逢つて見る氣になつたんでせう」
おらきこの附近あたりに住まふものぢや。われら家にて持つて来るものがおぢやるわ。少時しばしがほどここに待たれよ。
南蛮寺門前 (新字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
「学校の庶務課へおいでになれば、さういふ事はすつかり教へてくれます。早稲田の終点からきです。」
姉弟と新聞配達 (新字旧仮名) / 犬養健(著)
うちへは来ませんがね、このさき杵屋きねやさんにや毎日かよつてますよ。もう葭町よしちやうへ出るんだつてひますがね………。」とおとよなにか考へるらしくことばを切つた。
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
昼はすなはち日光をおそれ、又人および諸の強鳥を恐る。心しばらくも安らかなることなし。これは流転の中の、つらい模様をわれらにわかるやう、かに申されたのぢゃ。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
白樺、白楊はくやう、楡、山楂子さんざしかしなどの木が、やつと芽を吹いたばかりである。楡の木の背後うしろには黒樺の花が満開してゐる。ルスチニア鳥がき側で一羽啼いてゐる。
『それはさうで御座ございますが、最早もうきお帰りになりませうから。』とふさくまで止めやうとした。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
が、この親子の間柄あひだといふものは、祖父が余り過度に愛したせゐでもあらうが、それは驚くばかりひやゝかで、何かと言つては、き親子で衝突して、なぐり合ひを始める。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
それはこの郷里の大地からかに湧いてくるやうに、生き生きわたしの鼓膜を刺㦸した。わたしは微笑して引きさがり、雜沓のなかを掻きわけて妻のゐる方に戻つた。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
「もうきだ。よつぽどまへにEはしわたつたからな‥‥」と、わたしねむたさをこらへながら生返事なまへんじをした。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
あごの骨の痩せこけた、頸筋の小供の樣に細い顏と頭を、上の方で組んだ兩肱の中に埋め込んでかな疊の上に寢轉んでゐる義男の姿がこの時のみのるの胸に浮んでゐた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
「赤いお部屋で泣いたので、わるくなつたと思ひますわ。でもきつときよくなつてよ。」
不図すると俺の来るき前まで……或は其時既に話が決つて了つて、恰度其処へ俺が入つたのぢやないか知ら。と、上島にも長野にも硯箱があるのに、俺ンのを使つたのは誰であらう。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ねえさんとばるれば三すけおとゝのやうに可愛かあゆく、此處こゝ此處こゝへとんでかほのぞいて、さぞとゝさんが病氣びやうきさびしくらかろ、お正月せうぐわつきにればあねなんつてげますぞえ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
夫人はそれを見ると、きに飛んで出て来て、四辺あたりに馬子が居ないのを見ると
何方どつちつても造作ざうさりません、きですよ。岩「それでも極楽ごくらくは十まん億土おくどだとふぢやアないか。重「其処そこ停車場ステンシヨンりますから、汽車きしやに乗れば、すうツときにかれますよ。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
開きつ「婦人をんななんてものは、く思想の浅薄で、感情の脆弱ぜいじやくなものだからナ、少こし気概でもあつて、貧乏して居る独身者でも見ると、きに同情を寄せるんだ、実にクダらんものだからナ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ステーションを幾つか通越したが、長いこと停車してゐた処もあるし、き発車した処もある。其中に日が暮れて、技師のなさけで物を食はされたから、ミハイロは丁寧に辞儀をして礼を言つた。
椋のミハイロ (新字旧仮名) / ボレスワフ・プルス(著)
「よろし/\、もうきやよつて。」
乳の匂ひ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
「おちやんに言うてるんやない、旦那に言うてるんや。きに口出すんやなア、お前は。」と定吉はプリ/\した。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
其處そこで。其處そこまゐりますわ、さかしたです。……いましがた貴方あなたにおかゝります、一寸ちよつとさきなんですか、フツと打棄うつちやつてけないがしましたから。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「もうき退院が出來るが、大將は遊んでばかりをつて、僕にまかせ切りで困る。今、釧路くしろへ行つてるが、あすぐらゐここへ來る筈だ、——會ひ給へ。」
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
きにそれはぼツちやんにつたので、自分じぶんはれたのではないとつて、元氣げんきづきまたしました
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「それに酒屋の主人のはなしでは近頃は道路もよくなったし荷馬車も通るのでどこの家でもみんな町からかに買ふからこっちはだんだん商売がすたれると云ひました。」
税務署長の冒険 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「どうもお母さまがお弱いせゐかして、この小さいのがいつもどこかこゝかお悪いのでね。ところなぞは少し物を召し上るときもどしてお了ひなすつたものですよ。」
桑の実 (新字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
少時しばし途絶えて、「でも、……大方水はいたやうだで、もうき帰つて来るでごわしやう」
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
京都を歩いて居ると無用のものが多く、だだぴろくてきに可厭いやになるが、大阪に至つては街區のどの一角を仕切り取つても活溌な生活ラ・ヰイの斷片を掴む事が出來るやうに感ぜられる。
京阪聞見録 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
が——きに其處そこひと屋敷内やしきうちにでもなつて、かきからのぞこと出來できなくなるだらう。
夕凉ゆふすゞみ出掛でかけるにぎやかな人出ひとでの中においとはふいと立止たちどまつて、ならんで歩く長吉ちやうきちそでを引き、「ちやうさん、あたいもきあんな扮装なりするんだねえ。絽縮緬ろちりめんだねきつと、あの羽織はおり………。」
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
最早もう奥様おくさんがお帰宅かへりになりませう。』とふさは驚いてめるやうに言つた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
木版本もくはんぼんで、おほきな字の本文の間に、また割註わりちゆうが澤山してあるが、薄ツぺらなのだから、き讀めた。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
きのこのさ』と芋蟲いもむしは、あだかあいちやんにはれたかのごと聲高こわだかつて、きにえなくなりました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
兩親りやうしんあに意見いけんなどは、あしかぜほどもみないで、朋輩ほうばい同士どうしには、何事なにごとにも、きにの、おれおれががついて𢌞まはつて、あゝ、ならばな、と口癖くちぐせのやうにふ。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
此方こつちへ來やはつてから、何んぼにもならんうちや、そいでも三四年してからやつたかなア、とうやんが生れてき死にやはつて、奧さんが墓參りに行きやはると、何んでも寒い時で
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
『いや、其所そこ駄目だめで、貝層かいそうきにきてしまうです』と幻翁げんおうはいふ。
しづかなかの兄が
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
黒川もちよツと挨拶に出たが、今夜出張に出る準備があるからと斷わつて、き引ツ込んでしまつた。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
えゝ……とほくへもかないで、——くすりはなかつたあだをしに——待受まちうけてでもたのでせう……二丁目にちやうめ中程なかほどから、うやつて提灯ちやうちんしたさうですが、主人あるじかつて
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「あんた、まア一つおあがりやす。ツきに戻つて來やはりますさかい。」
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)