うやま)” の例文
私がこの村に参りましてから満八ヵ月になりますが、村人らは全くこの村に私が生れた人かのように親しみうやまうようになったです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
おれの見るところ孔明は実に立派な人だ。しかも自身の智謀や力に誇らず、よく蜀の帝王をうやまって、王者の仁を施すに口先だけの人でない
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
じつおやの如くうやまひ給ひしが其後は將監々々と御呼およびなさるゝゆゑ加納將監も是よりして徳太郎君を主人しゆじんの如くにうやまひかしづき養育やういくなし奉つりける
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「一紙半銭の奉財のともがらは、この世にては無比のらくにほこり、当来にては数千蓮華すせんれんげの上に坐せん、帰命稽首きみょうけいしゅうやまってまおす」
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「神様お願いです」そう呟く、「親をうやまうように、あいつらに智慧と分別を授けてやって下さい。それも、両親ふたおやよりは利口にならぬように……」
グーセフ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
われらを愛する者、人誰か愛せざらむ、わが心、救世主すくひぬしを見て、躍り喜ぶ。もろ/\の信者たちきたれ、われらが爲に生れ出で給ふこの幼兒をさなごたつとうやまはむ。
頌歌 (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
夜叉主やしゃおうとしては、こんなにみんなからうやまいあがめられている観音様かんのんさまを、わるだくみのたねに使ったことが、とてもくやまれてならないからでした。
長彦と丸彦 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
彼にはまさしく伯父に当る高齢の人を、うやまいいたわるのに不思議はないようなものだけれども、菅公かんこうを失脚せしめて以来、ひとしお態度が驕慢になって
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「いまこのエーヴェードスクローステル公園じゅうで、オヤユビさんほど、みんなからうやまわれているひとはない!」
かみはひっつめにって、くろかたマントをしていらっしゃる、もうそれだけで、先生せんせいうやま気持きもちがおこると一しょに、先生せんせいがどことなくきになるのです。
母の話 (新字新仮名) / アナトール・フランス(著)
ロップ島の酋長ロロは、よき酋長として附近の島々の住民たちからもうやまわれ、三浦須美吉は、郷里平磯にかえり、相かわらず遠洋漁業にしたがっている。
太平洋魔城 (新字新仮名) / 海野十三(著)
何處どこいともまをしがたけれど華魁衆おいらんしゆとて此處こゝにてのうやまひ、たちはなれてはるによしなし、かゝるなかにて朝夕あさゆふごせば、きぬ白地しらぢべにこと無理むりならず
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
東よりも西よりも、又天寒き北よりも、美をうやまふ人はこゝに來て、羅馬よ、汝が威力は不死不滅なりといはん。この段のをはるや、喝采の聲は座に滿ちたり。
兄でもうやまうようにもてなして、やや落ち付いてから隠し立てなく真率に葉子に対する自分の憧憬しょうけいのほどを打ち明けたので、木村は自分のいおうとする告白を
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
りて初犯者をば改化遷善せんぜんの道におもむかしむるよう誘導の労をり、また未成年者には読書習字を教えなどして、獄中ながらこれらの者より先生先生とうやまわれつつ
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
だから天をうやまい天命に従うことがすべての行ないの中心なのである。しかるに孔子は人を中心とする立場を興した。孔子における道は人の道である、道徳である。
孔子 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
奸智かんちにたけた鈴川源十郎、たちまちおさよを実の母のごとくうやまって手をついて詫びぬばかり、ただちにしょうじて小綺麗こぎれいな一をあたえ、今ではおさよ、何不自由なく
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
人さし指中指の二本でややもすれば兜背形とっぱいなり頭顱あたま頂上てっぺんく癖ある手をも法衣ころもの袖に殊勝くさく隠蔽かくし居るに、源太もうやまつつしんで承知の旨を頭下げつつ答えけるが
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わたくしは神々しいへりくだつたおん足の為に、わたくしのうやまひの心で美しい繻子のおん靴を造りまする、善い鋳型がかたを守る如く、しつくりとおん足を抱きつゝみまするやう。
かりそめの物もまもりとしてうやましんずればれいある事むなしからず、人のはきすてたる草鞋わらんづだに衆人しゆうじんしんぜしによりて、のち/\は草鞋天王そうあいてんわうとてまつりし事、五雑組ござつそに見えたり。
後よくつつしみ給へといふ。豊雄地に額着ぬかづきて、此の事の始めよりかたり出でて、なほ二八一命得させ給へとて、恐れみうやまひて願ふ。翁、さればこそ、此の邪神あしきかみは年たるをろちなり。
「それは心配ないだろう。武家の娘は、かえって男をうやまうものだ。」先生は、真面目である。
佳日 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「運命は空しく我をして心なき風に訴えしむ。時もくだけよ。わが星は悲かれ、われにつれなかれ」。次には「すべての人をとうとべ。衆生しゅじょうをいつくしめ。神を恐れよ。王をうやまえ」
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼はあの後藤点ごとうてんの栗色の表紙の本を抱いて、おずおずと父の前へ出たものであった。何かというと父が話し聞かせることは人倫五常じんりんごじょうの道で、彼は子供心にも父をうやまい、おそれた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
日輪にちりんを仰ぐ信仰や、山岳をうやまう信心は人間の抱く必然な感情でありました。我が国の日の丸の旗も、万物を照らし育てる太陽の大をたたえる心の現れだと見てよいでありましょう。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
どうしてどうしてもっと偉いことをする、防ぎながら金儲けをしているのさ、防ぎながらうやまわれようとしているのさ。そうしてそういう当人も、自分を偉いと思っているのだよ。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
或は尊みうやまえと教うれば、舅姑はもとより尊属目上の人なり、嫁の身として比教に従う可きは当然なれども、扨親しみいつくしむの一段に至りては、舅姑を先にして父母を後にせんとするも
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そのあひだ相變あひかはらずたけつては、黄金おうごんれましたので、つひにはたいした身代しんだいになつて、家屋敷いへやしきおほきくかまへ、使つかひなどもたくさんいて、世間せけんからもうやまはれるようになりました。
竹取物語 (旧字旧仮名) / 和田万吉(著)
当代無双の宏才博識として朝野ちょうやに尊崇されているこのふる入道に対しては、関白も相当の会釈をしなければならなかった。ことに学問を好む忠通は日頃から信西を師匠のようにもうやまっていた。
玉藻の前 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
世の常のものなればひても包みかくすべき身の恥身の不始末、乱行狼藉らんぎょうろうぜき勝手次第のたはけをば尾にひれ添へて大袈裟おおげさにかき立つれば世の人これを読みて打興うちきょうじ遂にはほめたたへて先生とうやまふ。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その他不思議小僧、不死身小僧、無病小僧、漫遊小僧、ノロノロ小僧、大馬鹿小僧など数えれば限りもありませぬ。人々は皆この白髪小僧を可愛がりうやまい、又は気味悪がり恐れておりました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
日頃年頃桂月様をおぢい様のやうにうやまひ候私、これはちと不思議に存じ候。
ひらきぶみ (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
もろもろのくるへる人のあはれなるすがたを見つつ君をおもはむうやまひまつり
つゆじも (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
しま大男おおおとこ弓矢ゆみやたのははじめてなので、目をまるくしてていましたが、そらんでいるものが、射落いおとされたのをて、したをまいておじおそれました。そして為朝ためともかみさまのようにうやまいました。
鎮西八郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
我「クリスチァン」たる者は深く自らうやまはざるべからず。
とモーニングの青年は礼儀正しくうやまって帰って行った。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
木曾がやかたの跡なればなりと土人今にして木曾樣義仲樣とうやまふ木曾が城跡といふは高き山ならねど三方山にて後に駒ヶ嶽聳へ前に木曾川ありこゝきたる道東よりするも西よりするも嶮岨の固め諸所にあれば義仲粟津あはづの戰塲を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
皆から愛しうやまわれて愛卿と呼ばれていた。
愛卿伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
ほゝうやまつてまうす。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
暗闇の仲間ほど、じつは心から服したい人間中の人間をほっし、また心からうやまいたい光明をつよく求めているものかとも思われる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
しかし釈迦牟尼如来の教えとは全く違って居るのですから私はそこに行った時分にうやまいはしましたけれど三礼はしなかった。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
うやまふ武士の面目めんぼくさもあるべし因て兩人は人殺しのつみさしゆるせば此旨有難ありがたく心得よ夫と指揮さしづに小役人は二人が繩目なはめ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
が、かれまちもの部下ぶかのやうにあつかふにもかゝはらず、院長ゐんちやうアンドレイ、エヒミチばかりは、教育けういくがあり、高尚かうしやうこゝろつてゐると、うやまあいしてゐた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
容姿ようしすぐれて美しく才気あり万事にさとせいなりければ、誘工ゆうこうの事すべてお政ならでは目がかぬとまでにたたえられ、永年の誘工者、伝告者として衆囚よりうやまかしずかれけるが
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
しかし、このグリンミンゲ城の黒ネズミだけはべつで、いつもみんなからうやまわれておりました。
是則これすなはちいきてかたちを以てめぐり、しゝてはたましひを以てめぐるゆゑなりとかや。(文海披沙の説)菅神も此ろんに近し。逃入村にごろむらの事を以ても千年にちかき神灵しんれい赫々かく/\たることあふぐべしうやまふべし。
おもひとほどはづかしくおそろしきものはなし、女同志をんなどししたしきにても此人このひとこそとうやまともに、さしむかひてはなにごともはれず、其人そのひと一言ひとこと二言ふたことに、はづかしきはくまではづかしく
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
今日まで知られているものでは、おそらく天正てんしょうの銘記のあるのが一番古いであろうか。少しでも不敬なことをすればそのたたりは覿面てきめんで激しいという。だから誰も恐れうやまっている。
陸中雑記 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
うやまつて申し奉る、笛によるの秋の鹿、つまゆゑ身をばこがすなる、五人女の三の筆、色もかはりて江戸桜、盛りの色を散らしたる、八百屋やほやの娘お七こそ、恋路の闇のくらがりに
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
一 兄公こじゅうと女公こじゅうとめは夫の兄弟なれば敬ふ可し。夫の親類にそしられにくまるれば舅姑の心にそむきて我身の為にはよろしからず。睦敷むつまじくすれば嫜の心にも協う。又あいよめを親み睦敷すべし。殊更夫のあにあによめあつくうやまふべし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)