羽根はね)” の例文
さっそくふとんの売場うりばのふかふかした羽根はねぶとんの山の上によこになり、めずらしくのびのびとした気分でねむりに落ちていったのだ
張箍はりわ女袴をんなばかま穿いた官女くわんぢよよ、とちよ、三葉形みつばがたぬひを置いて、鳥の羽根はねの飾をした上衣うはぎひきずる官女くわんぢよよ、大柄おほがら權高けんだかで、無益むやく美形びけい
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
「あ、ごめんなさい。」と、みねさんは、おわびをしましたが、義雄よしおさんは、素早すばやはしって、その羽根はねちからまかせにかえしました。
東京の羽根 (新字新仮名) / 小川未明(著)
この羽根はねは一人一人の飛行機のように、飛ぶためのものですよ、簡単な、しかし強力な動力装置がこの羽根の下についているんです
大宇宙遠征隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
にわかにくっきり白いその羽根はねは前の方へたおれるようになり、インデアンはぴたっと立ちどまって、すばやくゆみを空にひきました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
四つ角まで出ると交番の所に人が大勢立っていた。御作さんは旦那の廻套まわし羽根はねつらまえて、伸び上がりながら、群集ぐんじゅの中をのぞき込んだ。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あなたの頭髮と云つたらまるでわし羽根はねみたいですわ。爪が鳥の爪のやうになつてらつしやるかどうかはまだよく見てゐませんけれどね。
フィリップ夫婦は、わら布団と、羽根はね布団とを敷いてその上に寝るのである。毛布団というものをついぞ使ったことがない。
しかし、そのおおきさは矢張やはり五すんばかり蒼味あおみがかったちゃっぽい唐服からふくて、そしてきれいな羽根はねやしてるのでした。
「あっ」という恋人こいびとさけび声を耳にしたと思ったつぎの瞬間しゅんかん、若者は自分のからだ羽根はねぶとんのようにかるがると水の上に浮かんでいることに気がついた。
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
もと猿樂町さるがくてううちまへ御隣おとなり小娘ちいさいの追羽根おひばねして、いたしろ羽根はねとほかゝつた原田はらださんのくるまなかおちたとつて、れをば阿關おせきもらひにきしに
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「そうですかね。だがいつまでも、それじゃすまないでしょう。その内に君の『ボオドレエル詩抄』が、羽根はねの生えたように売れる時が来るかも知れない。」
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
コロボックル遺跡ゐせきに石鏃の現存するは、間接かんせつに彼等がやがら、弓及び絃を有せし事をしようするものと云ふべし。矢には羽根はねを付くる事有りしやいなかんがふるに由無し。
コロボックル風俗考 (旧字旧仮名) / 坪井正五郎(著)
イギリスの大将たいしょう軍服ぐんぷくをまねた金モールでへりをとった赤い上着を着、鳥の羽根はねでかざったかぶとをかぶったジョリクールがその背中せなかにいばって乗っていた。
それから二、三時間たったとき、宿屋やどや主人しゅじんはようやく羽根はねぶとんからおきだして、顔をあらいました。
それはきんのような光のある、一まいの鳥の羽根はねでした。ウイリイは、めずらしい羽根だからひろっていこうと思って、馬からりようとしました。すると馬が止めて
黄金鳥 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
なが羽根はねのついた帽子、袋とか籠とかを腕にして、としをとつてゐたさうだが、それは、およそ私の友達が死ぬまでもしさうにもなく、想像にもさうは思はれない姿だつた。
あるとき (旧字旧仮名) / 長谷川時雨(著)
ならんでつて望生ぼうせい膝頭ひざかしらどろうまつてるのを、狹衣子さごろもし完全くわんぜん土器どき間違まちがへて掘出ほりださうとすると、ピヨイと望生ぼうせい起上たちあがつたので、土器どき羽根はねえたかとおどろいたのも其頃そのごろ
洋画家の満谷みつたに国四郎氏はこのごろ謡曲に夢中になつて、画室アトリエで裸体画の素描デツサンる時にも、「今はさながら天人てんにん羽根はねなき鳥の如くにて……」と低声こごゑうたひ出すのが癖になつてゐる。
おそらく交通機関としたら、これほど便利なものはあるまい。すなわち羽根はねが交通機関の理想のごとくなっていたから日本でも西洋でも自由自在に動くものの意匠いしょうには羽根をつけている。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「あんなようすをしているとは、おもいもよらなかったよ。なんてつまらない鳥なんだ。われわれ高貴こうきのものが、おおぜいそばにきたのにおじて、羽根はねのいろもなくしてしまったにちがいない。」
己が奇怪な幻を見たり、不思議な妄想に悩まされたりするのは、ちょうど桜の枝にうるわしい花が咲いたり孔雀くじゃくの体に絢爛けんらん羽根はねが生えたりするのと同じく、自然の意志の純真なる発現ではあるまいか。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そればかりではなく、かんむり眞中まんなかからはとり羽根はねながきんかざりがうしろほうち、またかんむり兩側りようがはからもきんかざりがぶらさがつて、そのはし勾玉まがたまがついてゐるといふ、すばらしい立派りつぱきんかんむりなのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
運転手うんてんしゅくるまからりて、荷物にもつろすてつだいをしました。このとき、しろあかのまじった羽根はねが、あいだからてきました。
東京の羽根 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのすみに文鳥の体が薄白く浮いたままとまの上に、有るか無きかに思われた。自分は外套がいとう羽根はねを返して、すぐ鳥籠を箱のなかへ入れてやった。
文鳥 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ひゆの花、男なんぞは物ともしない女の帽子の羽根はね、口元も腰元もけるやうだ、おまへの蜜の湖に若い男が溺れ死ぬ。
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
しかし羽根はねの寝床では暑すぎるのだ。それに、羽根は、おじさんの年取としとったからだには柔らかく当りもしようが、にんじんは汗びっしょりになってしまう。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
羽根はねの音がぶんぶん、くちばしから、かぼちゃの汁をすう音がぴちゃぴちゃと、伴奏のように聞えるなかに、蠅たちは、しきりにおしゃべりをしている。——
ふしぎ国探検 (新字新仮名) / 海野十三(著)
たけは七八すんかたにはれい透明とうめい羽根はねをはやしてりましたが、しかしよくよくればかおは七十あまりの老人ろうじんかおで、そしてに一じょうつえをついてりました。
それと、油の這入つた瓶と羽根はねも見つけて、鍵と錠前に油を引いた。私は水を少しとパンを少量すこしとつた。
新世界交響楽しんせかいこうきょうがくはいよいよはっきり地平線ちへいせんのはてからき、そのまっ黒な野原のはらのなかを一人のインデアンが白い鳥の羽根はねを頭につけ、たくさんの石をうでむねにかざり
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
あわててしまったぼくは羽根はねぶとんの山をすべりおりて、どこから逃げたらいいかと、あたりを見まわしたとたん、羽根ぶとんの山が音をたててくずれおちたんだ。
寝床ねどこもいつも力いっぱいふるいましたから、羽根はねが雪のひらのように、あたりにとびちりました。
親方はそのときまず見物のさわぐのをとどめて、さて毛皮のぼうしをぬぎ、そのかざりの羽根はねが地面のすなと、すれすれになるほど、三度まで大げさなおじぎを巡査じゅんさに向かってした。
さればおみせ旦那だんなとてもとゝさんかゝさんをも粗略そりやくにはあそばさず、常々つね/\大切たいせつがりてとこにおへなされし瀬戸物せともの大黒樣たいこくさまをば、れいつぞや坐敷ざしきなかにて羽根はねつくとてさわぎしとき
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
蜻蛉とんぼが木の枝にとまつてるのを見る。羽根はねたひらに並んでゐない。前の二枚が三十度位あがつてゐる。風が吹いて来たら、その羽根で調子を取つてゐた。木の枝は動けども、蜻蛉は去らず。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
羽根はねは、ちょうどみやこそらで、義雄よしおさんと、みねさんにかれて、ひらひらとそらひるがえってちたときのようなかっこうで地面じめんちたのでした。
東京の羽根 (新字新仮名) / 小川未明(著)
おまえはね、(1)わたしの寝床ねどこをきちんとして、それをよくふるって、羽根はねがとぶようによく気をつけてくれればいいんだよ。そうすれば、人間の世界せかいに雪がふるのさ。
じいさま、彼所あそこゆる十五、六さいくらい少女しょうじょなんと品位ひん様子ようすをしてることでございましょう。衣裳いしょうしろ羽根はねしろ、そしてしろひもひたい鉢巻はちまきをしてります……。
店頭にはにぎやかにたこ羽根はねがぶら下り、セルロイドのラッパだの、サーベルだの、紙でこしらえた鉄兜てつかぶとだの、それからそれへと、さまざまなものが所も狭く、天井から下っていた。
柿色の紙風船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
高い腰掛こしかけに坐つて、ヂョウジアァナは鏡に向つて、髮をつてゐた。屋根裏の抽斗の中で彼女が前にさがしておいた造花ざうくわと色のせた羽根はねを捲き毛に編み込まうといふのだ。
苧環をだまき成人おとなびてゐないのが身上しんじやうの女學生、短い袴、ほそあし、燕の羽根はねのやうに動くうで
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
長いかみをふっさりとかたまでらして、緑と赤の羽根はねでかざったねずみ色の高いフェルトぼうをかぶっていた。ひつじの毛皮の毛のほうを中に返して、すっかりからだに着こんでいた。
同時に何か黒いものが一つ畠の隅へころげ落ちた。Kさんはそちらを見る拍子ひやうしに「又庭鳥にはとりがやられたな」と思つた。それは実際黒い羽根はねに青い光沢くわうたくを持つてゐるミノルカしゆの庭鳥にそつくりだつた。
素描三題 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かれ坂井さかゐして、うちかへ途中とちゆうにも、折々をり/\インヷネスの羽根はねしたかゝへて銘仙めいせんつゝみへながら、それを三ゑんといふやすつたをとこの、粗末そまつ布子ぬのこしまと、あかくてばさ/\したかみ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まだ、お正月しょうがつなので、子供こどもたちは、ここへきて、たこをげたり、羽根はねをついたりしてあそんでいました。
雪の降った日 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ホレおばあさんの寝床ねどこをきちんとなおすことは、この女の子のやくめになっていたのですが、それもしませんでしたし、羽根はねがまいあがるほど、その寝床をふるいもしませんでした。
羽根はねえた人間でもがあって、物好きにもこの窓のところまで飛んでいったとしたら、そしてその光る硝子ガラス窓のなかをソッとのぞいてみたとしたら、そこに一人の少年が寝床ねどこよこたわったまま
○○獣 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そのとき、ふと見ますと、そばの小川の岸にカモたちがのんびりならんで、やすんでいました。カモたちは、くちばしで羽根はねをきれいにそろえながら、うちとけた話をしていました。
三人の若者が、かわるがわるに声をあげて、ほし芋とふかし芋を売りはじめると、通行人たちはたちまち寄って来て、芋店の前は人だかりがつづき、品物は羽根はねが生えたように売れていった。
一坪館 (新字新仮名) / 海野十三(著)