)” の例文
新字:
「そりやもう、自分のしなくちやならないことは、ちやんと心得てるさ——誰もかなやしないわ。」とリアは、意味ありに答へた。
足音あしおとつたのに、子供こどもだらう、おそもなく、葉先はさきうきだし、くちばしを、ちよんとくろく、かほをだして、ちよ、ちよツ、とやる。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さしもになかよしなりけれど正太しようたとさへにしたしまず、いつもはづかしかほのみあかめてふでやのみせ手踊てをどり活溌かつぱつさはふたゝるにかたなりける
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
ふくみ二下り讀では莞爾々々にこ/\彷彿さもうれなる面持おももちの樣子をとくと見留て長庵は心に點頭うなづきつゝやがて返書を請取千太郎よりも小遣こづかひとて金百ぴき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
むつつりと愛嬌の無い三田の口から、大阪言葉を眞似したのが出て來たので、しんからをかしさうに笑つた。笑ふと金齒がきらきらした。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
貴方あなた少々せう/\ねがひつてたのですが、何卒どうぞ貴方あなたわたくしと一つ立合診察たちあひしんさつてはくださらんか、如何いかゞでせう。』と、なくハヾトフはふ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
またこれから日本につぽんまで夫人等ふじんら航海かうかいともにするやうになつた不思議ふしぎゆかり言葉ことばみじかかたると、夫人ふじんは『おや。』とつたまゝいとなつかしすゝる。
可成かなおほきいけれど、わづかに一小破片せうはへん見出みいだしたのみといふ八木やぎ水谷みづたに談話だんわなどかんがへて、はおぼろながら。
「まあたすかつた」とづかしつた。そのうれしくもかなしくもない樣子やうすが、御米およねにはてんからちた滑稽こつけいえた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
汽動車は氣味のわるい響きを立てつゝ、早稻わせはもう黄ばんでゐる田圃たんぼの中を、十丁程と思はるゝ彼方かなたに長くよこたはつたやさな山の姿に並行して走つてゐた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
高き石がきは、まつはれたる蔦かづらのために、いよゝおそろしなり。青き空をかすめて、ところ/″\に立てるは、眞黒まくろにおほいなるいとすぎの木なり。
それを羨ましに見ながら、同年輩の見窄みすぼらしいなりをした、洗洒しの白手拭を冠つた小娘が、大時計の下に腰掛けてゐる、目のショボ/\した婆樣の膝に凭れてゐた。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
あるひはくさつてゐないものはひろつてほか器物きぶつつくなほしたりするといふことがあるうへに、むかしひとがはじめから石器せつきのようにもなくてることをしなかつたのです。
博物館 (旧字旧仮名) / 浜田青陵(著)
ない調子と言ふよりは、已むを得ないと言つた口調で顫へ上がる友二郎をかへりみます。
掛けやがて一座と成て酒宴さかもりうち後家に心有りなる面白可笑おもしろをかし盃盞さかづきことに後家のお勇も如才じよさいなき人物しろものゆゑ重四郎が樣子を熟々つく/″\見るに年はまだ三十歳を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
『あら、海軍かいぐん叔父おぢさんは、あのいわうしろかくれておしまいになつてよ。』と、日出雄少年ひでをせうねんいぶかしわたくしながめた。
ひとみすわらず、せたをとこかほを、水晶すゐしやうけたるごとひとみつやめてぢつると、わすれたさましたまぶち、なくてた、手巾ハンケチつゆかゝかつた。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
愛宕あたごさんにも大けな銀杏いてふがおましたな、覺えてなはる。……はちの巣を燒いてえらい騷動になりましたな。』と、またなつかしな眼をして、小池の顏に見入つた。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
しるしかさをさしかざし高足駄たかあしだ爪皮つまかわ今朝けさよりとはしるきうるしいろ、きわ/″\しうえてほこらしなり。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
一所いつしよりたひとは、みんはなれ/″\になつて、ことありいそがしくあるいてく。まちのはづれをると、左右さいういへのきから家根やねへかけて、仄白ほのしろけむりが大氣たいきなかうごいてゐるやうえる。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
待居まちゐたり半兵衞はやがて歸り來り偖々さて/\御太儀なりしお小僧にも臺所だいどこへ行て食事仕玉へと云ひければ寶澤はうれ下行おりゆき食事もをはりける頃感應院も祈祷きたう
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
甲板かんぱん其處此處そここゝには水兵すいへい一群いちぐん二群にぐん、ひそ/\とかたるもあり、たのわらふもあり。武村兵曹たけむらへいそう兩眼りやうがんをまんまるにして
やをつぎにかいひそまりてくともなしにみゝたつれば、きやくはそもれなるにや、青柳あをやぎといふこゑいと子とこゑ折々をり/\まじりぬ、さても何事なにごとだんずるにや、れにも關係くわんけいありなるをと
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
天滿與力てんまよりきは、渡船とせんもどしてみたけれど、ほとんど片足かたあし餘地よちもないので、腹立はらだたし舌打したうちして、みぎはつてゐたが、やがてたかく、とらえるやうにこゑげると
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
あはな聲を出して、やゝもすればおくれてしまひさうなお光は、高く着物を端折はしをり、絽縮緬ろちりめん長襦袢ながじゆばん派手はで友染模樣いうぜんもやうあざやかに現はして、小池に負けぬやうに、土埃つちぼこりを蹴立てつゝ歩き出した。
東光院 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
腹立はらだたしかほをしたものや、ベソをいたものや、こはさうにおど/\したものなぞが、前後ぜんごしてぞろ/\とふねからをかあがつた。はゝかれた嬰兒あかごこゑは、ことあはれなひゞき川風かはかぜつたへた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)