“さら”のいろいろな漢字の書き方と例文
カタカナ:サラ
語句割合
26.6%
15.6%
14.0%
12.5%
11.9%
8.9%
1.8%
1.4%
1.2%
1.2%
(他:64)4.9%
(注)作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
俊助しゅんすけはこう云う図書館の窓際の席に腰を下して、さっきから細かい活字の上に丹念たんねんな眼をさらしていた。
路上 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
おれは、——所々うろこげた金魚は、やがてはこの冷たい水の上に、むくろさらす事になるのかも知れない。
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
炉の火燃えつきんとすれども柴くべず、五十年の永き年月を潮風にのみさらせし顔には赤き焔の影おぼつかなくただよえり。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
江戸っ子がそろっているから、いくら貧乏人でも、腹巻きや下帯は、切りたてのさらし木綿のりゅうとしたのを身につけている。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「それじゃアあねごの思惑通り、こっちへさらわれて来たんだな」腕に蛭子えびすの刺青のある小頭の蛭子三郎次である。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
また我はガニメーデがさらはれて神集かんづとひにゆき、そのともあとに殘されしところにゐたりとおぼえぬ 二二—二四
神曲:02 浄火 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
葉子はその前にも一度田舎いなかへ帰ったが、その時は見送りに行った庸三の娘を二人とも、不意にさらって行ってしまった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
予の知れる料理屋の小女夙慧なるが、小学読本をさらえるとては必ず得手えてかにという風に猴の字を得手と読み居る。
これ等の犯罪的天才は大抵たいていは小説の主人公になり、さらに又所謂いわゆる壮士芝居の劇中人物になつたものである。
本所両国 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
おこしてもそれ折角せつかく同伴者つれかたあつさらきようすこともしないなら
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
彼らは、これらの器物をよごさないように、気にしながら、たちまちのうちに第一のさらをあけて、第二番目が注文された。
海に生くる人々 (新字新仮名) / 葉山嘉樹(著)
すると母親ははおやは、おおきな、おおきな、おさらくろいスープをって、はこんでました。
恰度これから午後にかけて干潮時と見え、つやのある引潮の小波さざなみが、静かな音を立てて岩の上をさらっていた。
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
八五郎を拜んで、平次を引出したのは、土地の仲間にこの功名をさらつて行かれ度くないばかりの苦策くさくだつたのです。
恐らく一番貧乏くじを引いたのは氏政だろう。首は氏照と一緒に、京都一条の戻橋もどりばしさらされて居るのである。
小田原陣 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
足利尊氏あしかがたかうじの木像がさらされるとかいうなら、筋は通るが、しかし、碩学せきがく高僧である大和尚が、死後まで
あんな上等の足駄をあんな男にはいてゆかれるのも勿体なかったし、殊には中村のを無断でさらってゆかれたのが忌々しかった。
変な男 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
すると、水の底にいる小魚が、みんなその輪に植えた曲げ釘にひっかかって来るので、底の小魚はきれいにさらわれてしまう。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
外光の直射を防ぐ為と、一つは、男たちの前、殊には、庶民の目に、貴人あてびとの姿をさらすまい、とするのであろう。
死者の書 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
その植物は、どの茎もどの茎も、皆半分位の所から折り取られて、見るも無慙むざんなむくろをさらしていたではないか。
毒草 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
あの書斎へよく聞えて来た常磐津ときわずや長唄の三味線のかわりに、そこにはピアノを復習さらう音が高い建築物の上の方から聞えて来た。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
すぐ後から安藤対馬守つしまのかみが、頭脳のなかで謡曲うたいでも復習さらえているように、黙々と、しかし朗かな顔付きでやって来る。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
忽ち球は我色に背きて、監者は冷かに我銀の山をさらひ取りぬ。
それをすばしこくさらって行きやがったな。
そのせゐで、不折氏の門札はいつもさらだ。そしてその六朝文字が初めから段々とちがつて来てゐる。
「会社へ勤めるのにさらの洋服を拵えにゃならん云うて来とるんじゃ。」為吉は不服そうだった。
老夫婦 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
よくさらされた麻布が擦り合うような音の底に生絹をみ合わすような音もかすかに聞えます。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
栃の実を取って一種の製法で水にさらして灰汁あくを抜き餅に作って食用にしている。
「異人さんから貰つたのよ。引つさらつて来たのよ。」と女は云つた。
或る人がなかごう枳殻寺からたちでらの近所を通ると、紙の旗やむしろ旗を立てて、大勢が一団となり、ときの声を揚げ、米屋をこわして、勝手に米穀をさらって行く現場を見た。
その落いた魚屋やつの襟印を見て帳面に『一円五十銭……茂兵衛』とか何とか私共一流の走書きに附込んだやつさらうように引っ担いで走り出て行きます。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「人の頭の中のものをスーッとさらって行く……不思議な……なつかしい青年……近頃流行のシークとかスマートとかいう言葉は、こんな青年を形容する言葉ではあるまいか」
怪青年モセイ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「学而時習之不亦悦乎。」という開巻第一の言も仮名でいえば「皆さんは学校で教わった事を家へ帰ってもお温習さらえなさいよ。」と同じ事で、論語知らずの小学校の先生でも常にいっている。
論語とバイブル (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
草稿をだして眺める。力のない声ではじめのところを温習さらってみる。うまくいきそうもない。胸がドキドキしてはきたくなってくる。足元から風が吹きあげているようで、なんともたよりない気持だ。
だいこん (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
しろがねひもは永久に解けたのではなく、またこがねさらは償いがたいほど砕けたのでもない(6)のだ。
その拍子に燈火ともしびさらが落ちて、あたりのゆかに乱れたわらは、たちまち、一面の炎になった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
奇異なる二重の天秤のさらの上に、見えざる「影」の犯した悪行と、未行はれずして止んだ善行とをはかつてゐるのである。
犬は彼の不快を知っているように、いつもさらめ廻しながら、彼の方へきばいて見せた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
どういうもんだか美妙斎は評論が好きで、やたらと幼稚な評論をしては頭の貧弱を惜気おしげなくさらけ出してしまった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
彼女は自分の頭の中に残っているこの古い主観を、活動写真のように誇張して、また彼の前にさらけ出すにきまっていた。彼はそれにも辟易しない訳に行かなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「……実は、綾のことですが、今度お国のお侍で大隈という人から是非しいというので、遣わすことに承諾しましたのですが、まるで娘を掠奪さらわれるような工合で、私も実に驚きました」
人買ひとかい掠奪さらわれたのさ」
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それも最初は、自分の片輪じみた大きな姿を運動場に暴露さらしたくない気持から、そうしたのでしたが、後には、それが誰にも話すことの出来ない私の秘密の楽しみになってしまいました。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
全身を太陽に暴露さらして、
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
それでいて二人共に、高座こうざに顔をさらすことをはばからなかったのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「その心持があればもう立派なものだ。」と言った時、さらした古法帖こほうじょうの上に大きな馬蠅うまばえが飛んで来たので、老人は立って追いながら、「あやまちを改むるにはばかることなかれ。若い時の事はどうもいたし方がない。人間の善悪はむしろ晩節にあるのだよ。」
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
何やら火爐こんろだの槃碟さらだのの家具も少し見えている。
観画談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
何やら火炉こんろだの槃碟さらだのの家具も少し見えてゐる。
観画談 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
沙羅さらの木」の詩が合唱せられて、式が始まりました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
沙羅さらのみづに花さけば、
沙羅の花 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
と娘の声でしゅ。見惚みとれてさらあらわれたか、罷了しまいと、慌てて足許あしもとの穴へ隠れたでしゅわ。
貝の穴に河童の居る事 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「頭のさらじゃあないけれど、額の椀のふたは所作真盛まっさかり。——(蟷螂や、ちょうらいや、蠅を取って見さいな)——裸で踊っているのを誰だと思って?……ちょっと?」
清は今がたすやすやついて起きそうにもない容態じゃが、きずというて別にあるでもなし頭の顱骨さらを打ちったわけでもなければ、整骨医師ほねつぎいしゃ先刻さっき云うには
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
疵といふて別にあるでもなし頭の顱骨さらを打破つた訳でもなければ、整骨医師ほねつぎいしやの先刻云ふには、ひどく逆上したところを滅茶〻〻に撲たれたため一時は気絶までも為たれ、保証うけあひ大したことは無い由
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
なんでも井戸浚さらへの時かで、庭先へ忙しく通りかゝつた父が、私の持出してゐたくはつまづき、「あツ痛い、うぬ黒坊主め!」と拳骨を振り上げた。
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
刈安峠から尾根をつたって五色ヶ原、佐良さら峠、一日中雪の上ばかり歩いていた。
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
絶大の景色けいしよくに対する時に詞句全くつくるは、即ち「われ」の全部既に没了しさられ、恍惚としてわが此にあるか、彼にあるかを知らずなり行くなり。
松島に於て芭蕉翁を読む (新字旧仮名) / 北村透谷(著)