さら)” の例文
どういうもんだか美妙斎は評論が好きで、やたらと幼稚な評論をしては頭の貧弱を惜気おしげなくさらけ出してしまった。
美妙斎美妙 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
彼女は自分の頭の中に残っているこの古い主観を、活動写真のように誇張して、また彼の前にさらけ出すにきまっていた。彼はそれにも辟易しない訳に行かなかった。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白日にさらすとも何等不安を感じない生活であったのを確かめているからである。
スウィス日記 (新字新仮名) / 辻村伊助(著)
……しかしそんな事を自分勝手にやっては兄さんに悪るくはあるまいかとも思うた。咄嗟とっさの間にいろいろと迷うた。……と、今度はこの端書がここへ来るまでに多くの人の目にさらされた事を思うた。
田舎医師の子 (新字新仮名) / 相馬泰三(著)
日にさらされた蛍光石の闇に光を放つように、身に沁みた歓びを胸底に秘して、眼を閉じて回顧に耽った幾年が、今、こうして染み染みと山にむかえば、あたかも果敢ない幻影であったかの如く思われる。